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樫尾俊雄発明記念館に行ってみた

あの「カシオトーン」が復活してた! 実はG-SHOCKより古い「カシオ楽器の世界」知ってる?

カシオ計算機(以下、カシオ)と言えば、社名にもなっている「計算機」(=電卓)や耐衝撃ウォッチ「G-SHOCK」などでおなじみの日本メーカーです。その柱事業のひとつとして、ちょっと忘れがちだけど忘れてはいけないのが「電子楽器」。実は1980年に事業がスタートし、2020年に40周年を迎える歴史があるってご存じでしたか? そんなこだわりのカシオ楽器の世界を見てみましょう!

「樫尾俊雄発明記念館」に行ってみた

今回は、世田谷区成城にある「樫尾俊雄発明記念館」で取材させていただきました。カシオは樫尾家の4人兄弟によって創設されており、ここはその次男である発明家・樫尾俊雄氏(1925年〜2012年)の自宅を改装した記念館となっています。せっかくなので、まずは現地の様子を一部写真でお伝えしましょう。

「樫尾4兄弟」の次男・俊雄氏の発明と功績を後世に伝えるため、2013年5月15日に設立された記念館。同氏の発明品の多くが、この自宅で考案されたそう。事前予約さえすれば誰でも入場可能です(入場料は無料)。ちなみに成城学園の住宅街に建つ豪邸です!

まず鎮座するのは、その社名にもなっている「計算機」。記念館では、カシオ設立の記念碑的な世界初の小型純電気式計算機「14-A」の実物を見ることができます。おどろくことにコレ、今でもちゃんと動くそう! そのうしろには、科学技術用計算機「AL-1」が見えます

こちらは、仕事をしながらでも煙草をふかせる指輪型パイプ。1946年に発売されました。分煙がスタンダードな今では考えられない製品ですが、当時はその利便性で大ヒット

カシオが計算機開発で培った演算技術を投入したデジタル腕時計は、今でも同社の主力製品。その記念すべき初号機「カシオトロン」の実機も見ることができます

あの「G-SHOCK」の初号機「DW-5000C-1A」も展示されています。ちなみに筆者、G-SHOCKと同い年(1983年生まれ)だったことが判明。ともに同じ36年間を生き抜いてきたと思うと親近感が……

実はG-SHOCKより古い! カシオ電子楽器の初号機「カシオトーン」

さて、いよいよ本題です。そんなカシオが1980年に発売したのが、同社初の電子楽器「カシオトーン 201」(CASIOTONE)でした。横幅85cm、重量6.8kgというコンパクトなキーボード型電子楽器です。「誰もが簡単に演奏を楽しめる楽器」というコンセプトで開発されたこのカシオトーン 201から、「カシオ電子楽器の歴史」が始まりました。

記念館に展示されている「カシオトーン 201」の実機! 850(幅)×76(高さ)×238(奥行)mm、重量6.8kgで、持ち運びできるサイズです。発売当時の価格は97,000円

カシオトーン 201の中には、チェロ、バイオリン、フルート、クラリネット、トランペット、ギター、チェンバロ、ハープ、チェレスタ、ウクレレ、バンジョー等、29種類の音色が搭載されており、1台でそれらのサウンドを自由に切り替えて鳴らすことができます。

それまで日本で「楽器」といえば、一部の人が本格的に習う高価な趣味という位置づけ。1台でさまざまな楽器のサウンドを鳴らせて、持ち運ぶこともでき、一般家庭でも買える価格帯のカシオトーン 201は、1980年当時としては画期的な製品だったのです。ちなみに、あの「G-SHOCK」の初代モデルが出たのは1983年なので、実はカシオトーンのほうが古いんですよね。

コントロール部が右側に配置されているというレア(?)設計。当時は「利き腕の右手側にあったほうが操作しやすいだろう」という考えに基づいていたそうです

カシオトーン 201の発明は、独自の「子音・母音システム」を搭載すること。音の立ち上がり部分=子音と、音が消えるまでの部分=母音に分けて考え、それぞれに相当する波形をLSI内部でデジタル演算により別々に発生させ、微妙に変化させながら合成するシステムです。これによって、さまざまな種類のアコースティック楽器の特徴あるサウンドを再現しました

木目調のボディには、鍵盤に割り当てられたサウンドを表記するシートが付いています。現代の電子キーボード製品のインターフェイスと共通するわかりやすさ

カシオ電子楽器の歴代有名モデルをチラ見せ!

カシオトーン 201のヒット以降、カシオからはさまざまな電子キーボードが発売されます。1981年には、「カシオトーン 701」が登場。鍵盤の上部に配置されたガイドランプが曲の進行にあわせて点灯する「メロディガイド機能」が特徴でした。

現代でも、鍵盤が光って次に弾くべき場所を教えてくれるカシオの「光ナビゲーションキーボード」は人気モデルのひとつですが、カシオトーン 701の「メロディガイド機能」はまさにその原型と言えます。

これがカシオトーン 701。鍵盤の上側サイドに搭載されているLEDランプが光って、次に弾く鍵盤を示してくれる「メロディガイド」機能が特徴です。本体に記憶したメロディをひとつのキーだけで演奏できる「ワンキープレイ」などの機能も備えていました

またカシオトーン 701は、世界初のバーコード楽譜を読み込んで自動演奏する機能が付いているのもポイント。以下の動画は、記念館にあるカシオトーン 701を自動演奏してみたところです。よくよく見ると、鍵盤上のガイドランプが点灯しているのも見えますよ(レア動画!)。

こうやってバーコード楽譜をスキャナーで読み取って、自動演奏します

こうやってバーコード楽譜をスキャナーで読み取って、自動演奏します

また、カシオと言えば1986年に発売されたサンプリングキーボード「SK-1」が、記憶に残っている人も多いかもしれません。人の声や雨のしずくなど、身の回りにある音を自由に録音して音楽にできるキーボードとして、累計売上台数100万台を超えるヒット製品となりました。楽譜が読めない人でも、日常生活の中にあるいろんな音で演奏を楽しめる画期的な製品です。

そのほか、コンポーネントタイプの「シンフォニートロン 8000」や、シンセサイザー・アーティストのパイオニアである冨田勲氏が監修した「コスモシンセサイザー」、16bit対応の高音質サンプリングシンセ「FZ-1」など、記念館では往年のカシオ電子楽器の実物を見ることができます。以下より、写真でさっとご紹介しましょう。

1981年に登場したメモリー機能と自動演奏機能を搭載した小型キーボード「VL-1」。鍵盤がボタンになっていたり、「CAL」スイッチがあったり、ディスプレイ表示も数字だったりして、ところどころ電卓感がある1台

複数のユニットを組み合わせて使うコンポーネントタイプの電子楽器「シンフォニートロン 8000」。2台のキーボードユニット、足鍵盤ユニット、演奏を記憶するメモリーユニット、伴奏ユニットなどで構成されています。1983年に組み合わせ価格587,500円で販売されました

1984年に登場したデジタルシンセ「CZ-101」は、正弦波をひずませることで波形を生み出す「P.D.音源」を採用した製品。P.D.音源で作り出した8種類の基本波形を組み合わせて、33種類の波形を合成できます

1986年登場のサンプリングキーボード「SK-1」。周囲にあるさまざまなものの音を音楽に変えてしまう、クリエイティビティを刺激される1台です。楽器が弾けなくても、鍵盤を押すだけで楽しめることで大ヒット。当時の価格は16,000円で、重量も約1.1kg(乾電池含む)と軽い!

こちらは、あの冨田勲氏のアドバイスにより開発された「コスモシンセサイザー」。サンプリング周波数40kHzに対応し、カシオ製16bitパソコンとの連携機能を備えたデジタルサンプラー「ZZ-1」を搭載します。1986年発売

1987年登場の「FZ-1」。マイクやラインイン入力された音をサンプリングできるシンセです。サンプリングした波形を合成したり逆に再生するなどの加工も可能で、オリジナル波形を作ることも。サンプリングも含めて16bitで信号処理する高音質回路で構成されているのが特徴です

現在は電子ピアノと電子キーボードがメインですが、かつては電子ギター、電子管楽器、電子ドラムなども開発していたそうですよ

カシオ電子楽器のこだわりは今も健在!

そして現在、カシオのリーズナブルな電子キーボードや、自分の部屋に置いて楽しめる“Private Piano”というコンセプトの電子ピアノ「Privia(プリヴィア)」は、ピアノ入門者が手軽に買えるシリーズとして定着しています。また2015年には、ドイツの名門ピアノブランド“ベヒシュタイン”と協業し、30〜40万円台の高級電子ピアノも開発したことで話題になりました。

リーズナブルなモデルからハイグレード機まで、高い技術力で幅広いピアノ・キーボードを開発する姿勢がアグレッシブ! なお、現行製品は記念館に常駐されているわけではないようですが、楽器屋さんや家電量販店の楽器コーナーに行けば体験することができますよ。

カシオの電子ピアノ「Privia」シリーズは、ピアノ入門機として有名です。入門モデルでもしっかりとグランドピアノの弾き心地の再現にこだわった作りになっているのが特徴

2019年には、ハンマーアクション付きの88鍵盤、スピーカー内蔵の電子ピアノとして業界最小クラスの奥行きサイズを誇るスリムな電子ピアノ「Privia PX-S1000」が発売されました。奥行232mmという薄さは、次世代感があります

いっぽうこちらは、ドイツの名門ベヒシュタインとコラボしたハイグレード電子ピアノ「CELVIANO Grand Hybrid」シリーズ。最新モデルは弾き心地の生ピ感がかなり進化していて、実際に弾くと感激します

鍵盤自体が光って、次に弾くべき場所を教えてくれる「光ナビゲーションキーボード」もカシオの人気製品! かつてカシオトーン 701に搭載された「メロディガイド機能」の進化版と言えます

こちらは「CT-X5000」。ベヒシュタインとの協業によって電子ピアノのハイグレード機を作り上げたカシオが、「次は高音質な電子キーボードを作ろう」と企画した製品です

2019年、「カシオトーン」が帰ってきた! 最新モデル「CT-S200」登場

そして2019年、あの「カシオトーン」の名を冠したキーボードが久々に登場したのをご存じですか? それが9月に発売された「カシオトーン CT-S200」。

新世代カシオトーンは、どこにでも持ち運べる手軽さは昔のままに、イマドキ感のあるダンスミュージックを簡単に楽しめて、MIDIキーボードにもなる機能性を持っているのが特徴です。かつてカシオトーンを使用していた経験者も、これから音楽作りを始める若者層も注目の1台です。

真っ赤なボディが特徴的! これが新世代のカシオトーンです

真っ赤なボディが特徴的! これが新世代のカシオトーンです

カシオトーン 201(下)と並べてみるとこんな感じ! サイズ感はほぼ同じですね

カシオトーン 201(下)と並べてみるとこんな感じ! サイズ感はほぼ同じですね

カシオトーン CT-S200は、本体サイズ930(幅)×73(高さ)×256(奥行)mm、重量3.3kgという軽量コンパクト設計で、キーボード上部にグリップを備えており片手で持ち運びやすくなっています。電池駆動に対応し、約16時間の連続駆動が可能です。

内部にはドラム、ベース、シンセサイザーのパターンが豊富に搭載されており、各フレーズを組み合わせて簡単にダンスミュージックを楽しめるモードを搭載。EDM寄りな「今っぽい」ダンスミュージックを鳴らせるのが特徴です。12種類のダンスミュージックボイスも搭載しており、リズムに合わせて押すだけで通常の演奏にアクセントを加えられます。そして背面にはUSB micro Bポートを備え、PCやスマホとUSB接続してMIDIキーボードとしても使えるんです。

ボタン数を少なくしたシンプルなインターフェイス。操作に迷ったときに元の画面に戻せるホームボタンも備えていて、多機能ながら使い勝手にも配慮しています

背面にはUSBポートのほか、ライン入力、ヘッドホン出力、ペダル接続端子を装備

背面にはUSBポートのほか、ライン入力、ヘッドホン出力、ペダル接続端子を装備

内部には、13cm×6cmの楕円スピーカーを搭載。また、ボリュームに連動してイコライザーが最適化される機能を備えており、小音量時も低音から高音までバランスのよい音で演奏できます

重量3.3kgの軽量設計なので、片手で持ち運べます!

重量3.3kgの軽量設計なので、片手で持ち運べます!

なお、カシオトーンというシリーズ名が復活した経緯をカシオ担当者に聞いてみたところ、「カシオトーンというブランドはある時期から使わなくなっていました。それでも1980年当初からの『音楽人口の拡大をめざす』という想いは変わっていません。そこで、2020年に楽器事業40周年を迎えるにあたり、『いつでも、どこでも、いい音で、自分らしく楽しめる』というコンセプトを追求し、改めてカシオトーンブランドを使用することにいたしました」とのことです。

そんなわけで、カシオ楽器の世界をざっと見てきましたが、いかがだったでしょうか? 製品開発の根底にあるのは、「誰でもどこでも音楽と親しめること」という思い。ちなみに価格.comの「シンセサイザー・キーボード」カテゴリーでは、売れ筋ランキングのトップ5がすべてカシオ製品で占められています(2019年10月時点)。約40年前にカシオがめざした「誰でも楽しめる楽器」というコンセプトが、現代ではネット通販でポチりやすいカジュアルさにつながっているということでしょう。その魅力を、「樫尾俊雄発明記念館」や楽器屋さんで体験してみては?

【取材協力】
「樫尾俊雄発明記念館」https://kashiotoshio.org/
〒157-0066 東京都世田谷区成城4-19-10 ※完全予約制

アクセス
[徒歩]
小田急小田原線「成城学園前」駅下車 西口より徒歩約15分
[バス]
「成城学園前」駅西口 バス乗り場(1)(2)より小田急バス
(1)乗りば:調布駅南口行き、狛江営業所行き、狛江駅北口行き
(2)乗りば:つつじヶ丘駅 南口行き
「成城三番」バス停下車徒歩約5分

杉浦 みな子(編集部)

杉浦 みな子(編集部)

オーディオ&ビジュアル専門サイトの記者/編集を経て価格.comマガジンへ。私生活はJ-POP好きで朝ドラウォッチャー、愛読書は月刊ムーで時計はセイコー5……と、なかなか趣味が一貫しないミーハーです。

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