レビュー
“お部屋ギタリスト”に強力な救世主が降臨

コレ実はヘッドホン型のギターアンプなんです! 話題の「WAZA-AIR」徹底レビュー


見た目はワイヤレスヘッドホン! しかしその正体はワイヤレスギターアンプ! BOSSから登場した「WAZA-AIR」は、簡単に紹介するならそういった感じのアイテムです。ここでは、“お部屋ギタリスト”の新たな救世主となってくれるかもしれないこのWAZA-AIRのスゴさを徹底チェック! あと、最後におまけとして「ライブの観客気分を味わえる裏技」も紹介しちゃいます。

今までとはひと味違う、“VR的”なギターアンプ!

というわけで、ひとことで言えば「ワイヤレスでヘッドホン型のギターアンプ」であるWAZA-AIR。この見た目ですが、製品ジャンルは「ヘッドホン」ではなく、あくまでも「ギターアンプ」です。BOSSいわく「Wireless Personal Guitar Amplification System」となっています。ここ大事!

しかもコレ、今までにもあったような「ギターと接続してギターアンプっぽい音を鳴らすヘッドホンギターアンプ」、はたまた「それを内蔵したヘッドホンを単にワイヤレス化しただけのもの」とは別物なんです。

それらのアイテムが「ギターアンプの音が耳元から聴こえる」ものだとしたら、WAZA-AIRが提供してくれるのは、まるで「目の前や背後でギターアンプが鳴っている」かのような、ちょっとVR的なギターアンプ体験なのです。

こちらが「WAZA-AIR」。見ての通りのヘッドホン型ギターアンプです!

こちらが「WAZA-AIR」。見ての通りのヘッドホン型ギターアンプです!

ギター側に装着するトランスミッターとセットで使います

ギター側に装着するトランスミッターとセットで使います

使用中のイメージはこんな感じ! ギターとアンプ(ヘッドホン)がワイヤレス接続なので、すごく身軽

使用中のイメージはこんな感じ! ギターとアンプ(ヘッドホン)がワイヤレス接続なので、すごく身軽

ちなみにBOSSのワイヤレスギターアンプといえば、「KATANA-AIR」という製品もあります。2018年5月に発売されて大きな話題を呼んだ大ヒットモデルで、ギター本体にワイヤレストランスミッターを取り付けると、そこからギターアンプにワイヤレスで音を飛ばせるというものでした。小型軽量で本格的なアンプサウンドが楽しめ、ときにはBluetoothスピーカーとしても活躍。WAZA-AIRとはまた違った利便性を持っています。

これが「KATANA-AIR」。ケーブルを使わない手軽さに、ハンドルを手にしてさっと動かせる程度のコンパクトさと軽さも魅力で大ヒット

それではいよいよ、WAZA-AIRならではの特徴を説明しましょう! 以下の順番で語っていきます。

【1】ヘッドホンなのに目の前や背後にアンプが出現!?
【2】スマホアプリから音作り!(+ベースにも対応!)
【3】ヘッドホンらしい&ギターらしい操作感!
【4】実際に弾いて見ての印象は……
【5】前後逆転の裏技でライブフロアも再現!?

【1】ヘッドホンなのに目の前や背後にアンプが出現!?

ヘッドホン型ならではのWAZA-AIRの使い勝手のよさとして、「音が漏れずに自分にだけ聴こえるので、周りに迷惑にならない」というのはまず大きなポイント。

スピーカーから音を出す普通のアンプだと、迫力のある音色を小さな音量で鳴らすのは難しいものですが、ヘッドホン型のWAZA-AIRならその問題は余裕でクリア! ……というかそもそも関係ありません。昼夜を問わずに自宅でギター演奏できます。

ハウジングにある「技」ロゴのほかは、見た目的には普通のヘッドホンですが……

ハウジングにある「技」ロゴのほかは、見た目的には普通のヘッドホンですが……

そしてここからがただのヘッドホンギターアンプではない、WAZA-AIRならではの魅力です! WAZA-AIRはヘッドホンなのに、自分の目の前や背後でアンプが鳴ります! 背後から音が聞こえてきて驚いて振り返ると、今度は目の前から音が聞こえてきます!?

「お前は何を言ってるんだ?」と思ったかもしれませんが、これはそういうヘッドホンギターアンプなのです。

BOSS独自の立体音響テクノロジーによって、「ユーザーの目の前や背後にアンプキャビネットがあるかのような、そこから音が聴こえてくるかのようなリアルな音場」を生成するんです! しかもヘッドホンにジャイロ・センサーを搭載していて、ユーザーの動きを検知。「ユーザーが右を向けば、アンプの音は左耳側から聞こえてくる」など、部屋の一定の場所に置かれたアンプから音が聞こえてくるかのような方向感までも実現しています。

従来のアンプシミュレーター的な機能の多くって、「アンプの前に立てたマイクで拾った音」をシミュレートするものでしたよね。対してWAZA-AIRは、「アンプの前に立っているユーザーに聞こえる音」が再現されているような感覚です。「仮想現実的な音響空間を生み出すヘッドホンギターアンプ」とでも言えばよいでしょうか?

この「仮想現実的な音響空間」、実際にWAZA-AIRを体験すると一発でわかるのですが、言葉ではなかなか伝わりにくいので、有名アーティストの皆さんがWAZA-AIRを体験した公式動画をご覧ください。そのリアクションや各人のコメントで、スゴさをご想像いただければと思います。

▼音場は3種類のモードから選択可能

この仮想音響空間、演奏環境は以下の3種類から選択できます。なお詳細は後述しますが、WAZA-AIRには専用のスマホアプリ「BOSS TONE STUDIO for WAZA-AIR」が用意されており、このアプリを使ってスムーズに音場モードの設定が行えます。

<サラウンド・モード>
サラウンド・モードは、方向性が固定されているという点では、従来型のアンプシミュレーターにいちばん近いモードです。でも「マイクを通して聴いている音ではなく、目の前にアンプがあるかのような音」というWAZA-AIRらしさは、ほかのモードと共通。

スタジオでアンプを鳴らしているかのような部屋鳴り感(ユーザーが動いてもヘッドホン内の音場は一定)

スタジオでアンプを鳴らしているかのような部屋鳴り感(ユーザーが動いてもヘッドホン内の音場は一定)

くわしくは後述しますが、設定はスマホアプリから行えます。自宅練習感を想定すると響きの種類と量を設定する「AMBIENCE」は控えめの設定がしっくり

<スタティック・モード>
スタティック・モードは、ギタリストとアンプがお互い正面に向かい合っている状態を再現するモードです。「自宅やスタジオでの個人練習で、アンプからの音に向き合っている様子」を再現してくれるモードと考えると想像しやすいかも。自室でギターを弾くときにはこのモードがいちばん自然かもしれません。

目の前にあるアンプが現実の空間と同じように、プレイヤーの頭の動きに合わせて立体的かつリアルな定位で鳴り響く

「GUITAR POSITION」の円にはジャイロ・センサーの検知結果がリアルタイムで表示されています

「GUITAR POSITION」の円にはジャイロ・センサーの検知結果がリアルタイムで表示されています

<ステージ・モード>
ステージ・モードは、自分の背後に置かれたアンプから音が聞こえてくるモードです。……とだけ言われると「それどんな状況?」と不思議に思うかもしれませんが、もちろんこのモードにも狙いがあります。

WAZA-AIRには、Bluetooth接続したスマホ等で再生した音楽をギターの音と重ねて流す機能も用意されているのです。その機能とこのモードを合わせて使うと、「ステージに立っている自分の背後から、自分のギターやバンド(再生中の音楽)の音が聞こえてくる」というわけです。

まるでステージ上でパフォーマンスしているかのように、背後からアンプのサウンドが聞こえてくる音場。スマホの音楽再生も同じく背後から聞こえる

ステージ・モードではアンビエンスも派手めにすると気分が高まります

ステージ・モードではアンビエンスも派手めにすると気分が高まります

【2】スマホアプリから音作り!(+ベースにも対応!)

一般的にギターアンプは、コントロールパネルの物理的なノブやスイッチで音作りや基本的な操作を行います。対してWAZA-AIRは、ヘッドホン型なので、何個ものノブが並ぶコントロールパネルは本体に装備されていません。なので、先ほどの音場感だけでなく、その他の細かな操作も上述のスマホアプリ「BOSS TONE STUDIO for WAZA-AIR」に任せる形となっています。

音作りの順番としては、まずは「アンプ・タイプ」を選んでそのアンプのゲインやイコライジングを設定します。

5つのアンプ・タイプが用意されていて、アンプだけでも完全クリーンから激歪みまで対応(左)。画面上のノブを長押しでテンキーでの数値入力もできます!繊細な音作りに便利!(右)

次にエフェクターの設定ですが、ここは少しクセのある操作感かもしれません。50種類以上のエフェクターが用意されているのですが、同時に利用できるのは3種類まで。なので、その組み合わせが音作りの鍵になります。多くのエフェクトから厳選した組み合わせでベストを目指すというのも、ちょっとゲームっぽくておもしろいですよね。

いちばん左の画像にある3つのスロットにエフェクターをセットしていくのですが……ブースター/歪み系だけでも全部で20種類!

5種類のアンプ・タイプ、50種類を超えるエフェクトの組み合わせでサウンドを作ることができます。「BOSS TONE STUDIO」からダウンロードして完成度の高いプリセットサウンドを増やすことも可能!

まだあまり多くのサウンドは提供されていませんが今後に期待!

まだあまり多くのサウンドは提供されていませんが今後に期待!

さらにWAZA-AIRは、アンプ・タイプ「FLAT/BASS/ACOUSTIC」に設定すれば、ベースを始めとした再生レンジの広い楽器にも対応しています。ベースが本職ではない我らギタリストにとって、ベースアンプをドカンと部屋に置くのはスペース的にも悩ましいわけで。場所を取らないヘッドホン型のWAZA-AIRがベースアンプも兼ねてくれるなんて、実にうれしい!

アンプ・タイプ「FLAT/BASS/ACOUSTIC」……これでベースにも対応!

アンプ・タイプ「FLAT/BASS/ACOUSTIC」……これでベースにも対応!

【3】ヘッドホンらしい&ギターらしい操作感

前述のようにコントロールパネルがないところなど、ギターアンプとしてはかなり思い切った仕様のWAZA-AIR。しかしその操作性は「ヘッドホン型における使いやすさ」を十分に考慮したものとなっています。

たとえばアプリで設定して保存しておいた音色のうち6個は、ヘッドホン側に設定を転送して記憶しておくことが可能です。それを、ヘッドホン本体にあるアップ/ダウン・ボタンで、すぐに呼び出すことができます。マルチエフェクターのフットスイッチのように、音色をさっと切り替えて使い分けられるわけです。

ヘッドホン右側のアップ/ダウン・ボタン。これで、プリセットした音色をすぐに呼び出せます

ヘッドホン右側のアップ/ダウン・ボタン。これで、プリセットした音色をすぐに呼び出せます

つまり「音作りにはアプリが必要だけど、作っておいた音色の切り替えは耳元のボタンですぐに可能」ということ。一瞬での切り替えは難しいですが、ライブで使うアイテムではないので、大きな不便にはならないでしょう。

トランスミッターの電源はプラグ根元のスイッチでONになります(ギター・ジャックに刺すと自動的にそのスイッチが押されて電源オンになる仕組み)。またモーション・センサーがしばらく振動を検知しないとスタンバイになり、再び振動を検知すると起動します(BTSで音声信号の有無でスタンバイに入るように変更もできます)。

ヘッドホン側の電源スイッチも、ボタンを長押しして電源オンとかではなく、操作の感触と視覚の両面からオン/オフを把握しやすいスライドスイッチになっています。頭に装着してから手探りでオンにするのも慣れれば簡単です。

電源スイッチとUSB充電端子はヘッドホン左側。電源系は左側、操作系は右側という振り分けになっています

電源スイッチとUSB充電端子はヘッドホン左側。電源系は左側、操作系は右側という振り分けになっています

さらにボリュームも、+/−のボタンではなく、グイッと回して操作できるロータリーダイヤル式。ギター機材の音量調整はこういう操作感でなくっちゃ!

このボリュームも含めて大体の操作は、右手の親指と人差し指でピックを持ったままでも、残りの指で普通に行えそうな感触でした

細かな操作はスマホアプリに任せるいっぽうで、こういったフィジカルな使い心地にも配慮が行き届いています。さすがBOSS!

コンパクトに丸まったり(左)、平くもなってくれる(右)ので収納性も良好

コンパクトに丸まったり(左)、平くもなってくれる(右)ので収納性も良好

【4】実際に弾いて見ての印象は……

最後に、実際にしばらく使ってみての印象や、ちょっとしたポイントなどを述べておきます。

まず、ワイヤレスで音作りと立体音響による複雑なデジタル処理もあるはずとなれば、気になるのがレイテンシー。弦をヒットしてから音が出るまでのタイムラグの大きさですが……

僕レベルの感覚ではレイテンシーが少ないどころじゃなくてもうレイテンシーを感じられません! 違和感なさすぎ! レイテンシー問題はぜんぜん心配しないでいいと思います。

そしてサウンドクオリティですが、これはもう「安定のBOSS」のひとことです。どのアンプモデル、どのエフェクトも総じてハイクオリティ。そしてやはり、BOSS製品を元にしていると思われるエフェクトの再現度は特に光ります。

たとえば「BLUES DRIVE」のギター側のボリューム操作への追随のなめらかさ、ゲイン全開にすると少しファズっぽい暴れ方をするあたりなどは、いかにもBOSS「BD-2」っぽい挙動です。

セッティングの幅の広さも印象的。たとえばドライブ系エフェクトの歪みの量を調整する「DRIVE」は100を超えて「120」まで上げられます! これって元ネタペダルの限界を超えて歪ませられちゃうってこと?

「METAL ZONE」のDRIVEを120まで上げるという悪魔の所業!

「METAL ZONE」のDRIVEを120まで上げるという悪魔の所業!

ドライブ系エフェクトの設定では「DIRECT MIX」も注目してほしいポイント。エフェクトで歪ませた音に歪ませる前の原音をミックスできます。「METAL ZONE」や「MUFF FUZZ」でグシャグシャに歪ませた音の壁を作りつつ、適度に混ぜた原音でアタック感やコード感も確保! なんて高度な音作りも簡単に実現できてしまう……。

既存ペダルの実物で原音ミックスをやろうとすると別途にミキサーなどが必要ですが、WAZA-AIR内でなら簡単!

既存ペダルの実物で原音ミックスをやろうとすると別途にミキサーなどが必要ですが、WAZA-AIR内でなら簡単!

というように、もう「大体ぜんぶ好印象!」です。強いて言えばアンプの音が聞こえてくる方向が少しズレるときがあるのは気になりましたが、それについてはPDFマニュアルにも以下のように記載されています。ココを気にしておけば大丈夫そう。

「水平に回転する方向以外に頭を動かす(頭を上下に動かす等)と、サウンドの定位がずれることがあります。この場合は、WAZA-AIR本体のアップ/ダウン・ボタンを同時に押すと、定位位置を初期状態に戻すことができます」

「WAZA-AIR本体の電源を入れた直後(約1秒間)は、WAZA-AIR本体を動かさないでください。こうすることで、WAZA-AIR本体に内蔵されたジャイロ・センサーの精度が上がり、定位がずれにくくなります」

とはいえ、曲調によってはヘッドバンギング不可避だったりするかもしれません。その場合、そこは無理に意識しすぎず、「定位がズレたなと感じたらアップ/ダウン同時押し」でその都度対応するのがよいかと思います

あとはギターがストラトキャスターの場合、アームとの干渉はケーブルの場合より少し気になるかも。まあこれもたぶん、慣れたらどうにかなりそうな範疇ではないでしょうか

【5】前後逆転の裏技で、ライブフロアも再現!?

最後に、実用的かはともかくちょっとおもしろい、裏技的活用も紹介しておきましょう。

このWAZA-AIR、もちろん普通にスマホ等で音楽を聴くときに使うBluetoothヘッドホンとしても使えます。そして特に「ステージ・モード」の場合、自分が動けばジャイロ・センサーによってそれが検知されて、音楽が聞こえてくる方向も変わります。アンビエンスの設定で空間の響きも演出されるので、音楽もライブっぽい聞こえ方になるのです!

でもステージ・モードは自分がステージ上でライブをしている雰囲気を再現するものなので、音楽は基本、自分の「背後」から聞こえてきます。それだと観客としてフロア側でライブに参加している気分にはなりにくいですよね。

じゃあ音楽が前から聞こえてくるようにすればいいじゃない!

……というわけでムリヤリな手順は以下のようになります。

1)WAZA-AIRを装着してステージ・モードに設定
2)真後ろを向く
3)WAZA-AIRのアップ/ダウン・ボタンを同時に押す
4)正面を向く
5)音楽が正面から聞こえてくる!

どういうトリックなのかはもうおわかりでしょう。

「2)真後ろを向く」の状態で「3)WAZA-AIRのアップ/ダウン・ボタンを同時に押す」と、ジャイロ・センサーがそこを基準にリセットされ、WAZA-AIRは「ユーザーが実際には後ろを向いている状態を、正面を向いている状態と錯覚する」のです。

でもそのやり方だとステレオの左右が反転しちゃったりしない? というところに気付いた方、鋭い! ですがご安心を。ステージ・モードでの音楽再生は、筆者が聴いた印象では、左右をまとめたモノラルに近い状態で処理・再生されているように感じられます。なので、前後を入れ替えて聴いても左右の反転はほとんど気になりません。

モノラルっぽいというと残念に思うかもですが、バンドの音がひとつの塊のように届いてくる雰囲気も実際のライブハウスっぽくて悪くはないですよ。

まとめ:第一印象通りの機能性で、しかもその期待を超えてくるギターアンプ

さて、最後の裏技は蛇足だったかもしれませんが、本筋のギターアンプとしての魅力が十分に伝わっていれば幸いです。でもそもそもこのアイテム、このルックスと「ワイヤレスでヘッドホン型のギターアンプだよ!」というひとことの説明だけで、もう伝わりまくりですよね? ピンときちゃいますよね?

長々と説明してきましたが、つまりは「あなたが最初にピンときたその直感通りの機能性、そしてその期待を超えてくる実力を備えたギターアンプだよ!」ってことです。

高橋敦

高橋敦

オーディオ界隈ライター。現在はポータブルやデスクトップなどのパーソナルオーディオ分野を中心に、下からグイッとパンしていくためにてさぐりで活動中。

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