特別企画
アラフォーギタリスト青春の憧れと後悔

今も売ってる! 今なら買える! 思い出の1990年代歪みエフェクターたち


ギタリストなら誰しも、ギターを弾き始めたその当時に発売された新製品に胸を躍らせた記憶があるはず。27フレットまであるギターとか、ノブのモーター駆動でセッティング切り替えするプリアンプとか、夢がありましたよね。そんな中でも、ペダルエフェクターは比較的現実的で身近な夢だったのではないでしょうか。

とはいえ学生は財布にも心にも余裕がありません。その高額さに購入を諦めたあのペダル、初心者だったゆえに使いこなせないまま下取りに出してしまったあのペダル……そんな青春の後悔、ありませんか?

そこで今回は筆者と同世代、主に1990年代に青春を過ごしたアラフォーギタリストの皆さまに向けて、当時を薫らせる現行品エフェクター紹介企画「今も売ってる! 1990年代に買い損ねたエフェクターを掘る」をお届けします!

記事ボリュームの関係もあり……歪み系を全力フィーチャーします!

あのころ買えなかったあのペダルを! あのとき手放してしまったあのペダルを! 今こそ手に入れる! そして使いこなす! 今回フィーチャーするのは、

●1990年代に新製品として登場して今もそのままの形で継続販売されているロングセラーモデル、または、
●1990年代に新製品として登場したモデルの後継モデルや派生モデルのうち、
●オーバードライブやファズなどの歪み(ひずみ)系ペダル

現在も新品で購入できるモデルのみの紹介なので、「時代を乗り越えて生き延び、評価されているモデルならお買い物として安心でもあるよね」的なところもポイント。歪み系に絞り込んだのは記事ボリューム的な問題などからです。空間系マニアとかの方、すいません!

当時の印象やそれにまつわる思い出話、現在までの流れ、現在における評価などの情報も混ぜていきますので、皆さまも「うちの軽音サークルでもそんな評判だった」「それはお前のところだけだろ」など、記憶を巡ってみていただければと思います。

BOSS編「その大切さに気づけなかった」

BOSSのコンパクトペダル、略して「ボスコン」。同社のカタログ小冊子「ALL ABOUT EFFECTORS」を眺めて「次に欲しいボスコン」を妄想していた方も多いのでは? しかしその身近さゆえに「いつも近くにいてくれた。だからその大切さに気づけなかった」的な買いそびれもあったりしそうです。まずはそのBOSSの90年代新製品を振り返り、そして取り戻していきましょう。

▼BOSS BD-2 Blues Driver「ブルースに惑わされるな」


BOSS「BD-2 Blues Driver」。個性と汎用性を兼ね備え、いまやオーバードライブの名機の地位を揺るがぬものとしています。ローゲインセッティングでは演奏ニュアンスへの反応性が素晴らしく、クセをつけすぎないブースターとしてほかの歪みペダルやアンプをプッシュするのも得意。

GAINをぐっと上げればディストーション領域まで歪むうえに、ギター側のボリュームを下げれば素直な音色のクランチやクリーンに変化。さらにGAINを振り切ればファズ的な荒さや飽和感まで出してくれます。

というように幅広く汎用的に活躍してくれるペダルなので、当時のあなたにはハマらなかったとしても、今のあなたには当時とは違う部分でハマってくれるかもしれません。「ギター手元のボリュームで音色を操作できるなんて当時は気づかなかったけど、今の自分には魅力的かも」とか。実際、筆者もそうだったのですが、買って売ってを繰り返してしまうユーザーが多いというのも、ユーザーが変化するごとにBD-2の別の一面がフィットするからかも?

なお2014年にはWaza Craftシリーズとして強化された「BD-2W」も発売されているので、そちらも候補に入れてみるのがよいでしょう。

BD-2WはBD-2サウンドをそのまま磨き上げたスタンダードモードに加えて、より現代的なレンジ感を備えたカスタムモードも搭載

ちなみに筆者の周囲、某大学の軽音サークルでは、発売の瞬間から大ヒット!という感じではありませんでした。というのも、うちのサークルには「ブルース」というワードに反応するギタリストがほとんどいなかったんです。実際は幅広く活躍してくれるペダルなのに、名前と色のイメージが強すぎた!

▼BOSS MT-2 Metal Zone「不可侵の聖域」


楽器への悪口の定型句、「誰が弾いても同じ没個性的な音しか出せない」。ロック式トレモロ「Floyd Rose」やローインピーダンスピックアップシステム「EMG」なんかは言われまくってましたよね。実際はそんなことないと思うのですが。

BOSS「MT-2 Metal Zone」も、「コイツさえあればいつでもどこでもメタルサウンド!」という夢を実現した代わりに、「どんなギターどんなアンプで誰が弾いても同じような音」と言われがちなディストーションペダルでした。しかもMT-2の場合、風評ではなく割と本気でその通りだったりします。やたら強烈に効く3バンドEQを搭載し、音作りの幅はとても広いのですが、どんなセッティングにしても強烈なメタルゾーンらしさがあるのです。

ですがそのクセの強さ、今になると懐かしかったりしませんか? そもそもMT-2が悪評どおりのペダルなら、1994年から今日2020年まで販売され続けますか? 強化型MT-2Wまで展開されたりしますか?

MT-2WもBD-2Wと同じく、オリジナルサウンドを磨き上げたスタンダードモードと、現代のシーンを意識したカスタムモードを切り替え可能

いずれにせよ、過剰なまでの個性、突き抜けすぎたメタルサウンドを提示し、セールス的にはヒットを続けながら否定的意見にもさらされ続けたMT-2ですが……。結果MT-2は「すごく売れてるけど他メーカーが迂闊には真似できない聖域」を形成したのです! Tube Screamer系回路採用の「TS系」ペダルは無数にあふれているのに対して、「Metal Zone系」なんてジャンルは聞いたことがありません! あの音が欲しくなったなら昔も今もMT-2しかない!

ちなみにMT-2がハマる音楽ジャンル、実はメタルだけではありません。90年代の「ディストーションギターが欠かせないんだけれどギターの存在感を出しすぎちゃダメなポップス」には、アンプライクな生々しさはないMT-2がぴったり! 筆者のMT-2も相川七瀬さんのコピーバンドで大活躍でした! 90年代J-Popをコピーする機会があったらMT-2をお試しあれ。

▼BOSS OD-3 OverDrive「変わらないまま僕らに問いかける」


90年代に登場したBOSS製ギター用歪ペダル11モデルのうち、2020年でも現行製品なのはたった3モデル。BD-2、MT-2、そしてこのOD-3です。

BOSS「OD-3 OverDrive」。名前も色も「The BOSSのオーバードライブ」ですが、実は回路やサウンドはBOSSオーバードライブの名機「OD-1」&「SD-1」を継承するものではありません。完全新規設計による当時の次世代モデルです。

ギターとしておいしいミドル帯域を生かしたサウンドで地位を確立した名機OD-1&SD-1に対して、OD-3はそれよりはワイドなレンジ感を備え、シングルコイルピックアップとの組み合わせでも適度に太い低域、ハムバッキングピックアップとの組み合わせでも抜けのよい高域など、より幅広い対応力を持つスタンダードなオーバードライブペダルに仕上げられています。

しかしこの超スタンダードなオーバードライブペダルこそ、90年代BOSS歪ペダルの中で位置付けの解釈が特に難しいモデル。名機の仲間入りを果たしているBD-2、揺るがぬ圧倒的個性のMT-2に対して、OD-3は正直、当時も今もギタリスト同士の会話で話題に上ることさえあまりない印象。……なのに、1997年からこの2020年まで販売継続! Waza Craft化なんてされずにそのままの姿のみで!

OD-3は超スタンダードなOD-3のまま、あの日からずっとここにいてくれています。それはなぜでしょう?「OD-3は何も手を加える必要なく現在の音楽シーンにおいても活躍できる、完成されたオーバードライブである」と、BOSSは我々にそう伝えようとしているのです! きっと! たぶん!

あとは受け手である我々次第。あの日には「普通のオーバードライブ」としか感じなかったOD-3。今の我々ならその真の力を引き出せる! ……かもしれません。

KLON編「噓みたいだろ? 30万円なんだぜ……」

90年代に新登場したペダルで最大の伝説といえば「KLON CENTAUR」でしょう。店頭で見かけることはほとんどないうえ、当時にして数万円という価格は、実物を試すことなく発注するにはハードルが高かった。雑誌広告などからオーラ的なものを感じつつも、購入に踏み切ることはできなかった方もいらっしゃるのでは? ちなみに日本のメジャーシーンでは、LUNA SEAのINORANさんの当時のライブシステムに「GOLDのロングテイル」と呼ばれるルックスのCENTAURの姿が見られました。

基本的には普通に「良質なオーバードライブ」ペダルです。しかし、歪ませた音と歪ませる前の原音を適度にミックスして豊かな音色を作り出す「クリーン・ミックス」回路、電源電圧を内部で高めることでダイナミックレンジを広げる「内部昇圧回路」といった、当時としては革新的だった工夫を取り入れたうえに、繊細かつ執拗なチューニングを施されたその良質っぷりは普通ではない! 超絶良質!

その評判は時を経るほどに高まり、設計者本人によるハンドメイドで生産数が限られていたこともあり、定価を超えた高値で取り引きされるようにさえなり……。

そして現在。CENTAURは、限定的な例外を除き、レギュラーラインとしての製造は2009年に終了。合計製造数が8,000台ほどしかないこともあり、市場に出れば20万円とか30万円とかで取り引きされているようです。またCENTAURの再現や改良型を謳ったペダルも各社から多く登場し、「KLONのクローン」→「Klone系」なんて呼ばれるジャンルを形成しています。

▼KLON KTR「一子相伝! CENTAUR真の後継機」


しかし! CENTAURの設計者ビル・フィネガン氏自身により、現代版CENTAURとして再設計されたこちらKLON「KTR」こそ、Klone系ではなく真のKLONペダルと言えるただひとつの存在! サウンドへの影響が大きい要所のほかには、表面実装部品を多用し生産性を高めた設計にまとめられており、「本家KLON」を無理のないお値段で手に入れられます!

筆者は元祖CENTAURを体感したことはないのでそれとの比較は難しいのですが、このKTRを購入して以降、特にブースターとしての優秀さは評判通りと実感。ほかのドライブペダルの前段に置いて後段のドライブペダルをブーストする場合は、ローエンドを適度に削るなど帯域をよい感じにまとめてブースト。音の締まりを維持しつつ、いい感じに歪みを足してくれます。

ほかのドライブペダルの後段において音量を調整したり、歪みやエッジをちょい足しする使い方でも力を発揮。ほかの歪ペダルと仲良くしてくれることがあまりないFuzz Faceとの組み合わせもいける! というのは特に大きなポイントです。

筆者のシステムでもFuzz Faceの後ろでBD-2の手前という、両者を後段&前段から調整できるポジションに組み込んであります

ペダルボードにKTRを入れておけば、ほかの歪ペダルと組み合わせての音作りからギターとペダルとアンプとのマッチングを整えるユーティリティー的な役割まで、幅広い活躍を望めると思います。90年代ノスタルジア関係なしでも普通に優秀!

▼MAXON OD820「歪界の2000万パワーズ! TS+KLON!」


90年代にKLON CENTAURが起こしたオーバードライブ革命にいち早く反応した日本メーカーがMAXONであり、そこで生み出されたのが「Overdrive Pro OD820」です。しかし当時は、筐体の大柄さこそ印象的でしたが、色合いの地味さなどもあってか、筆者の周りではその姿をあまり見かけませんでした……。

でもこのモデル、実は基本コンセプトからしてすごい! 「歪みを生み出す仕組みは同社の超名機OD-808≒Tube ScreamerのTS系回路を継承しつつ、CENTAURからクリーン・ミックスと内部昇圧回路を導入」なんです!

当時から「TS+KLON」なんて売り文句でアピールされていたわけではありませんし、当時にそう言われてもピンとこなかったかと思います。でも今の知識をベースに「TS+KLON」と言われたら、「何それ聞いただけでおいしそうなんですけど!」ってなりますよね。

そこで朗報! OD820、当時のまんま現在も販売されています! お値段も、当時としては少しお高めでしたが、現在となってはほかのハイエンドエフェクターと比べてお手頃! これぞ「今でも買える! 今なら買える!」ペダルです!

ちなみにですが、MAXONにてTS系回路を生み出しこのOD-820の企画にも携わっていたという田村進氏ご自身が、このOD-820をモディファイ! その魅力を現在の観点からさらに引き出したペダルなんてのもあります。PEDAL SHOP CULT「OD-820 Secede from T.S. mod.」です。こちらも要注目!

Electro-Harmonix Big Muff編「ロシアより緑にこめて」

いやBig Muffは90年代の新製品じゃないでしょ? と言われればその通りですが、90年代ってBig Muffの歴史の中でも特異にして特徴的な時期なんです。覚えてませんか? ほかの時期のBig Muffとは見た目からして違う妙なBig Muffしか売られていなかったあの頃を……。

どういうことかというと、Electro-Harmonix社ってなんだかんだで1984年に1度倒産しちゃってます。Big Muffの歴史、生産もそこで1度途絶えちゃっています。しかし不屈の名物社長マイク・マシューズさん、何とロシア生産の新ブランドを立ち上げて復活! わかりやすさ重視で「ロシア」って書きましたけど、正確には当時ギリでまだソ連! 冷戦末期ですよ!

で、まずは1990年に新ブランド「Sovtec」から、中身はBig Muffのまんまだという「Red Army」ペダルを発売。生産期間が短かったので、今となってはレア機です。さて、なぜRed Armyの生産期間が短いかというと、マシューズさんがElectro-Harmonixのブランド名を取り戻すことに成功→早くも1992年に「Electro-Harmonix Big Muff」がロシア製で復活するからです!

なので90年代当時の我々の記憶に残っているのは、主にこの「ロシアンマフ」ことロシア製Big Muff。特にその後期型、戦車的な緑色の筐体を持つ通称「Army Green」の印象が強いかと思います。我々がこの手に取り戻したい青春はそれだ!

しかし2000年にアメリカ製Big Muffが復活したことで、ロシア製Big Muffは2010年代頃までにはフェードアウト。そのものを手に入れるには、ややプレミア価格となってきている中古品を探すしかありません。

USA製の現行フルサイズ「Big Muff Pi」

USA製の現行フルサイズ「Big Muff Pi」

▼Electro-Harmonix Green Russian Big Muff「蘇る緑狼」


ですが2017年、ロシアンマフファンの声に応えて、エレハモが近年積極的に展開しているミニサイズ筐体シリーズに、ロシア製Big Muffのサウンドと雰囲気を継承する「Green Russian Big Muff」がラインアップされました! ロシア製じゃないけど! なおエレハモ基準のミニサイズは他社基準ではいわゆる普通のMXRサイズです。

Big Muff全般のイメージがボワーッ!とジャイアン的に広がる爆音サウンドだとしたら、ロシア製Green Armyはその広がりを少し抑えて、もう少し扱いやすいまとまり方と評されていることが多いかと思います。この復活版はそのサウンドを再現しているので、「Big Muffなのにミニ筐体だしBig Muffなのに扱いやすいサウンド」がポイント。「それマフ的にどうなの?」感はあるかもしれませんが、サイズはともかくサウンドは、当時のそれがそうなんだから90年代的にはそれが正解なんです!

Jim Dunlop Fuzz Face編「お前にはまだ早かったようだな」

いやだからFuzz Faceも90年代の新製品じゃないでしょ? と言われればその通りなのですが、Dunlop社が「Fuzz Face」の商標権を獲得し、あの円盤筐体のFuzz Faceが同社から大々的に展開されるようになったのが1990年代のことなのです。当時も今も我々にとって現行製品であり親しみがある「ジムダンのFuzz Face」は90年代製品!

しかし90年代当時には、Fuzz Faceにはピンとこなかった方も少なくないのではないでしょうか? というのも当時はまだ、本にもネットにも、現在ほど豊富で詳細なエフェクター知識の海は存在してなかったんです。

「Fuzz Faceはギター側のボリュームを絞ったときのクリーンやクランチも魅力」
「Fuzz Faceの前にバッファードバイパスのペダルを置くとまともな音が出ない」

みたいな、現在では常識的な「Fuzz Faceの作法」も広く共有されてはいませんでした。そういった使いこなし方に自力で到達しないことにはFuzz Faceの魅力に気づけなかったんです。それは当時の初心者には容易ではなかった! と、当時の初心者である筆者は強く言い訳をしておきます。

しかしそんな筆者も今やFuzz Face大好きギタリスト。同じようにあの当時はピンとこなかったあなたにも、今こそもういちどFuzz Faceに触れてみてほしい!

▼Jim Dunlop Fuzz Face JDF2&JHF1「マニアのマニアによる……」


Jim Dunlop Fuzz Faceのラインアップの中心にあるのは、2つのフルサイズ製品「JD-F2」と「JH-F1」です。

赤顔の「JDF2 Fuzz Face」はJim Dunlop製Fuzz Face登場初期からの流れを受け継ぐモデル。ビンテージFuzz Faceの初期モデルと同様にゲルマニウムトランジスタを搭載し、「ウォーム」「オーガニック」「ファズでありながらオーバードライブ的でもある」などと評される、ゲルマFuzz Faceのサウンドを再現しています。ちなみに近年のモデルは筐体内のレイアウトがFuzz Face本来のものとは異なっており、メイン基板がフットスイッチにはんだ付けされたりしています。生産性向上のためでしょう。

青顔の2006年発売「JHF1 Jimi Hendrix Fuzz Face」は、その名の通りジミ・ヘンドリクスさん、特にその後期のFuzz Faceサウンドの再現をねらって設計されたモデルです。その時期のビンテージFuzz FaceにならいBC108シリコントランジスタを搭載し、ゲルマ搭載機よりゲイン高めでエッジの効いたトーンに仕上げられています。ジミヘンモデルではありますが、シリコンFuzz Faceの再現モデルとして普遍的な優秀さを備えており、広くおすすめできるモデルです。

なお、JHF1以降のジムダンFuzz Faceの設計は、その時期にダンロップ社に参加したジョージ・トリップス氏の主導によるものとなっています。90年代ブティックペダルブームにおいてWay Hugeブランドを率いたトリップス氏は、彼自身がFuzz Faceマニアとしても知られる人物。ジムダンのFuzz Faceは「マニアのマニアによるマニアのための、プロビルダーの設計技術と大手メーカーの生産技術によるFuzz Face」なのです。

ショップや雑誌とのコラボでトリップス氏自身によるカスタムメイドFuzz Faceが限定販売されることも。ちなみに筆者は「Fuzz Faceにもアルカリ電池」派

その2モデルを中心にジムダンのFuzz Faceラインアップは、「EJF1 Eric Johnson Signature Fuzz」「JBF3 Joe Bonamassa Fuzz Face」といったシグネチャーモデル、利便性を高めたミニサイズ円盤筐体の「FFMx」シリーズと豊富。Fuzz Faceにこんなたくさんの選択肢がある時代が来ようとは……。

ブティックペダルの隆盛と変態ペダルの夜明け

さて、ジョージ・トリップス氏の名前と共に「ブティックペダル」という言葉が出てきましたが、ブティックペダルとは?

明確な定義はありませんが、おおよそ「ペダルデザイナーまたはビルダーと呼ばれる個人の才覚によるすぐれた設計のエフェクトペダルを、主に手作業で組み上げたハンドメイドハイエンドエフェクター」みたいな意味合いです。そういったペダル、ブランドが登場し確立されたのも1990年代のできごとでした。

ですが「ハンドメイドハイエンド」ですから、お値段は高いしそもそも生産数も少ないしで、当時憧れながらも手に入れられなかった人が特に多いジャンルかもしれません。

また、同じく「個人の才覚によるすぐれた設計のエフェクトペダルを、主に手作業で組み込んだハイエンドエフェクター」ではあるのですが「ブティック」という言葉は全く似つかわしくない、あのブランドのあの製品も90年代に登場しています。

最後に、そういったブティック&変態な90年代ペダル&ブランドの現在をチェック!

▼Way Huge「ハイエンドマスプロに進化」

まずは、たびたび名前をあげてきたジョージ・トリップス氏のブランド「Way Huge」。トリップス氏のダンロップ入りにともない、現在はダンロップ傘下のブランドとなっています。

大手メーカーによる工場生産製品となったわけですから、当時のハンドメイドペダルと雰囲気が異なることは否めません。しかしブランドの色合いをいちばん決定づけている要素は、昔も今も「トリップス氏による設計」です。Way Hugeの設計+Jim Dunlopの製造クオリティとお手頃プライスと考えれば、現状は実にお得! 楽器屋さんの店頭で実際に試せる機会も増えています。

トリップス流Klone系、WAY HUGE「SMALLS CONSPIRACY THEORY」

トリップス流Klone系、WAY HUGE「SMALLS CONSPIRACY THEORY」

▼Fulltone FULL-DRIVE「TS系元祖として健在」

Tube Screamer回路をベースに、独自の調整や発展を加えた「TS系」オーバードライブペダルの流れを作った立て役者のひとつは、間違いなくマイク・フラー氏によるFulltone「FULL-DRIVE」です。「トゥルーバイパス」の広まりにも大きな影響力を発揮しました。日本のメジャーシーンでは、たとえば、LUNA SEAのSUGIZOさんのライブシステムに組み込まれていた時期もありましたね。

そのFulltoneブランド、そしてFULL-DRIVEは今も健在! 90年代後半に登場した改良機「FULL-DRIVE 2」のV2モデルと、さらに強化された「FULL-DRIVE 3」が現行ラインアップです。TS系ペダルに無数の選択肢がある現在、FULL-DRIVEでなくてはならない理由は当時ほど強くはありません。しかしだからこそ、今あえて選ぶことには当時より強い意味があるのかも……。

コンパクト化もされて扱いやすい「FULL-DRIVE 2 V2」

コンパクト化もされて扱いやすい「FULL-DRIVE 2 V2」

▼Z.VEX Fuzz Factory「ピギャーッ! ガガガガ!ギギギ……」

「Fuzz Faceを作ろうとしたらうまくいかなくて試行錯誤してたらこれができた」という逸話と共に90年代後半に登場し、ファズの新時代を切り開いてしまった名機、Z.Vex「Fuzz Factory」。

VOLUMEノブとFUZZノブしかないはずのFuzz Faceを元に作られたはずなのに、ノブ数はなぜか5ノブにまで増殖。それらを回してみると音がブチブチ切れたり、ガピーッ!と発振したりするわけですから、当時の印象は「飛び道具」「一発芸」ペダルみたいな感じでしたよね。しかもハンドワイヤード&ハンドペインテッド生産でお値段もなかなかお高い。当時はお財布と心にかなりの余裕がないと手を出せない代物だったかと思います。そんなFuzz Factoryですが……

その評価に変化をもたらした大きなきっかけのひとつは、ここ日本においてはやはり2000年発売の椎名林檎さん「ギブス」における西川進さんのプレイ。サビ前の発振音、ギターソロ等でのきしみまくった音色など、Fuzz Factoryならではの音でありながら飛び道具すぎず「暴力的なのに美しい」と感じさせる名演!

そのようにFuzz Factoryという楽器の新たな可能性が提示されたうえに、現在のFuzz Factoryは以前より手の届きやすい価格、扱いやすいバリエーションを備えています。そのスタンダードモデルは「Vexter Series Fuzz Factory」!

見た感じからちょっとスッキリしています

見た感じからちょっとスッキリしています

元祖Fuzz Factoryの生産コストを引き上げていたハンドワイヤード&ハンドペインテッドという要素を見直し、生産性を高めてお値段を引き下げてくれたモデルです。機能や音色は元祖からそのまま引き継いでいます。

そして「Vexter Series」は生産性向上&価格引き下げモデルの総称となっていて、以下に紹介するバリエーションモデルもすべてそのシリーズです。

●Fat Fuzz Factory:音の太さや厚みを3段階で調整できるスイッチを追加したモデル。
●Vertical Fuzz Factory:ケースの使い方を普通のエフェクターっぽい縦型配置にしてペダルボードに収めやすくしたモデル。
●Silicon Fuzz Factory:Verticalをベースにトランジスタをゲルマニウムからシリコンに変更し、温度に影響されにくい動作の安定性を高めつつ、音色のバリエーションを提供するモデル。

Fuzz Factoryにまでこんなたくさんの選択肢がある時代が来ようとは……

まだまだ掘ろうぜ! 90年代ペダル!

長い記事になってしまい、読み疲れさせてしまったかとも思います。まずはお付き合いありがとうございました。

だがしかし! 歪み系に限定しても、これでもまだ紹介できていないモデルがあるほどなんです。っていうか皆さんそれぞれ「あれが紹介されてないじゃん!」と思い浮かんだペダルがあるのでは? LUNA SEAでSUGIZOさんがお使いになっていたCarl Martin「Hot Drive'n Boost」とかBLANKEY JET CITYの浅井健一さんが今も愛用しているHUMAN GEAR「VIVACE」とか!

ここから先はどうか、皆さんそれぞれが掘り進んでください。いや、みずから掘ることよりも、沼にハマらないことのほうに注意するべきかもしれませんが……。

高橋敦

高橋敦

オーディオ界隈ライター。現在はポータブルやデスクトップなどのパーソナルオーディオ分野を中心に、下からグイッとパンしていくためにてさぐりで活動中。

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