「アイコス(IQOS)」でおなじみのフィリップ モリス ジャパン(以下、PMJ)が、2020年10月から宮城・福岡県内限定で、加熱式タバコ「lil HYBRID(リル ハイブリッド)」を発売した。これまで、加熱式タバコは高温加熱式と低温加熱式に二分されていたが、ここに来て、「約160℃加熱でリキッド付き」という中高温加熱式とでも言うべきデバイスが登場した。へビースモーカーの筆者が、その真価を味わってみる。
「リル ハイブリッド」と専用スティック「MIIX(ミックス)」。本体のメーカー希望小売価格は 6,980円(税込)
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“第5の加熱式タバコ”となるか?「リル ハイブリッド」宮城・福岡県内限定発売
現在、日本国内で流通している加熱式タバコは、約200℃以上で加熱する高温加熱式の「アイコス」「グロー」「プルーム・エス」「パルズ」と、約40℃以下で加熱する低温加熱式「プルーム・テック」シリーズ3種類の、大きく分けて2種類がある。
それに対し、「リル ハイブリッド」の加熱温度は平均約160℃。加熱式タバコの中では中高温域となる温度による加熱に加え、「プルーム・テック・プラス」シリーズが採用しているリキッドカートリッジも備えた、新しい方式の加熱式タバコとなっている。高温加熱式タバコに比べて温度が低くなった分、喫味・蒸気量を補うためにリキッドを採用したということだろう。
「リル ハイブリッド」は、もともと韓国・KT&G製の加熱式タバコデバイスとして国内で発売されていたもので、PMJとグローバルな協働に関する合意を結んだことで、PMJの新製品として販売されることになった。なお、「アイコス」とは互換性がないので、注意したい。
利点は、約300℃以上で加熱をするためにニオイがきつめという「アイコス」の弱点が、「リル ハイブリッド」では約160℃という中高温に抑えることで軽減されているということ。また、加熱ブレードではなく、巻いた紙の周囲から温める周辺加熱方式なのでデバイスが汚れにくく、クリーニングがほぼ不要になっていることだ。
本体サイズは22(幅)×112(高さ)×33(奥行)mmと大きめ。重量はカートリッジを装着しない段階で95gと、それなりにズシっと感じる
専用たばこスティック「ミックス(MIIX)」。「レギュラー」「アイス」「ミックス」の3種類
「アイコス」専用スティックと「ミックス」。長さは「ミックス」のほうが微妙に長いだけなので互換性がありそうに見えるが、「ミックス」はスティックの差込側にフィルター素材の刻みが入っており、互換性はない
「リル ハイブリッド」は使用前にリキッドカートリッジを装着しなければいけない。これは「プルーム・テック・プラス」シリーズと同様だ。違うのは、「リル ハイブリッド」のカートリッジは60円で別売されているということ。
「プルーム・テック・プラス」ユーザーから、「たばこカプセルとカートリッジの減り方に差が出て、カプセルが余るので別売してほしい」という意見があるという話はよく聞くので、正当進化なのだろう。
ただ、加熱式タバコはタダでさえ充電が切れないかやスティックがどれくらい残っているかなど、把握しておかなければならないことが多いので、それに加えてリキッドカートリッジの残量も気にしなければならないというのは、少々めんどうに感じる人も出るかもしれない。
USB Type-Cを採用。付属ACアダプターのサイズは大きめ。フル充電には約100分必要だ
充電パーセンテージを数字で見せてくれるのはすばらしい。このディスプレイは、ほかにリキッド残量や残りの喫煙回数なども教えてくれる
めんどうくさがりの喫煙者の第一の関門、リキッドカートリッジ。あらかじめ本体にセットしておく
スティックを挿入すると、自動で加熱がスタート。喫煙開始状態になると、写真のように残り喫煙回数が表示される
「リル ハイブリッド」は前述のとおり、「アイコス」のような加熱ブレードを搭載せず、巻いた紙の周囲から温める周辺加熱方式を採用している。そのため、直接葉が熱源に接触せず、内部が汚れにくい。さらに、専用スティックの先端にはY字型中空アセテートチューブを装着し、ほぼタバコ葉は密閉状態。使用後の葉カスがこぼれにくくなっている。
よほどのことがない限りメンテナンスフリーというのは、「アイコス」のクリーニングをめんどうと感じていた人にはうれしいはずだ。筆者は味落ち・味うつりが気になるので、まめにウェットタイプのクリーニング綿棒で掃除するが、「リル ハイブリッド」の汚れなさには衝撃を受けた。
左が「アイコス」、右が「リル ハイブリッド」。使用後の差は歴然で、「リル ハイブリッド」の専用スティックは茶色い加熱跡はあるが、葉カスは皆無なうえ、ウェットタイプの綿棒で内部を拭いても汚れが付着しない!
それでは、肝心な喫味を順に確認していきたい。専用たばこスティックは3種類だが、カートリッジは共通で使える。使用時間は14パフもしくは4分20秒のうちの早いほうということで、少し短めだ。なお、加熱後初めて吸う時のみ蒸気が熱めなので、やけどに注意したい。
蒸気は爆煙タイプのベイプ並みに豊富に出る
まずは基本のレギュラー味だ。スティックを装着して加熱、吸ってみるとタバコ感は少ないのだが、スロートキックはしっかりあり、蒸気用に添加されているグリセリン類特有の不思議な甘ったるさを感じる。
味はライトで酸味の少ない穏やかなタバコ味なのだが、蒸気を多く出すVGタイプのグリセリン類をメインに使っているのか、甘酸っぱさが目立ちすぎで、せっかくのシンプルなタバコ葉の味わいを低めている気がする。まずくはないが、惜しい。
価格は20本入りで500円(税込)だが、別売リキッドカートリッジ(60円)も必要だ
パッケージのオレンジイエローからわかるように、トロピカルなフレーバーメンソール。これは一瞬でおいしいと感じた。トロピカルフルーツの風味と強すぎないメンソールが、グリセリン類の不自然な甘味をきっちり隠してくれていて、吸いやすい。
「レギュラー」よりクセが少ない
加熱式タバコの不自然な風味を隠すために進化したメンソール。それが「リル ハイブリッド」でも大活躍だ。この「アイス」はペパーミント系の辛さと冷涼感で一気に甘酸っぱさをかき消すタイプのストレートなメンソールタイプである。鼻も通って、リフレッシュ感も大きい。
甘みのないキリッとした味わい、最初に挑戦するならこの「アイス」からがおすすめだ
本体の充電切れ、リキッドカートリッジ残量、たばこスティックの有無、この3つを把握しておくというのは、一般的な喫煙者にはちょっと高いハードルだと思う。その点で、「リル ハイブリッド」は不利と言えるだろう。
ただ、「アイコス」のクリーニングに苦労している人にとって、ほぼメンテナンスフリーというのはうれしいのではないか。さらに美しいディスプレイは見やすく、残り喫煙回数がわかるのはいい。
少々クセのある「レギュラー」を除いて、味わいは新境地のおいしさである。中高温という絶妙な設定が生み出す、クセのなさと雑味のないシャープなスロートキックは、これまで体験したことがなかった。ただ、持ち運びは少々かさばり、重い。また、現状はデバイス価格が高めで、地域限定だが、テスト販売の側面も大きいと思うので、今後は改善されると予想している。
いずれにせよ、これでまた加熱式タバコの可能性が広がった。ヘビースモーカーの筆者としてはうれしい限りだ。
高温でも低温でもない新しい味!
※本記事は喫煙を推奨するものではありません。ご利用にあたっては、健康リスクなどをご考慮のうえ、注意・マナーを守ってご使用ください。
元「月刊歌謡曲(ゲッカヨ)」編集長。今はめおと編集ユニット「ゲッカヨ編集室」として活動。家電や雑貨など使って楽しい商品のレビューに命がけ!