レビュー

ついにFenderからも出た! 直挿し型のヘッドホンギターアンプ「Mustang Micro」速攻レビュー

エレクトリックギターのサウンドは、ギターアンプを通してこそ! しかしギターアンプのスピーカーから音を出すのは、家族やご近所の耳が気になる……。そんなご自宅ギタリストの強い味方であるギター直挿しスタイルのヘッドホンギターアンプに、ギター界最強ブランドFenderがついに参入です。多機能デジタルアンプ「Mustang」シリーズのサウンドをヘッドホンアンプに凝縮した、「Mustang Micro」が発表されました。

本機は、いくつものアンプタイプとエフェクトの組み合わせによる幅広いサウンドバリエーションを実現しつつ、使いやすさ重視の割り切った操作系を採用。それでいて、Bluetooth経由で受信した楽曲や動画のストリーミングに合わせてプレイできるなど、オンラインレッスンなどに向けた先進機能も装備。シンプルでいて、現代的なニーズにも応えるヘッドホンギターアンプにまとめあげられています。

今回、2021年4月16日の発売に先駆けて、Mustang Microをがっつり使用させていただく機会が得られたので、その魅力を詳しく紹介していきましょう。

Fenderがヘッドホンギターアンプに参入!

ギターアンプのスピーカーから音を出すのって、家族やご近所の耳が気になりますよね。かといってアンプの音量を限界近くまで下げると、スピーカーから聴こえてくるのは、本当は通りのいい声でハキハキしゃべれる人が周りに気を遣って小声でボソボソしゃべっているような、しょぼい音色です。こんなんだったらもうアンプ通さない生音でいいよ!

……なんてのは、ひと昔前の悩み。だって現在は、ギターアンプを通したサウンドを、周りには音を出さずに自分だけで満喫できる、あの便利アイテムがあるから。

そう、ヘッドホン接続型のギターアンプです! なかでも、コンパクトな本体とギターに挿すプラグまでが一体化されていて、シールドケーブルさえも不要でギターに直挿しで使えるスタイルのヘッドホンギターアンプは、最もミニマムでお手軽なギターアンプと言えるでしょう。

その「ギター直挿しヘッドホンギターアンプ」分野に、ついにFenderが参入! それがこちらFender「Mustang Micro」です!

プラスチック筐体で重量をできるだけ軽くしつつ、仕上げがよいので安っぽさはなし!

プラスチック筐体で重量をできるだけ軽くしつつ、仕上げがよいので安っぽさはなし!

可動プラグでさまざまなギターのジャック配置に対応。裏面にはギターを傷付けないためにと思われる2本のパッド

可動プラグでさまざまなギターのジャック配置に対応。裏面にはギターを傷付けないためにと思われる2本のパッド

充電やPC等との接続に使うUSB-C端子。バッテリー駆動は最大6時間です

充電やPC等との接続に使うUSB-C端子。バッテリー駆動は最大6時間です

製品価格は税込表記で1万1000円前後。つまり製品自体はジャスト1万円ほど! お値段もお手頃!

……といっても実は、ギター直挿しヘッドホンギターアンプという分野でこのお値段はハイエンド的な価格帯。これまでのこのタイプの製品は、3,000円から5,000円くらいが主流で、高いものでも7,500円くらいでした。

ですので、このMustang Microは、既存のアンダー5,000円クラスの製品と比べるとかなりぜいたくな機能を備えています。そのぜいたくポイントはこんな感じ!

●12機種のアンプとエフェクトによる幅広いサウンド!
●Bluetoothレシーバー機能で音楽を聴きながら演奏できる!
●USB接続でオーディオインターフェイスとしても使える!

このスタイルのギターアンプとしてはハイエンドな価格帯と書きましたが、でもこの機能でこの価格と考えればやっぱりお手頃! お買い得! と思えますよね。

アンプ12×エフェクト12による多彩なサウンド!

ヘッドホンギターアンプは、言い方を変えれば「ギターアンプシミュレーター搭載ヘッドホンアンプ」です。ギターアンプのスピーカーを鳴らしたサウンドをシミュレーション技術で再現し、ヘッドホンで聴いているのにギターアンプのスピーカーを鳴らしているかのような迫力を感じられるのがポイント。

そしてその「シミュレーション」だからこその強みといえば、ひとつのアンプの中に何種類ものアンプのシミュレーション/モデリングを搭載し、ひとつのアンプでさまざまなサウンドを鳴らせること。ぶっちゃけた言い方をしちゃうと「フェンダーのアンプなのにマーシャルの音も出せちゃう!」的なことです。そのときどきで弾きたい曲に合わせてアンプを取っ替え引っ替えするなんていうプロのレコーディング的なことを、自宅&ヘッドホンで楽しめちゃいます。

Mustang Microの場合は、そのアンプの種類が12モデル搭載されています!

搭載されているアンプとエフェクトの種類とそれを示すLED色をまとめてあるカードが付属

搭載されているアンプとエフェクトの種類とそれを示すLED色をまとめてあるカードが付属

なお、先ほどあげた5,000円未満クラスの製品だと、ひとつの製品につきひとつのアンプのシミュレーションしか搭載されていません。こっちのヘッドホンギターアンプはフェンダーサウンドでこっちのはマーシャルサウンド、みたいな形です。その分お安いので買い集めて使い分けたり、コレクション的な楽しみ方もできたりしますが、「さまざまなサウンドをこれ1台で!」的な便利さや楽しさは得られません。

加えてMustang Microは、エフェクト機能も充実。音に響きを加える「リバーブ」を軸に、コーラスなどのモジュレーションまたはディレイを合わせた空間系コンビネーションエフェクトを12種類も搭載しています。

これらのエフェクトとアンプの組み合わせで、たとえば、「フェンダーアンプにコーラスを組み合わせたさわやかカッティングサウンド」「マーシャルアンプにロータリースピーカーを組み合わせたジミヘンサウンド」みたいなことができるわけです。

またギタリストも、自宅ではたまにベース「も」弾いたりすることはありますよね。でも「も」程度のためにベースアンプを用意しておくのは費用的にも場所的にも負担。しかし、このMustang Microがあればその問題も解決! アンプの種類で「Studio Preamp」を選べば、いわゆる「DI通してコンソールに挿したライン録り」的なクリーンでいてナチュラルなベーストーンを得られます。

Mustang Bassとの組み合わせ。整備中で弦を張っていない状態ですが……

Mustang Bassとの組み合わせ。整備中で弦を張っていない状態ですが……

チューナー機能は搭載されていないので、クリップ式チューナーとの組み合わせがおすすめです

チューナー機能は搭載されていないので、クリップ式チューナーとの組み合わせがおすすめです

マゼンタとラズベリーのような同系色は見分けにくいので、レッド! ブルー! みたく明快な色を目印に、そこからの「−+」で探すのがよいかも

搭載されるアンプとエフェクトはそれぞれに用意されている「−+」ボタンで切り替え、現在セレクトされているアンプ/エフェクトはLEDの点灯色で示されます。マゼンタとラズベリーのような同系色は見分けにくいので、レッド! ブルー! みたく明快な色を目印に、そこからの「−+」で探すのがよいかも

さて……製品に添付されている説明カードには、手元で確認しやすいカードサイズにまとめるためか、各アンプとエフェクトの詳しい説明は記載されていません。いっぽう、同社サポートページからPDF形式でダウンロードできる説明書は、LEDの点灯色が文字だけでしか説明されていないので、ビジュアル的に少しわかりにくいかもしれません。

付属カード。慣れればたぶんこれがいちばん便利なのでなくさないように!

付属カード。慣れればたぶんこれがいちばん便利なのでなくさないように!

PDF説明書の「アンプモデルの選択」ページはLED点灯色が文字のみによる説明

PDF説明書の「アンプモデルの選択」ページはLED点灯色が文字のみによる説明

なので、アンプとエフェクトを以下の一覧表にまとめてみました!

グレイでの色分けはFenderによるものではなく、こちらでの補足です

グレイでの色分けはFenderによるものではなく、こちらでの補足です

操作はシンプル! その代わり、歪みの深さは調整できない?

さて、アンプとエフェクトの選択方法は先ほど紹介しましたが、改めてこのアイテムの基本的な操作方法をまとめておきましょう。

本体をギターのジャックに挿し込み、本体ジャックにヘッドホンのプラグを挿し込みます

本体をギターのジャックに挿し込み、本体ジャックにヘッドホンのプラグを挿し込みます

電源をスライドしてオンにします(以下、見えやすいようにギターから外した状態での撮影ですが、実際はもちろん装着したまま進めます)

電源をスライドしてオンにします(以下、見えやすいようにギターから外した状態での撮影ですが、実際はもちろん装着したまま進めます)

マスターボリュームホイールで音量を調整。ヘッドホンを装着する前は最小に下げておくと耳の安全につながります

マスターボリュームホイールで音量を調整。ヘッドホンを装着する前は最小に下げておくと耳の安全につながります

AMPの「−+」ボタンでアンプ機種を切り替え、EQの「−+」ボタンで音色の明るさを調整

AMPの「−+」ボタンでアンプ機種を切り替え、EQの「−+」ボタンで音色の明るさを調整

EFFECTSの「−+」ボタンでエフェクトを切り替え、MODIFYの「−+」ボタンでエフェクトの強さを調整

EFFECTSの「−+」ボタンでエフェクトを切り替え、MODIFYの「−+」ボタンでエフェクトの強さを調整

……ん? お気づきの人もいらっしゃることでしょう。サウンドの歪みの深さを調整する「GAIN」的なホイールやボタンがありません!

実はこのMustang Micro、最小限のボタンによる使いやすいシンプルな操作感が実現されている代わりに、アンプの歪み具合は調整できないのです。マスターボリュームホイールはギターアンプのボリュームノブとは違い、歪み具合には関係せず、純粋に音量だけを調整します。

アンプのおいしいところを引き出す決め打ちセッティング

え? 歪みの深さを調整できないってことはクリーントーンしか出せないの!? ……なんて驚かせてしまっていたらすいません。そんなことはもちろんありません。先ほどの一覧表をもう1度眺めてみてください。

アンプタイプという列で「クリーン/クランチ/ハイゲイン」という区分けがしてありますよね? これはそれぞれのアンプが、

●クリーン:ほぼ歪んでいないクリーントーン
●クランチ:ある程度歪んでいるドライブトーン
●ハイゲイン:メタルもいけるくらい歪んだドライブトーン

どのゲインレベルにセッティングした状態のシミュレーションであるかを示しています。

たとえば「'65 Deluxe」はクリーントーンにセッティングされたFender Deluxe(Reverb)アンプのシミュレート、「'70s British」はナチュラルにドライブした状態のいわゆるプレキシ期のMarshal Super Leadアンプのシミュレート、「Uber」はゲインをがっつり上げたBogner Uber-schallアンプリードchのシミュレート、というわけです。

ですから本機におけるゲインセッティングは、クリーントーンで弾きたければクリーンタイプ、ドライブトーンで弾きたければクランチタイプかハイゲインタイプのアンプを選ぶというように、アンプ選びによってゲインも選ぶという形になります。

参考までに、クリーン代表として「'65 Deluxe」、ハイゲイン代表として「Metal 2000(EVH 5150タイプ)」のサウンドを録音してみました(以下の動画参照)。使用ギターは「Fender Road Worn '60s Stratocaster」で、ピックアップはブリッジ側のシングルコイル。後述のオーディオインターフェイス機能でMacの「GarageBand」に録音し、GarageBand側での加工はなしの、Mustang Microの素の音です。もちろんリバーブもMustang Micro側のリバーブ。

Road Worn '60s Stratocasterに搭載されているピックアップは、純粋なビンテージ系ピックアップに出力をちょい足しした感じの「Tex-Mex Pickups」。それと「Metal 2000」アンプの組み合わせなら、シングルコイルでもハードロックくらいまで対応できる歪みを得られます。ハイポジションのロングトーンが倍音に裏返っていく感じも気持ちいい!

とはいえ、アンプごとに歪み具合が固定されているのは、やはり不便そうだと感じるかもしれませんが……でもこれって「すべてのアンプがそのアンプのいちばんおいしいゲインで音作りしてある」ということでもあったりします。アンプを選ぶだけでそのアンプのベターなセッティングが再現され、ベターなサウンドが用意されるわけです。

おかげで実機を使ったことのないアンプのシミュレーションでも、そのアンプを選ぶだけでいきなり、そのアンプの実力を発揮できるセッティングで弾き始めることができます。「さまざまなアンプを弾き比べ、使い分ける楽しさを手軽に味わえる」という視点からは、なるほどこういう決め打ちサウンドもありかもしれませんね。

Bluetoothレシーバー機能でオンラインレッスンも快適に

そして続いてはこちら。「Bluetoothレシーバー機能で音楽を聴きながら演奏できる!」です。シンプルな活用法としては、まず「曲を聴きながらそれに合わせて演奏する/耳コピする」あたりが思い浮かびますよね。もちろんその通りの使い方ができます。

電源スイッチをBluetoothマーク側に2秒ほぼ押し込み、LEDが青に点灯するのを確認

電源スイッチをBluetoothマーク側に2秒ほぼ押し込み、LEDが青に点灯するのを確認

あとはスマホなどのプレイヤー側でペアリング。ワイヤレスイヤホンのペアリングと同じ要領です

あとはスマホなどのプレイヤー側でペアリング。ワイヤレスイヤホンのペアリングと同じ要領です

しかしFenderが特に強く意図している用途は「オンラインレッスン」での活用のようです。説明書にも「同期されたオーディオやビデオを使用して、オンライン指導を活用し練習できます」との記載があります。

というのもFenderは、「ギター業界を今後も継続発展させていくにはギター人口を増やしていかねばならず、そのためには初期で挫折してしまう人を減らすことが重要。そこで大きな役割を期待できるのはオンラインレッスン」といった考えを持っています。その考えに基づき、同社みずから「Fender Play」というオンラインレッスンサービスを提供していたりもするほどです。

「Fender Play」。いわゆるサブスクサービスとして提供されています(https://www.fender.com/play)

「Fender Play」。いわゆるサブスクサービスとして提供されています(https://www.fender.com/play)

このMustang Microはおそらく、その「オンラインレッスン環境の快適化」という役割も持たされた製品。これを使えばギターとギターアンプ、パソコンとヘッドホンの間のケーブル接続をなくせて、プレイヤーはより身軽にオンラインレッスンを受けられるというわけです。

レコーディングツールとしてもお手軽に活躍!

そして最後に紹介する機能は、「USB接続でオーディオインターフェイスとしても使える!」です。

ドライバーのインストール等はなく、USBケーブルで接続しただけでMacのGarageBandに認識されました

ドライバーのインストール等はなく、USBケーブルで接続しただけでMacのGarageBandに認識されました

まず、もちろんそもそも「オーディオインターフェイスを別途に買い足さなくてもパソコン等でギターを録音できる!」というだけで便利ですよね。加えて、ヘッドホンギターアンプとしての機能と、オーディオインターフェイスとしてパソコンやタブレットに接続してレコーディングできる機能が一体化されていることならではのメリットもあります。

それは、普段の練習とかで弾いている・聴いているサウンドをそのままパソコン等に送り出してレコーディングできることです。

たとえば「普段の練習はギターアンプ、レコーディングでは別途のオーディオインターフェイスを通してパソコンに接続して、DAWに搭載されているアンプシミュレーターで音作り」の形だと、普段弾いているいちばん耳慣れていて弾きやすい音と、レコーディングでの音にズレが生じてしまいます。

対してMustang Microなら、いつもさっとヘッドホンを装着して気軽に弾いているその音をそのままパソコン等に送り出して録音できるのです。これなら録音時でも違和感や余計な気負いが生まれにくく、いいテイクが録れそうな気がしませんか?

なおDAW側のアンプシミュレーターを使って音を細かく作り込みたい場合などは、Mustang Micro側のアンプの種類をライン出力的なニュアンスの「Studio Preamp」にしておくのがよいかと思います。

高機能と使い勝手の絶妙なバランス!

アンプの種類の多さなど機能は盛りだくさんで、もちろんサウンドも「さすがFender!」と納得のクオリティ。あえての割り切った操作性のおかげで音作りに迷うこともありません。今後ヘッドホンギターアンプの購入を検討する自宅ギタリストにとって、必ず候補に上がってくるであろうアイテムの登場です!

高橋敦

高橋敦

オーディオ界隈ライター。現在はポータブルやデスクトップなどのパーソナルオーディオ分野を中心に、下からグイッとパンしていくためにてさぐりで活動中。

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