新傑作ウォッチで令和を刻む
第12回/シチズン「シチズン Series8 870 メカニカル」

もう磁気は怖くない! 「シチズン シリーズエイト」の新・機械式ウォッチをレビュー

2021年3月、長らく光発電「エコ・ドライブ」製品に注力してきたシチズン時計が、機械式ウォッチの市場に本格参入することを表明しました。

それにともない、「エコ・ドライブ」搭載のラインアップで展開され、人気を博してきた「シチズン Series8(シリーズエイト)」も、新時代にふさわしい機能とデザインを兼備する機械式コレクションに生まれ変わり、2021年8月に再デビューすることになりました。

「これぞ令和時代の傑作!」と讃えたい要注目ウォッチを取り上げ、深掘りする本連載。今回は、国産時計の雄であるシチズン時計が、時計界随一の実力を誇る最先端技術の追求はそのままに、あえて古典的な機械式ウォッチに回帰し、満を持して投入するこの機械式モデル「シチズン シリーズエイト 870 メカニカル」をレビューしていきます。

「シチズン シリーズエイト」ブランドを代表するモデル「870 メカニカル」の黒文字盤タイプ「NA1004-87E」。2021年8月発売予定。公式サイト価格は、220,000円(税込)

「シチズン シリーズエイト」ブランドを代表するモデル「870 メカニカル」の黒文字盤タイプ「NA1004-87E」。2021年8月発売予定。公式サイト価格は、220,000円(税込)

11年ぶり新設計の自動巻きムーブメントが話題に!

「シチズンはハイテクウォッチのブランド」――。

時計好きの間では、この認識が強いかと思います。これは、シチズン時計が今日まで、1976年に開発した世界初のアナログ式光発電時計テクノロジー「エコ・ドライブ」に象徴される最先端技術を、積極的に推進してきたことが理由にあげられます。しかしいっぽうで、他社に供給している「ミヨタ」ムーブメントを含め、実は機械式ムーブメントと機械式時計の製造を連綿と続けてきています。

そのシチズン時計が市場のニーズを受け、30年ぶりの自社製機械式ムーブメント「Cal.0910」を開発したのは2010年のこと。これは、ヒゲゼンマイまで自社製造という気合いの入ったものでした。そしてその2年後、スイスの名門ムーブメント製造会社ラ・ジュー・ペレ社を傘下に収めたことで、シチズン時計の設計・製造技術と、ラ・ジュー・ペレ社の高度な装飾技術を融合させることができるようになりました。今回の「シチズン シリーズエイト 870 メカニカル」には、ラ・ジュー・ペレ社は関わってはいませんが、シチズン時計が機械式ウォッチ市場へ本格復帰した背景には、ラ・ジュー・ペレ社との連携体制が整備されたことも理由のひとつと言えるかもしれません。

さて、「Cal.0910」登場から11年の時を経て、このたび開発された自動巻きムーブメントのうち、クロノメーター規格や「ISO3159」を凌ぐ精度を実現した「Cal.0200」は、シチズン時計の高い技術の粋を集結させた「ザ・シチズン(The CITIZEN)」の3モデルに搭載されます。

●「ザ・シチズン」の詳細はこちら!
11年ぶりに新・機械式ムーブメント発表! シチズン2021年春夏モデルまとめ
https://kakakumag.com/hobby/?id=16656

本稿で紹介する「シチズン シリーズエイト 870 メカニカル」は、その「ザ・シチズン」3モデルと同じく、8月にリリースされるモデルのひとつ。こちらには、自社製の新しい自動巻きムーブメント「Cal.0950」が搭載されます。この新ムーブメントについては、後述します。

前身ブランドのシンプルさと実用性をブラッシュアップ!

「シチズン シリーズエイト」は、2008年11月から展開されてきた人気コレクション。元々は、「エコ・ドライブ」を搭載するモデルを揃えていましたが、今回のラインアップは、それを自動巻き式に“転生”させたものととらえてよいでしょう。ちなみに、「Series8」の「8」は、「∞(無限)」を意味しており、シチズン時計のモノ作りに対する無限の可能性を込めたシリーズであることを示唆しています。

旧「シチズン シリーズエイト」のデザインテーマは、「引き算の美意識」。要は、高級感ある仕上げは生かしつつも過剰な装飾や機能は廃し、シンプルなデザインと実用性に徹したモデルで構成されたコレクションでした。

そして、このテーマは新作にもしっかりと継承されており、そのうえで、より躍動感あるモダン・スポーティーなデザインと、機械式ながらも現代のライフスタイルにマッチしたスペックを備えたコレクションにブラッシュアップされているわけなのです。

今回の「シチズン シリーズエイト」には、「870 メカニカル」が3タイプ、「830 メカニカル」が2タイプ、「831 メカニカル」が3タイプの計8タイプがラインアップされるのですが、本企画では最上位機である「シチズン シリーズエイト 870 メカニカル」から、精悍かつドレッシーな黒文字盤タイプをフィーチャーしてみました。

デザインに直線を巧みに取り入れたシンプリシティ

太い針&インデックスで個性を主張しつつ、高い視認性を確保

太い針&インデックスで個性を主張しつつ、高い視認性を確保

それでは、「シチズン シリーズエイト 870 メカニカル」の文字盤から見ていきましょう。

本モデルは、日付表示付きの3針式。6時位置には、「Series8」のロゴとともに、「AUTOMATIC」の記載があり、自動巻きウォッチであることを表明しています。

注目すべきは、時・分針、各インデックス、日付表示窓の縁取りのいずれもがほどよく太く、これらが文字盤の漆黒と明瞭なコントラストを成して、高い視認性をもたらしている点でしょう。しかも、この“ほどよく太い”という点が絶妙。というのも、太過ぎると視認性は高まるものの、文字盤が無骨な印象に仕上がってしまうのです。しかし「シチズン シリーズエイト」では、各パーツを適度な太さにすることで、スポーティーでありながら洗練さを感じさせる表情に仕上げています。先述したとおり、本シリーズはモダン・スポーティーを志向したコレクションであるわけですが、それは文字盤からもうかがうことができるのです。

また、その文字盤を取り囲むベゼルのシルバー×グレーのバイカラーもまた、非常に印象的です。しかも、ことにグレー部分は、光が当たる角度によって繊細、かつ大胆に濃淡を変化させ、時計の表情を豊かに見せています。

鏡面とヘアラインを併用することで、より立体感あるたたずまいに

鏡面とヘアラインを併用することで、より立体感あるたたずまいに

ケースとブレスレットに目を移してみますと、それらが直線とシンプルな面で構成されていることがわかります。1970年代には、時計を始め、あらゆるプロダクトにおいて直線的デザインがもてはやされたものですが、本モデルが“今”を実感させる洗練さを持ちながらも、かすかに1970年代風をまとっているように見えるのは、そのせいかもしれません。

さらに、このヘアライン仕上げをベースにしつつ、控えめながら鏡面(ミラー)仕上げを組み合わせたことで、その直線と立体感はより強調されています。これにより、本モデル全体のたたずまいには、シャープでスタイリッシュな印象があり、それがとても新鮮なのです。

これからの機械式に求められる強化耐磁性を実現!

「第2種耐磁」性能を搭載しており、高い精度を維持する「Cal.0950」

「第2種耐磁」性能を搭載しており、高い精度を維持する「Cal.0950」

ところで、「シチズン シリーズエイト 870 メカニカル」の核心を問われたとしたら、それはやはりシチズン時計が独自に開発した自動巻きムーブメント「Cal.0950」にあると言えるでしょう。振動数が毎時28,800回、平均日差が-5秒〜+10秒という高精度を実現しており、土曜の朝に目いっぱい巻き上げておけば(手巻きも可能)、そのまま放置しても月曜の朝まで動いていてくれる約50時間の最大駆動時間も装備しています。それでいて、厚みがわずか4.1mmという薄さが自慢のムーブメントでもあるのです。

さらに特筆すべきが、強化耐磁性能「第2種耐磁」を備えている点です。これは、日本工業規格の「JISB7024耐磁携帯時計一種類および性能」に規定されたJIS保証水準16,000A/mをクリアしたもので、磁気に1cmまで近づけても、ほとんどの場合、精度が維持できる耐磁性を備えていることを意味しています。

スマートフォンやPC、各種家電など、現代社会ではあらゆるところに磁力が潜んでいます。機械式時計の場合、そうした磁気を受けると内部のパーツが磁化され、それが機械式ムーブメントの心臓部であるテンプの動作に悪影響をもたらし、結果、極端な進みが発生するなど、精度に支障をきたす可能性があるのです。こうなった場合、正常な状態に戻すために時計店などに依頼し、脱磁(磁気抜き)してもらわなくてはなりません。

このことから、今後、磁界環境がさらに拡大・深化するであろう現代社会において、「Cal.0950」の強化耐磁性能は、非常に現実的なスペックであると言えるでしょう。

スリム設計でスーツの手元にも絶妙にマッチ!

薄型ムーブメントの搭載により、スリムなケース厚10.9mmを実現

薄型ムーブメントの搭載により、スリムなケース厚10.9mmを実現

先述したとおり、「Cal.0950」は自動巻きでありながら、厚さはわずか4.1mm。本モデル「870 メカニカル」では、この薄型ムーブメントを搭載したことでケース厚を10.9mmに抑えることができ、見た目にソリッドで、かつ装着性の高いスリムフォルムが実現されています。ちなみに、ベゼルは2体構造で、風防はフラットタイプです。

大人の手元をアクティブ、かつ品よく見せる秀逸なデザイン

大人の手元をアクティブ、かつ品よく見せる秀逸なデザイン

本モデルは、スポーティーでありながら、品よく端正なデザインなので、合わせる服を選ばず、スーツからきれいめカジュアル、はてはアウトドアまで、さまざまなスタイルに違和感なくマッチ。しかも、シーンや年齢を問うこともなく、飽きの来ないデザインもあり、“一生時計”として末永く使うことができそうです。ちなみに、太めの時・分針やインデックスと、両面無反射コーティングのサファイアガラス風防があいまって、文字盤の視認性も上々です。

「870」黒文字盤と同時発売の7タイプにも注目!

「シチズン シリーズエイト」には、上記で紹介した「870 メカニカル」黒文字盤タイプを含む3モデル計8タイプがラインアップされているのは、先述したとおり。ここでは残りの、「870 メカニカル」のカラーバリエーション2タイプ、中級モデルの「830 メカニカル」2タイプ、普及モデルの「831 メカニカル」3タイプを一挙に紹介します。「870 メカニカル」黒文字盤タイプとともに、これらの中からぜひ自分好みの1本をお探しください。なお、全タイプいずれも2021年8月の発売予定です。

ホワイト文字盤×ブレスレットの「シチズン シリーズエイト 870 メカニカル NA1000-88A」は、精悍で端正な黒文字盤タイプとは対照的なエレガントな印象。公式サイト価格は、220,000円(税込)

ホワイト文字盤×ブレスレットの「シチズン シリーズエイト 870 メカニカル NA1000-88A」は、精悍で端正な黒文字盤タイプとは対照的なエレガントな印象。公式サイト価格は、220,000円(税込)

ブルー文字盤×同系色のウレタンバンドタイプの「シチズン シリーズエイト 870 メカニカル NA1005-17L」。一転して、こちらはさわやかでスポーティーな1本。公式サイト価格は、209,000円(税込)

ブルー文字盤×同系色のウレタンバンドタイプの「シチズン シリーズエイト 870 メカニカル NA1005-17L」。一転して、こちらはさわやかでスポーティーな1本。公式サイト価格は、209,000円(税込)

金属板の上に白蝶貝をのせ、さらに格子状の金属板を重ね合わせたことで繊細、かつ立体感のある表情を見せる3層構造文字盤を搭載する「シチズン シリーズエイト 830 メカニカル」。「Cal.0950」採用、第2種耐磁対応、10気圧防水などは「870 メカニカル」と同様だ。ケース径は40mm、ケース厚は11.7mm。写真は、ステンレススチール無垢ケース採用の「NA1010-84X」。公式サイト価格は、198,000円(税込)

金属板の上に白蝶貝をのせ、さらに格子状の金属板を重ね合わせたことで繊細、かつ立体感のある表情を見せる3層構造文字盤を搭載する「シチズン シリーズエイト 830 メカニカル」。「Cal.0950」採用、第2種耐磁対応、10気圧防水などは「870 メカニカル」と同様だ。ケース径は40mm、ケース厚は11.7mm。写真は、ステンレススチール無垢ケース採用の「NA1010-84X」。公式サイト価格は、198,000円(税込)

「シチズン シリーズエイト 830 メカニカル」からもうひとつ。こちらは、モダンな印象のグレー仕上げのステンレススチールケースを採用した「NA1015-81Z」。公式サイト価格は、209,000円(税込)

「シチズン シリーズエイト 830 メカニカル」からもうひとつ。こちらは、モダンな印象のグレー仕上げのステンレススチールケースを採用した「NA1015-81Z」。公式サイト価格は、209,000円(税込)

お手頃プライスの「シチズン シリーズエイト 831 メカニカル」では、新開発ムーブメント「Cal.9051」を搭載。「Cal.0950」の下位ムーブメントながら、平均日差−10〜+20秒の精度と、駆動時間約42時間(最大巻き上げ時)を誇り、第2種耐磁にも対応します。10気圧防水。ケース径40mm、ケース厚10.1mm。 写真は、黒文字盤の「NB6010-81E」。公式サイト価格は、132,000円(税込)

お手頃プライスの「シチズン シリーズエイト 831 メカニカル」では、新開発ムーブメント「Cal.9051」を搭載。「Cal.0950」の下位ムーブメントながら、平均日差−10〜+20秒の精度と、駆動時間約42時間(最大巻き上げ時)を誇り、第2種耐磁にも対応します。10気圧防水。ケース径40mm、ケース厚10.1mm。 写真は、黒文字盤の「NB6010-81E」。公式サイト価格は、132,000円(税込)

「シチズン シリーズエイト 831 メカニカル」の「NB6010-81A」は、清涼な印象の白文字盤タイプ。公式サイト価格は、132,000円(税込)

「シチズン シリーズエイト 831 メカニカル」の「NB6010-81A」は、清涼な印象の白文字盤タイプ。公式サイト価格は、132,000円(税込)

「シチズン シリーズエイト 831 メカニカル」の「NB6012-18L」は、ブルー文字盤×ローズゴールドカラーケース×ブルーバンド(カーフ×ウレタン製)の組み合わせにより、ノーブルなたたずまいに。公式サイト価格は、132,000円(税込)

「シチズン シリーズエイト 831 メカニカル」の「NB6012-18L」は、ブルー文字盤×ローズゴールドカラーケース×ブルーバンド(カーフ×ウレタン製)の組み合わせにより、ノーブルなたたずまいに。公式サイト価格は、132,000円(税込)

【まとめ】 デジタル社会における機械式時計の理想形

私たち現代人は、目に見えずとも磁気を浴びながら、日々暮らしています。磁気は、磁性金属で構成される機械式ムーブメントにとっては大敵であるのは明らか。たとえ、どんなに高い精度を誇るムーブメントでも、帯電すればその精度を発揮することはできないのです。

そう考えると、耐磁性能が強化された「Cal.0950」と「Cal.9051」を搭載する「シチズン シリーズエイト」は、現代社会において機械式ウォッチのあるべき姿を示す存在。と同時に、これが先述した同シリーズのテーマである「現代のライフスタイルにマッチしたスペック」の、最も明瞭な顕(あらわ)れでもあります。

【SPEC】
「シチズン シリーズエイト 870 メカニカル」
●駆動方式:自動巻き(手巻き付き)
●ムーブメント:Cal.0950
●精度:平均日差−5秒〜+10秒
●駆動期間:約50時間持続(最大巻き上げ時)
●防水性能:10気圧
●表示:時・分、秒、日付
●ガラス材質:サファイアガラス(両面無反射コーティング)
●ケース材質:ステンレススチール
●ケース径:40.8mm
●ケース厚:10.9mm
●バンド素材:ステンレススチール(NA1004-87E、NA1000-88A)、ウレタン(NA1005-17L)
●発売日:2021年8月(予定)

●写真/篠田麦也(篠田写真事務所)

山田純貴

山田純貴

東京生まれ。幼少期からの雑誌好きが高じ、雑誌編集者としてキャリアをスタート。以後は編集&ライターとしてウェブや月刊誌にて、主に時計、靴、鞄、革小物などのオトコがコダワリを持てるアイテムに関する情報発信に勤しむ。

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