新傑作ウォッチで令和を刻む
第15回/オリエントスター「スポーツコレクション ダイバー1964」

初の東京五輪の年に誕生した「ダイバーの名機」が復刻! レトロ調ダイバーは普遍の美を宿す

初めての「東京オリンピック」が開催された1964年当時、日本市場においてダイバーズウォッチは一般的ではなく、その市場は未開拓の状態でした。そんな時代にオリエントが発表したのが、今では伝説的な存在とされる、同ブランド初のダイバーズウォッチ「オリンピアカレンダーダイバー」でした。この時計は、国産ダイバーズでは時代を先取りした製品だっただけではなく、当時としては格段に洗練されたデザインが大きな特徴でした。

それから57年後の2021年11月11日、オリエントスターの「スポーツコレクション」から「ダイバー1964」が発売されました。そこで今回は、往年の「オリンピアカレンダーダイバー」のオリジナルデザインをほぼ忠実に再現しつつ、スペックアップが図られた、この話題の新作を取り上げて、その魅力を解説します。

オリエントスター「スポーツコレクション」の最新作「ダイバー1964」は、世界限定500本。このうちの200本が日本限定で展開されている。公式サイト価格は、143,000円(税込)

オリエントスター「スポーツコレクション」の最新作「ダイバー1964」は、世界限定500本。このうちの200本が日本限定で展開されている。公式サイト価格は、143,000円(税込)

東京五輪に沸く1964年、元祖モデルが誕生!

「オリエントスター」というブランド名は、1950年、東京都南多摩郡日野町(現・日野市)にて設立された多摩計器が、その翌年にオリエント時計に社名を変更した際、「デザイン、パーツ、製造のすべてにおいて『輝ける星』と呼ばれる時計を作る」との決意から命名した初代モデル「オリエントスター」に由来。以後、これがブランド名となりました。

そのオリエントスターも、2021年で誕生から70年目。まさに老舗と呼ぶにふさわしい、長い歴史を刻んできたわけですが、その中でもエポックメイキングのひとつとなったのが、1964年に誕生した「オリンピアカレンダーダイバー」でした。

「第18回オリンピック東京大会」開催の1964年に発売された「オリンピアカレンダーダイバー」

「第18回オリンピック東京大会」開催の1964年に発売された「オリンピアカレンダーダイバー」

ここで、「オリンピアカレンダーダイバー」が発売された1964年がどのような年であったかに、少し触れておきましょう。

「ビートルズ」旋風が吹き荒れていたアメリカは、8月の「トンキン湾事件」を機に「ベトナム戦争」を本格化。前年のジョン・F.ケネディ暗殺によって米・副大統領から昇格していたリンドン・ジョンソンは、11月の選挙で国民の信任を得て大統領に再任されました。いっぽうのソ連では10月、新指導者としてレオニード・ブレジネフが第一書記に就任しました。

そして日本はと言えば、高度経済成長期の真っただ中にあって、この年はまさにオリンピックイヤーと呼ぶにふさわしい1年でした。まず4月、日本人の海外観光渡航が自由化され、観光目的のパスポート発行がスタート。ひとり年1回、海外持ち出し500ドルまでの制限付きで海外への観光旅行が可能となります。また、9月に「東京モノレール」が、10月1日には世界初の高速鉄道である「東海道新幹線」が開業し、その2日後に「日本武道館」も開館するなど、オリンピックに向けた準備が順調に進みました。そして10月10日、アジアで初開催となる夏季オリンピック第18回大会の「東京オリンピック」が始まったのです。

話を元に戻しましょう。その「東京オリンピック」にちなんだものであろうモデル名を冠する「オリンピアカレンダーダイバー」は、当時はまだ珍しかった回転ベゼルを備えた本格ダイバーズウォッチとして登場(※1)。そのベゼルに無垢のステンレススチールを採用していることや、その全周にわたって「コインエッジ」と呼ばれる刻みが施されていること、そして「アロー型針」と称される、先端が矢印形の時針が採用されたことが、このモデルをひと際、個性的なものにしています。

さらに、文字盤には、日付表示窓とともに立体的なカットが施されたインデックスが配され、12時位置に「ORIENT」のブランド名と並んで、筆記体で「Olympia Calendar」のロゴを配置。また、防水性能を表す「40m」とともに6時位置にプリントされた「19 JEWELS ANTISHOCK」は、ムーブメントの軸受けに摩耗防止用の人造石が19個使われていることと、耐衝撃構造を備えていることを表しています。ちなみに、駆動方式は手巻きでした。

※1:ダイバーズにおける回転ベゼルは、潜水時における酸素ボンベの残量時間を確認するためのもの

元祖の意匠を継ぎながら、格段にスペックアップ!

オリジナルデザインを再現しながら、ISO準拠の200m防水ダイバーとして新登場

オリジナルデザインを再現しながら、ISO準拠の200m防水ダイバーとして新登場

さて、ここからは、新作「ダイバー1964」を詳解していきます。

2019年にスタートしたオリエントスターの「スポーツコレクション」にカテゴライズされる本モデルは、オリジナルの「オリンピアカレンダーダイバー」のデザインを再現したモデルです。主な共通点としては、ステンレススチール無垢の回転ベゼル、そのベゼルのコインエッジ、印象的なアロー型の時針とドーフィン(ドルフィン)型の分針、立体的なカットインデックス、黒文字盤、3時位置の日付表示窓、シャープなラグ形状などがあげられるでしょう。ただし、日付表示窓が正方形から横長形状に変更されていたり、コインエッジの刻み方がわずかに異なったりするなど、じっくりと見比べると微妙な相違点があって、デザインのモダナイズが図られていることがわかります。

変更点も見ていきましょう。まず、いちばん大きな違いは手巻き式から、手巻きも可能な自動巻き式になったこと。その自社製キャリバー「F6N47」は、パワーリザーブ50時間以上を誇り、その残量を読み取るためのインジケーター(表示器)が12時位置に設けられました。新旧を見分けようという際、これの有無を確認するのは最も手っ取り早い方法かもしれません。なお、先述の摩耗防止用の石の数は、19石から22石に増えています。

駆動方式の変更と並ぶ大きな変更点は、防水性能です。オリジナルが40m防水に留まっていたのに対し、「ダイバー1964」は、ISOが定めるダイバーズウォッチの規定である「ISO6425」に準拠する200m空気潜水用対応にスペックアップが図られています。

防水性についてもう少し詳しく紹介しましょう。スイス・ジュネーブに本部を置く「ISO(※2)」は、国際的に通用する規格を制定する非営利法人。その諸規格の中には、ダイバーズウォッチを定義するものも存在します。そのうちのひとつ「ISO6425」には、「潜水用防水時計は、少なくとも100mの潜水に耐え、かつ時間を管理するシステムを有する時計であり、その1.25倍の水圧に対応する耐圧性をもつこと」という規定が記されています。これにしたがえば、200m防水をうたいたい場合、その時計は250m相当の水圧に耐えるものでなくてはならず、ゆえに「ダイバー1964」は実質、250mの防水性能を有していることになるのです。さらにこの規格では、誤操作を防ぐための逆回転防止機能付きの回転ベゼルの搭載が必須とされているほか、視認性や耐磁性、耐衝撃性、耐塩水性などにおいても細かい規定が設けられていて、「ダイバー1964」はこれらにも準拠した性能を有しているわけなのです。

※2:International Organization for Standardization=国際標準化機構

スポーツモデルながらクラシックなたたずまい

ステンレススチール製ベゼルの無垢仕上げが、コインエッジを際立たせています

ステンレススチール製ベゼルの無垢仕上げが、コインエッジを際立たせています

コインエッジは、滑り止め用のローレット(※3)のうち、ストライプ状の凹凸が平行に刻まれた、いわゆる平目(ひらめ)ローレットの1種で、その名のとおり、古今東西の硬貨にも取り入れられてきた縁取り装飾のこと。日本の現行硬貨では、50円玉、100円玉、500円玉に施されています。また、時計にも古くから用いられており、数々の発明で時計の歴史に革新をもたらしたとされる偉大なる時計師、アブラアム=ルイ・ブレゲ(1747〜1823年)も、自作のクロックや懐中時計に取り入れていました。

※3:金属に施された細かい凹凸状の加工、またはその部位のこと

いっぽう腕時計では、ケース側面の装飾に加え、回転ベゼルに多用されてきたという歴史があり、多くのダイバーズウォッチにそれらを見ることができます。「ダイバー1964」の回転ベゼルも、このコインエッジ仕様ですが、そのベゼルがステンレススチール無垢であるためでしょうか、ひと際目立つものとなっており、これがアロー型の時針とともに、このモデルのアイコン役を果たしているのです。

結果、ダイバーズモデルながらリューズガードがないデザインは、コインエッジと相まってクラシカルでエレガントな雰囲気を醸し出しています。また、そこからケース側面→ラグ→ブレスレットにいたるシルエットは、シンプルながらも一体感があり、力強い印象です。そしてこれらのベゼル、ケース、ブレスレットがステンレススチール製であるのはオリジナルと同様なのですが、「ダイバー1964」ではそのうちの「SUS316L」が採用されています。これは、一般的なステンレス鋼「SUS304」から、さらに耐腐食性が高められた「SUS316」をベースに、炭素含有量を抑えたもの(「L」はローカーボンの意)。非磁性や耐熱性にすぐれているのはもちろん、「SUS316」を上回る耐腐食性を持ち、加工もしやすいハイグレード素材です。

「ルミナスライト」の採用により、暗い海中でも高い視認性を発揮

「ルミナスライト」の採用により、暗い海中でも高い視認性を発揮

針やインデックスに施された蓄光塗料「ルミナスライト」は、太陽光はもちろんのこと、蛍光灯などの人工的な光も蓄光し、長時間、鮮やかに発光します。したがって、たとえばナイトキャンプで漆黒の闇にいる時でも確実に視認でき、ほの暗い水深にいても時間がしっかりと読み取れて安心なのです。

装着感は上々! ON & OFF問わずマルチで使える

プッシュダブルロック三つ折式バックルが、クイック&スムーズな着脱を可能に

プッシュダブルロック三つ折式バックルが、クイック&スムーズな着脱を可能に

ステンレススチール「SUS316L」無垢のブレスレットには、腕なじみのよい5連タイプを採用。しかも、横並びに「ヘアライン/鏡面/ヘアライン/鏡面/ヘアライン」と、仕上げ違いがテレコになった駒の連なりが、この時計に豊かな表情を添加しています。

また、バックルは着脱が容易なプッシュダブルロック三つ折タイプで、中留めにエクステンション構造が採用されたことで、ウェットスーツの上から着用する際も簡単にバンド調整が可能です。ちなみに、裏ブタには、本モデルが数量限定であることの証しとして、シリアルナンバーが刻印されています。

シンプルなデザイン、かつほどよいサイズ感ゆえに、普段使いにも違和感はなし

シンプルなデザイン、かつほどよいサイズ感ゆえに、普段使いにも違和感はなし

それではここで、「ダイバー1964」を着用してみましょう。

オリジナルモデルのケース径は、39.8mmで、本モデルは40.2mm。ほぼ同じ大きさと言ってよい程度のサイズ差です。で、こうして見ますと、そのサイズは大き過ぎず&小さ過ぎずの、男の腕にちょうどよいあんばい。14.5mmと、ケースはやや厚みがあるものの、それはストレスにはならず、シンプルなデザインとシックな色使いにより、カジュアルにはもちろん、ビジネススタイルでも違和感なく着用できることでしょう。

また、「オリンピアカレンダーダイバー」が持つ、1960年代調のちょっと懐かしいデザインをそのまま踏襲していることから、見た目の印象はまるでアンティークのようで、それがまた味わい深く、ことにレトロ志向の時計好きにはたまらないものに仕上がっています。しかも、年齢問わず使えるのはもちろん、とりわけ手元を大人っぽく演出したいという際に有効な1本とも言えそうです。

【まとめ】 普遍的な魅力と、語るに豊富な蘊蓄のある名時計

今回、「ダイバー1964」を取り上げたいと思ったのは、数多ある現行ダイバーズウォッチの中に類似したデザインのものがなく、そのデザインがレトロながら新鮮で、それでいて何のてらいもなく、どこか普遍性のある姿に見えたからです。ことダイバーズに関しては、「あのモデルにどこか似ているような……」と思わせる定番的デザインの製品が少なくなく(それが悪いということではありませんけれど)、あるいは、その逆に奇をてらったものも目立つのですが、このモデルは個性的でありながらベーシックであり、飽きさせず、時代に寄らず末永く使用できるものに仕上がっています。毎年、多彩な時計がリリースされていますが、「見たことがなかったのに普遍的なデザイン」の新製品は、となると、これはなかなかなく、だからこそ「ダイバー1964」の存在が際立って見えたのです。

また、ルーツモデルが国産ダイバーズの先駆的な存在であるなど、語るべき蘊蓄(うんちく)が豊富にあるうえ、その元祖と、今回のモデルがともに東京オリンピックが開催された年のリリースであることにも興味を持ち、ぜひともそうした点にも触れて、この時計の登場を祝したいと考えた次第です。

●写真/篠田麦也(篠田写真事務所)

【SPEC】
オリエントスター「スポーツコレクション ダイバー1964」
●品番:「RK-AU0501B」
●駆動方式:機械式(手巻き付き自動巻き)
●キャリバー番号:「F6N47」
●機械式駆動時間:50時間以上
●防水性能:200m空気潜水用(ISO規格準拠)
●耐磁:1種
●ベゼル&ケース材質:ステンレススチール(SUS316L)
●ガラス:両球面サファイアクリスタル(ARコーティング)
●ケース幅:40.2mm
●ケース厚:14.5mm
●表示機能:時・分・秒、日付、パワーリザーブ
●バンド材質:ステンレススチール(SUS316L)
●付属:オリジナルブックレット
●製造国:日本
●価格:143,000円(税込)
●発売年月:2021年11月11日

山田純貴

山田純貴

東京生まれ。幼少期からの雑誌好きが高じ、雑誌編集者としてキャリアをスタート。以後は編集&ライターとしてウェブや月刊誌にて、主に時計、靴、鞄、革小物などのオトコがコダワリを持てるアイテムに関する情報発信に勤しむ。

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