「レゴ(LEGO)」と言えば、世界的に有名な色とりどりの四角いブロック玩具。自分が幼少のころには暇さえあれば組み立てていたし、結婚後に生まれた子供が物心ついたころに情操教育のためにと買い与えもしました。
皆さんもよくご存じであろう、四角のブロックを自由な発想で組み立てていく幼児向けの製品は「クラシックレゴ」と呼ばれ、今でも世界中で販売されています。そのいっぽうで近年、精緻なパーツを設計図通りに組み立て、海賊船や消防車などあらかじめ決められた形に作り上げていく、プラモデルのようなレゴもさまざまな種類が発売されており、子供だけでなく大人も楽しめる「大人レゴ」として人気となっているんです。
今回は、そんな魅力的な製品を発売し続けるレゴのジャパンオフィスに潜入!「大人が楽しめるレゴ」の世界について、がっつり話を聞いてきました。
レゴジャパンのエントランスにて、ワクワクするレゴのインスタレーションに囲まれる筆者
記事の後半では、実際に「大人レゴ」の組み立てにチャレンジした様子をお届け! Fenderのエレキギター「ストラトキャスター」のレゴを作ってみた
2020年から続くコロナ禍の影響もあり、レゴは全世界的に売り上げを伸ばしています。「おうち時間が増えたことで、家の中で何かできることはないかと探してレゴにたどり着いた人が多く、その結果、グローバルの売り上げは2ケタ成長しています」と語るのは、レゴジャパン エクスターナルブランドマネージャーの和田めぐみさん。その中でも売り上げが絶好調なのが、今回話を聞いた「大人レゴ」のシリーズだと言います。
以前からも、スター・ウォーズのミレニアム・ファルコン号のように、高価でピース数が多く、完成サイズも大きい大人向けのレゴ製品はいくつか発売されていましたが、2019年頃から明確に大人ユーザーをターゲットにした「大人レゴ」の発売を始めており、現在約100種類ものラインアップが用意されています。
「以前は、大人向けと言ってもスター・ウォーズのようにマニア向けが中心で、購買層も30〜40代の男性が中心でしたが、2年前から始めた大人レゴシリーズはターゲット層を絞らず、20代からシニア層まで、しかも男女が楽しめるよう幅広くラインアップしています」(和田さん)。
「個人的に好きなのはホーム・アローンのレゴ(詳細は後述)」という和田さん。「小さいときにテレビで何度も見て大好きな映画でした」とのこと
特に日本国内で最も人気となっているのが、「ボタニカル(植物)」コレクション。コロナ禍でストレスフルな環境下、レゴで盆栽やブーケなどの組み立てに没頭することで、ユーザーにマインドフルネスを体験してほしくて開発したシリーズだと言います。
なかでも、特に「フラワーブーケ」(756ピース)のレゴがロングセラーとのこと。レゴで組み立てる花なので、水いらず&世話いらずなところがウケているそうですが、最近ではかすみ草など本物の生花と一緒にレゴの花を花瓶に生けて、アレンジを楽しむユーザーも増えているのだとか。
老若男女、有名人にも人気の「フラワーブーケ」。アレンジする楽しみもある趣味性の高さが人気の秘密
レゴジャパン PR&パートナーシップマネージャーの寺門久美子さんによれば、「フラワーブーケはピース数が少なく難易度が低いのもあって、レゴが初めての人も買っています。あるタレントさんが生花とアレンジした写真をSNSに上げたことで、人気に火が付きました」とのこと。
「レゴが初めての人にはフラワーブーケがおすすめです」と語る寺門さん
こちらは「盆栽セット」。常緑樹の緑の葉と桜の花の2種類が同梱されており、季節によって組み直して楽しめることも人気の理由だとか。緑の葉をピンクの桜に変えて、季節を楽しむことができる
さらに、親子で楽しめると評判なのが「乗り物(車)」シリーズ。同シリーズには、大きく2つのパターンがあります。ひとつは、ピース数が1,000個以上と多く、リアルな設計で組み立てが楽しめるスーパーカーシリーズ。レゴテクニックの「ランボルギーニ シアン」は、3,696ピースで完成後の長さは約60cmと組み立て甲斐のあるセット。V12エンジンやサスペンション、ランボルギーニのトレードマークであるシザードアなどもリアルに再現しており、完成後にディスプレイする楽しみもあります。
このほか、「フェラーリ488 GTE AF コルセ」「ポルシェ911」「ブガッティ・シロン」「フォルクスワーゲン タイプ2バスキャンピングカー」、さらにこの1月1日に新発売となったスーパースポーツバイク「BMW M 1000RR」(1,920ピース、高さ約32.6×幅約17×奥行約45.5cm)など、バイクのレゴ製品もラインアップされています。
男の遊び心を刺激する大人気の車シリーズ。こちらはランボルギーニ シアン
こちらはポルシェ911
そしてフォルクスワーゲン タイプ2バスキャンピングカー!
もうひとつは、入門向けの「スピードチャンピオン」シリーズ。2021年6月に発売した「トヨタGRスープラ」は、299ピース、完成サイズの長さが16cmと小さいものの、ボディや外装などの再現度が高いため、スープラ好きの親が子供に買い与え、親子で楽しむケースもあるそうですよ。
「スピードチャンピオン」シリーズ。価格も3,000円以下と手ごろなので、クラシックブロックを卒業した小学校低学年生に買い与えるのにちょうどよい製品
スープラのように、各ジャンルのコラボに積極的なのも「大人レゴ」の特徴のひとつです。そして、ごっこ遊びができるコラボセットで今話題となっているのが、2021年11月1日に発売された「ホーム・アローン」(3,955ピース)。そう、あの大ヒット映画の第1作に出てくる、ケビンが留守番した家を組み立てられる大がかりなレゴです。
「ホーム・アローン」の世界がレゴで再現されている、レゴ初の観音開き式(写真は製作途中)
映画の設定同様、ケビンが家の中に作ったさまざまな仕掛けが再現されているほか、登場人物のミニフィギュアと泥棒のバンまで付属するので、映画を見たあとに親子でホーム・アローンごっこが楽しめます。クリスマス関連作品ということでアドベントカレンダー方式になっており、12月1日から1日1袋ずつ作ると、24日後に完成する工夫も面白い試み。
泥棒の顔には、アイロンによる火傷跡が付けられているほどの凝りよう!
そのほかにも、「スター・ウォーズ」「バットマン」「アナと雪の女王」「スーパーマリオブラザーズ」など有名映画やゲームのキャラクター、世界観を再現したものが多数あります。「ハリー・ポッター」なんかはシリーズ化されていて、「ホグワーツ城」や「魔法使いのチェス」などさまざまなコレクションがラインアップされている人気の製品です。
「ハリー・ポッター」シリーズから「ホグワーツのアイコン−コレクターズエディション」(3,010ピース)。ハリーの杖やメガネ、魔法薬、金のスニッチなど、作品のアイコンとなるアイテムがたくさん含まれている
もうひとつ、2021年11月18日に発売された注目製品が「タイタニック号」。あの超有名な豪華客船を1/200スケールで再現、完成品は全長1.3メートルを超えるレゴの中でも最大級のモデルです。作りごたえのある9,090ピースで、300を超える舷窓や救命ボート、船橋、貨物用クレーンといった外観だけでなく、船体を3つのセクションに分けて内部構造を確認できるようになっており、名物の大階段やダイニングサロン、個々の船室、機関室などもリアルに再現されています。なお、残念ながら船首で例のポーズを取るフィギュアは付属していません(笑)。
レゴ史上最大級サイズの「タイタニック号」。箱の時点でデカイ! 重い!
そのほかにも、面白いところでは、アディダスのスニーカー「アディダス オリジナルス スーパースター」(731ピース)というのもあります。トレードマークである3本線と本物の靴紐がリアル感を醸し出していて、シューズボックス型パッケージと中の薄紙まで再現してあるこだわりよう。片足のみのセットですが、パーツの組み換えで左右どちらかを製作できます。
かわいい「アディダス オリジナルス スーパースター」。別売のパーツでオリジナルカラーを作ることも可能
「レゴグループの理念は、“最高の遊びをすべての方に”。子供だけでなく、大人も遊び心は大切にすべきという考えが根底にあるのです。レゴで遊ぶことで、大人が持つストレスをリリースし、日々の生活を豊かなものにしてほしい。そのために、今後も大人が楽しめる製品の開発を続けていきます」(和田さん)。
ただし、レゴとしては「ユーザーはこういうのが欲しいだろう」と一方的な押し付けをするのではなく、ユーザーたちの夢や希望を叶える仕組みも用意しています。それが、「レゴ アイデア」。世界中のユーザーが今後作ってほしいレゴをウェブ投票できるサービス企画で、1万票に達すると商品化されるのです。前述の「ホーム・アローン」も、この「レゴ アイデア」で投票を集めて発売までこぎつけることができたもの。そのほかにも「タイプライター」や「くまのプーさん」、2022年1月1日に発売されたばかりの「ソニック・ザ・ヘッジホック グリーンヒルゾーン」も、「レゴ アイデア」発で商品化されたものです。
「レゴ アイデア」から生まれた「タイプライター」(2,079ピース)。キーを押し込むことはできますが、実際に紙に打ち込むことは不可能。できそうなほどリアルだけど
同じく「レゴ アイデア」により商品化された「くまのプーさん」(1,265ピース)
「レゴはいつでも意外性のある製品を世に出してきています。私たちも、新製品発売後のSNSの反応をいつも楽しみにしています。次に何が出てくるのか、ワクワク感を共有すべく、多くの人にレゴ アイデアに参加していただきたいです」と語る寺門さんは、「個人的には『銀河鉄道999』のレゴを作ってほしい」とコメント。同意! 激しく同意! 特にあの機械の星に行くやつ。誰か「レゴ アイデア」で投票して!(笑)
というわけで、筆者も「大人レゴ」の組み立てにチャレンジしてみました。「レゴ アイデア」から飛び出したギターブランド・フェンダー(Fender)とのコラボモデル「フェンダー ストラトキャスター」(1,074ピース)です。
実は筆者、高校生のころにエレキギターを始めるも、当時は学生ゆえにお金がなかったので憧れのフェンダーを買うことができませんでした。大人になり、ある程度自由にお金が使えるようになってようやく、フェンダーのストラトキャスターを手に入れることができたのですが、そのミニチュアをレゴで作れる喜びは、もう言葉に表すことができません。
こちらが「フェンダー ストラトキャスター」の一式。組み立てる順番どおりにパッケージされているので、プラモデルのようにライナーを探す手間もライナーから切り離すがなく、とても簡単に作ることができます
設計図の順番通りに作るだけ。細かいパーツが多いので、なくさないようにパーツを収納しておく空き箱などを用意したほうがよいでしょう
レゴのフェンダーギターは1,074ピースで、完成品のサイズは100(幅)×350(高さ)×20(奥行)mmと、実物の約1/3弱の大きさ。完成後に飾って眺めるのにちょうどよいサイズです。ボディは黒と赤の2種類が入っているのですが、迷わず黒を選びました。エリック・クラプトンが大好きで、フェンダー・ストラトを購入する時に“ブラッキー”レプリカを買おうか悩んだのですが、下手っぴな自分がブラッキーを持つことが恐れ多すぎて購入を断念した経緯があるので、せめてレゴでその想いをかなえようかと(笑)。
しかもこのセット、ギターだけではなく、フェンダーアンプの名機「65プリンストン・リバーブアンプ」も同梱されているのですが(もちろんレゴで)、この再現度の高さがまた垂涎モノです。バックカバーとトップカバーが取り外せて、内部の基盤や真空管、スピーカーユニットなど、こだわりのディティールを眺めて楽しむことができるのです。
約180ページにも及ぶ分厚い設計図が同梱されているのですが、組み立てる順序がわかりやすく絵解きで解説されているので、ぶっ通しで作って5時間ほどで完成しました。自分のストラトと並べれば、これだけでビール3杯はいけます!
というわけで完成! 筆者が所有するフェンダー・ストラトキャスターと並べてみた(右)。いい! すごくいい!!
アンプの天板を開けると、中の基盤まで再現されているのがわかる
アンプの裏側も、真空管や配線などをリアルに再現!
海外にも日本にも、熱烈なレゴファンがたくさんいるのは知っていましたが、こうやって実物を見て、実際に作ってみるとファンになる気持ちがよくわかります。プラモデルほどリアルではないけれど、このちょっとデフォルメされたデザイン、ブロックを1つひとつパッチンパッチンとはめていく快感。本当に楽しい。ただ、組み立てていると日頃のストレスは吹き飛ぶのですが、作り上げた達成感の後に来る「レゴロス」には困った。すぐに新しいものが作りたくなってしまいます(笑)。次はBMWでも作ろうかな。
1966年生まれ、福島県出身。大学では考古学を専攻。主に生活家電を中心に執筆活動する家電&デジタルライター。レビューや検証記事では、オジさん目線を大切にしている。得意分野は家電流通・家電量販店。趣味は、ゴルフ、ギター、山登り、アニメ、漫画、歴史、猫。