レビュー

「HUNTER×HUNTER」の製品版「軍儀」レビュー! 将棋好き夫と「H×H」好き妻が対戦

「HUNTER×HUNTER」界隈が騒がしい。

もちろんそれは、2022年5月24日、作者、冨樫義博先生が突然、Twitterのアカウントを開設したからにほかならない。“本物”だと判明するや否や、世界中のファンが反応し、フォローワーは1か月足らずで273万人を超えた(2022年6月15日時点)。原稿の進捗状況を知らせる投稿が行われるたびにそれがニュースで報じられており、ついに何かが動き出した気配をファンたちは感じ取っているに違いない。

筆者もそのファンのひとりで、「HUNTER×HUNTER」の休載期間中(これについての話は省略)、原作マンガを何周も読み直しながら、今か今かと連載再開を待ち望んでいる。とはいえ、何か、何でもイイから「HUNTER×HUNTER」の新しいモノはないかと探していたところ、見つけてしまった。作中、「キメラアント編」でメルエムとコムギがプレイしていた盤上競技「軍儀」の製品版だ。

ユニバーサル ミュージックから発売されている「HUNTER×HUNTER 軍儀」。価格は4,840円(税込)。作中では、「軍儀」の発祥国は東ゴルトーで、国民のほぼ全員が打てる国民的盤上競技として紹介されている。もちろん、作中のみの架空の競技

ユニバーサル ミュージックから発売されている「HUNTER×HUNTER 軍儀」。価格は4,840円(税込)。作中では、「軍儀」の発祥国は東ゴルトーで、国民のほぼ全員が打てる国民的盤上競技として紹介されている。もちろん、作中のみの架空の競技

将棋やチェスに似ているが、立体的な視点が必要! それが出来れば苦労はしねェ!!!

「軍儀」は、縦横9×9マスの盤に、動き方の異なる駒を10〜14種類配置し、先行/後攻を決めて1対1で対局。交互に駒を動かし、“王”(「軍儀」では「帥(スイ)」)を詰ませたら勝ちと、将棋やチェスとの共通点が多数ある競技。初期配置で使わなかった駒は、ゲーム中に手駒として盤面に追加できる「新(アラタ)」(将棋の「打つ」に相当)というワザも用意されている。

全14種類の駒の動きが書かれた早見表の一部。後述するが、将棋の駒と比べ、前方への攻撃力が強い駒が多い。ちなみに、将棋の「歩」的な「兵(ヒョウ)」は後ろにも動ける

全14種類の駒の動きが書かれた早見表の一部。後述するが、将棋の駒と比べ、前方への攻撃力が強い駒が多い。ちなみに、将棋の「歩」的な「兵(ヒョウ)」は後ろにも動ける

いっぽうで、将棋やチェスと大きく異なるルールが、2つ用意されている。それは、

●自駒の行動範囲に相手駒があった場合、将棋のようにその駒を取るだけでなく、その駒の上に重ねることを選ぶこともできる。取った駒はゲームから除外し、以降使用はできなくなる(この点はチェスと同様)。また、自駒に自駒を重ねることも可。なお、相手駒や自駒の上に自駒を重ねることを「ツケる」と称す

●開始時の駒配置は、自陣地(手前3行)であれば自由

ということ。

このなかでも、駒を重ねる「ツケ(る)」が、「軍儀」の最大の魅力だ。

「ツケ」は、自駒を相手駒や自駒の上に重ねるワザなのだが、ポイントはその重ねた段数が多いほど“強くなる”ということ。具体的には、動かす駒と同段以下に重なった駒しか重ねたり、取ったりできなくなるのだ。

例を取って、見てみよう! 自駒を白、相手駒を黒とする。

自駒の「兵」が動ける範囲に、相手駒の「兵」がいる。このシーンにおいて、自分のターンでひとマス前に出る場合、相手駒の「兵」を取るか、あるいは取らずに自駒の「兵」を相手駒の「兵」の上に重ねるかを選択できる。後者の動きが「ツケ」

自駒の「兵」が動ける範囲に、相手駒の「兵」がいる。このシーンにおいて、自分のターンでひとマス前に出る場合、相手駒の「兵」を取るか、あるいは取らずに自駒の「兵」を相手駒の「兵」の上に重ねるかを選択できる。後者の動きが「ツケ」

自駒に自駒を重ねることも可能。重ねた駒においては、最上段の駒のみ動かせる

自駒に自駒を重ねることも可能。重ねた駒においては、最上段の駒のみ動かせる

「ツケ」は同段以下の駒にのみ可能。つまり、左のシーンでは2段の自駒「兵」で、3段の相手駒「兵」にはツケられないし、取れない。右のシーンでは、1段の自駒の「兵」は2段の相手駒「兵」は攻撃できないが、相手駒「兵」は自駒「兵」にツケられる

「ツケ」は同段以下の駒にのみ可能。つまり、左のシーンでは2段の自駒「兵」で、3段の相手駒「兵」にはツケられないし、取れない。右のシーンでは、1段の自駒の「兵」は2段の相手駒「兵」は攻撃できないが、相手駒「兵」は自駒「兵」にツケられる

では、相手が3段だったらどうするか。その場合は、左の写真のように3段の自駒であればツケられる。段は最大で3段なので、ツケる場合は、相手駒のみ取り除いてツケることができる。その結果が右の写真

では、相手が3段だったらどうするか。その場合は、左の写真のように3段の自駒であればツケられる。段は最大で3段なので、ツケる場合は、相手駒のみ取り除いてツケることができる。その結果が右の写真

「ツケ」にはもうひとつ、“強くなる”理由がある。それは、重ねられた駒の最上段にいる駒の動きが強化されるという点。基本的には、1段の場合はひとマスしか動けなかったところを、2段目だと2マス、3段目だと3マス動けるようになるのだ。

製品に2枚付属する「駒の動き 早見表」の一部。1段の場合は水色、2段の場合は青、3段の場合は黄緑色のマスまで動けることを示している。「将棋」で言う大駒の「大(タイショウ)」は前後左右、「中(チュウジョウ)」は斜め方向に、段数に関わらず好きなだけ動かせる

製品に2枚付属する「駒の動き 早見表」の一部。1段の場合は水色、2段の場合は青、3段の場合は黄緑色のマスまで動けることを示している。「将棋」で言う大駒の「大(タイショウ)」は前後左右、「中(チュウジョウ)」は斜め方向に、段数に関わらず好きなだけ動かせる

「ツケ」のメリットをまとめてみると

●自駒を1段の相手駒にツケた場合、相手駒の動きを封じながら、自駒を「2段」という強さにレベルアップできる。最上段の駒の動き方を強化できるうえ、その駒に対して相手は、「1段」の駒ではツケたり、取ったりできなくなる

●自駒を自駒にツケた場合、シンプルにツケた自駒を「2段」という強さにレベルアップできる。いっぽうで、ツケられた1段目の自駒は動かせなくなる

以上、これでもかみ砕いて簡単に説明したつもりだが、この「ツケ」が、「軍儀」の戦略を考えるうえで最も重要なポイントだということがおわかりいただけただろうか。

将棋やチェスと異なり、“立体的な視点”が必要ということで、初見の人は「え、難しそう……」という印象を受けたと思う。しかし、ご安心を。「軍儀」には、「入門編」、「初級編」、「中級編」、「上級編」の4つの楽しみ方を用意しており、少しずつ難易度を上げられるのだ。4つの楽しみ方の違いは以下のとおりだ。

特殊駒は、前方ひとマス飛ばして動かせるなどの特別な動きを持つ駒で、「弓(ユミ)」、「砲(オオヅツ)」、「筒(ツツ)」、「謀(ボウショウ)」の4種類。中級編と上級編は4種類すべて使うことになる。ツケが可能な段数も、中級編までは2段まで。ただし、自駒の「帥」にツケるのはどの編でも不可で、「帥」をほかの駒にツケるのは中級編から「あり」となる

特殊駒は、前方ひとマス飛ばして動かせるなどの特別な動きを持つ駒で、「弓(ユミ)」、「砲(オオヅツ)」、「筒(ツツ)」、「謀(ボウショウ)」の4種類。中級編と上級編は4種類すべて使うことになる。ツケが可能な段数も、中級編までは2段まで。ただし、自駒の「帥」にツケるのはどの編でも不可で、「帥」をほかの駒にツケるのは中級編から「あり」となる

「HUNTER×HUNTER」未読の将棋ファン VS 将棋めちゃ弱の「HUNTER×HUNTER」ファン、血沸く血沸く

さあ、ここからはレビューをお届けしたいところだが、致命的にも、筆者はそもそも将棋すら触ったことがないため、実際にプレイした感想には“かたより”が発生する恐れがある。そこで、本稿タイトルにもあるように、価格.comマガジン編集部の杉浦とその夫に「軍儀」をレビューしてもらうことにした。

【夫】
将棋ファン歴約10年。小学生の頃から遊びの範囲で将棋を指していたが、30歳頃から本格的にその世界にのめり込む。きっかけは、「ニコニコ動画」で配信していた「第二回電王戦」を視聴したこと。現在は、オンライン将棋ゲーム「将棋ウォーズ」初段。妻の友人からあだ名で「藤井くん」と呼ばれている。「HUNTER×HUNTER」を読んだことは1度もない(!)

【妻(編集部・杉浦)】
「HUNTER×HUNTER」ファン歴約25年。小学生時代に「幽遊白書」に出会ったことで、冨樫義博先生の世界にのめり込む。なお、「HUNTER×HUNTER」の中で最も好きなコマは、コミックス1巻79ページで「ドキドキ二択クイズ」のバアサンが「お前みたいな奴に会いたくてやってる仕事さ」とレオリオに語りかけるシーン。将棋は、ルールがわかる程度

そもそもこの妻は、1998年の連載開始当初からずっと、「HUNTER×HUNTER」の(というかもっと前から冨樫先生の)ファンで、1巻発売当初から幾度の休載にもめげずにコミックスを買い揃えてきた。しかし、夫に対して「面白いマンガだよ」と何度すすめても、自宅の本棚にびっしり並んだコミックスをまったく読んでくれない……。夫は、他人からのおすすめに影響されないタイプで、「読みたいタイミングが来たら読む」という人。結局、そんな夫に「HUNTER×HUNTER」を読ませることに、いまだ成功していないという……。

しかし、作中に出てくる将棋に似た「軍儀」というゲームが実際に製品化したと聞き、夫は「軍儀」のほうには興味が出てきた様子。というわけで今回は、将棋ファンだけど「HUNTER×HUNTER」をまったく読んだことがない夫と、「HUNTER×HUNTER」ファンだけど将棋はルールを知っているだけでめちゃめちゃ弱い妻の2人に対戦してもらい、「将棋好き目線」と「『HUNTER×HUNTER』好き目線」で「軍儀」の真価を見定めてもらおうというわけだ。

夫婦による対戦! 夫「あいつ、ワシより強くねー?」

ここからは、夫婦で対戦したときの様子をお届けする。

特殊駒「弓」が追加される初級編で対局。初級編の場合、写真の駒の配置でスタートするのがルール

特殊駒「弓」が追加される初級編で対局。初級編の場合、写真の駒の配置でスタートするのがルール

何だかこの構図、まるでメルエムとコムギが対峙しているようだ……

何だかこの構図、まるでメルエムとコムギが対峙しているようだ……

初戦、夫婦共に駒の動きを把握するのに時間がかかり、同梱の説明書「軍儀解説書」が手放せないようだった。それぞれ1枚ずつ用意されている「駒の動き 早見表」に書かれた駒の動きも確認しながら、盤面を見て考え込む。

駒の動き方を覚えるのに必死で、頭を抱えるコムギ(妻)

駒の動き方を覚えるのに必死で、頭を抱えるコムギ(妻)

ゲーム中盤、夫婦共に下手に将棋のルールを知っているせいで、それに引っ張られて凡ミスを連発。たとえば、「兵」という駒を、将棋で言う「歩」のようなものと認識しているので、「兵」が後ろにも下がれることを失念し、「帥」を「兵」の後ろに指す“自害まがいなこと”をしてしまったりも……。

こんな風に一緒に遊んでくれるパートナーってうらやましい……。これ以上見ていたら、「○してでもボールとりたくなっちゃうもんな」のキルアの気持ちがわかっちゃうようで怖かった

こんな風に一緒に遊んでくれるパートナーってうらやましい……。これ以上見ていたら、「○してでもボールとりたくなっちゃうもんな」のキルアの気持ちがわかっちゃうようで怖かった

将棋のルールはやはり強く根付いているようで、自駒より前線に「新」をしそうにもなっていた(将棋では持ち駒を好きな場所に打てるが、「軍儀」で言う「新」は最前線にいる自駒行を含む手前のマスにしか行えない)。この辺は、普段から将棋を指している夫のほうが四苦八苦していたのが印象的であった。それに対して妻が、「HUNTER×HUNTER」愛だけで対等に渡り合っていたのも面白い。

そして勝負は、かなりの膠着状態の末、最終的に夫が勝った。しかし、夫は妻を詰ませて「帥」を勝ち取ったわけではなかった。妻にさりげなく雑談をふりながら、そうとは言わずに「王手」をしかけ、妻の意識を別の場所にそらせる演技をすることで、「帥」をこっそり奪い取ったのだった……。夫に「そりゃ悪手だろ」と言いたい。

黒駒の夫が「王手」していたシーン。「王手」と「小」取りを同時にしかけているなんて、オレ(観戦していた筆者)でなきゃ見逃しちゃうね

黒駒の夫が「王手」していたシーン。「王手」と「小」取りを同時にしかけているなんて、オレ(観戦していた筆者)でなきゃ見逃しちゃうね

夫婦による忌憚なき感想、信じて、受け止めてくれる?

試合後、夫婦より感想が届いたので、齟齬がなきよう、個条書きで紹介しよう。

●面白かったけど難しかった! 将棋のルールを知っていると、それにかなり引っ張られる。自駒の前に手持ち駒を打てない(「新」ができない)ため、いわゆる「歩」の手筋のようなものが使えないなど、将棋と「軍儀」には感覚とズレがあるので、将棋好きな人は逆に、「軍儀」に慣れるまでが大変かも。

●先手がかなり有利。駒の動きが強い(将棋の駒は基本1マスしか進めないが、「軍儀」の駒は「ツケ」があるほか、複数マス進めるものが多い)ので、先手の1手1手に対し、後手が守りを固めないといけなくなる。後手は、1回ミスをするとボロボロに……。

●全体として、駒は前方向に強いので、相手の「帥」が前に出てくると詰ませるのが難しくなる。

●「帥」が自駒にツケることができるため、将棋のように自駒が壁となって逃げられないということがない(入門編と初級編は「帥」が自駒にツケられないため別)。これも、詰ませるのが大変な理由のひとつ。

●「ツケ」がとても強いので、1段駒のままでは無防備でとにかく不安。そのため、ツケを多用することになるが、ツケた駒を動かすためには、1度ツケを崩す必要がある。相手の駒を取ったときにも基本1段駒になる。この一瞬の弱点をどうカバーするか(相手からすればこの弱点をどう突くか)がポイント。

●将棋で言う、いわゆる「大駒」が「大」と「中」しかないため、これらの駒をお互い失うと、ゲームが膠着(こうちゃく)しやすく、また詰ませるのも難しくなる。

●取った相手の駒を使用できないので、チェスのように引き分けが多く発生すると思う。

●「兵」が“一生”、一次元内でしか動けないのが悲しい。

●「HUNTER×HUNTER」ファンの妻としては、(おそらく)上級編(作中では3段ツケている)の高度なやりとりを、コムギとメルエムが命をかけて行っていたと想像するだけで、改めてあの一連のシーンにシビれた。正直、「孤孤狸固(ココリコ)」までたどり着く道は長い。でも、ワダすもすぐいきますから……

●将棋ファンの夫としては、とにかく「軍儀」を通じて、将棋がよくできた競技だということを再認識した。

やはり、ポイントは、「ツケ」のようで間違いないようだ。また、意外にも、将棋好きな夫のほうが、“将棋の手癖”に苦労したことは発見だった。

「軍儀」で「穴熊囲い」! これで、カンペキに勝つ、だろ? ゴン

また、この夫婦から、「軍儀」を使った“ちょっとした遊び”を提案された。駒の初期配置を自由に決められる「中級編」と「上級編」において。自由度が高いことを逆手に取り、最初から「穴熊囲い」的な配置に並べてからスタートすることだってできるという。

夫婦オリジナルの2段を使った「穴熊囲い」。ちなみに、将棋の「穴熊囲い」とは、戦場から遠い自陣の角に「王」を置き、ほかの駒で周りを囲んで守備を固めること。将棋の場合は、この形が完成するまでに手数がかかり、その間に攻め込まれることもあるが、「軍儀」の「中級編」と「上級編」では、スタート時点からこの「穴熊囲い」でガチガチに守備を固められるというわけだ

夫婦オリジナルの2段を使った「穴熊囲い」。ちなみに、将棋の「穴熊囲い」とは、戦場から遠い自陣の角に「王」を置き、ほかの駒で周りを囲んで守備を固めること。将棋の場合は、この形が完成するまでに手数がかかり、その間に攻め込まれることもあるが、「軍儀」の「中級編」と「上級編」では、スタート時点からこの「穴熊囲い」でガチガチに守備を固められるというわけだ

3段バージョンの「穴熊囲い」

3段バージョンの「穴熊囲い」

ここまで、じっくりと「軍儀」について紹介してきた手前、非常に恐縮なのだが、「軍儀」の受注は2022年6月19日まで! 今しか手に入らない可能性があるので、欲しい人はオフィシャルサイトへ急いでほしい(音を殺しても、殺さなくてもいいので)。

本稿の筆者はと言うと、「軍儀」を打ちながら、カキン王国の「王位継承戦」の続きを予想しながら、「暗黒大陸」に思いを馳せながら、そして、編集部・杉浦の夫が「HUNTER×HUNTER」を読んでくれることを願いながら、最新話を楽しみに待っていたいと思う。

感謝するぜ、「HUNTER×HUNTER」と出会えた、これまでのすべてに!!!

●協力:ユニバーサル ミュージック
注:提供された商品をもとに遊んでおり、実際のルールと異なる解釈がある可能性がございます

牧野裕幸(編集部)

牧野裕幸(編集部)

月刊アイテム情報誌の編集者を経て価格.comマガジンへ。家電のほか、ホビーやフード、文房具、スポーツアパレル、ゲーム(アナログも含む)へのアンテナは常に張り巡らしています。映画が好きで、どのジャンルもまんべんなく鑑賞するタイプです。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
価格.comマガジン プレゼントマンデー
ページトップへ戻る