レビュー

ドラムってどれ買えばイイの? 全部揃う超コスパセット「AQX」を組み立ててみた!


大体の楽器は、練習を始めるにあたり、まず楽器本体を揃えますよね。しかし、ほかの楽器と異なり、ドラムはリハーサルスタジオで練習する人が大半で、実際にアコースティックドラムを一式購入したという話はあまり聞きません。置く場所や管理もさることながら、いちばんのネックはお値段! 何かとハードルが高いドラムセットですが、やはりマイドラムがあると練習のモチベーションが上がるし、何より本当のドラマーに1歩近付いたような気分が味わえます。

そこで今回は、初めてのドラムセットとしておすすめの「SONOR(ソナー) AQシリーズ」の新作、「AQX」をご紹介。前回と同じく東京・浅草のパーカッション専門店「ジャパン・パーカッション・センター ドラムシティ」(JPC)さんにて、実際に組み立てて、叩いてみました!

またしてもおじゃまさせていただきました!「ジャパン・パーカッション・センター ドラムシティ」(https://www.ejpc.net/)

またしてもおじゃまさせていただきました!「ジャパン・パーカッション・センター ドラムシティ」(https://www.ejpc.net/

コスパ最強の「AQシリーズ」って何者?

「AQシリーズ」は、ドイツの有名ドラムメーカー、SONOR(ソナー)社が発売するアコースティックドラムセット。初心者用のエントリーモデルから、ライブなどを行う人たちも使えるミドルクラスまで幅広く支えるシリーズで、前身の「FORCEシリーズ」の後継モデルとしてフルモデルチェンジし、発売されました。

そのなかで今回ご紹介するのが「AQX」。材質をポプラに変更することで、上位モデルの「AQ1」、「AQ2」にも劣らないサウンドを確保しながら価格をさらに下げたうえ、なんとハードウェアやホルダーまで付いてくるコスパ最強のエントリーモデルです。

画像は「AQX STAGE SET」。黒が渋くてかっこいいです

画像は「AQX STAGE SET」。黒が渋くてかっこいいです

「AQX」は全部で4種類!

「AQX」のラインアップは4つ。「COMPACT KIT」の「MICRO」と「JUNGLE」、そしてより本格的な「STUDIO」と「STAGE」です。大きな違いは太鼓類のサイズで、ここではわかりやすくバスドラムの大きさで紹介。いちばん小さな「MICRO」が14×13インチで、個人練習や路上などの屋外ライブで持ち運びできる大きさ。「JUNGLE」は16×15インチと少し大きく、小規模なジャズバーなどにぴったりなサイズ感で、ジャズアンサンブルにはもってこい。「STUDIO」は20×16インチで、スリータムとB8ブロンズのシンバル・ハードウェア付き! オールジャンルこなせるキットで、バンド練習でも音量に負けることなくしっかりと叩けて、マイドラム持ち込みでの個人練習にも使えます。最後の「STAGE」はさらに大きく、22×16インチ。名前のとおり、ステージでも使えるポテンシャルで、ロックやメタル系でもガンガン攻めていける音圧があります。こちらも、もちろんうれしいシンバル・ハードウェア付き。

また、「COMPACT KIT」の「MICRO」と「JUNGLE」は、シンバルとハードウェアが付いていない分、カラーバリエーションが揃っており、BMS(ブラック・ミッドナイト・スパークル)、BOS(ブルー・オーシャン・スパークル)、RMS(レッド・ムーン・スパークル)の3色から選べます。

「MICRO SET RMS」参考価格:82,500円(税込)

「MICRO SET RMS」参考価格:82,500円(税込)

「JUNGLE SET BOS」参考価格:86,900円(税込)

「JUNGLE SET BOS」参考価格:86,900円(税込)

「STUDIO SET BMS」参考価格:176,000円(税込)

「STUDIO SET BMS」参考価格:176,000円(税込)

「STAGE SET BMS」参考価格:176,000円(税込)

「STAGE SET BMS」参考価格:176,000円(税込)

コスパ最高、本気のセット内容

今回紹介した4種類で、目を引くのは何と言っても付属品です。初めてドラムセットを購入しようと思っている人は、意外と知られていない落とし穴に注意しなくてはなりません。それは、ドラムセットは文字どおり“ドラムだけ“のセットだということ。つまり太鼓しか手に入らない! シンバルはもちろん、スタンドなどのハードウェア類も一切付いていません。ちなみにスネアもなし。カタログを見て、これなら予算内では?と思ったその値段から、プラス10万円はかかるというのが悲しい実情でございます。世知辛い。

さらに、知識が十分でないころは、自分が組みたいセットにはどんなスタンドやアタッチメントが必要なのかや、どのハードウェアが対応しているのかを調べてから組んでいかなくてはならず、精神的に金銭的にもハイコストです。そういった一切合切を全部解決してくれて、かつ安い! そして音がショボくない! これが「AQX」の最大の魅力だと筆者は考えております。

「MICRO」と「JUNGLE」には、スネアとホルダーが付属していますが、ハードウェア類はなし。しかし、8万円台という破格の値段なので、やはりコスパは良好。特に、キックペダルは必ず自分に合ったものを買う時が来ます。下手に付いてきて値段が上がるよりも、予算に余裕を持たせて好きなものを買うほうが得策ではないでしょうか? また、両セットは内容的にジャズなどのアンサンブルを目的としたものなので、このほかに用意するものはシンバル1枚でも十分。ホルダーが付いているので、スタンドを買う必要もありません。

左が「JUNGLE」で、右が「MICRO」。作りもしっかりしていて大満足。スネアも意外といい音が鳴ります!

左が「JUNGLE」で、右が「MICRO」。作りもしっかりしていて大満足。スネアも意外といい音が鳴ります!

そして「STUDIO」と「STAGE」は、圧巻のシンバル3セット(ハイハット/クラッシュ/ライド)、各種スタンド、キックペダルと、文句の付けようがないセット内容! 値段の張るハイハットスタンドも付属しているので死角なし。本当にワンセット買うだけでそのまま演奏できてしまうハイコスパキットです。「JPC」さんによれば、学校の備品などでも使われているとのこと。後ほど詳しく書きますが、音も決して安っぽくなく、これ本当に17万円でいいの?と逆に不安になるくらい(笑)。ロックやポップス好きの筆者としては、「MICRO」と「JUNGLE」よりもこちらのほうがおすすめで、9万円ほど値段は上がりますが、セット内容を考えれば、ほかで買ったらお釣りが来るレベルの値段です。逆にジャズ系、特にボサノバなどの静かな音楽を演奏したい人は、あえてこちらを買う意味は薄いかもしれません。

こちらは「STAGE」。思いのほかいい音で、思わず真顔に……

こちらは「STAGE」。思いのほかいい音で、思わず真顔に……

さらに、地味ながらとっても大事なのが、各パーツの精度。筆者は高校生のころ、なけなしのお小遣いで非常に安いドラムセットを購入した経験がありますが、それは使い物になりませんでした。タムホルダーは叩いていくうちに沈み、気付けばハイハットはガバガバ。スタンドも風が吹いたら倒れるレベルで、せっかく買ったシンバルは重過ぎて使えず。なかなか痛い思いをしたものです。こんな経験から、安いドラム一式セットはまったく信用できずにいたのですが、「AQX」に関してはそんなことはないと断言できます! 安いものほど細かいパーツには値段がはっきり出ますが、「AQX」は値段をまったく感じさせない作りで、1つひとつがかなりしっかりと作られています。聞いてみたところ、なんと、パーツ類は汎用のものではなく、ソナーが自社開発したもので、兄貴分である「AQ2」などの上位グレードと同じパーツを使用しているとのこと。詰まるところ、単品でも扱える商品をパッケージとして組み込んでいるのです! ここにも、コスパのよさが詰まっている「AQX」、恐るべし。

こういった結合部などの作りのよさは、とてもエントリーモデルとは思えない!

こういった結合部などの作りのよさは、とてもエントリーモデルとは思えない!

実際に組み立てたあと、叩いてみた!

ということで、「JPC」のスタッフさんご指導のもと、実際に「AQX」を組み立ててみました。まずは箱から取り出してみると、思ったより小さいです。ドラムはシェルを入れ込むようにして入っているので、箱の状態だと想像よりだいぶ小ぶりです。大量のダンボールが山積みで納品されたらどうしよう、なんて心配は不要ですね。

意外とコンパクトな梱包! 筆者は「MICRO」を組み立ててみます

意外とコンパクトな梱包! 筆者は「MICRO」を組み立ててみます

ダンボールを開けていくと、1つひとつていねいに梱包された部品が出てきます。盛り上がりの最高潮はやはりバスドラムが出てきたときでしょうか? 部品が多くちょっとビビりつつも、開封完了です。

中身を傷付けないように、慎重に開封しましょう

中身を傷付けないように、慎重に開封しましょう

こちらはホルダー。やはり作りがしっかりしています

こちらはホルダー。やはり作りがしっかりしています

シェルやヘッドはこのような感じ

シェルやヘッドはこのような感じ

バスドラとタムが出てきました! 小さくてかわいいですね

バスドラとタムが出てきました! 小さくてかわいいですね

無事にすべて開封。バラバラの状態のドラムは新鮮です

無事にすべて開封。バラバラの状態のドラムは新鮮です

それでは、レクチャーを受けつつ組み立てていきます。と言っても、特殊な工具が必要なわけではないので、特に難しいことはありません。

まずは、バスドラムから。ヘッドをリムで挟み、ラグのネジを絞って打面を作っていきます。このときに、ある程度はチューニングも済ませられると後が楽だとか。「MICRO」ではバスドラムの径が短く、キックペダルが中心から外れてしまうので、かませるための土台を付けます(「STAGE」や「STUDIO」ではこの作業は不要)。最後に脚を取り付けたら、バスドラムは完成!

ラグの取り付け中。ズレないようにしっかり位置を確認しましょう

ラグの取り付け中。ズレないようにしっかり位置を確認しましょう

ヘッドを張っているところ。チューニングは何年やってても苦手です

ヘッドを張っているところ。チューニングは何年やってても苦手です

キックペダル用の土台を付けます。これがないと、キックがまともにできない!

キックペダル用の土台を付けます。これがないと、キックがまともにできない!

ニョキニョキと脚を生やせば、バスドラム完成

ニョキニョキと脚を生やせば、バスドラム完成

この後は、バスドラムにホルダーを差すんですが、ココで「JPC」さんから注意が! ホルダーに付属している、タムを支えるための「L字フック」を逆向きに使用してしまっている人が非常に多いようです。L字の長いほうがホルダー側、短いほうにタムを設置するのが正解だそうです。あやうく筆者も逆に付けるところでした。これが原因でタムが落下してしまう可能性もあるので、必ずチェックしてほしいとのことでした!

この向きで付けてしまう人が多いようです

この向きで付けてしまう人が多いようです

正しいのはこの向き!

正しいのはこの向き!

ホルダーのパーツを確認したらバスドラムに差し込んで、ホルダーにタムを付けていきます。この辺まで来れば形も見えてきて、あともう少し! 最後にフロアタムにも脚を生やせば「MICRO」の組み上がりです。

ホルダーはこんな感じに展開します。ペグの向きにも注意! 逆に付けるとほかの可動部と干渉の恐れあり!

ホルダーはこんな感じに展開します。ペグの向きにも注意! 逆に付けるとほかの可動部と干渉の恐れあり!

バスドラムにホルダーを差し込んで、タムを取り付けます(キックペダルは別売)

バスドラムにホルダーを差し込んで、タムを取り付けます(キックペダルは別売)

フロアタムにも脚を生やせば……

フロアタムにも脚を生やせば……

完成! 本来はこれにスネアスタンドを立ててスネアをセットし、ホルダーにお好きなシンバルをセットします

完成! 本来はこれにスネアスタンドを立ててスネアをセットし、ホルダーにお好きなシンバルをセットします

レクチャーしてくれる人が隣にいてくれはしましたが、写真撮影をしながらでも15分かからない程度で組み上げられました。ひとりでもまったく問題なく組めるサイズで、特段難しいところは見つかりませんでした。しかし、組み立ての説明書は入っていないので、事前に組み方を勉強しておくか、店舗のスタッフさんにしっかりと手順を確認しておくほうが無難でしょう。

そして裏では、「JPC」スタッフさんが鬼のような速さで「STAGE」を組み立ててくれました。フルセットが「MICRO」と同じ速度で組み上がるのは、やはりプロの熟練の技ですね。

さすがの速さ、しかもキレイ

さすがの速さ、しかもキレイ

そして、お待ちかねの試奏タイムです! まずは「MICRO」から。筆者は残念ながらジャズ畑の人間ではないので、これがどのレベルまで通用するのかは正直判断できません。しかし、そんな素人耳で聞く分にはかなり上出来の音。小径なので高くぽーんと伸びるような音が特徴的。友達と集まってちょっとしたセッションなんかをやるときには、なかなかいい味を出せるのではないでしょうか? 個人的には、スネアのカンッと高く抜ける音が好みだったので、非常に好印象です。雑味が少なく、どこでも使えそうな音。よく言えば優等生、悪く言うとちょっとパンチが弱いというか、押しが弱いと感じられましたが、総じて「かなりいい」と筆者は結論づけました。

お気に入りのスネア。8万円台のキットに入っているスネアとは思えない出来です

お気に入りのスネア。8万円台のキットに入っているスネアとは思えない出来です

続いては「STAGE」。こちらは王道のドラムセットで、先ほども述べたように、ロックやポップスが好きな筆者は断然「STAGE」派。まず叩いて感じたのは、バスドラムの音がとにかく気持ちいい! グッと低音が乗ったアタックの強い音で、激しいドラミングにも応えてくれそうな感じがヒシヒシと伝わってきます。スネアはチューニング時間があまりなくて定まらなかったのもあり、ぴったり来る音は作れませんでしたが、音質的には先ほどの「MICRO」と同じく、セット物とは思えない出来です。タムやバスドラムは全体的に音量がデカくて太めの音で、メリハリが効いていてやる気を起こさせます。メタルもプレイできそうな予感。シンバル類は値段が顕著に出るので、やはり限界はあるものの、練習にはまったく問題ないレベルです。決して悪くないが、シンバルに関して過度な期待は禁物といった感じ。バッチリ音量を出して練習したい人や、いろんなジャンルに挑戦したいという人には、「STUDIO」と「STAGE」がおすすめです。

17万円とは思えない太いサウンド。ノリノリで8ビートを刻みたくなります

17万円とは思えない太いサウンド。ノリノリで8ビートを刻みたくなります

弱点もあるにはあるが、やっぱりコレは買い!

ここまで褒めちぎってきましたが、気になる点が実は2つほど。ひとつは「STUDIO」と「STAGE」に付属するキックペダルです。これは、正直付属させなくてもよかったのでは?と思ってしまいました。というのも、ほかのハードウェア類に比べ、かなり見劣りしていると感じました。キックペダルとは足のスティック。ドラムセットを買おうとする人はすでにペダルを持っている可能性が高く、このひ弱なペダルだと満足できないのでは?と考えてしまいました。ただ、「JPC」さんから学校の備品の話をうかがった際に、いっぺんに揃えられる強みは確かにあるな、とも感じたので難しいところ……。いちドラマーとしては、ペダルなしで値段を下げてほしいというのが率直な感想です(笑)。

そして、もうひとつはスローン! 「AQX」の4種類すべてに椅子が付いていないのです! これはむしろ、何で?と思いませんか。ドラムセットに100%必要なもので、かつドラムセットを所持していなければほとんどの人が持っていないアイテム。それが付いていないのはちょっと惜しいな、と思わざるを得ませんでした。スローンは意外とその辺の椅子で代用できないので、付属してくれていたら満点でした。

とはいえ、やはりこの価格でこのクオリティのドラムセットが買えてしまうのはコスパ最高と言って差し支えないでしょう! ソナーのドラムは世界各国で使われている、信頼に足るものであり、初心者でも安心して使えるというのも魅力です。ドラムセットが欲しいけれど失敗したくない!という人はぜひぜひ候補に入れてください。

「AQX」は、始めてのアコースティックドラムにぴったりの超コスパキットでした!

「AQX」は、始めてのアコースティックドラムにぴったりの超コスパキットでした!

【取材協力】
「ジャパン・パーカッション・センター ドラムシティ」(運営:コマキ楽器)
〒111-8567 東京都台東区西浅草1-7-1
https://www.ejpc.net/

戸井田満樹

戸井田満樹

平成生まれ。趣味で生きてきたい系男子。東京都出身。学生時代はアメリカの音楽学校にてドラムを専攻。母の影響で家電を使った料理を提案中。料理、ドラム、バイク、スノーボード、犬が生きてく糧です。

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