本連載は、文房具の専門家2人がそれぞれお気に入りの新製品を互いにプレゼンし合う対談企画。専門家として対談を行うのは、テレビ番組「マツコの知らない世界」にたびたび出演する文具ソムリエール・菅未里さんと、文房具コラムサイト「森市文具概論」編集長のきだてたくさんの2人だ。
【プロフィール紹介】
●菅未里(かん みさと/左)……Webサイト「STATIONERY RESTAURANT」を運営する文具ソムリエールとして活躍。大学卒業後、文具好きが高じて雑貨店に就職しステーショナリー担当に。現在は、文房具の紹介、コラム執筆、商品開発、売り場企画などの活動をしている
●きだてたく(右)……1973年京都生まれのライター/デザイナー。自称「世界一の色物文具コレクション(3000点以上)」に囲まれながらニヤニヤと笑って暮らす日々を送る。文房具コラムサイト「森市文具概論」では、文房具魔改造講座などピーキーな記事を連発している
第17回は、きだてさんがコクヨのオフィス通販「カウネット」取り扱い文房具から、知る人ぞ知る有能ステーショナリーや雑貨を紹介。ちょっとしたアイデアが光りまくる製品をご覧あれ。
きだて 今回はね、ファイルとかボールペンみたいなジャンルじゃなくて、オフィス通販の「カウネット」だけでしか売ってないオリジナル文房具を紹介したいと思って。
菅 「カウネット」! 今、文房具好き大注目ですよね。
編集・牧野 えっ? なんで? オフィス通販って、会社で消耗品とかを頼むアレですよね。そもそもオリジナルで文房具作ってるんですか?
菅 いや、すごいの作ってるんですよ。
きだて オフィス通販って、発送も自社でやってるじゃないですか。つまりユーザーの製品に対するクレームとか意見がダイレクトに入ってくるから、「この部分がこうなってたらいいのに」みたいな意見を反映したものが作りやすい。
編集・牧野 あー、そうか。
きだて あと、オフィス通販は母体が文房具メーカーってこともあるでしょ。「アスクル」はプラスだし、「カウネット」はコクヨだし。
菅 「カウネット」はオリジナル品のブランドありますもんね。「カウコレプレミアム」って。
きだて そう、まさに今回はその「カウコレプレミアム」から、便利なやつを3点紹介しますよ。
きだて じゃあまずは、梱包用ガムテープから紹介していきましょうか。これは菅さん知ってるんですよね。
菅 使ってますねー。
特殊な構造で簡単にはがせる「ラクにはがせる布テープ」
きだて これは「ラクにはがせる布テープ」と言います。荷物を送るときにダンボール箱に梱包してテープで封をしますよね。で、受け取った相手がそれを開けるときにありがたいというやつ。
編集・牧野 名前から考えると、簡単にはがせるってことですよね。養生テープみたいに粘着力が弱いとか。
きだて それだと配送中にはがれちゃったりして怖いでしょうが。触ってもらうとたぶん秘密がわかりますよ。
編集・牧野 どういうことだ……? あっ、テープの側面がなんか普通のと違う!
テープの左右両端は無粘着ゾーン。中央は普通の粘着テープだ
きだて 実はテープの端から7mmずつぐらい粘着しないんですよ。だからダンボール箱の口に貼って留めても、はがすときは端っこを持ってはがすと……ほら簡単。ダンボール箱の開梱用カッター、カートンオープナーを使わずこれなら手だけで開梱できる。
編集・牧野 画期的……!
無粘着部からはがしていくと、梱包が手だけで簡単に開けられる
菅 これ、開けるほうもラクなんですけど、貼るのもいいんですよね。
きだて えっ、開けるほうのラクしか認識してなかったな。
菅 ダンボール箱を扱うときって軍手をはめていることが多いじゃないですか。テープを貼ろうとしてテープの粘着が軍手の滑り止めにひっついちゃうことあるから……。
きだて そうか、これだと非粘着面をつまめば軍手にひっつかずに貼れるんだ。
菅 貼るときにテープの端を見つけるのも簡単ですしね。爪でカリカリしなくてもすぐめくれるから。
編集・牧野 すごい。いいことしかないじゃないですか。
菅 あと、私としては引っ越しのときにこれ使ってほしいんですよ。
きだて あー! そうそう。引っ越しの荷造りは絶対にこれ使うべき。
菅 貼るのもいいし、何より荷ほどきするのがめちゃくちゃ早くなりますから。引っ越し先のごちゃごちゃの中でオープナーを探すより、手でビリッビリッといけたほうが圧倒的にラク。
きだて まさにこれから引っ越しシーズンですもんね。
菅 ただでさえ引っ越しはストレス溜まる作業ですから、ちょっとでもラクにできるようにしといたほうがいいんですって。ほんと!(※)
※:菅さんはつい先日引っ越しをされたばかりでした
きだて じゃあ次は僕が「カウコレプレミアム」で1番好きで、めっちゃヘビロテしてるやつ。文房具じゃないんですが、どうしても紹介したくてねじ込んでみました(笑)。
編集・牧野 ゴミ袋みたいですけど。
菅 はい、ゴミ袋です。これも私、好きだな。
ちょっとした工夫で何かと助かる「ゴミ箱いらずのテープ付きゴミ袋」
きだて 社会人なら経験あると思うんですけど、納会とか部署飲みとかで、終業後に社内でちょっとした飲み会するでしょ。で、あのときにゴミを捨てる用にゴミ袋を机の端にガムテープで貼り付けて、臨時のゴミ箱にするよね。
編集・牧野 ありますね。燃えるゴミと缶を分けるために2つ貼って。
きだて あれ、いちいちガムテープでゴミ袋貼ったりするのが面倒じゃないですか。そこでもう最初から袋にテープを付けときましたよ、というのが「ゴミ箱いらずのテープ付きゴミ袋」というわけ。
編集・牧野 おー、なるほどー!
きだて いま僕がずっと使ってるのは10Lタイプなんだけど、他に7Lと40Lがラインアップされています。
フラップに付いた剥離フィルムは簡単にはがせる
菅 こんな感じで袋の口にフラップが付いていて、そこに剥離フィルムがあるでしょ。これをペロッとはがすと……ほら、粘着テープが。で、貼るとこんな感じですね。
きだて よくできているのは、テープ付きフラップとゴミ袋本体の間に、内側にちょっとした切り込みが入っていること。これがないと、ピンとひっぱって貼ったときに袋の口まで一緒にピンと張ってしまってゴミが入れにくい。
切り込みによって、ピンと張っても袋の口はゆったり開いたまま
編集・牧野 ホントだ。この形だと貼っても口はゆるいままだから、ゴミがザラッと入りますね。
きだて これ、オフィスだけじゃなくて、もちろん家庭でもすごく使えるんですよ。たとえば牧野さん、プラモデル作るでしょ。
編集・牧野 ガンプラ記事やってますから、家でも作りますね。
きだて 作業する机の前に貼っておくと、切り終わったランナーとかポリキャップが入っていた小袋とかもザラザラッと捨てられます。あれ、いちいちゴミ箱に捨てに行くの嫌じゃないですか。
編集・牧野 うわー! それ絶対使えますよ。
きだて あと最近は、お子さんが子ども部屋じゃなくて親の目の届くリビングで勉強する「リビガク(リビング学習)」が流行なんですけど、子どもって消しゴムの消しカスを平気で机から絨毯の上にバサバサと払い落としちゃう。そういう場合もこのゴミ袋を貼っておけば安心だし。
菅 あとね、台所でも使うべきです。調理中って何かとゴミが出るんだけど、生ゴミ以外はさっさと捨てたいわけですよ。これをシンクの端に貼り付けといたら、出たゴミはそのまま袋の中に落として。絶対そのほうがラクじゃないですか。
きだて 確かにそうだわ。
菅 ただ、毎日のことなんで、もったいなくてなかなか使えないんですけど(笑)。
きだて 使っていないんかい!(笑) 確かにドラッグストアで普通のポリ袋買うよりはちょっとお高めだけど、でもそんなに無茶なお値段じゃないですよ。10Lは1枚あたり約8円ですから。
菅 いや、そうですね。使ったほうが確実に便利ですもんね。
きだて あと、ひとり暮らしだとゴミ箱買うのもバカらしいし、そもそも置く場所もなかったりするんだけど、これを棚とかに貼っておくだけでスッキリするしね。
編集・牧野 あっ、野外でバーベキューとかするのにも便利そうな気がしてきた。
きだて アウトドアだと買い物袋をゴミ箱代わりにすることあるけど、あれ、風で飛んだりして大変だし。貼っておいたほうが圧倒的にいいよね。
きだて で、3つ目。これは菅さんご存知ですか?
菅 ……いや、初めて見ます。
きだて 「カウネット」ファンを自認する菅さんもまだ知らない新製品。実は僕も先日たまたまさっきのゴミ袋を追加注文するときに見つけたんですけど、これなかなか面白いぞ、と。
菅 この状態で見ても、どういう使い方をする道具なのかわからないですね。何だこれ。
一見しただけだと用途がわかりづらいが、実は菅さんも驚くほどの便利ツール「ふせん貼りつけスライドボード」
きだて 商品名が「ふせん貼りつけスライドボード」って言うんですけども。この黒いカバーの裏に粘着テープが付いているので、ノートPCの表面に貼り付けて、中から透明のボードをこう引き出して……
菅 ああー! そういうことか!
黒いカバー(白いのは貼り付け用両面テープ)から引き出すと、ちょうど付箋が貼れる透明ボードが出現
きだて さすが。もうピンと来ましたね。
編集・牧野 ごめんなさい。僕まだよくわからないんですけど。
きだて えーとね、よくデスクトップPCのモニターの横にToDoを付箋で貼ったりするでしょ。あと、よいことではないけどパスワード書いて貼ったり。
編集・牧野 あ−、ありますね。なるほど、わかったー!
きだて あれをノートPCでやるために付箋を貼り付ける専用ボードなんですよ。ボードはサイズが大小あって、これは小ですね。50×15mmのちょっと小さい付箋がちょうど6枚貼れます。大サイズは普通(75×25mm)の付箋が4枚かな。
カバーをノートPCの表面に貼り付ければ、いつでも付箋の手書きメモを確認できる
菅 これは素晴らしすぎる! 実は私も出先でそれをやりたいときがあって、ノートPCのパームレストに付箋貼ってたんですよ。でもここだとフタの開け閉めでヨレちゃったり、手を置くのにじゃまだったりして。
きだて でしょ。このボードだとじゃまにならないんですよ。付箋に書いてある情報を確認したら、ボードごとカバーにスライドさせて戻せばOK。書いてある内容を他人に見られる心配もない。
菅 付箋がカバンの中ではがれ落ちちゃう心配もないですね。これは頭いいな!
編集・牧野 スライドさせてるうちに付箋がたるんだりしませんか?
きだて 付箋の粘着面がカバー側に来るように貼れば大丈夫かな。
編集・牧野 あっ、そうかそうか。
きだて ただ、「MacBook」だと表面のフチがゆるく湾曲してるのでちょっと貼りにくいんだけど、貼っちゃえば特に問題なく使えますね。
ボードをスライドさせて収納完了。カバーの粘着はかなり強いので、丸みを帯びた「MacBook」だとやや貼りにくい
菅 私のノートPCだと面はフラットだし色も黒だし違和感なくいけますね。いいなこれ。
きだて 僕も外で思い出したToDoなんかは付箋に書いてノートの表紙裏に貼ったりしていたんですけど、それよりはPCに貼れたほうが便利だった。紙のノートよりPCのほうが圧倒的に使う頻度が高いし。
編集・牧野 それにしても「カウネット」ってこういうアイデア文房具も売っているんですね。ガムテープとかゴミ袋は事務用の消耗品だからわかるんだけど、これは完全に個人用の文房具じゃないですか。
きだて オフィス通販のオリジナル文房具、今はもうこんなことになっているんですよ。消耗品とかそういう区別なしで、アイデアの効いたものが買える。
菅 私は「カウコレプレミアム」だと「音の出にくい透明テープ」がすっごい好きですよ。梱包用の透明テープなんだけど、引き出すときにビビビッてあのイヤな音がしないやつ。
きだて あー、あれも優秀ですよね。本当にスーッて透明テープが引き出せるから。
編集・牧野 そんなのもあるんですか。今回の布テープだけでも相当に驚きましたけど。
きだて ですよね。さっきの話、そもそも粘着テープは手ではがれないもんだと僕らも思ってるじゃないですか。だから改良するなんて想像もしてなかったけど、でも、たぶん誰かクレーマーみたいな人が「手で簡単にはがせる梱包テープないの?」とかを「カウネット」の配達の人に言ったんでしょうね。それが実際にこういう製品になってしまうというのがスゴい。
編集・牧野 作っちゃうんですねぇ……。
きだて 昔はオフィス通販って個人で買えないもんだったんですけど、たとえば「アスクル」は個人向けに「LOHACO」って別サイトがあるし、「カウネット」に至っては2018年12月から個人でも買えるようにリニューアルしちゃいましたからね。
菅 誰でも買えちゃうから、プライベートでもぜひ通販オリジナル文房具は試してみてほしいです。
テープの両端(幅約7oずつ)が無粘着になっているため、ダンボールを開梱する際に手で簡単にはがせる布テープ。軍手にもくっつきにくいので、梱包作業の効率が非常に高い。
その名の通り、机や棚に貼り付けてゴミ箱代わりとして使えるテープ付きのゴミ袋。粘着強度はありつつきれいにはがせるので、貼り付け面も痛めにくく、廃棄も簡単にできる。
ノートPCの表面にボードを内蔵したカバーを貼り付けることで、メモ書き付箋が貼っておけるツール。ボードはスライド式で出し入れが自在なので、カバーに収納すれば付箋がはがれ落ちる心配もない。
最新機能系から雑貨系おもちゃ文具まで、何でも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は大手文房具店の企画広報として企業ノベルティの提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。