特別企画
実は置き方からして間違ってること多数

そういえばわりと知らない「脚立の正しい使い方」を専門メーカーに聞いてきた


昨年、日本列島にはたび重なる大型台風が襲来し、各地で甚大な被害をもたらしました。建物の屋根が吹き飛ばされて雨漏りしたり、壁に穴が開いたり、窓ガラスが割れたり。その被害状況や修復作業の様子がSNS等で続々と発信されていましたが、そこでよく指摘されていたのが「脚立(きゃたつ)の間違った使い方」です。SNSでは、脚立を間違って使うことでさらなる被害を呼ぶと危惧されていました。

今、外出を自粛して家にいる時間が増え、この機会に自宅のちょっとした修復や大掃除、庭木の手入れなどをしたいと考える人も多いでしょう。そこで、普段より脚立を使う機会が出てくると思います。脚立を安全に使うにはどうしたらよいか? 脚立・はしご専門メーカーの長谷川工業さんに、正しい使い方と脚立の最新事情を聞いてきました。

シロートは脚立の置き方から間違っている!

一般の方が脚立を使うとき、まず、置き方から間違っているのがほとんどです」と長谷川工業 マーケティング本部広報・広告宣伝課の住田勝課長は説明します。「多くの人は脚立にまたがって作業をしますが、それは危険なのでやってはダメです。昇降面を作業面に正対させ、両足をそろえて立ち、天板や踏ざん(ハシゴ部分)の側面にスネを当てた状態で使うのが正しい方法です」(住田課長)。

脚立・はしご専門メーカーである長谷川工業の住田課長にお話をうかがいました

脚立・はしご専門メーカーである長谷川工業の住田課長にお話をうかがいました

具体的にどういうことか? 以下、脚立の間違った使い方と正しい使い方を画像でお見せしましょう。

間違った使い方その1。よくやりがちなのですが、作業面に対して脚立をまたがるようにしてはいけません。引っ張り動作で後ろに力がかかった場合、後方に脚立ごと無防備な姿勢で倒れる危険性があるからです

天板に立つのも、座るのもダメです。バランスを崩しやすく、倒れたときに無防備になりやすいからです

天板に立つのも、座るのもダメです。バランスを崩しやすく、倒れたときに無防備になりやすいからです

これが正しい使い方。作業面に対して脚立の昇降面を正対させ、両足をそろえ、天板や踏ざん(ハシゴ部分)の側面に両スネなど体の一部を当てて安定させて使用します

脚立は「昇降面への前後の力には強い」が、「側面への前後の力には弱い」のです。脚立を作業面に対して「A」の形に置いてまたがって使うと、たとえば引っ張り作業の場合、後ろに大きな力がかかって脚立ごと倒れる可能性があります。またがったり、天板に座って作業をするとバランスを崩しやすくなるだけでなく、倒れたときに対応が遅れ、頭から落ちるなど大きな事故につながりかねません。

上の正しい画像のように、昇降面を作業面に正対させ、スネを天板側面に当てることで体が前方向に傾くので後ろに倒れにくくなります。倒れた場合でも片足が出て足から落ちることになり、命が関わる大きな事故につながりにくくなります。もちろん、天板に立っての作業は禁止されています。不安定この上なく、ちょっとバランスを崩しただけで脚立から落下する危険性が大きいからです。

なお脚立とよく似た製品として「踏み台」もありますが、天板までの高さが80cm未満のものが「踏み台」と定義されています。踏み台のほうは、天板に乗っても座っても構いません。

高さ80cm未満のものは踏み台です。こちらは天板に乗ってもOK

高さ80cm未満のものは踏み台です。こちらは天板に乗ってもOK

脚立には、作業対象に応じて適正な高さがある

また、「脚立を使用する際には適正な高さがあります」と住田課長。「基本的に、顔の正面に作業面が来るように脚立を選ぶのがベスト」。脚立が低いために顔を上に向けて長時間作業をし続けると平衡感覚が狂い、バランスを崩す恐れがあるからです。

天井付近の作業をする際にも、なるべく作業面が目線になる高さの脚立を使用します。脚立が低いために上向きで作業すると首や手が疲れるとともに、平衡感覚が狂ってバランスを崩す危険性があるから(※写真は作業時のイメージです。実際に電灯の交換をするときは、元のスイッチを切ってから軍手などを装着して作業しましょう)

ただ、一般の人が自宅で使う場合、適正な高さを測ることはできません。脚立の1段の段差は約30cmで、1段違いで製品があるので、一般人が目視で最適な高さの脚立を選ぶのはかなり難しいです。

そこで長谷川工業では「ハセガワAR」(→詳細はこちら)というサービスを無料で提供しています。iPhoneまたはiPadで利用できるサービスで、作業する場所にスマートフォンのカメラを向けると、画面上に脚立が実寸台で現れるというもの。脚立を買う前に適正な高さがわかって便利です。なお、アプリではなくWeb上のサービスなので、いちいちインストールする手間がありません。

ハセガワARを使うと、今いる場所に実物大の脚立と、そこに人間が立ったイメージが映し出されます

ハセガワARを使うと、今いる場所に実物大の脚立と、そこに人間が立ったイメージが映し出されます

上述の通り、脚立の1段の段差は約30cmだそうです。知っていれば、なんとなく高さの目安になるかも

脚立の1段の段差は約30cm。知っていれば、脚立を選ぶときのサイズの目安になります

ハシゴにしないなら軽いほうがいい

さてそんな脚立ですが、意外にも進化しています。長谷川工業では8年前の2012年に「脚軽(あしがる)シリーズ」という、画期的な製品を発売しました。名前のとおり、重量の最大約30%の大幅削減に成功した「軽量脚立」です。なぜこんな軽量化が可能になったのでしょうか?

脚軽シリーズ。今年は、お笑いコンビ「尼神インター」の渚さんをイメージキャラに採用。渚さんは元大工という異色の経歴を持っています

「それまでの脚立は、すべてハシゴ兼用でした。しかし、実際に建築現場などを調査してみると、脚立を伸ばしてハシゴとして使っているケースはほぼ皆無だったのです。プロの人たちはみな、単体のハシゴを別途持っているからです」(住田課長)。

その理由は、脚立を伸ばしてハシゴにしようとすると、大きくたわんでしまい揺れて不安定になり危険。なので建築現場のプロたちは、伸縮式のハシゴを別途用意し、脚立と使い分けていることが多いのです。

脚立を伸ばしたところ。天板の接合部がたわみやすいのです

脚立を伸ばしたところ。天板の接合部がたわみやすいのです

なので、開いてハシゴとして使う際の補強として中央部分は鉄でできています

なので、開いてハシゴとして使う際の補強として中央部分は鉄でできています

従来の脚立は、上の写真のように開いてハシゴとして使う際、強度を保つために天板の接合部分に鉄を使っていました。しかし、ハシゴにする必要がないのであれば、重量のある鉄は不要になります。そこで、ハシゴとしては使わない「脚立専用」として企画されたのが「脚軽シリーズ」。天板の接合部分を樹脂に変更することで、大きく重量を削減することに成功しました。

たとえば「18」タイプと呼ばれる天板までの高さが約170cmのモデルの場合、ハシゴ兼用脚立の重量は9.3kg、脚軽シリーズは6.4kgと、約3kgも軽量に。車の上から脚立を下ろしたり、作業場まで担いで持っていくときに、この3kgの差はかなり大きいわけです。脚軽シリーズは大ヒットし、これまでの累計販売台数は30万台を達成しました。

ハシゴ兼用モデル(左)の天板部分を横から見ると、頑丈にできているのがわかります。いっぽうの脚軽シリーズ(右)はハシゴとして使わないので、天板部分に補強が必要なくスッキリ

高さ約170cmもある18タイプでも6.4kgと軽いので、担ぐのも楽です

高さ約170cmもある18タイプでも6.4kgと軽いので、担ぐのも楽です

天板を使わないなら工具置き場にしてしまおう

そしてこの脚軽シリーズ、2020年3月に初のリニューアルを果たしました。軽量さはそのままに使い勝手が向上したものです。まず、天板に2つの溝をうがちました。もともと立ったり座ったりできない天板はフラットである必要はありません。であれば、ドライバーやペンチなどの工具をチョイ置きできるスペースにしてしまおうと長谷川工業では考えたのです。

工具を取り替えるごとにいちいち腰の工具ベルトに挿すのは面倒。下に落とす可能性もあります。天板に溝をうがつことで、ドライバーなどの工具を転がり落ちることなくチョイ置きできるようになりました。

天板に2本の溝をつけて、そこにドライバーなどを置いておけるようにするアイデア

天板に2本の溝をつけて、そこにドライバーなどを置いておけるようにするアイデア

そのほか、4本の脚についている「端具」と呼ばれるカバーの材質も変更しました。従来は硬いプラスチック製だったのですが、脚立を閉じるときに端具同士がぶつかって「ガチャン」という甲高い音がしていました。近年、建築現場では近隣環境に配慮する傾向が強く、建築道具にも静音性が求められています。そこで今回、脚軽シリーズの端具をやわらかい素材のポリ塩化ビニールに変え、閉じたときの音を軽減することに成功しました。

脚部の脚立を閉じたときの「ガチャン!」という騒音が比較的抑えられるようになりました

脚部の脚立を閉じたときの「ガチャン!」という騒音が比較的抑えられるようになりました

このほか、踏ざんのリブ(凹凸)を強化することで、安全靴の靴底が引っかかりやすくしたことで、すべりにくくもなっています

ブラックボディの脚軽が人気

最後に、脚軽シリーズのもうひとつのポイントが「ブラックボディ」をラインアップすることです。長谷川工業では、脚軽シリーズの前からブラックカラーの脚立「クロコシリーズ」を展開していました。それまで、脚立には白銀色モデルしかなかったため、複数の業者が入り乱れる建築現場ではどれが誰のものか混乱してしまうことが頻繁に起こっていたそう。クロコシリーズの登場はそうした現場の混乱を避けることと、何より「カッコいい」ということで大ヒット商品になったそうです。それが脚軽シリーズにも受け継がれているわけですね。

ちなみに、テレビの撮影クルーの間でも、ブラックタイプの脚軽シリーズを使っている人が多いのだとか。取材陣に選ばれる理由としては、軽くて機動性が高いというメリットのほか、ブラックタイプだと映り込みしにくいというのもあるようです。

脚立といえばシルバー色が一般的でしたが、ブラックというだけでも普通にカッコイイ

脚立といえばシルバー色が一般的でしたが、ブラックというだけでも普通にカッコイイ

ものすごくひんぱんに使うわけではないとしても、備えあれば憂いなしですから、脚立は一家に1台持っておくと安心です。ただ、一般家庭では脚立とハシゴを2台置くスペースはないと思うので、通常のハシゴ兼用タイプが便利。いっぽう、DIYが得意で脚立をひんぱんに使う人なら、軽く使える脚軽シリーズは魅力的な選択肢となるでしょう。

近藤克己(プラスワン・クリエイティブ)

近藤克己(プラスワン・クリエイティブ)

1966年生まれ、福島県出身。大学では考古学を専攻。家電製品のフリーペーパーを発行しつつ、ライターとしても活動中。得意分野は家電流通、生活家電。趣味は、ゴルフ、ギター、山登り、アニメ、漫画。

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