年末年始あたりによく見かけたこのCM、覚えていませんか?
CMの動画はコチラ→https://www.youtube.com/watch?v=B59lCPGKsdE
ダウンタウンの浜ちゃんが重い物を持ち上げまくっている「マッスルスーツ」のCM。そんな未来っぽい商品がもう実用化されているの!? と驚きました。
ただ見た感じ、何かを背負ってるだけで腕周りには何も装着していなそう。これで本当に効果があるんでしょうか?
いわゆる「パワードスーツ」って、こういうイメージですよね
……ということで、「マッスルスーツ」の販売元、株式会社イノフィスさんの広報の方に話をうかがってきました。
「マッスルスーツ」がいっぱい!
――こういう補助スーツって、もっと全身にいろいろなパーツをくっつけて……というイメージがありましたけど、ホントにこれだけで重い物を持ち上げられるんですか?
「そう思いますよね(笑)。開発した東京理科大学の小林宏教授も、最初は腕にくっつけるような器具を考えていたそうです。でも研究していく中で、実際に重い物を持ち上げる作業でつらくなるのは“腰”だというのがわかってきたんですね。工場で重い物を持ち上げたり、農作業で中腰の姿勢を続けていたりすると、1時間くらいで腰が痛くなってしまう」
――でも、実際に物を持つのは手とか腕じゃないですか。
こんなあっさりした器具で大丈夫なの!?
「なのでマッスルスーツを装着していても、長時間荷物を持ち続けていれば手や腕は疲れてきます。マッスルスーツで補助するのはそこじゃなくて、“持ち上げる”作業や、“中腰の姿勢をキープする”ことなんですよ」
――ああー、何となくわかってきました。人間の限界を超えたメチャクチャ重い物をガンガン持ち上げるというよりは、持ち上げられるけどつらい……という作業を補助してくれるようなものなんですね。
「確かに、自分の力で持てないようなものはマッスルスーツを使っても持ち上げるのは難しいです」
――で、実際どれくらいラクになるんですか?
「“25.5kgf”と表現していますが、25.5kg分の力で補助してくれるということになっています」
――じゃあ30kgの物を持ち上げたら、4.5kgくらいに感じるということですか?
「そう単純にはいかないんです。実は物を持ち上げるときって、その物の重さに加えて、自分の上半身の重さもかかってくるんですよ。たとえば体重50kgのうち、上半身が30kgあったとしたら、物の重さ+30kgを持ち上げなきゃならないんです」
――あー、そうか。自分の上半身の重さもあるんだ。
「何も持っていなくても、中腰になっている状態を続けていると腰がつらくなりますよね。その負担を軽減する器具と考えてもらってもいいと思います」
それじゃ装着してみましょう。見るからに非力そうな、編集部しえるが挑戦。
18kgの荷物を用意してもらいました
素の状態だと、ギリギリ持ち上げられるかな……という感じ
「確かに、腰にきますね……」
それではいよいよ「マッスルスーツ」を装着!
使わせてもらうのは「マッスルスーツEvery」の「タイトフィット」。
“背負う”というよりは“腰に付ける”という感じです
ももの前面にこのパッドを当てるのがミソ!
このポンプをシュコシュコすると……
「人工筋肉」に空気が送り込まれて……
肩とももが後ろに引っ張られるような感覚に!
ちなみに「人工筋肉」とはこういうもの。この段階ではフニャフニャしていますが
空気を入れるとパンパンにふくれていきます
硬く、弾力がある状態で、体をサポートしてくれるわけです
18kgの荷物も……
「重いは重いけど、さっきよりスッと持ち上がりますね! 腰が痛くない!」
ボクも付けさせてもらいました
前傾姿勢になったときにすごくラク! 上半身が吊られているような感覚で、まったく力を入れなくてもこの体勢をキープできます。
30kgの荷物も……(「20kg」の紙はスルーしてください)
確かに、ちょっとラクに持ち上がる! 手は痛いけどね
――これ、実際にはどういうシチュエーションで使用することを想定しているんですか?
「やはり工場や畑での農作業。さらには、お年寄りを抱え上げたりする機会が多い介護の現場でも活躍してくれます。ご家庭でも、腰に不安のある方だと前屈みになる掃除などがすごく大変らしくて、『マッスルスーツを装着することで自分で掃除できるようになった』という声もいただいています」
「マッスルスーツ」をお借りして、自宅に持って帰ってきました。何に使おう……
買い物で重い荷物を運ぶのに……と思ったものの、補助してくれるのは“持ち上げる”ときなので、長時間持ち続けることに対してはあまり効果なし。今回借りた「タイトフィット」だと、付けた状態で歩くのも難しいし……(歩きやすい「ソフトフィット」タイプもあります)。
やっぱり、あまり移動せずにする作業に向いていそうです。腰の疲れる風呂掃除が、だいぶラクに!
マッスルパワーで岩を砕く! ……みたいなSFチックなものではなかったですが、体の負担を軽減してくれる便利な器具でした。将来的には、こういったマッスルスーツが一家に一台あって、介護や家事、ちょっとした作業に気軽に使える未来を目指しているそうです。今はまだ、何にでも大活躍! というわけにはいきませんが、中腰での作業がつらい方にはピッタリなんじゃないでしょうか。
藤子・F・不二雄先生に憧れすぎているライター&イラストレーター。「デイリーポータルZ」「サイゾー」「エキサイトレビュー」他で連載中。