錠剤を溶かした洗浄液に浸すのが一般的だった義歯(入れ歯、部分入れ歯)のお手入れがもっとラクになる、スプレータイプの洗浄剤「ディープクリーン シュッシュデント」(以下、シュッシュデント)が花王から登場。製品名のとおり、シュッと吹き付けるだけで洗浄できる手軽さが特徴です。なお、「部分入れ歯用」と記されていますが、総入れ歯にも使用可能。マウスピースや矯正用リテーナーの洗浄にも使えるので、入れ歯をしていない人も要チェックです!
入れ歯だけでなく、いびきや歯ぎしり対策などのマウスピースや矯正用リテーナーもシュッシュデントで洗浄可能。ただし、洗浄剤の使用を推奨されていないものもあるので、注意しましょう
※この記事で使用している入れ歯は模型です
歯を失ってしまった際に装着する義歯には、「総入れ歯」「部分入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」の4タイプがあり、取り外しできる総入れ歯と部分入れ歯は自身によるケアが必要です。義歯用歯ブラシで洗うだけでは汚れや菌を落としきれないため、多くの人が洗浄剤を使っており、その大半が、水を入れた容器にタブレット状の錠剤を投入し、そこに入れ歯を浸して洗浄するタイプを使用。洗浄時間は最短5分という製品が主流ですが、ひと晩くらい浸したほうが高い洗浄効果を得られるとあり、花王が行った調査によると、ほとんどの人が「長く浸したほうがキレイになる気がする」という理由で、夕食後か就寝前に5時間以上浸して洗浄しているとのこと。このように少々時間はかかるものの、歯ブラシで洗う、洗浄剤に浸すという作業自体はそれほど難しいものではありません。しかし、高齢になると細かい作業がしづらくなるもの。筆者にも入れ歯をしている家族がいますが、錠剤が封入されている袋を開けるのですら手間取っていました。
錠剤を水やぬるま湯で溶かして洗浄するタイプが日本国内では主流
普通なら手でカンタンに開けられる個装でも、加齢で指先が曲がってしまい力が入れにくくなった筆者の家族はうまく破れないこともありました
家族にとっては普通のことなので別段気に留めることもありませんが、来客時には見えないところに移動させるなど配慮しなければならない場合も
こうした些細な手間を解消し、よりカンタンに入れ歯洗浄を行えるようにと開発されたのが、今回紹介するシュッシュデント。スプレータイプなので、水を用意したり、毎回開封して取り出す作業は不要! レバーを引けば泡が噴射され、その泡が入れ歯を包み込んで洗浄してくれます。このような泡スプレータイプの入れ歯用洗浄剤は製品化されておらず、シュッシュデントが日本で唯一のもの(2019年7月時点)。しかも、花王が初めて手がけた入れ歯用洗浄剤です。とはいえ、吸い上げた洗浄剤に空気を混ぜて泡立てる機構を採用したボトル自体は、めずらしいものではありません。装置もシンプルな機構なので、それほど工夫のしようはないものの、微妙な配置やサイズ、洗浄剤の配合で泡の質は違ってくるといいます。花王は食器用洗剤「キュキュット CLEAR 泡スプレー」や浴室用洗剤「バスマジックリン 泡立ちスプレー」、衣料用漂白剤「ワイドハイター クリアヒーロー ラク泡スプレー」といった泡スプレータイプの製品をいくつも発売しており、これらの知見がシュッシュデントの開発にも役立ったとのこと。単に泡にしているだけのようでいて、用途に合わせて最適な泡質や量の出方になるように調整されているのです。
2020年10月3日発売予定の「ディープクリーン シュッシュデント」。パッと見て用途がわかる外装をまとった状態で販売されます(右)。容量は270mlで、想定価格は900円前後
ボトルは手の大きさを問わず、しっかりと握れるユニバーサルデザイン。握った時に親指と人差し指の付け根あたりにボトル上部がホールドされるので、レバーを引く指先に力も入りやすいでしょう(とはいえ、レバーを引くのにさほど力は必要ありません)
洗面台やサニタリールームには同じような形状のボトルがあることが多ので、それらと間違わないように、シュッシュデントは背を低めに設計
使い方は超カンタン。入れ歯を容器に入れて、シュッシュデントのレバーを引くだけ。3歯分の入れ歯に対して3回スプレーするのが目安となっており、これを1回の洗浄で使う分量とした場合、1本で約90回分使用できます
界面活性剤などの組み合わせにより、高濃度で密着する泡を実現
スプレーして5分待ったら、水で洗い流して完了です
肝心の洗浄力については、スプレーして約5分でヌメリやニオイを落とし、99.9%の除菌ができるといいます。入れ歯には、歯垢のような視認できるもの以外にも細かな汚れが付くもの。たとえば、普段行っているデンタルケアのあと、義歯床粘膜面(顎堤や口蓋の粘膜に接触する義歯床の表面のこと)や部分入れ歯の金属部を綿棒でこすり、ヌメヌメとした付着物が付いたなら、それは汚れが残っている証拠です。実は、このヌメリはバイオフィルムという細菌と細胞外物質が合わさった菌の集合体。口臭、義歯性口内炎を引き起こしたり、残存歯が虫歯になる原因となるものです。バイオフィルムはブラッシングだけではなかなか取り切れないため、入れ歯洗浄剤を使うのですが、一般的な錠剤タイプは酸化効果で表面から少しずつ壊していくので、汚れ具合によっては時間がかかるうえ、下のほうの汚れが残ることも。いっぽうシュッシュデントは、入れ歯とバイオフィルムの間に入り込んで剥がすことで取り残しを低減し、短時間で洗浄効果を発揮します。
歯茎のような部分が義歯床粘膜面。裏面には凹凸があるので、ブラシで取り残しなく磨くのはなかなか大変です。部分入れ歯の金具部は残存歯に引っかけて装着するため、この部分に汚れが付いたままだと虫歯になる可能性も
シュッシュデントはこのイメージ図のように、バイオフィルムをペロンと剥し取るのだそう
短い時間で洗浄が完了するシュッシュデントは、従来の洗浄方法よりも気になった時や思った時にサッと洗浄できるのが大きな魅力。入れ歯にスプレーして約5分放置し、あとは水で洗い流すだけなので、これまで入れ歯を長時間外すタイミングでしか洗浄できなかった人も、来客前や食事のあとなど、まさに歯磨きと同じような感覚で使うこともできます。長時間外すことができない矯正用のマウスピースなどとも、シュッシュデントは相性がよさそう。今回、実際に洗浄力を試すことはできませんでしたが、入れ歯やマウスピース、矯正用リテーナーを装着している人に教えてあげたくなる画期的な製品だと思います。発売日時点では本体と詰め替え用パウチのみの販売となりますが、シュッシュデントの使い方からすれば携帯用も欲しいところ。今後のラインアップ拡充を期待しています。
詰め替え用パウチ(容量215ml)は想定価格700円前後と、本体を買い換えるより割安
<追記>
2021年4月10日に、持ち運びに便利なサイズの「ミニサイズ 80ml」が発売されました!
モノ雑誌のシロモノ家電の編集者として6年間従事した後、価格.comマガジンで同ジャンルを主に担当。アウトドアからオタク系まで意外と幅広くイケちゃいます。