2020年8月に紹介した「1日1ページタイプ」の手帳は、特に自宅での作業を余儀なくされるビジネスパーソンにとって、日常のタスクと仕事をまとめて管理するためのフォーマットとして有効だった。
いっぽう、従来型の「月間+週間タイプ」の手帳は、仕事の進行管理に向いている。1〜2週間を見開きで管理しつつ、タスクやその関連情報をまとめる点では、これらのフォーマットは依然として有効だ。ただし、「1日1ページタイプ」と比べると記入面は大きくないので、大幅に増えた在宅の時間でやるべきこと、つまり日常のタスクは別の方法で管理したほうがいいだろう。
2021年注目の最新手帳を一挙紹介!
今回セレクトした2021年版の手帳は、サイズや厚み、見開きのフォーマットなどは異なるが、長期間の予定の一覧性が高いという点ではどれも共通している。
また、地図や路線図といったオーソドックスなコンテンツが掲載されていることが多いのも、「月間+週間タイプ」の手帳の特徴と言える。これは「1日1ページタイプ」とは異なり、予定記入欄のページの割合が少ないから可能なことでもある。
同時に、個人の興味・関心を記録するためのページが増えてきているのも、最近の傾向だ。具体的には、「ウィッシュリスト」や本・映画のリストページなどがそれだ。予定記入欄を中心として、これらのコンテンツがどれだけ含まれているのかが選び方のポイントのひとつと言えるだろう。
記入欄のフォーマットについては毎回触れていることだが、今回紹介する手帳は、個性的なタイプが多い。基本は月間ページと週間ページだが、週間ページのみのものや、ノートページを自分なりにアレンジできるようなものもある。
また、どんなことをどれだけ細かく記入するのか、またほかのノートと組み合わせるのかどうかも選ぶ時のポイントになる。いたずらに機能が満載であればいいわけではないので、自分の使い方を見極めてからそれに合ったものを選ぼう。
これは(1)とも関連するが、サイズは大きければいいわけでも、小さければいいわけでもない。デスクダイアリーとして使うのか、あるいはカバンの中に入れてひんぱんに参照するのかで、サイズはおのずと決まってくる。
また薄い手帳ならば、公私で2冊使いしたり、ノートカバーにセットしてノートを併用したりといった使い方が可能になる。
さらに、会社や自宅のリモートオフィス、はたまた電車の中など、使用が想定される場所や、プライベートについて書く分量も、サイズ選びにおいて考慮すべき点だ。
今回選んだ手帳の中には、「ウィッシュリスト」や映画・本などの記入ページが用意されているものがある。また、詳細に描かれた「全国鉄道地図」を収録したモデルもある。これらのページが、個人の仕事用の予定管理に必要かどうかも選ぶ基準になるだろう。
しかし、繰り返しになるが、記入や参照用のコンテンツが多ければいいというわけでもない。予定以外の情報は、ほかの冊子で管理するという考え方もある。1冊の手帳にどこまでのことを任せるかをよく考えて選ぼう。
クオバディス「Note21」の「ミント」。表紙は、ハードカバーでA5サイズ。縦のゴムバンドが輸入文具らしい、オーソドックスなたたずまいだ
言わずと知れた、バーチカル式の元祖、クオバディスが手がけたレフト式手帳。
予定記入欄の構成は、左側のページは予定記入欄で、右側はメモスペースだ。オーソドックスな構成ではあるがよく見ると、右ページ上部には当月のカレンダーが、下部にはグレーの地を敷いたToDoリストが用意されている。
「Note21」のレフト式予定記入欄は、分割の点こそ付いているが、時間軸は設定されていない。また「Dominante」の枠は、その日の最重要事項を記入するスペース。シンプルだが、ポイントは抑えられているようだ。 なお、各ページ右下には、ちぎってしおり代わりにできる切り取り線が用意されている
巻末には、「MY WISH LIST」というページを収録。このようなユーザーの興味関心をメモするページが用意されたのは、もしかしたら近年の日本産手帳の影響かもしれない。
巻末の「MY WISH LIST」。始めたい活動や趣味、行きたい場所などを記入するページ。日本の手帳ではよく収録されるが、クオバディスの手帳では珍しいコンテンツ
月間ブロックの1日分のスペースは無地。「Note21」は「ジャパンエディション」なので、日本の祝日が記されている
「NOLTY アクセスA5ガントチャート」の「グレー」
近年、いろいろな手帳で採用されることが増えてきたガントチャート。と言っても、そもそも1949年以来の歴史を誇る「能率手帳」には、以前から収録されていた。したがって、本モデルのガントチャートは、その歴史の流れをくんだ正統派と言える。
ガントチャートを本来の用途であるタスクの進行管理に使う際、見開きA4サイズのこの手帳は最大の効果を発揮する。開くだけで、やる気も出てくるだろう。もちろん、ハビットトラッカーのような最近の使い方をしてもよい。また、コロナ禍でのリモートワークを踏まえ、月間ブロックでは家族の予定を把握し、ガントチャートでは仕事の進行管理をするような使い方も可能だ。1冊に月間のフォーマットが2種類用意されている本手帳の魅力は、そこにある。
月間ブロックのページ。1日の欄は、上下で2分割されている。左端には週番号、右端には月ごとのインデックスが付いている
ガントチャートページの記入例。見開きA4サイズで21項目記入できるので、1か月のタスク管理には十分だろう
巻末のヘルスチェックカレンダー。女性向けの手帳にはよく収録されているコンテンツだが、コロナ禍の現在では、男性も日々の体温を記録するなどの使い方が考えられる
「SUNNY SCHEDULE BOOK デイリー STANDARD」の「ミディアムグレー」
市販の手帳のほとんどは、月間ブロックの予定欄が収録されている。そうなると、それ以外のページをどんなフォーマットにするかで、手帳の個性が決まってくるわけだ。それが1日1ページならば「ほぼ日手帳」になるし、週間バーチカルならばクオバディスの手帳や「ジブン手帳」といった具合にだ。
そんな中、「SUNNY SCHEDULE BOOK デイリー STANDARD」は、月間ブロック+ノートページ。一見スタンダードに見えるが、ノートページに時間軸と分割点を用意することで、ある意味“万能”とも言えるフォーマットを作り出した。
具体的には、ページ左端の縦に備えられた24時間の時間軸と、最上下部に付けられた4分割するための3つの区切りの点だ。この工夫によって、バーチカル式にも、レフト式にも、1日1ページとしても利用できる。
ノートページをバーチカル式的に区切った例。ページ左端のさりげない24時間の時間軸を生かす使い方だ。ウィークデーのみスケジュール管理し、右ページの4分の3をメモスペースに使っているのも面白い
ノートページを1日1ページ風に利用した例。元々太めの縦線で区切られているページ左側4分の1の中をその日の予定欄として使い、関連するメモや注意書きを右側スペースに書いている
ちなみに、このフォーマットのノートページは365ページも用意されている。つまり、1日1ページとして使っても1年分もつわけだ。実際は、さほど忙しくない日は3日とか1週間で1ページを使うと考えると非常に自由度が高いことがわかる。
それでいて、映画や本の記録などのコンテンツページも充実。表紙の横にかけるゴムバンドも今風。この手帳が使いこなせたら、その1年は充実しそうだ。
月間ブロックページ。1日のスペースは2分割され、左ページ欄外は方眼が採用されている。なお、文字のフォントは繊細かつシックな感じ
「レプレ ドゥーエ B6」の「ブラック」
ハイタイドの「レプレ ドゥーエ B6」は、数年前に登場し、今や各社からリリースされている「時間軸なしバーチカル」タイプの1冊。見開き1週間の各日の予定欄がざっくりと3分割されており、3種類の情報を書き分けられる。下の写真では、「WORK」「ToDo」などの項目別だが、家族の各メンバーの予定でもかまわないわけだ。
週間ページの記入例。時間軸として使えるドットが用意されているが、2本の横線で3分割されており、「WORK」「ToDo」「PRIVATE」のように項目を分けて記入することもできる
ほかのページにも工夫が施されている。
たとえば、「MONTHLY TO DO」のページ。これは、文字どおり、当月にやることややりたいことを記入するページで、見開きに1年分の記入欄が用意されている。タイトルに「TO DO」と入ってはいるが、やりたいことや目標などを標榜しておくだけでもよいだろう。個人の興味・関心を記録・参照するページが増えているのが近年の手帳のトレンドだが、本製品もその流れに沿ったものだと言える。
「MONTHLY TO DO 2021」の記入例。各月にやるべきことを自由に記入できるページ。ToDoのほか、希望や目標を書いておくのもよいだろう
月間ブロックのページ。カレンダー的な縦の線を省いていることで、数日連続するような予定を記入しやすくなっている。1日のスペースは、3本のドット罫で縦に4分割されているので、時間帯別や項目別に予定を記入できる
「ミニマルダイアリー 月間」の「黒」
「ミニマルダイアリー」は、記入と参照が簡単で、どこででも利用できるという特徴を極限まで追求しつつ、デザインフィルならではのスタイリッシュなテイストでまとめた1冊。ページを可能な限り絞っており、そのおかげで本体はとても薄い。
全部で36ページなので、本当に薄い。表紙は箔押しで高級感あり
近年の手帳の傾向として、使う人の興味・関心のほとんど、またはすべてを受け止めるためのページが盛り込まれているという特徴があげられる。行きたい場所ややりたいこと、各種の目標などがそれだ。
いっぽう、この手帳はコンテンツを欲張る近年の手帳の対極にあるものだ。「薄さ重視! でも月間見開きページの中で、仕事関連のことはまとめてしまいたい」という、いわば私生活重視の人のための1冊だろう。つまり、仕事のことはこの手帳にすべてまとめておき、勤務時間以外では開かない。手帳の選択肢は枚挙にいとまがないこの日本で、この手帳をあえて選ぶのはつまり、そういう生活を選ぶということにほかならない。覚悟してしまえば、それもよいかも。
あえての使い方提案ではあるが、公私で2冊を併用するとか、ノートを別に用意するとかの方法もある。あくまでも、あえて、だが。
月間ブロックページ。左端には、縦方向のカレンダーも用意されている。このサイズで、2系統の予定・情報が記入できるのはありがたい。最下部のメモスペースも便利
薄さの秘密は、中ミシン綴じ。これで開きのよさと丈夫さを確保している。なお、日ごとの六曜の記載もあり
A4サイズの「Appoint E1045」
デスクダイアリーとは、その名のとおり、会社の机の上にいつも置いておく手帳。1冊に予定やタスク管理、メモ・議事録などが集約できる。この製品の場合は、サイズと収録コンテンツがそれを実現している。
まず、サイズはA4、つまり見開きでA3サイズ。これならば、月間ブロックの中にどんな予定もほぼ記入できる。また、レフト式の時間軸部分も時間をなぞるだけでなく、リスト的にも利用できる。
月間ページ。圧倒的なサイズは、多少ラフに記入しようが、たくさんの予定を密に記入しようが受け止めてくれる包容力がある。上部のミニカレンダーもさりげなく便利
週間ページ。いわゆるレフト式だが、左側の予定記入欄は、項目メモ的にも利用できる。右側のメモスペースの上下には、細かな分割点があり、自由度は高い
さらにノートページは、左上にわざわざ「THEME」とあり、どんな会議の情報もきっちり記入できそうな、事務用品的包容力を漂わせている。
圧巻なのは、巻末の「全国鉄道地図」だ。このサイズはさながら地図帳で、これさえあれば、どんな出張の計画もこなせそうだ。そのほかの便覧も古典的な手帳のそれで、これをデスクの上に置いておけば、どんな大プロジェクトも乗り切れそう。そんな気分にさせてくれる1冊だ。
巻末の「全国鉄道地図」。JRの各駅名が記載されている。見開きA3で何ページにもわたって収録されているのが圧巻。これとは別に、各地方の地下鉄路線図や首都圏のみの路線図も用意されている
「キャンパスダイアリー」の「ウィークリー・ホリゾンタルレフト」タイプのA5サイズ(品番:ニ-CWHS-A5-21)
レフト式と呼ばれる手帳のほとんどには、大抵月間ページが用意されているが、これは正真正銘のレフト式手帳で、月間ページは収録されていない。また、時間軸も設けられていない。
週間レフト式ページの使用例。上下に分割用の点が3か所あり、縦に4分割できるので、予定やタスクなどを書き分けられる
週間レフト式ページの右上に備えられたミニカレンダー。前月、当月、翌月と3か月を網羅していて親切だ。月間ブロックページがない手帳としては、実は重要なポイント
本製品の使い方としては、全体の予定は会社のイントラネットで管理しつつ、細々した詳細や関連事項などを本製品にメモするのがいいだろう。また、同社のノートカバーに「キャンパスノート」と一緒にセットして使うのも便利そうだ。
年間カレンダー。見開きで12か月のオーソドックスなタイプだが、月齢や六曜なども記載されている。大まかな行事を記入するのに役立つ
「週間ブロック手帳」のB6正寸、水彩カバーモデル(品番:21WDR-CB03)
マークスの手帳は、「EDiT」ブランドに代表されるように、あくまでスタイリッシュで、やや意識高い雰囲気を常にまとってきた。しかし、新作「週間ブロック手帳」は、何とも地に足のついた方向に舵を切っている。
週間ページこそ、はやりのブロックタイプだが、罫線は方眼を採用。予定管理にはもちろん、メモにもタスクリストにも使える。下記の記入例では日記・ログとして使っているように、予定管理よりも記録に向いている感じだ。
週間ブロックの使用例。予定よりはメモや記録に向いている印象。日付横のグレーのチェックボックスも、気がきいている
また、ページ左上のハビットトラッカーは、5項目に対応。1週間単位なので、強迫観念にとらわれない感じがいい。あくまでライトなのだ。
そしてコンテンツページ。これも夢とか目標という大げさなものではなく、興味・関心に絞られているのが地に足がついている感じだ。
「ウィッシュリスト」は、1ページで40項目書き込める。特に用途が限られていないので、自由に利用できる
「Monthly Events」のページは、見開きで1年間のイベントが記入可能。記録用として使ってもいいし、やりたいことのリストとしても利用できる。各月のスペースは無地なので、行を埋めなくてはならないという感覚には陥らず、気軽に使えるのもポイント
「見開き2週間バーチカルダイアリー」のA5スリムの「ネイビー」(品番:1000116179)
「見開き2週間バーチカルダイアリー」は、今回取り上げる中でも、ひときわ変わった記入フォーマットを採用した薄いタイプ。
見開きで2週間のバーチカルというパターンは、従来品ではあまり例がない。この新フォーマットをA5スリム程度の縦寸に納めているので、記入欄には縦幅は望めない。しかし、マーカーで色分けするログなどには十分なサイズ。2週間のログを一覧できる機能は、この手帳の最大の特徴と言えるだろう。
2週間バーチカルのページ。見開きの横方向が日付、縦方向が2週間分の時間軸というレイアウト。左端にはメモスペースが用意されている。細かな予定管理というより、2週間のタイムスケジュールを一覧できることが本製品最大の魅力だ。また、日付のすぐ下にはピンク色の地が敷かれており、ここにその日の最重要事項などが記入できる。罫線の絶妙な濃さやフォントなどの細部も、同社らしい繊細さがある
月間ブロックページ。1日のスペースは上下2分割で、月齢と六曜の記載もあり。左側と下のメモスペースは横罫を採用
インデックスは、月間ページと2週間バーチカルページが対応しており、開きやすい
本特集で取り上げた手帳に共通するのは、一覧性とメモスペースの存在だ。
1週間または2週間のスケジュールを見開きで一覧できると、予定も立てやすいし、仕事の流れもよく見える。関連する情報をひとつの面で確認できるのもメリットだ。
「ほぼ日手帳」が登場するまでの市販の手帳は、そういうスタイルが中心であり、それは仕事中心の使い方をする限りはまだまだ有効だと言える。同時に、個人の趣味・嗜好ややりたいことのためのページも、各社とも形こそ異なれど、増えてきているようだ。そのいっぽうで、「ミニマルダイアリー」のように、予定と最小限のメモ以外のページを省いた手帳も誕生している。
2021年版の手帳選びの際は、コアとなる予定記入欄とメモ欄がどんなレイアウトになっているのか、またコンテンツページにはどのような情報や記入欄が用意されているのかを、自分の希望に照らして整理・リストアップすることで、最適な1冊を選べるはずだ。
本特集で紹介した9冊のスペック比較表
手帳評論家・ふせん大王。知的生産の面から文具・手帳について執筆。主な著書に「手帳と日本人」(NHK出版新書)や「凄いiPhone手帳術」(エイ出版社)などがある。