料理に使う包丁は、長くひんぱんに使用するものだからこそ、機能性や使い勝手にはこだわって選びたいですよね。しかし、包丁にはさまざまな種類のタイプや大きさ、刃の素材があって、どの製品を選べばよいか迷ってしまいがち。そこで本特集では、価格.com人気包丁ランキングで上位の製品を中心に、家庭向けとしておすすめの包丁をピックアップ。さまざまな食材を実際にカットして感じた詳しいレビューとともに、「切れ味のよさ」「扱いやすさ」「手入れのしやすさ」をそれぞれ5点満点の評価形式でご紹介します。
マガジン編集部が実際に使ってわかったおすすめの三徳包丁10選を発表します
<監修・取材協力> 刃物や三省堂 廣瀬店長
日本の包丁のすばらしさを1人でも多くの人に届けるべく、YouTubeやブログなどを通じて包丁の選び方や悩み相談、メンテナンスに関する情報を発信。その人に合った「一丁」を親身になって探してくれます。
メインの包丁として選ぶのであれば、あらゆる食材に対応できる「三徳包丁」か「牛刀」から1本買うのがおすすめ。どちらも「万能包丁」として広く愛用されている包丁です。
▼三徳包丁
肉、野菜、魚などに幅広く使えて「3つ徳をする」という由来から名付けられた、家庭用としては最も一般的な包丁です。刃先がゆるやかにカーブしており、刃渡りは、16〜18cmが標準サイズ。刃幅が広く表面積が大きいため、キャベツの千切りやリンゴの皮むきなどに適しています。
上から下にまっすぐ切り落とす(押し切りの)使い方に適している包丁です
▼牛刀
三徳包丁よりも刃幅が狭く、刃渡りが長めの「牛刀」は西洋の万能包丁。大きい肉を切り分けたり、刺身を引いたりするときに好んで使われます。刃渡りは18〜21cmが標準サイズ。刃元から刃先にかけてのカーブが鋭く長いため、初心者にはやや扱いづらく感じる面もあるでしょう。
プロの料理人が好んで使うのがこのタイプ。峰に指を添えて、前後に引き切りする使い方に適している包丁です。迷ったら「三徳包丁」を買ってみて、物足りなく感じたらほかを試してみてください
▼小三徳包丁・ペティナイフ
手が小さい人や、力の弱い高齢者におすすめなのが小型包丁。刃渡りは13cm前後の小ぶりなものが多く、皮をむいたり、飾り切りをしたりするような細かな作業に向いています。
刃の素材も注目したいポイント。それぞれ切れ味のよさやメンテナンスの楽さなどに一長一短がありますので、性質を理解したうえで購入しましょう。
▼鋼(はがね)
耐久性・切れ味ともにすぐれており、プロの料理人が好んで使う素材です。肉や魚も難なく切れるうえ、切れ味が落ちても研ぎ直せば復活するので、手入れをすれば半永久的に使えるのがメリット。いっぽうで錆びやすいため、使用後はすぐに洗って水滴を拭き取る必要があります。
ご自身でマメに研いで使うなら、鋼がおすすめ。ステンレスに比べて研ぎに時間がかからないため、研ぎの工程も含めて楽しく扱えるはず!
▼ステンレス
錆びにくく手入れが楽なステンレスは、家庭向け包丁としては最も一般的な素材。鉄にクロームを添加した合金素材で柔軟性がありやわらかいため、モリブデンやバナジウムなどの素材を混ぜ込むことで強度を高めている製品も多いです。比較的リーズナブルなので、切れ味が悪くなったら買い替えやすいのもメリット。
昔は「ステンレスの包丁は切れない」と言われていましたが、最近は品種改良を重ねて、鋼の切れ味に近いところまで性能が向上しました
▼セラミック
非金属なため、金属のニオイ移りや錆びを心配しなくてよいのがメリット。熱に強いうえに軽量で、除菌や漂白も可能。いっぽう、耐久性は金属に比べて劣るため、カボチャのように硬い食材を切るのには不向きです。
柄の素材も、好みが分かれやすいポイントなので忘れずチェックしましょう。
▼木
白木(ホウの木)や紫壇、黒壇などを採用した木製の柄は、濡れた手で握っても滑りにくいのが魅力。金属よりも朽ちやすい弱点はありますが、使えば使うほど、ゆっくりとではありますが自分の手の形になじんでいきます。
▼ステンレス
ステンレス製の柄は、見た目がおしゃれなうえに劣化しにくく、衛生的に使えるメリットがあります。いっぽう、濡れた手で握ると滑りやすく、冬場は手が冷たくなるデメリットがあります。
▼樹脂
ステンレスに比べて滑りにくく、冬場でも手が冷たくならない樹脂製の柄。見た目が安っぽくなるデメリットはありますが、安価に購入できて木製よりは衛生的です。
ここからは、マガジン編集部が価格.comで人気の包丁を実際に試してわかったおすすめの三徳包丁を紹介します。
さまざまな食材を実際にカットして「切れ味のよさ」と「扱いやすさ」をチェック
使用後は、包丁を洗って「手入れのしやすさ」も確認しました
価格.com人気包丁ランキングで6位(2023年9月12日時点)を獲得する、刃体からハンドルまで継ぎ目がない一体構造のオールステンレス包丁。刃先の厚みを薄く仕上げる「スキ加工」と「三段階研削加工」により、食材への切り込みをよくするとともに、鋭い切れ味を実現しています。切れ味テストでは、かぼちゃや冷凍餅のように硬い食材はやや苦手に感じたものの、そのほかの食材については問題なく切れました。また、継ぎ目のない一体型ならではの洗いやすさで、手入れのしやすさは高評価となっています。
・一体型なのでムダな溝などがなく、清潔に使えるところがよい
・デザインがシャープでオシャレ
・切れ味がよく野菜や肉などもサッと切れました
◆刃渡り:165mm
◆刃の材質:ハイカーボンステンレス刃物鋼
◆柄の材質:18-8ステンレススチール
◆本体サイズ:46(刃幅)×298(全長)×20(柄の高さ)mm
◆重量:134g
刃には錆びに強い「ステンレス三層鋼」を、柄には耐熱性の高い樹脂製のハンドルを採用しています。また、刃体を薄く仕上げた後に「スキ加工」を加える製法により、刃の切断面がハマグリ型になっている点もポイント。ニンジンの皮むきなどでは高い切れ味を発揮し、刃が食材に吸い付くように入り込んでいくため、抵抗なくスルスルむけたことに感動しました。「1.関孫六 匠創」と価格はほぼ変わりませんが、切れ味だけなら本製品のほうが優秀。手入れのしやすさはオールステンレスに比べて劣るため、デザインの好みで選んでもよいでしょう。
ベーシックでクセのない包丁。メンテナンスは必要だが、価格を考えれば十分な性能です
◆刃渡り:165mm
◆刃の材質:ステンレスクラッド複合材(刃材:ハイカーボンステンレス刃物鋼、合せ材:ステンレス鋼)
◆柄の材質:ナイロン、POM樹脂
◆本体サイズ:48(幅)×293(長さ)×18(高さ)mm
◆重量:138g
美しいフォルムが特徴のオールステンレス包丁で、刀身には切れ味が長持ちしやすいように「モリブデン・バナジウム鋼」を採用しています。また、手にフィットする丸みのあるハンドルは、ザラつきのある加工が施されているため滑りにくくなっているほか、中空構造にすることで軽量化を実現している点もポイント。切れ味テストでは、かぼちゃのような硬い素材ではやや切りにくさを感じたものの、そのほかの食材は問題なくクリアしました。軽くて手入れのしやすい包丁を求めている人に向いています。
購入してもう5年になりますが、今でもやわらかなトマトがスパッと切れます
◆刃渡り:165mm
◆刃の材質:ステンレス鋼(モリブデン・バナジウム鋼)
◆柄の材質:18-8ステンレス
◆本体サイズ:全長295mm
◆重量:130g
ヘンケルスの特徴とも言えるアーチ型のハンドルは、ほどよい重さで手にしっくりとなじみ、安定したグリップ力を発揮します。刀身には「特殊ステンレス鋼」を使用し、ハンドル全体に金属が通った全貫通3点留めを採用することで、重量バランスを整えている点もポイント。切れ味テストでは、トマトや玉ねぎなどのやわらかい野菜が軽快にスパスパと切れました。また、かぼちゃも硬い皮にはやや苦戦しましたが、実の部分は問題なくクリア。5千円以下でこの切れ味とデザインを実現している点においては、非常にコスパが高いと感じます。
◆刃渡り:180mm
◆刃の材質:特殊ステンレス鋼
◆柄の材質:ABS樹脂
◆本体サイズ:非公開
◆重量:非公開
ダイヤモンドでなければ研げないほど硬い素材である「ファインセラミックス」を使った包丁。錆びに強く、金属イオンが出ないので切った食材が変色しにくい特徴があります。刃渡りは140mmと小ぶりで、実際に使ってみた感想としては「とにかく軽い!」のひと言。また、刃の先端が丸みを帯びていて安全面に配慮されており、子どもや高齢者でも扱いやすい点も評価できます。切れ味に関しては、正直そこまで高くないと感じましたが、硬い食材でなければ問題なくクリア(かぼちゃや冷凍食品のように硬い食材は、無理に切ったり叩いたりした場合、刃が欠けるおそれがあるため注意するようメーカー公式ページに記載があります)。安くて軽い包丁が欲しい人や、調理頻度がそこまで高くない人に向いています。
パンは今まで波形のパン切り包丁を使用していたのですが、セラミック包丁で試しに切ってみたらキレイに切れました
◆刃渡り:140mm
◆刃の材質:ファインセラミックス
◆柄の材質:ポリプロピレン
◆本体サイズ:45(幅)×270(長さ)×20(高さ)mm
◆重量:90g
価格.com人気包丁ランキングで1位(2023年9月12日時点)を獲得する製品。ステンレスを33層折り重ねて鍛えられた「ダマスカス鋼」を刀身に採用しており、波紋のあるデザインが美しく仕上がっています。正直、切れ味だけを見ると「関孫六 茜」のほうが鋭く感じましたが、本製品は、逆三角形のハンドルならではの高いグリップ力を生かして、硬い食材にもしっかり刃を通せました。また、刃とハンドルの継ぎ目に溝のないデザインで洗いやすい点も見逃せません。切れ味、扱いやすさ、手入れのしやすさのバランスのよさが光ります。
・切った野菜のエッジがたってシャキシャキになり、サラダがおいしくなります
・例えるならカミソリのような切れ味。切ったトマトが吸い付く感じ。鶏肉もスパスパ
◆刃渡り:165mm
◆刃の材質:ステンレス複合材(刃材:特殊ステンレス刃物鋼、合せ材:ステンレススチール)
◆柄の材質:積層強化木
◆本体サイズ:46(刃幅)×293(全長)×23(柄の高さ)mm
◆重量:158g
芯材には、不純物を取り除いた高純度の鉄鉱石を13クロームステンレス鋼によって挟み込んだ複合素材である「DPコバルト合金鋼」を使用し、鋭い切れ味とお手入れの手軽さを両立しています。また、ハンドルには、業務用としても広く用いられる「黒積層強化木」を採用。太さが均一のシンプルなデザインにもかかわらず、非常に安定した握り心地をもたらしてくれます。また、1万円以下とは思えないほどの鋭い切れ味で、どの食材もキレイにカットできました。切れ味がよすぎるため、特に調理に慣れていない人などは取り扱いにご注意ください。
肉、魚、野菜など文句なくスパッと切れて使い勝手のよい包丁です
◆刃渡り:170mm
◆刃の材質:コバルト合金鋼、13クロームステンレス鋼
◆柄の材質:黒積層強化木
◆本体サイズ:全長285mm
◆重量:130g
刀身からハンドルまで一体型のオールステンレス構造で、刀身にはモリブデン・バナジウム入りのステンレスを採用しています。また、刃の切断面にカーブを描くハマグリ型を採用することで滑らかな切れ味を実現しています。切れ味テストを行ったところ、かぼちゃの薄切りをはじめ、あらゆる食材を高いレベルで切りこなせました。人によってはやや重さを感じるかもしれませんが、この適度な重みがかえって安定した切り心地を実現しているのも事実。ちなみに、今回ピックアップした中では唯一「オール5点満点」を獲得した製品です。
・一体型なので持ちやすく、使い勝手がよい
・デザインが美しく、所有する喜びが感じられます
◆刃渡り:180mm
◆刃の材質:刃物用ステンレス(モリブデン・バナジウム入り)
◆柄の材質:18-8ステンレス
◆本体サイズ:50(刃幅)×310(全長)mm
◆重量:175g
業務用として名を馳せているブランドで、刀身にはスウェーデン製の「高純度ピュアステンレス特殊鋼」を使用し、鋼包丁なみの鋭い切れ味と研ぎやすさを両立しています。切れ味テストでは、どの食材もバランスよく切りこなせましたが、特に鶏肉に関しては今回ピックアップした中ではNo.1の切り心地で、ぐっと力を入れることで皮まで引っかかりなくスムーズに切れました。肉類をメインで調理したい人に向いています。こちらは三徳包丁ですが、価格.comではMisonoの牛刀も人気です。
研ぎやすく刃持ちがよい。熟したトマトも余裕でスライスできます
◆刃渡り:180mm
◆刃の材質:高純度ピュアステンレス鋼
◆柄の材質:黒強化木
◆本体サイズ:全長305mm
◆重量:170g
錆びに強く、切れ味が鋭い「VG-10」に「槌目ダマスカス鋼」を割り込ませた包丁で、波目の紋様が特徴。また、中間層にはやわらかなステンレス鋼が挟まれており、切れ味のよさと耐久性を兼ね備えています。さらに、滑りにくい素材であるスペインの「マホガニー」を採用したハンドルも美しさを際立たせています。切れ味テストでは、かぼちゃや冷凍餅のように硬い食材も、ぐっとハンドルに力を入れるだけでムリなくカットできました。また、芽取りに使う刃先がでっぱっているため、じゃがいもの芽取りがスムーズに行えた点も評価できます。
肉、野菜など、切れ味に文句ありません。キレイな紋様もステキです
◆刃渡り:180mm
◆刃の材質:ダマスカス33層
◆柄の材質:スペイン マホガニー
◆本体サイズ:47(刀幅)×310(全長)mm
◆重量:180g
ここまで人気上位の三徳包丁を実際に試してみましたが、個人的には、「8.GLOBAL」「7.藤次郎」「2.関孫六 茜」が切れ味のよさ、扱いやすさ、手入れのしやすさともに満足のいく品質で、お気に入りの包丁となりました。
検証を行ったところ、やはり高単価な包丁ほど、食材に負けない切れ味と使い心地を発揮する傾向にありました。ただし、安い包丁だとまったく切れないかというと決してそんなことはなく、1万円以下の製品でも「7.藤次郎」や「2.関孫六 茜」のように非常にすぐれた切れ味を発揮する製品も。特に、「茜」に関しては低価格でこれだけスパスパ切りこなせる包丁があるということに驚きを感じました。
硬い食材でも、力を入れずにカットできる安心感はたしかに高価な包丁に軍配が上がりますが、普通の食材をカットするだけであれば低価格の包丁でもまったく問題ありません。切れ味のよい包丁を使うと、それだけで毎日の調理が楽しくなります。本特集を参考にぜひあなただけの理想の包丁を見つけてみてください。
>>そのほかの包丁(牛刀、ペティナイフ、パン切り包丁、包丁セット)を見る(2ページ目に続く)
上から順に、高村作の「牛刀180mm(粉末ハイス鋼)」「牛刀210mm(V金10号)」「三徳包丁170mm(粉末ハイス鋼)」「三徳包丁170mm(V金10号)」
テレビドラマ「グランメゾン東京」の撮影で採用された包丁を製造した「高村刃物製作所」(福井県越前市)の包丁で、刃の素材は「粉末ハイス鋼」と「V金10号」の2種類が選べます。どちらも純度の高い素材ですが、鋼を1度粉末にしてから不純物を取り除いて再生した「粉末ハイス鋼」のほうが、「V金10号」よりも切れ味の持続力は高め。また、木の層を重ねることで耐水性を高めた柄も特徴のひとつで、「返し(ストッパー)」が付いているため安心感があると評判です。
重量バランスにすぐれており、持ったときに「手にしっくりくる」とファンになられるお客さんが多い包丁。ご自身で研ぐなら「V金10号」、あまり研ぎに手間をかけたくないのであれば、切れ味が長持ちする「粉末ハイス鋼」の包丁がおすすめです
ここでは、包丁を長持ちさせるためのメンテナンス方法についてご紹介します。
1.食洗機を使わずに手洗いする(包丁への負担を減らす)
2.お湯ですすぐ(水よりも蒸発スピードが早いため、錆びを抑制)
3.水気をしっかり拭き取り、湿気の少ない場所で保管する
4.錆びが出てきたら、「ワインのコルク」や「1cm角に切った耐水ペーパー」を使って磨く
洗ったらしっかり水気を取りましょう。キッチン棚下に保管している人も多いですが、湿気が多い場所なので要注意。長期保管時は新聞紙で刃を包むとよいですよ
包丁の切れ味が悪くなったと感じたら、「シャープナー」または「砥石」を使って研ぎましょう。どちらも刃物を研ぐための道具ですが、仕上がりに違いがあります。
▼シャープナー
砥石や歯車が仕込まれた溝に差し込んで、擦りながら切れ味を出す方法。誰でも手軽に研げますが、刃先を「点で研ぐ」ため刃先がだんだん鈍角に分厚くなってしまうのが弱点。結果として、切るのに力がいるようになったり、切れ味が長続きしなくなったりします。また、「両刀用」が多く「片刃」には使えない(「片刃用」が必要になる)ことも。
▼砥石
包丁を研ぐ専用の石に水を浸けて研ぐ方法。刃先を「面で研ぐ」ため時間がかかるうえ、適切な角度で磨くための高度な技術が必要になりますが、刃先を適切な角度に維持したまま研げるのが魅力です。また、砥石の粒度が多種多様で細かく調整できるのもメリット。
ご家庭ではシャープナーでメンテナンスを行い、切れ味が悪くなったらプロに研ぎを任せて刃の角度をリセットする方法がおすすめ。ちなみに僕は「刃の黒幕」シリーズ(セラミック砥石)を愛用しています
>>そのほかの包丁(牛刀、ペティナイフ、パン切り包丁、包丁セット)を見る(2ページ目に続く)
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