たまたま手に取ったボールペンが、「これ、何か書きやすいな?」と思ったこと、ありませんか?
ボールペンの書き味を構成するパラメータは、意外と多くて、インクの粘度やフロー(インクが出る量)、グリップの握り心地、軸の太さなど、ほんのちょっと変わるだけでも、書く感覚がかなり異なってきます。そんな書き味パラメータの中でも、気にする人があまりいない割に実は重要!なのが、軸の重心位置です。
ペンの先端から後端にかけて、重さのバランスが釣り合うところを“重心”と言います。筆記時の持ち方でペンを握った際、指より高い場所に重心があると、どうしてもフラついて不安定になりがち。これを抑えるために無意識にグッと強く握ってしまうのは、長時間の筆記時に手が疲れる要因のひとつと言えるでしょう。
したがって、ペンは基本的に、低重心のほうがよいとされています。しかし、ペン先端だけが極端に重いものは、筆記時にブンブンと振り回すことになって、早書きしづらいと感じることもあります。つまり、ボールペンの重心ってめちゃくちゃ難しい!ってこと。
そんな難しい重心バランスに徹底的に気をつかったボールペンが、2021年9月末に発売された、三菱鉛筆「ユニボール ワン F」です。
従来モデルより価格はちょいUPしたけど、筆記性能は大幅UPした三菱鉛筆「ユニボール ワン F」
「ユニボール ワン F」は、2020年に発売された、くっきり濃いゲルインクで人気の「ユニボール ワン」の上位モデル。とは言っても、価格は税込132円が330円に上がっただけ。しかも、リフィルは従来と共通なので、1度ボディを買ってしまえばランニングコストは変わりません。というか、1度手にしてしまうと、逆に「こんなスゴいペンが330円でいいの!?」と思ってしまう可能性が大。
従来モデル「ユニボール ワン」(左)と新モデル「ユニボール ワン F」(右)の比較。ペン先からグリップにかけて、段差がほぼない美しい流線型なのが特徴です
「ユニボール ワン F」は、口金を金属化。それにより、部品精度が高まり、リフィルのカチャカチャしたブレを抑制する効果も
「ユニボール ワン F」の何がスゴいかと言うと、それが先に述べた重心バランスを調整する「スタビライザー機構」を搭載しているからなんです。
本体をよく見ると、ペン先端にちょこんと金属製の口金(従来モデルはプラスチック製)が確認できます。この口金パーツは、実は軸のグリップ中央ぐらいまで貫通しており、これが「低重心だけど、先端に片寄り過ぎないバランス」を実現した仕組みなのです。
新旧モデルの重心位置の比較。「ユニボール ワン F」のほうが、重心がよりペン先に近い位置にあるのがわかります
前軸をカットした状態。重量感のある金属パーツ(スタビライザー)が、グリップの中ほどまで入っていることで、重心バランスを最適化しています
実際に握ってみると、その違いは明らかです。
グリップ部分でペンの重心が釣り合うため、中指の上で吸い付くようにピタッとホールドできて、握るだけですでに気持ちいい!
さらに、この安定したホールド感は、ペン先の追随性にもつながっています。指の動きにしっかりとペン先がついてくるので、多少の走り書きでも十分にコントロールが効いた文字が書けると感じました。これなら、悪筆の人でも、読みやすい字が書けるのではないでしょうか。
重心の取れた場所で握ると、安定感は抜群!
従来、ゴムグリップだった部分は、先のほうまで樹脂軸が通ったフォルムに変更されています。試用前は「手汗で滑るかも?」と思っていましたが、表面にうっすらと施された梨地加工によって、見た目以上にしっかりとグリップが可能。そもそも重心バランスが取れているため、筆記時に指の位置がズレにくい効果もあるようです。
落ち着いた筆記に◎、ダーッと走り書くにも◎。バランスのよさは、万能の書きやすさに直結しているのです
そもそも、「ユニボール ワン」自体が、ボールペン史上で最も濃い黒で書ける、という高性能なゲルインクでおなじみのブランド。この優秀なインクに、スタビライザー機構による書きやすさが加わったことで、「ユニボール ワンF」は、ボールペンとしての完成度が驚くほど高まりました。
試せば、まず間違いなく「これ、何か書きやすいな」と思っちゃうはずですが、それ、重心バランスがいいからなんですよ。
最新機能系から雑貨系おもちゃ文具まで、何でも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は大手文房具店の企画広報として企業ノベルティの提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。