2022年も終盤に差しかかり、コロナ禍における特殊なライフスタイルもすっかり定着してきた。ここ数年の間に予定管理ツールはデジタルにシフトしたが、そんな時代に手帳を選ぶなら、「デジタルツールにはないメリット」を考える必要がある。今回は、そんなメリットを押さえながら手帳のタイプを3つに分類し、それぞれのカテゴリーのおすすめ製品を紹介。また、手帳の基本的な構造も改めて考察する。
まず、手帳の基本的構造を改めて説明する。下記の「手帳分類表」はほかではなかなか見られないものなので刮目してほしい。
そもそも手帳とは基本的に
月間スケジュールの記入ページ
+
月間スケジュール(ブロックタイプ)以外の各種記入ページ
で構成されていると考える。
つまり、手帳選びにおいては、月間スケジュールのページに何をどのように記入するか、そしてそれ以外のページに何を望むかによって「使うべき手帳」が変わってくる。この月間スケジュール以外のページはスタイルが変化しつつあり、特に「時間軸のない週間スケジュールのページ」が珍しくなくなってきている。現時点ではまだ時間軸付きのものが多数派だが、これは週間スケジュールのページに時間を割って予定をきっちりと書くような使い方が減ってきている証拠だろう。
最近の傾向としてはもうひとつ、時間軸を完全に廃止した手帳の出現がある。単に手帳的な記入欄のみを持った、いわば「特定フォーマットが連続したワークブック」のような手帳もジャンルとして成立しつつある。
月間スケジュール中心の手帳と、週間スケジュール中心の手帳の2分類で考えたときの主な製品群の分類。実際には、ここに「六曜」「月齢」「二十四節気」の有無、または記入面の種類の分類(横罫・方眼罫・無地など)などが加わる。なお、ここで言う月間スケジュールは、主に「月間ブロックタイプ」をさす
上の「手帳分類表」から導き出される手帳の製品例。赤字の製品は、本稿の以下で紹介する。今回の「手帳分類表」は予定記入欄の種類によって分類しているので、以下で紹介する「ワークブック的手帳」の3製品はここに含まれない
手帳選びにおいて、月間スケジュール欄に加え、ほかにどんな記入欄が自分に必要かがポイントとなる。スケジュール欄は月間だけでこと足りるのであれば、ノートページが多いものを選べばよい。いっぽうで、月間ブロックタイプと月間ガントチャートのように、同じ月でもフォーマットの異なるページを複数持つモデルも存在するので、自分の働き方や仕事の進め方と照らし合わせてセレクトしよう。本稿では、3つ目のカテゴリー「ワークブック的モデル」として、日付なしのスケジュールページを用意した手帳を取り上げている。このような、日付をみずから記入するタイプは、連続的な予定の記入には不向きだが、記録用として使うなら日付がない分、使い始めるタイミングや断続期間を気にする必要がないので自由度が高い。
今回の3つめのカテゴリー「ワークブック的モデル」には、デイリーログや9×9マスの目標達成シートなど、さまざまなコンテンツページが用意されているが、これらはどの手帳にも含まれているものではない。したがって、こういったページが欲しいなら、それが含まれた手帳を選ぶしかないが、逆にそういうページが不要か、あるいはそういったコンテンツを収録する手帳を別で用意するなら、メインの手帳はプレーンなスケジュール記入欄のみを備えたモデルを選べばいい。逆に、スケジュール管理はデジタルツールに完全に任せたい人は、「ワークブック的モデル」をライフログ用として使うのもいいだろう。
今回は、上で触れた「月間スケジュールが中心のモデル」「月間スケジュール+週間スケジュールのモデル」「ワークブック的モデル」の3つのカテゴリーをピックアップし、それぞれのおすすめ製品を紹介していく。
・各表紙の写真は、同じ縮尺で撮影しているので、サイズの比較に活用できる
・【SPEC】の内容は、主なフォーマット/サイズ/重量/表紙のカラバリ/税込価格
【SPEC】●主なフォーマット:月間ブロック●サイズ:B6(横132×縦186×厚さ5mm)●重量:123g●表紙のカラバリ:青(写真)、オレンジ●1,540円
もはや定番となった「ダブルスケジュール」は、年ごとに新モデルが登場している。今回取り上げたのは、月間ブロック+月間ToDoリストの2つを収録したモデルだ。
月間ToDoリストページには、上に進行表的記入欄、下にチェックボックス付きタスク記入欄が用意されている。つまり、月間ブロックページでは予定を概観し、月間ToDoリストページでは具体的なタスクを一覧・管理するような使い方ができる。特に月間ToDoリストページの進行表的な特徴は、複数のプロジェクトの管理に役立つはずだ。
この月間ページ2種類の使い分けを快適にしてくれるのが、特許取得済みのインデックスだ。月間ブロックページのインデックスを押さえてめくれば月間ブロックページのみが、月間ToDoリストページのインデックスを押さえてめくれば月間ToDoリストページのみが開くような仕組みだ。つまり、予定を見たいときは月間ブロックページのインデックスを、タスクをチェックするときは月間ToDoリストページのインデックスを押さえて開けばいいのだ。これは使ってみると想像以上に便利だ。
月間ブロックページ。オーソドックスなカレンダータイプだ。各日の記入スペースには横罫線が入っており記入しやすい。左ページの左端には、縦方向に月間カレンダーがもう1系統用意されている
ガントチャート的月間ToDoリストのページ。上部の進行表的記入欄で進捗を管理し、その下のToDoリストで実際のタスクを管理する
ピンクとグレーに分けられたインデックス。ピンクを押さえてめくると月間ブロックページが、グレーを押さえてめくると月間ToDoリストページが開く。どちらかいっぽうだけを続けてめくれるのは使い勝手がよい
【SPEC】●主なフォーマット:月間ブロック●サイズ:B6変型(横140×縦182mm)●表紙のカラバリ:ウォームグレー(写真)、グリーン、ライトブルー、ピンク●1,540円
「ON・OFFにつかう、くらしのノート」というコンセプトだが、仕事にも十分利用できる手帳。最初に目につくのは、リング構造だ。これは、コクヨ独自の「ソフトリング」で、手に当たっても痛くないもの。もちろんリングなので、ページが180度にきれいに開く。
ページの構成は、月間ブロック+ノート。月間ページは1日の記入欄が大きく取られているので、のびのびと書ける。右ページの右端に縦に並ぶメモスペースは、ちょっとしたタスクを書くのに向いている。ノートページは、実に125ページ! ひと月当たり10ページ以上書けるのは安心感抜群だ。方眼罫は4mmとやや小ぶり。
さりげない工夫もいくつか施されている。まず、表紙の左上にある表紙の切り欠き。勘のいい読者諸君ならお察しのように、ここにはペンのクリップが引っかけられる。また、巻末にはクリアポケットが付いているなど、どれもさりげないけれど、あると便利な機能だ。
月間ブロックページは、1日欄が無地でのびのびと書ける
4mm方眼罫のノートページ。「ソフトリング」の採用により、ページが180度にしっかり開くため書きやすい
表紙の左上の切り欠き部分には、ペンのクリップを挿してペンホルダーとして利用できる
【SPEC】●主なフォーマット:月間ブロック●サイズ:A5(横153×縦218×厚さ11.5mm)●表紙のカラバリ:ブラックのみ●3,080円
今回取り上げた10冊のなかでは、最も“古典的部類”に入る手帳。「ザ・昭和の手帳」みたいなルックスは今どきのおしゃれな手帳とは異なるオーラを醸し出しており、この色気と潔さに惹かれるユーザーも多いだろう。
縦長スタイルのクラシックな装丁や、目にやさしい黄みがかったオフホワイトの記入用紙は、本格派感満点。パイロットは万年筆メーカーとしてもよく知られているが、この手帳の用紙ももちろん、万年筆のインクでもにじみや裏抜けが少ない仕様だ。
巻末には、「7ヶ国語簡単会話」というコンテンツが付いており、英語、フランス語、スペイン語、中国語、韓国語、イタリア語、ドイツ語における、あいさつを中心とした簡単フレーズが掲載されている。
月間ブロックページ。特に罫などはなく、のびのびとたっぷり書ける。左ページ左端の縦方向にもカレンダーが付いている
筆記具メーカーであるパイロットオリジナルの用紙を使用。インクのにじみや裏抜けが少ない
7か国語の簡単なフレーズが並ぶページ。いざというときに役立つかも
【SPEC】●主なフォーマット:月間ブロック+週間レフト●サイズ:B6(横128×縦182mm)●表紙のカラバリ:グレー(写真)、ブラック、ブルー●1,760円
ダイゴーと言えば、JMAMと並ぶ老舗手帳メーカーだが、今回取り上げた製品は、老舗といえども、手帳を取り巻く環境の変化を感じ取って反映したことがわかる、新しいデザインが採用されている。それは表紙のイメージから見返し、さらに記入欄にまで通底しており、最もわかりやすいのが各ページに方眼罫を採用している点だ。
週間レフト式の仕様においても、新しい試みが実行されている。週間レフト式では通常、1週間分のスケジュール欄で左ページ丸々使うが、本製品では1日分を区切る横罫を短くして、ページの半分程度に収めている。その分、それ以外のスペースをすべてメモに利用可能に。各予定に連動するメモをこと細かに書き留められるわけだ。
あるいは、予定は各日スペースにのみ書き、それ以外の部分に仕事の進行管理やタスクリストなどに使うのもいいだろう。この自由度の高さは、従来の週間レフト式にはなかったものだ。
週間レフト式ページ。極限まで各日スペースを絞ったレイアウトだ。時間軸はないが、方眼罫を時間軸代わりに使えなくはない。このレイアウトが最も得意とするのは、左右のページを大きく使ったメモだろう
週間レフト式ページの上部に設けられたチェックボックス。このボックスを色分けしておくことで、書いたメモの種類をペンの色で分別できる。たとえば、「to do」に赤でチェックしたら、赤の文字で書かれた情報はToDo項目というわけだ。これ以外にも、いろいろな使い方ができそう
ページすべてに方眼罫を引いた月間ブロックページ。見開き2か月は一覧性が高い。カレンダー欄外を使ってのタスク・進行管理など、さまざまな使い方ができそうだ
【SPEC】●主なフォーマット:月間ブロック+週間バーチカル(時間軸なし)●サイズ:B6(横133×縦188×厚さ11mm)●重量:231g●表紙のカラバリ:カレルチャペック・ミルクティー(写真)、ロゼ、フェイユ●2,035円(カレルチャペック・ミルクティー)、1,958円(ロゼ、フェイユ)
「PAGEM」ブランドは、「NOLTY」と並ぶJMAMのブランドで、ターゲットは女性ユーザー。今回取り上げた、紅茶専門店「カレルチャペック紅茶店」とのコラボ製品は、同ブランドとしては珍しい構成で、月間スケジュールページこそオーソドックスなブロックタイプだが、週間スケジュールページは時間軸なしのバーチカル式。「NOLTY」ブランドではおなじみではあるが、「PAGEM」ブランドのなかでのこのスタイルは、日々の細かな出来事や感情を受け止めるためのメモスペースとして活躍するのだろう。また、「NOLTY」よりもソフトなデザインも、ログ用途として最適だ。
週間スケジュールページは、時間軸なしのバーチカル式。下部のメモ欄は、ドット方眼罫を採用する。機能的なレイアウトではあるが、日々のログを自由に書くのに便利そう
月間ブロックページ。右端には月ごとのインデックスが付いており、その強化シールも付属する。特定の月にすぐにアクセスできるのは地味に便利
巻末には、1ページを8枚に分割できる切り取り式のメモが付いている。手渡し用メモにぴったりだ
【SPEC】●主なフォーマット:月間ブロック+週間バーチカル(時間軸なし)●サイズ:A5変型(横135×縦192mm)●表紙のカラバリ:レッド(写真)、スモーキーグリーン、インディゴブルー、スモーキーピンク、ミモザイエロー●2,970円
「EDiT」の週間ノートは、時間軸なしバーチカル式の仲間。特徴は、1日のスケジュール記入欄が3分割されている点だ。仕事・家族・プラベートの予定を書き分けたり、午前・午後・夜と時間帯ごとの予定を記入したりできる。さらに、その下には横罫のメモ欄が大きく取られており、予定やタスクに関連するメモや、日記的・ログ的な記録にもってこい。もしくは、忙しい日には時間軸をここまで縦に延長して使う方法も考えられるだろう。
巻末には、102ページ分のノートページを用意。通常の手帳ではノートページが少なく、足りない場合はノートを別に用意する必要があるが、このボリューミーな製品であれば、「週間ノート」という名のとおり、手帳とノートを1冊にまとめられる。
時間軸なしの週間バーチカル式スケジュールページ。横罫のメモスペ−スはたっぷり取られている
月間ブロックページ。左ページにはToDoリストが設けられており、その月のタスクを管理できる。見開きの左側に置いてあることで、当月に「これからやる!」というイメージを持ちやすいのがうれしい。なお、1日のスペースは上下に2分割
複数のプロジェクトの進行を管理できる「PROJECT TIMELINE」ページ。長期計画を全体的に見渡せる
【SPEC】●主なフォーマット:各種●サイズ:横148×縦210mm●重量:88g●表紙のカラバリ:青(My Life)、あずき色(Think)●各396円
手帳の新しい形とでも言うべきなのが、日付なしの「STYLE NOTEBOOK」シリーズ。あらゆる記入フォーマットが収録されており、「Think」にはマンダラや絵コンテなどが、「My Life」には「メモリアルデイ」や「ギフト」などのコンテンツページが並ぶ。「Think」は仕事、「My Life」は生活の計画・記録に向いている。どのコンテンツも手帳メーカーが作ったフォーマットなので完成度は高め。さまざまなフレームワークで計画・思考が気軽に実行できるので、特にスケジュールをデジタルで管理している人にもってこいの手帳だ。
本シリーズは、何より1冊396円と価格がお手頃なうえ、タブレットPCなどよりも手っ取り早く使えるのもうれしいポイント。また、A5サイズなので、ゆったりと記入できる。紙はクリーム色で目にやさしく、日頃、液晶ディスプレイの画面ばかり見ている目にはちょうどいい色合いだ。
「Think」に収録される「MANDALA CHART 9×9」。横9×縦9の81マスを使って目標を達成するためのツール。中央のマスに「目標」を記入し、その「目標」を達成するために必要な「要素」を周囲の8マスA〜Hに埋める。そして、その「要素」を得るための具体的な「行動」を周囲の8マスに書き出していく。これにより、漠然としてまとまらなかった考えが要素ごとに整理され、具体的にどう行動すべきなのかが明確化する
「Think」に収録される「4 PANELS MEMO」。企画書や動画の絵コンテの下書きなどに利用できる
「My Life」に収録される「MEMORIAL DAY」。月ごとの記念日を記入して利用する。月間スケジュールとしても使用可能
「My Life」に収録される「GIFT RECEIVED」(写真)と「GIVING GIFT」は、もらった、あげた贈り物を記録するページ
「My Life」に収録される料理レシピページ。方眼罫のメモスペースに材料の分量や作り方、作る際の注意点を記入していく。方眼罫なのでイラストなども書きやすい
【SPEC】●主なフォーマット:フリーログ●サイズ:横133×縦188mm●表紙のカラバリ:ラテ(写真)、メール●1,782円
今回取り上げた日付なしタイプの手帳のなかで、“ギリギリ”手帳のカテゴリーに留まっていると言えそうなのがこの製品。“留まっている”理由は、かろうじて日付を入力するスペースが用意されているから。なお、2023年版カレンダーが別体で付属する。
メインのページは、日付記入式のドット方眼罫ページで、見開きで2日間分。そのほかのページは、映画や名言、マスキングテープのリストなど、特に「文具女子」向きコンテンツが豊富だ。
もうひとつ面白いのが、付録の年間カレンダーシート。表は年間カレンダーだが、裏にはアルファベットや枠デザインが描かれており、これをページの下に敷いてなぞるだけで、美しい数字やアルファベットが書ける。手帳メーカーの工夫として、これは今まであるようでなかったものだ。
見開きで2日間分のログページ。左上の○の中に日付を記入する。ドット方眼罫が敷いてあるので、文字や図、イラストが書きやすい
付属の年間カレンダーシート。これが付いているからこそ、「手帳」として分類できる
年間カレンダーシートの裏側は、レタリングシート。ページの下に敷いて透けた部分をなぞるだけで、きれいに文字や柄が描ける。ありそうでなかったアイデア
【SPEC】●主なフォーマット:ログ●サイズ:【本体】横148×縦210×厚さ10.5mm【別冊】横118×縦182×厚さ3mm●重量:【本体】約244g【別冊】約44g●表紙のカラバリ:YELLOW(写真)、SHELL PINK、PALE IRIS、FAWN BROWN、ALMOND GREEN●1,980円
「SUNNY LOG NOTE」は、本体「LOG NOTE」に別冊「SMALL LOG」が付いた2分冊仕様だ。
「LOG NOTE」には毎日書ける「DAILY LOG」と、1週間や1か月単位で振り返りができる「REVIEWING LOG」を収録。「DAILY LOG」は、見開きが大きく4分割されており、各スペースは左側がドット方眼罫、右側が方眼罫の2分割フォーマットだ。「出来事+まとめ」や「日記+イラスト」など、内容を書き分けしやすく、思考や気持ちの整理に役立つ。「REVIEWING LOG」は、いわゆるハビットトラッカーページだ。通常のそれと異なるのは自由度が高いこと。1か月や1週間単位でカレンダーや表を作ることができ、睡眠時間や食事の記録など、長期的なログを俯瞰してまとめられる。
いっぽう別冊「SMALL LOG」は、見開きで縦5×横6マスのそれぞれに、気づきや発見などのちょっとしたメモを記入してストックできるフォーマット。巻頭ページに用意されたアイコンを各マスの小さなボックスに書き入れることで、各メモを簡単にジャンル分けできる。
以上3つは、どれもユーザーに“記入の熟練度”をある程度求めるフォーマットだが、使いこなせれば、これほど便利な手帳はないかもしれない。
「DAILY LOG」は、左がドット方眼罫、右が普通の方眼罫を組み合わせた、見開き4分割のフォーマット。ひとつの事柄について書き分けが可能なので、考えや気持ちを整理しやすい
「REVIEWING LOG」は、左側にカレンダー、右側に方眼罫の見開き6分割フォーマット。カレンダーはハビットトラッカーとして利用し、方眼罫は感想などが書き込めるため、のちのちの振り返りに便利だ
「SMALL LOG」は、一見、月間ブロックのようだが、ちょっとした出来事や発見をメモしていくためのフォーマット。各マスの小ボックスに凡例アイコンを入れて、メモをジャンル分けできる
芸人初! 阿佐ヶ谷姉妹が“脱・ポジティブ”なゆる〜い手帳をプロデュース
年末が近くなると、来年は手帳を使うかどうかを悩む人が少なからずいる。手帳を持つかどうかを悩んでいる人は大抵、スケジュール管理は「スマホでよくね?」と思っているはずだ。実は、そういう層を狙った手帳は毎年いろいろ登場している。この「阿佐ヶ谷姉妹のおおむね良好手帳」もそのひとつだ。
版元の永岡書店は、一流のメンター陣監修のビジネス手帳を始め、大きく分けると「ビジネス」「開運」「マネジメント」「ほのぼの」の4ジャンルの手帳を手がけていると考えられる。で、この「阿佐ヶ谷姉妹のおおむね良好手帳」が属するカテゴリーはどれかというと、もちろん「ほのぼの」。ちなみに、このカテゴリーだと思うほかの手帳はというと、表紙は犬であり猫であり……、つまりそういう癒やし系の手帳なのだ。
阿佐ヶ谷姉妹がどんな“姉妹”かについてはここでは省略する。では、彼女たちを著者に添えた手帳はどう見るか。結論から言えば、堅実でベーシックな作りに、姉妹テイストをのせたという感じだ。そもそも巻頭では、「ミホ:この手帳のコンセプトは、“脱・ポジティブ。現状維持で満足”だそうよ」てな感じ。自分たちの手帳なのに、まるでヒトゴトのよう……。この脱力具合は、タレントを立てた手帳にしては希有なレベルにある。
そもそも手帳の中身がベーシックといった理由は、記入フォーマットと本体サイズにある。まず、記入欄は月間ブロック+時間軸なしの週間レフト式。したがって、しおり紐は2本。そしてサイズはB6。単行本と同じサイズなのは、出版社発の手帳としては定番だ。
ほかの手帳と異なるのが、月初ごとの見開きだ。200字程度のコラム(これもなかなかほのぼのする)の下に「今月のベスト3」の記入欄が設けられている。たとえば、1月のテーマは「好きな餅の食べ方」。エリコさんとミホさんが選ぶベスト3の隣には、ユーザーのベスト3が書き足せる空欄が付いている。こういう日々のちょっとした思いをなんとなく書いていけるのが、この手帳の持ち味なのだろう。
いっぽうで、月間ブロックページには、六曜や一粒万倍日(※)を表記。また、巻末には「贈りもの・いただきもの」リストなどを収録している。予定をきっちりと立てて過ごすためのものというよりは、日々の出来事を気軽に覚え書きするためのもの。それがこの「阿佐ヶ谷姉妹のおおむね良好手帳」なのだ。
※:いちりゅうまんばいび。何かを始めるのに最適だとされている日
月間ブロックページ。左側のメモスペースが意外と便利かも。一粒万倍日の記載は珍しい
月扉ページ。この手帳のなかで、いちばん“阿佐ヶ谷姉妹らしい”ページ。月扉にありがちな目標記入欄が設けられているわけではなく、反省ばかりでクスッと笑えるコラムと「今月のベスト3」が収録されている
週間レフト式ページ。毎日、彼女たちのゆる〜いエピソードが楽しめる
オリジナルシール付き。顔イラストはミホさんが描いたとか
手帳評論家・ふせん大王。知的生産の面から文具・手帳について執筆。主な著書に「手帳と日本人」(NHK出版新書)や「凄いiPhone手帳術」(エイ出版社)などがある。