本連載は、文房具ライターのきだてたくが、「価格.comマガジン」の編集担当・マキノに、便利な文房具をリモートで必死にプレゼンする様子を実況。もし紹介された製品の中で「欲しい」と思うものがあったら、それをマキノが実際に購入!……という自腹買い企画です。
第16回は、「字が汚い人に使ってほしい文房具」をテーマに、3製品をプレゼン!
「価格.comマガジン」の編集担当・マキノ(左)に対し、文房具ライターのきだてたく(右)が、プレゼン!
きだて マキノさんって、字のきれいさには自信があるほう?
マキノ う〜ん、字が汚いって言われたことはないですね。
きだて いいですね。僕は、字がきれいって言われたことがないんですけどね……。
マキノ 文房具ライターって、基本的に字がきれいそうなイメージなんですけど。なんとなく。
きだて いやいやー! 字か汚いからこそ、文房具でなんとかカバーできないかとあれこれ試してきて、その結果詳しくなったというパターンもあるんですよ。
マキノ ははーん、そういうパターンですか。
きだて 逆に「自分の手にマッチしたペンがないから、字が汚いんだ!」ぐらいは、思っていましたからね。
マキノ 「俺の字が汚いのは、筆記具が悪いからだ」みたいな。
きだて 完璧にラノベ(ライトノベル)のタイトルっぽいですけど、そういうこと。ですが、そういう人にも効く可能性のある美文字文房具というのは、確かに存在するんです。なので、今回はそういうのを紹介しようかな、と。
マキノ 困ってる人は多いと思うんで、いいんじゃないですかね。
きだて 最初は、字の練習から始めようってことで、ゼブラから発売されている美文字練習セット「ビモア」を紹介しますね。
マキノ 美文字練習セット? 教科書などのテキストみたいなやつですか。
きだて これがですね、文字を練習する専用のボールペンと、ハンドメモ型の練習帳のセットなんですよ。
筆圧コントロールを学べる美文字練習セット「ビモア」(ゼブラ)
マキノ へー! 文字練習専用のボールペンってのが気になりますね。
きだて 実はペン先に特殊なギミックを搭載してまして、何と先端が筆のようにしなるんです。
マキノ ボールペンの話ですよね? しなるってどういうこと?
きだて ギミックに関しては後で説明しますが、筆書きの感覚で筆圧をコントロールすることで、線にメリハリが出て、美しい字が書けるようになりますよ、というのがポイント。
マキノ それは、かなり面白いですね。線のメリハリって、要するに線に強弱がつくってことですよね。
きだて そうそう、まさに筆で書いたように、書き始めと書き終わりは筆圧をかけてグッと太く、真ん中は筆圧を抜いてスッと細くなる、という感じ。
マキノ それは、ちょっと書いてみたいな。
筆圧をかけると、先端の黒いパーツが飛び出し、しなりを生むユニークな構造
きだて この「ビモア」のボールペンは、軸をひねることで筆圧コントロール機能をオン/オフできるんです。オンにしてペン先に筆圧をかけると……、軽くしなってるの、わかります?
マキノ おー、なんかしなっていますね。すげぇな。
きだて で、このボールペンと組み合わせて使うのが、メモ型練習帳。中はこんな感じで、なぞり書きで字の練習ができるように作られてます。
マキノ ちょっと楽しそうだなー。
きだて うん、やってみると、思ったより楽しい。パートごとにQRコードから練習動画に飛べるんですが、横浜国立大学教授で書家の青山浩之先生がていねいにコツを教えてくれます。やっぱり実際に書いてるところを見ると、わかりやすいよね。
動画を見ながら練習することで、筆圧をかけるべきポイントなども視覚的にわかりやすいです
マキノ なるほど、ここで筆圧を抜く、みたいな加減は動画で見たほうが圧倒的に伝わりますね。……あれ? 最初の練習って、これだけですか?
きだて そう、そこもポイントで。「ビモア」は1日の練習時間が3分で、それを7日間続ければOKなんです。
マキノ いやいや、それだけで字がきれいになります?
きだて 正直に言うと、「おおー、ウマくなった!」と驚くほどのことにはならないんですよ。そもそも、ほかの美文字練習だと、1日30分×30日間ぐらいが標準の練習量ですしね。それが3分×7日間で上達したら、さすがに魔法ですよ。
マキノ やっぱり、そんなオイシイ話はありませんか。
きだて ただ、線にメリハリがつくことで、字の雰囲気は確実によくなるんですよ。トメ/ハネ/ハライもきれいに出ますしね。
7日間の練習で、少しはマシになった……ような気がします
マキノ あ、本当だ。確かに練習前と比べると、だいぶ変わりましたね。まだまだ美文字とは言えないレベルですけども。
きだて ……うん、そうね。
きだて とは言っても、本当は練習なんか抜きで字が上手になりたいんですよ。そんな面倒くさいこと抜きで、使うだけで字がきれいになる文房具を使えばいいわけでさ。
マキノ そりゃそうですけど、さすがにそんな都合のいい話はないでしょ。
きだて それが、なくもないんですよ。レイメイ藤井の「魔法のザラザラ下じき」っていうんですけど、これ。
敷くだけでキレイな字が書ける「魔法のザラザラ下じき 0.3mmドット」(レイメイ藤井)。A4とB5サイズがラインアップされます
マキノ 下敷きって、小学生とかがノートの下に敷いて書くやつですよね。それで字がきれいになる?
きだて そもそも字が汚い人の特徴として、常に走り書きになりがち、というのがあって。字が汚いのを誤魔化そうとして雑にザザッと書いて、より汚くなっちゃうという、負のスパイラルですよ。
マキノ なんか、わかりますね。
きだて ゆっくりていねいに書けば多少はマシになるはずなので、下敷きによって書くスピードを強制的に落としちゃおう、という作戦です。
マキノ まだ、ちょっとピンとこないな。書く速度が下敷きで落ちる?
ザラザラの手触りは、0.3mmピッチでびっしり並んだ凹凸によるもの。これが、筆記スピードを落としてくれます
きだて 「魔法のザラザラ下じき」は、表面に細かい凹凸がびっしり付いているんですが、この上に紙を置いて書くと、ペン先の滑り過ぎを防いでくれる。道路にわざと段差を作って、車のスピードを落とす減速帯ってあるでしょ。あの感じ。
マキノ へー! でも、その凸凹のせいで書きにくいってことはないんですか?
きだて 確かに書きやすくはないんだけど、とはいえ、書きづらいって不快に思うほどじゃない。その絶妙な加減がポイントなんだ。
マキノ なんか気になりますね。使ってみたいかも。
きだて ちなみに、これが下敷きのあり/なしで書き比べてみたものなんですけども、明らかに下敷きありのほうが字が落ち着いている。
●が付いているほうが「下敷きあり」で書いたもの。筆記スピードが落ちることで、ていねいに落ち着いて書けてます
マキノ どれどれ……。あー、はいはい、確かに違いは多少見えますね。
きだて 特に、スルスルと滑りがちな低粘度油性インクとか、やわらかめのシャープペンシルや鉛筆なんかで効果が大きい。ペン先を止めたいところでピタッと止まるので、バランスが崩れにくいんだ。
マキノ 割とどんな筆記具でも効果が出てるのは、面白いですね。普段使ってるペンを、そのまま使えるのも便利かも。
これに1度慣れてしまうと、下敷きなしではツルツルし過ぎると感じてしまうほど
きだて あと、こういう学童用の下敷きって、基本的にはノート用のB5サイズしかないんですね。でもこれはA4サイズがラインアップされているから、大人でも使いやすいんですよ。
マキノ そうですね、大人は絶対にA4が欲しいですよね。
きだて 僕はノート類をA5サイズに統一してるので、A4下敷きを真っ二つに切って使っています。ほんと、敷くだけで字がマシになるのはありがたいですよ。
マキノ おお、ガチで使っているんですね。
きだて これ、実際に使ってみないと効果がわかりづらいので、伝えるのが難しいんですけど……。でも、悪筆でコンプレックスを感じている大人にこそ、試してみてほしいヤツですね。
きだて 最後に紹介したいのが、筆ペンなんですけども。
マキノ 筆ペン! ちょっと意外なところが来たな。
きだて パイロットの「筆まかせ 極細」という製品なんですが、えーっとね、筆ペンって、ざっくり大きく分けて2種類あるんです。樹脂製の細い繊維を束ねた毛筆ペンと、ウレタンなどの弾力のある芯材を使った樹脂チップ筆ペン。
筆ペンに不慣れな人でも使いやすい「筆まかせ 極細」(パイロット)
マキノ あんまり意識したことがなかったですけど、そういう区分があるんですね。
きだて 毛筆タイプは、書道経験者でないと使いこなすのが難しいんですけど、樹脂チップはザックリ言えば「ペン先がやわらかいサインペン」みたいなものなんで、誰でも簡単に書ける。
マキノ なるほど、ペン先のしなりで筆文字っぽいのが書けるんですね。
きだて そうそう。当然ながら「筆まかせ」も樹脂チップなんですが、その中でも割と硬めの味付けです。これが重要で、筆ペンに慣れていない人でも、ものすごく書きやすい。
適度な弾力のある先端チップで、筆文字風の文字がとてもカンタンに!
マキノ だいたい筆ペンなんて、年に1回使うかどうかですしね。慣れてなくても、使えるのは大事でしょう。
きだて この硬さがホント絶妙でね。感覚的には、サインペンで書いてるのとほぼ変わらない。だけど、少しやわらかいので、書き終わりにスッと力を抜くと細く払えるし、筆圧をかけるとちょっと太くなる。
マキノ 書いたものは、しっかりと筆文字っぽくなっていますね。
きだて ここで重要なのが、力強い線が書けるというのと、トメ/ハネ/ハライができるという点。その結果、ヘタな字ではなく、“味わいのある字”に見える。
マキノ あー! 言われてみればそうかも。
きだて きれいな字を書くのは、練習が必要だし難しいんだけど、味わいのある字なら、筆記具さえ選べば書けなくもないんですよ。字に自信のない人でも、堂々と書けるようになります。
マキノ スゴい強引な説ですけど、なんとなく納得できるかな。ヘタウマ系というか……。でも、筆ペンって使用頻度低いから、あまり役に立つシーンが少ない気がするんですけど。
7mm罫のノートにこれぐらいの大きさで書けるので、日常筆記用として使うのも悪くはないかも
きだて いやいや、筆ペン、普通に使ってもいいと思うんですよ。たとえば、僕は企画のネタ出しはサインペンを使ってグリグリ書くのが好きなんですけど、「筆まかせ」に替えても違和感は全然ないですし。
マキノ あー、筆ペンって、宛名書きか慶弔事にしか使えないイメージでしたけど、そんな日常的に使ってもいいんだ?
きだて 毛筆タイプはさすがに使いづらいかもだけど、樹脂チップなら日常筆記用でも問題ないんじゃないすかね。あと、「筆まかせ」はカラーラインアップが黒を含めて8色もあるんで、好きな色を使えるのもメリット。
マキノ 筆ペンなのに8色も!
きだて 「ブルーブラック」とか面白いですよ。
きだて 今回の、どうですかね。さすがにマキノさんは今さら「ビモア」で練習するってことはないかな。
マキノ いやいや、実はかなり気になっていますよ。改めて自分の字を見直したいという気もしてきたので、ちょっと練習するのはよさそう。
きだて マジかー、ストイックだな。でも確かに、ちゃんと練習するのも大事なんですよね。
マキノ きだてさんも「ビモア」10冊ぐらいやるべきですよ。小さい頃に習字とかやっていなかったんですか?
きだて やらなかった……。習ってたら、だいぶ違ったのかな……。
マキノ いや、あれ大事ですよ。ちゃんと基礎をやっとくと、字はだいぶ違ってきますから。
きだて その辺りの基礎を、道具ですっ飛ばしたいなー、と思って生きてきたんで、もうしょうがないよね。
「ビモア」も「魔法のザラザラ下じき」も気になりましたが、勝手に“大人としてのマナー”だと思っている“きれい筆文字”が書ける「筆まかせ 極細」の「ブラック」を自腹買い! 確かに樹脂チップのほどよいやわらかさが筆圧を制御してくれるので、筆文字が書きやすかったです。この「極細」タイプを罫線入りノートで使うなら、きだてさんが言ってたとおり、7mm罫くらいがおすすめ。5mmだと小さすぎるし、1cmだと大きすぎる印象を受けました。これで、美しい恋文書きたい! ってか、その前に恋文を送る相手を見つけないと……(泣)
最新機能系から雑貨系おもちゃ文具まで、何でも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は大手文房具店の企画広報として企業ノベルティの提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。