20世紀末。年間販売本数は1億本を突破、女子中高生の認知度ほぼ100%じゃない? というレベルで大ブームとなった、怪物級のボールペンをご存じですか? それが、1996年にぺんてるから発売された「ハイブリッドミルキー」です。
不透明なパステルカラーゲルインキを採用しており、黒い紙に書いてもくっきり発色するという斬新な魅力で大ヒット。プリクラやチェキなどの上にいろいろ書き込む、コギャル文化の“落書きムーブメント”を生んだペンとも言えるでしょう。
当時の女子中高生必携のぺんてる「ハイブリッドミルキー」(写真は2019年の復刻版)
「ミルキーペン」の愛称で親しまれ、伝説級のブームを巻き起こした本製品ですが、残念ながら現在、国内では販売が終了しています(2019年に数量限定で復刻)。しかし、実は2022年9月に、その直系である筆ペン「ミルキーブラッシュ」が新たに発売されました。
筆ペンと言うと、どうしても年賀状の宛名書きなんかを思い出してしまいますが……こちらは一般的に“カラーブラッシュ”などと言われるタイプのもの。
主にイラストや絵手紙を描くのに使う“毛筆+カラーインク”の画材として、今、世界的にも注目されているんです。
今、注目のカラーブラッシュ「ミルキーブラッシュ」(ぺんてる)
ぺんてる「ミルキーブラッシュ」は、あの「ハイブリッドミルキー」と同様に、不透明なパステルカラーゲルインキを筆ペンに搭載。濃い色の紙の上にザッと塗っても、色がぼやけず、くっきりと見える表現が可能になりました。
隠ぺい性が高く、下地が見えにくいので、重ね塗りも得意
ただ、そもそも「ハイブリッドミルキー」のインキは、ペン型修正液の技術を元に開発されており、高い隠ぺい力(塗ると下地を見えなくする能力)を誇っていました。それだけ濃いインキなので、そのまま筆ペンで使ったら、色の印象が強くなり過ぎてしまうことが考えられます。
そのため、ぺんてるでは、筆ペンに最適化したパステルカラーインキを開発。筆ペンならではのなめらかな書き味や、高い隠ぺい力、面塗りをしても派手になり過ぎない色調といった多くのパラメーターを最適化するため、開発に5年の期間を要したそうです。
「ミルキーブラッシュ」(写真上)と「ハイブリッドミルキー」(写真下)の比較。同じピンクでも、色の濃さの差はかなり感じられます
実際に比べてみると、なるほど。「ハイブリッドミルキー」のくっきりパステルを覚えている身としては、「割とあっさりとした色だなー」という印象を受けました。ただ、あの「ミルキーペン」のインキが毛筆からダバーッと出る書き味は、これまでにない感覚です。これはかなり楽しい!
軸後端のノックノブを何度か押すと、筆先にインクが供給されます。写真左ぐらい、たっぷり出すほうが書きやすい
よりキレイに発色させるコツは、インキの濃度を保ちつつ、たっぷり出すこと。使う直前に、軸をしっかり振って中の攪拌(かくはん)を行い、さらに後端のノックノブをグッグッと押して、インキを押し出しましょう。これをしておかないと、塗りムラが出て下地が透けてしまうことも。とにかく贅沢にドバーッとインキを出すのが重要です。
カラーラインアップは8色。実は、パステルミントグリーンは「ハイブリッドミルキー」にはなかった新色です
ラフにざくざく書いても雰囲気が出る! それも、カラーブラッシュの面白みのひとつ。字が下手な人が使っても、“なんか味わいのある字”にしてくれるので、たとえばメッセージカードを作るのにも最適だと思います。濃い色のカラーペーパーに「ミルキーブラッシュ」で大胆に書き込むだけでも十分に見栄えがいいのは、なかなか便利ですよ。
軸のラフなドット模様は、実は透明窓。インクの残量や顔料の沈殿具合などが見える仕組みです
特に、90年代にギャルやっていました、という人なら間違いなくマストバイ。かつてプリクラに描きまくっていたあのパステルカラーを楽しむというだけでも、十分に価値がありそうです。
最新機能系から雑貨系おもちゃ文具まで、何でも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は大手文房具店の企画広報として企業ノベルティの提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。