本連載は、文房具ライターのきだてたくが、「価格.comマガジン」の編集担当者に、便利な文房具をリモートで必死にプレゼンする様子を実況。もし紹介された製品の中で「欲しい」と思うものがあったら、それを編集担当者が実際に購入!……という自腹買い企画です。
第18回は、「最新のペン型文房具」をテーマに、3製品をプレゼン!
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「価格.comマガジン」の編集担当・マキノ(左)に対し、文房具ライターのきだてたく(右)が、プレゼン!
きだて ……マキノさんですやん。なんで?
マキノ そう、第14回からこの連載の担当が「しえる」に変わったんですが、ちょっと諸事情から再び僕が帰ってきました。
きだて あれ、そうなんですね。
マキノ 実はしえるは「しえる星」に戻りまして。またしばらくしたら再来日する予定なので、その際は改めてお願いします、と言っていました。
きだて 星に?
マキノ 星に。
きだて じゃあ、しえるが星から戻ってくるまでは、またマキノさんよろしくってことで。えー、今回なんですが、「ペン型ツール」の面白いのがここ最近で立て続けに出ているので、それを紹介しましょう。
マキノ ペン型ということは、ペンそのものではないんですね。
きだて 要するに、細長い形状のツールをざっくりと“ペン型”と呼ぶんですけどね。ただ、単に「形状がペンっぽくて面白いね」ではなく、その形にちゃんと理由があるんですよ。これがなかなか面白いので、ぜひオススメしておこうかなと。
きだて まず紹介したいのが、マックスの「モティック」というホッチキスです。メーカー側は「スティック型ホッチキス」と呼称してますが、まぁペン型と言っていいでしょう。
この状態だとホッチキスには見えない、マックスの「モティック」
マキノ えー、これ本当にホッチキスなんですか? ぜんぜんそういう感じに見えないですけども。どちらかというとカッターナイフっぽい。
きだて ボディにある丸ボタンのスライダーを押し進めると、カバーがジャキッと上がって、ほら、ホッチキスっぽく変形したでしょ。あとは紙を挟んでカバーを押すと、普通のホッチキスと同じように針が出て、紙を綴じられます。
スライダーを操作することで、ホッチキス形態に瞬間変形!
マキノ うわ、ホントだ、スゴい。カッコいいかも。
きだて 片手で変形させてそのまま綴じられるので、ペン型だから何か手間がかかるとか、面倒くさいってことはまったくありません。ちなみに、戻すときもスライダーを引くだけです。
マキノ それは大事なポイントですね。でも、ホッチキスをペン型にするメリットってなんかあります?
きだて あるある。実はホッチキスって、文房具のなかでも見失いやすいジャンルなんです。
マキノ ???
きだて 微妙に大きいサイズなので、デスクの引き出しとかに入れづらい。つまり、定住所を作りづらいので、使ったら放置したままになりやすい。結果、次に使う際に「あれ、ホッチキスどこいった?」が発生しやすいというわけ。
マキノ ペン立てのフチに引っかけてる人もたまに見ますよね。
きだて いるよね。でもあれ、ホッチキスの重みでペン立てが倒れたりするんだ。でもペン型なら、普段からペン立てに立てておいても問題ないでしょ。シルエットは微妙にペンと異なるから、見分けもつきやすいし。
ペンケースに立てておけば、省スペースで収納できて紛失知らず!
マキノ なるほど。使って戻す位置が決まるから、紛失しにくい的な話ですか。
きだて 的な話です。あとは、いわゆる“立つペンケース”とも相性がいい。携帯するにも便利なんですよ。
マキノ そうかー。
きだて ちなみにですが、実はマックスは1988年に1度、ペン型ホッチキスを作っているんです。これ、「HD-10SL B&G」というモデルです。ほら、「モティック」とそっくりでしょ。
手前が1988年発売の「HD-10SL B&G」。基本構造やギミックもほぼ同じです
マキノ あ、本当だ。サイズも同じだし、スライダーで開くところも一緒ですね。へー、面白い。こんなのあったんだ。
きだて 当時はそこまで売れたという話も聞かなかったんですよね。でも、近年一気に普及した“立つペンケース”と合わせて使うとめちゃくちゃ便利。つまりペン型ホッチキスは、20世紀に発売するのはちょっと早過ぎたのではないか、と。
マキノ 今こそホッチキスはペン型ではないか、と。
きだて ペン型ホッチキスは、主に収納や携帯の面でペン型にメリットがあったわけです。ですが、次に紹介するペン型修正テープは、使い勝手の面でペン型のメリットがあるんです。
マキノ 修正テープって、一般的なのは消しゴムぐらいのサイズで、なんか丸っこいコロンとした形をしてますよね。
きだて そうそう。だけど、先日発売されたプラスの「ホワイパーPL」は、このとおり、かなりペンっぽいフォルムをしてるでしょ。
プラス「ホワイパーPL」はペン型フォルムに使いやすさの秘密あり
マキノ うん、割とペンですね。
きだて さっき言ったとおり、このペン型なのがめちゃくちゃ便利で。まず、握る位置が軸の割と高い位置に設定されてるおかげで、ヘッド周りが手で隠れない。つまり修正したい場所が見やすいんです。
ヘッド周りの視界が開けているので、修正個所をよく見ながらテープが引けます
マキノ ほう。
きだて 視界が開けてるっていうのかな。おかげで、テープの引き過ぎで修正個所をはみ出す、みたいなことは減らせます。
マキノ あー、それよくやるミスですよね。それが減らせるならいいな。
きだて あとヘッドが、サスペンションが入ってるみたいに少ししなるんです。「クッションヘッド機構」って言うんですが。これによってグッと筆圧をかけることで、紙とヘッドの密着度が上がって、きれいにテープが引けるようになるんですよ。
ヘッドが軽くしなるだけですが、格段に修正しやすくなります
マキノ その辺りは実際に試してみないと実感しづらいやつですかね。
きだて それはそうかも。ただ、この「クッションヘッド機構」によって、修正テープが浮いたり、斜めに偏って貼られたり……みたいなミスは出づらくなるよ。これも、筆圧をかけやすいペン型の形状だからこそのメリットですね。修正テープを引くのが下手、という人にはかなりオススメしたい。
マキノ そこまで言われると、やっぱり気になりますね。
きだて あと、テープリールにも工夫がありまして。一般的に、修正テープやテープのりって、テープ残量が少なくなるほど、テープの引き出しが重くなっていくんですよ。ギア比の問題で。
マキノ そうか、テープが少なくなることでリールの直径は小さくなり、反対に巻き取るほうはどんどん大きくなるからだ。なるほど。そういうこともあるんですね。
きだて いっぽうで「ホワイパーPL」は、プラス独自の「ファインキーパー」という機構により、引くときの重さが変わりづらくなっているんです。
マキノ それもペン型だからこそ搭載できた機構!みたいな話なんですか?
きだて いや、これは特にペン型には関係してなかったね。
マキノ 関係ないんかい。
きだて でもペン型だから、もちろん収納・携帯しやすいという部分もあるし、そもそも近年の修正テープのなかではトップクラスに使いやすいと思うんですよ。ほんと、おすすめ。
きだて ラストは、微妙に“文房具”ではないかもしれないんですけど……。
マキノ どういう製品なんですか?
きだて 手芸用品と文房具を作っているKAWAGUCHIというメーカーが出した、「シリコンペン」というペンタイプの潤滑剤です。
塗ることで滑りをよくする「シリコンペン」(KAWAGUCHI)
マキノ ……なんか、その説明だけだとまったくピンと来てない。見た目は油性マーカーみたいな感じですけど、これで何ができるんですか?
きだて たとえば、ハサミが古くなると開閉しづらい、みたいなことってあるじゃないですか。
マキノ ありますね。なんかギシギシするみたいな。
きだて そういうときは、この「シリコンペン」のペン先で、ハサミの刃やカシメ(刃をまとめてる中央のびょう)の周りをこすります。すると、シリコン潤滑剤が塗布されて、スルスルシャキシャキと滑らかに動くようになります。あと、湿布やガムテープを切ってもベタつかなくなる。
刃が擦れるところやカシメ周りに塗ると、動きが一気に滑らかに!
マキノ おおー、スゴい。
きだて こういうピンポイントで潤滑剤が塗れるのが、ペン型のメリットですね。
マキノ 潤滑剤っていうと、たとえば呉工業の「5-56」みたいなやつですよね。僕は自転車のチェーンなんかに使ってますけど。
きだて そうそう。ただ「5-56」は溶剤の入った潤滑油なので、ゴムやプラスチックの表面を溶かす可能性もあって、使いどころを選ぶ必要があるんだ。あとはオイルだから、布とかにつくとシミになっちゃうし。
マキノ シリコンの潤滑剤だと、そういうことはないんですか? 布に染みちゃうとか。
きだて まったくなし! そもそも、縫い針の先端に塗るっていう使い方もあるぐらいだから。
マキノ 縫い針の先に潤滑剤を塗るんですか?
きだて 厚手の布とか縫うときに、なかなか針が入らないとかあるでしょ。そういうとき、これを針の先にちょっと塗ってやると、スルッと刺さるようになります。効果はそんなに長持ちしないけど、デニムとか合皮も手縫いできるよ。
マキノ おー、それはなんか面白そう! いいですね。
きだて また服のジッパーに塗ると、開け閉めがラクになるしね。冬物のジャンパーとかそろそろ出してくる時期ですけど、久しぶりに着てみたらジッパーが妙に硬くなってるとかあるでしょ。
マキノ それはありますね。あるある。
きだて そういう場合も、ジッパーに沿って何度か塗ってやると、スルスルスルと動くようになる。
マキノ べんりー!
きだて あと、個人的に面白かったのが、カッターナイフの刃に塗ること。これでダンボールとか厚手のものを切ると、スパーッと切れるようになるんですよ。
カッターナイフの刃に塗ると、ダンボールの曲線切りもスルスルスル……と
マキノ えっ、どういう作用なんですかそれ。
きだて 刃が切り進む際の摩擦を軽減するので、切れ味が軽くなるんですよ。こまめに塗らないとシリコンが落ちちゃうんですけどね。紙工作するときの裏ワザです。
きだて 久しぶりのプレゼンでしたけど、今回はどうでしたか。どれか欲しくなりました?
マキノ 「シリコンペン」、めっちゃ気になりました。
きだて 文房具じゃないやつだ。
マキノ そろそろ冬物のダウンジャケットを出すことになりそうですけど、長年使っているものなので確かにちょっとジッパーが硬くなってたような気がするんですよね。
きだて あ、それは使うべき。ジッパー、かなり新品の雰囲気に戻りますよ。
マキノ あとは、ホッチキスも気になるんですけどね。どうしようかなー。
きだて 復帰祝いにダブル買いでもいいんやで。
マキノ うーん、考えます。
冬物がそろそろお目見えする時季になりそうなので、「シリコンペン」を自腹買い! まずは試しにハサミの鋲(びょう)と刃に塗ってみると……、おお、確かに開閉スピードが少し早くなった気がします。次に本命のダウンジャケットのフロントジッパーに塗布。……スゴい! 開閉がまるで新品に戻ったかのようにめちゃくちゃスムーズになった!! ペン型だから初めての人でも簡単に塗れるし、ベタつかないし、これは便利。いっそのこと、家中の服のジッパーすべてに塗ってやろうと計画しています。これ、ホントに驚きの効果なので、イライラさせるジッパーをお持ちの人はぜひ使ってみて!(マキノ)
最新機能系から雑貨系おもちゃ文具まで、何でも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は大手文房具店の企画広報として企業ノベルティの提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。