ひと昔前、「サウナ」と言えば、おじさんが汗をかく場所……というイメージでした。しかし現在は、押しも押されもせぬサウナブームが到来! 洗練されたサウナも増え、老若男女問わず楽しんでいる人が増えています。
筆者もサウナにハマったひとり。月1〜2回ほど通っているのですが、実はまだサウナの醍醐味と言われる「ととのう」とはどういうものかを体感していない……! サウナに行くのに「ととの」えていないのは、なんだかとっても悔しい。私も「ととのう」状態を経験したい!
そこで思い切って、「ととのう」という言葉の生みの親、サウナ界のレジェンド「濡れ頭巾ちゃん」に、「ととのう」ためにはどうしたらいいのか、そして、サウナの魅力を聞いてみることにしました!
サウナ愛好家の間で、今や知らぬ人はいないワード「ととのう」(濡れ頭巾ちゃんTwitterより)
「ととのう」の発案者!
濡れ頭巾ちゃん(ぬれずきんちゃん)
サウナブームを象徴する言葉「ととのう」の生みの親。全国のサウナ施設を巡り酒場に繰り出す日々を綴ったブログ「湯守日記」主宰。BS朝日「サウナを愛でたい」レギュラー出演。ポッドキャスト「濡れ頭巾ちゃんのサバナ!」パーソナリティ。サウナの本質的価値を追求する「フィンランドサウナクラブ」会員。北海道旭川市出身。
湯守日記:https://ameblo.jp/spasaunalove/
筆者:そもそも、濡れ頭巾ちゃんが「ととのう」という言葉を生み出したきっかけはどのようなことからだったのでしょうか?
濡れ頭巾ちゃん:僕は寒い旭川出身ということもあって、小学1年生くらいからサウナに入っていたんです。でもずっと、「サウナで得られるこの快感!」を的確に表す言葉がないなぁと思っていて。
2009年頃のある時、サウナ仲間たちと北海道の「白銀荘」に行って、そのあと名物の豚サガリを食べながら「この気持ちよさを表す言葉がないのか」って飲みながら議論になったんです。そこで僕が「『ととのった』がいちばんしっくりくる!」と話したらすごくウケたんですよ。「サウナ」はフィンランド語なんだけど、「『ととのう』は日本発の世界共通用語にしよう!」なんて大盛り上がりして。
そのあと、しばらく自分のTwitterやブログで、サウナ後に「ととのったー!」なんて言っていたら、マネする人が出てきて、それをタナカカツキ先生がマンガ「サ道」で使ったことで一気に広まった感じかな。
白銀荘でサウナに入り、地元の名物豚さがりを食していたところ、この気持ちよさを濡れ頭巾ちゃんは「ととのう」という言葉で表現することを発案した
今や「サウナ」と言えば「ととのう」というワードはセットになっていますし、「サ道」では「ととのった〜」がキメ台詞のように使われていますけど、そんな風に誕生したんですね! 「ととのう」は、まさにサウナで得られる快感を的確に表していると共感した人が多かったから、ここまで広まったんでしょう……。
筆者:私はまだその「ととのう」を経験していなくて……。なので、濡れ頭巾ちゃんの、「ととのう」ためのサウナのお作法を教えていただけますか!?
濡れ頭巾ちゃん:まずは服を脱ぐこと!(笑) そして、体を洗います。僕の場合は日に何回もサウナに行くことが多いので、むしろ“洗いすぎない”ようにしていますが、基本はしっかり洗いましょう。そのあと、「水通し」と呼んでいるんですけど、水風呂に入ります。
筆者:サウナにまだ入っていないのに水風呂!? 寒すぎて無理なんですけど……。
濡れ頭巾ちゃん:「水風呂は冷たい!」って考えているから冷たく感じるんです。冷たいかどうかは脳が決めるので、“無”になって息を吐きながらゆっくり入ると、全然冷たくないですよ(笑)。
むしろ、体を洗ったり温浴槽に浸かったりしてから1回目に入るサウナは熱すぎると僕は感じていて。最初に水風呂で毛穴をきゅっと閉じておいて、そのあと1回目のサウナで毛穴がわーっと開いて、ブチブチと汗が出る……最初に冷たいのを経由するほうが、1回目も2回目もサウナがめちゃめちゃ気持ちいいことに気付いたんです。
筆者:そう言われると……最初に水風呂に入るほうがいいような気がしてきました。
濡れ頭巾ちゃん:「水通し」をしたら体を拭いてサウナへ。サウナの中で僕は、名前のとおり「濡れ頭巾スタイル」がお決まりです。冷たい水で濡らしたフェイスタオルをしっかり絞って、頭から顔の前にかける。頭にタオルをかけるから股間は全開なんですけど……それでいい。時計やテレビなどさまざまなものを遮断し、呼吸しやすくするのが目的です。時間や映像が気になると、そちらに意識を取られてしまうので。
これが濡れ頭巾スタイル(イメージ)
筆者:サウナは何分くらい入っているのがいいんでしょうか?
濡れ頭巾ちゃん:そんなの「出たいときに出る」です! 何分いなきゃいけない、という先入観がそもそもダメですね。せっかく自分を解放しに行っているのに、時間に縛られちゃっている! サウナに何分いるのがいいのかなんて、そのサウナの温度や湿度、そしてその日の自分の体調によっても変わってくるじゃないですか。どこのサウナでも同じ時間いなきゃいけない……と考えること自体がナンセンスです!
筆者:そう……なのか……!
濡れ頭巾ちゃん:サウナから出たくなって出たら、シャワーで汗を流します。僕はお湯で流すことが多いですね。そして水風呂に入るのですが、可能な施設なら、頭まで水風呂の中にしっかり潜っちゃいます。サウナ内では高いところほど熱くなるので、頭がいちばん熱されているから、頭まで冷やしたいんですよね。これも、時間は決めずに出たくなったら出ます。
状況が許せば、水風呂には頭から浸かるのが濡れ頭巾ちゃん流
筆者:そのあとは外気浴ですよね。座ったほうがいいのか、寝そべったほうがいいのか、迷うんですが……?
濡れ頭巾ちゃん:それも、どちらでもいいと思いますよ。でもインフィニティチェア(角度が変えられるリクライニングチェア)があると最高ですね!
「新宿の夜景を望む大外気浴でととのって、ビールでかんぱーい! こりゃたまらん」(ブログ「湯守日記」より)。インフィニティチェアがある施設は、より快適です
知己と一緒に行けば、時にはゴロンと寝っ転がって、話もはずみます
筆者:ここまでお話を聞いて、私はサウナに対して「こうしなければ」とか「水風呂は寒いからやだ」とか、割りと頭で考えすぎていたことに気付きました。さらに「ととのう」ために、大事なポイントってありますか!?
濡れ頭巾ちゃん:モノをとにかく排除することですね。何も考えずに“無“になることはもちろんなんですが、情報を遮断するためのタオル以外、体に何も付けないことです。だから僕は、水着着用のサウナとかはちょっと苦手。ロッカーのカギも、僕は腕に付けず横に置いておきます。
筆者:そこまで徹底するんですね! でも私……いろいろ考えすぎちゃって“無”になれないんですが……。
濡れ頭巾ちゃん:それは難しいですね(汗)。僕は普段、サウナ内では熱い・冷たいにしか意識がいかないし、「のどが渇いたな〜」とかしか考えていないので……。ならば、呼吸を意識してみるといいかもしれません。ゆっくりと息を吐くことで、体から力が抜けてリラックスできるから。大事ですよ、脱力することは。
サウナに入ってリラックスするには、呼吸を意識してみるといいのかも
筆者:そもそも何をもって「ととのった」と判断すればいいんでしょうか?
濡れ頭巾ちゃん:「ととのったって何?」ってよく聞かれるんですけど、私が言うことじゃないと思っています。「ととのった」状態というのは人それぞれで定義ができないものですし。だって、「気持ちいい」のがどういう状態や感じ方を指すか、人それぞれ違うでしょ?
ただ、自分の場合で言うと、ストレスがなくなること・モヤモヤが霧散すること・自律神経と脈拍が整い、まるで古い自分から脱皮して、新しく生まれ変わったような感じがあると「ととのったー!」と思いますね。直前まで仕事のことを考えたりしていても、いろんなアイディアがわーっとあるなかでムダなものがそぎ落とされ、本質がすっと現れる感じがするんです。
筆者:なるほど……! では改めて、濡れ頭巾ちゃんにとって「サウナの魅力」って何でしょうか?
濡れ頭巾ちゃん:サウナって、心をのどかにしてくれるし、サウナ好きな人にはゴキゲンで寛容性がある人が多い気がします。だって、気持ちいいとあくせくしないですからね。僕は「ととのった」という言葉を快楽の象徴として使っていますが、今まで「ととのったー!」という快楽をサウナ以外で味わったことがないんです。それだけサウナには、ほかにない気持ちよさがあると思っています!
「ととのう」の定義は人それぞれ。サウナに入ることでしか得られない感覚を求め、濡れ頭巾ちゃんは今日もどこかのサウナに入ります
筆者:あの、この取材は「価格.comマガジン」なんで、何かおすすめのサウナグッズを教えていただきたいのですが……。
濡れ頭巾ちゃん:ないです(キッパリ)! だって、さっき言ったじゃないですか。サウナではタオル以外体には何も付けない! これが鉄則!!
筆者:あっ、でもそれだと、編集さんに怒られてしまうんで……何かないでしょうか……!?
濡れ頭巾ちゃん:うーん、そういえば……サウナ中は何も身に付けないのですが、サウナ前後に僕は「THINGFABRICS」のTシャツと短パンを愛用しています。タオル地で、とにかく肌触りがいいんです。なんなら仕事中にもこれを着ていることもあります。で、そのままサウナに行く。あと、「サウナを愛でたい」(BS朝日)というテレビ番組で共演しているヒャダインさんの本、これがすごく読みやすくて、サウナの魅力を存分に知ることができるのでおすすめです!
筆者:ありがとうございます!
というわけで、サウナ界のレジェンド・濡れ頭巾ちゃんの教えを胸に、いざサウナに挑戦!
まずは「THINGFABRICS」のTシャツと短パンを取り寄せました。
確かに、タオル地でとても肌ざわりがよい!
着てみると、締め付けがなくリラックスできる!
普段サウナに行くのにも、しっかりメイク&パキッとした服装で行ってしまう私。こういうのでいいんだ……。さらにヒャダインさんの本も熟読し、イメージトレーニングはばっちりです。
雑誌の連載をまとめた本ですが、とにかくヒャダインさんのサウナ愛が伝わってくる!
こちらの本、読んでいるとだんだん「サ旅」にでかけたくなるんです。「サ飯」の魅力についても存分に語られていて、「わざわざこの『サ飯』のためにこのサウナに行こう!」をやりたくなるんです。サウナを「もっと楽しみたい!」という気持ちにどんどんなっていく、ワクワクしてくる本でした。
さて、ヒャダインさんの本を読み、「THINGFABRICS」を身に付けた私は、サウナに到着しました。今回はTシャツと短パンでやってきていますから、リラックスできてはいるものの「こんなラフな格好で外を歩いて……」と若干そわそわしています。しかし、周囲の人は特段私をジロジロ見ることもなく、「自分が思うほど周囲は自分の服装なんか気にしていないのだ」と、少し気がラクになります。
服を脱ぎ、さっそく洗い場へ。体を洗ったら、濡れ頭巾ちゃん直伝「水通し」です。今回訪れたサウナの水温はなんと「14℃」! 19℃くらいでも寒いな〜と思ってしまう私にとって、サウナ後でもキツイ水温です。しかし、濡れ頭巾ちゃんの教えのとおり、何も考えずに「ふわ〜」っと、リラックスを心がけながら入ってみました。すると……確かに、いつもよりは全然冷たくない! もちろんサウナ前なので5秒くらいで「むりむりむり!」と体が悲鳴を上げる(しびれてくる)わけですが、それでも入れただけすごいことだと思います。
そしてサウナ内へ。「水通し」した分、いつもよりもその温かさに対して感謝の気持ちが生まれます。タオルを頭から顔の前にかけて垂らし、いつもは「8分!」と気にしてしまう時計を、一切見ないで過ごしてみます。そろそろ出たいな、と思ったのは5分ほど経った頃。
再び水風呂に「リラックス」しながら入っていきます。正直なことを言うと、水風呂は「冷たいからやだ!」と、普段肩まですら入れないことも多いのですが、今回はできるだけ何も考えずに入ってみました。自然と肩まで入ることができ、約20秒。
そして外気浴スペースに移動して寝そべると……。いつもより、体の周りを雲が取り囲むような感覚が多くありました。明確に確信をもって「これはきっと“ととのう”だ!」と言えるほどかというと自信がないですが、それでもこれまでのサウナ経験の中で、体の周りがいちばん「ふわ〜」としたのは間違いありません。やっぱり濡れ頭巾ちゃんの教えってすごいな……!
同じように3回チャレンジしてみたのですが、残りはそこまでではなく……きっと途中で「この原稿、どんな風に書こう?」とか考え始めちゃった(=濡れ頭巾ちゃんの教えへの忠実度が、最初に比べて薄れた?)からかもしれません。
とはいえ、過去最高の気持ちよさを得られた濡れ頭巾ちゃんの教え。これからも「水通し」「時間や冷たさにとらわれないで無になる」ことを念頭に、サウナを楽しみたいと思います!
皆さんもぜひ実践してみてください。サウナ後、新たな境地に達することができるかも知れませんよ!
恋愛・就職・食レポ記事を数多く執筆し、社長インタビューから芸能取材までジャンル問わず興味の赴くままに執筆するフリーランスライター。Twitter:@KA_HO_MA