本連載は、文房具ライターのきだてたくが、「価格.comマガジン」の編集担当者に、便利な文房具をリモートで必死にプレゼンする様子を実況。もし紹介された製品の中で「欲しい」と思うものがあったら、それを編集担当者が実際に購入!……という自腹買い企画です。
第20回は、「2022年に発売された、“地味だけどマストバイだった文房具”」をテーマに、3製品をプレゼン!
「価格.comマガジン」の編集担当・マキノ(左)に対し、文房具ライターのきだてたく(右)が、プレゼン!
今回は2022年の文房具シーンを振り返りつつ、ベストバイ文房具を紹介しようかな……と思ったんですけどね
あれ? その話の流れだと、今回は2022年のまとめも、ベストバイ文房具もやらないんですか?
実のところ、2022年の文房具シーンって、振り返りづらいんですよね。2021年は下半期にものすごいボールペンの新製品ラッシュがあったりで盛り上がったんだけど、2022年はそういう大きなムーブメントがほとんどなくて“地味”……
そう言われてみれば、そんな気もしますね。なんか「特にこれがスゴかった!」みたいな印象はなかったかも
もちろん、単体で優秀な文房具はいっぱい発売されているんですよ。ただ、それがトレンドを作るにはいたらなくって。結果、全体的に地味な1年だったなー、という感じ
でも、別に不作だったわけじゃないんですよね?
そうそう、派手さに欠けただけで、むしろ堅実に優秀な文房具があれこれ出たとは思うんですよ。なので今回は、そういう地味さでうっかり見逃さないように、2022年の“地味でもマストバイな文房具”を紹介しようかな、と
いいですね、むしろ面白そうな雰囲気になってきましたよ
ということでまず紹介したいのが、2022年発売のボールペンの中でも最大の話題である、新世代「フリクションボール」から行きましょうか。こちら、パイロットの消せるボールペン「フリクションボールノックゾーン」(以下、「ノックゾーン」)です
新世代の消せるボールペン「フリクションボールノックゾーン」(ゴムグリップタイプ)
えっ、新しい「フリクション」って、それこそ超派手なトピックじゃないですか
実際、発売前から「フリクション3.0 解放しよう」という謎めいたティーザー広告をバンバン出してましたしね。なんだけど、実際に発売されてからは、そんなに話題になっていない。SNSなんかを見てても、ユーザーが発売情報をちゃんと認識していないというか
あれ、そう言えばそうだ。事前の「出るぞ」という話は聞いたんだけど、「出たぞ」は認識していなかったような。もしかして、なんか期待外れでした?
いやいや、それこそとんでもない。めちゃくちゃ優秀なボールペンなんですよ。なんでこれがあまり話題になってないのか不思議なぐらい。まぁ、そこを分析していると話が進まないんで、改めてこの新世代「フリクション」の何が優秀か、という話なんですけども
聞きましょう。気にはなっているんですよ
まず、「ノックゾーン」には近年話題になったボールペンの機能が全部盛りされている、というのがポイントのひとつです
そもそも、話題になったボールペンの機能、というのがよくわかんないんですけど、どういうことなんです?
まず、ノックを押す音が小さい「静音ノック機能」というのがあります。これは、ぺんてる「Calm」が搭載して話題になったやつ。で、ペン先のカチャカチャする微細なブレを抑制する機能もあって、これはゼブラ「ブレン」の人気機能ですよね
静音化のために新たにバネを追加。従来モデルからノック音を78%カットしています
え、それってもしかしてパクッ……
いや、達成している機能は似ているんだけど、それを行うための機構そのものは本家とは異なるやり方を取っているんです。なので、パクリというのとは違うかな
へぇー
で、あとはリフィル(インク芯)を金属にすることで、搭載するインク量を70%アップ。この大容量化は、三菱鉛筆「ジェットストリーム 新3色ボールペン」の長持ちリフィルでも注目されましたね
そんなところも! でも、今までの機能が全部入っているとしたら、そりゃ確かにめちゃくちゃ優秀じゃないですか
でも個人的に「ノックゾーン」の最大のポイントってそこじゃなくて。実は、インクの発色が明らかに濃くなったんですよ
従来の「フリクション」とのインク比較。いちばん上の「ノックゾーン」が明らかに濃く見えます
うわ、マジだ。比べてみると間違いなくクッキリしていますよ
フリクションって、これまでずっと「発色が悪い」「黒が薄い」といった部分で敬遠されていた面があって。でもこの濃さなら十分に使えるでしょ。このインクのバージョンアップこそが、新世代「フリクション」のメインのポイントだと思うんで、絶対に1度は試してみてほしいかな
話を聞くに、やっぱり1発目はそんなに地味じゃなかったですよ?
大丈夫、次は本当にすっげぇ地味だから。だって、ガムテープ(クラフトテープ)を切る専用カッターの話ですよ? デザインフィルの「クラフトテープカッター」なんですけども
あっ、聞くまでもなく地味だってわかる。なんですか、ガムテープ用カッターって
ほら、テープの紙芯に巻き付けて使う金属製でギザギザ刃のカッター、あるじゃないですか。あれのものすごい進化した版と思ってもらえれば
ガムテープを切るためだけの専用カッター「クラフトテープカッター」(デザインフィル)
ありましたね、あのギザギザのやつ。たまにあれで手の甲とか引っかいて、ケガしたりするんですよね
そうそう。意外と危ないよね、アレ。なんだけど、進化版のカッターはそういうのも配慮済みです。じゃあまず、テープに取り付けるところから。カッターの底にバネ付きのアームが付いていて、これを紙芯に挟みこんでセットします
取り付けると、なんかテープがやたらと重厚感出て、カッコよくなりましたね。すごいギミック感
切れ味も軽く、さらに切り口がギザギザしないフラットカットも魅力です
わかる、カッコよいよね。で、バネの力で挟み込んでいるので、テープを使っていって全体の直径が減っていっても、変わらない具合でカッターが固定できるんだ
そうか、金属を曲げて取り付けたギザギザカッターだと、テープの厚みが減ったらスルスル動き回っちゃうし
そういうこと。で、もうひとつ重要なのが安全性。さっきもギザギザ刃でケガするって話が出ましたけれど、そりゃあんな尖った刃が露出し続けていたら、誰だっていつかケガするでしょうよ。なのでまずは、刃をカバーするのは必須です
道理で刃らしきものが見えないなと思った
ここが刃を覆ってる安全カバーなんだけど、実はこれ、単にグッと押しただけだと開かないんですよ
ん? どういうことですか?
開けるための手順がいるんですよ。まずカバー自体を少し持ち上げて、そのまま奥に押し込むと、ようやく刃が露出します
えー、使うときにいちいち面倒くさくないですか、それ
いやいや、使ってみるとわかるんですけどね。まず普通にテープを切り口からめくってカッターに当てるでしょ。すると、テープの粘着がカバーについて、勝手に少し持ち上がる
テープを切る動作がそのままセーフティー解除につながるため、使いやすくてかつ安全です
あっ!
で、そのまま切ろうとしてテープを押しつけると、カバーが後退して刃が出てくるので……はい、サクッと切れました
はー、これはよくできてますねー
テープを切る動作でしか刃が露出しない。このセーフティーの仕組みはなかなか天才的だなと思うんですよ。刃もフラットカットで鋭く、軽い力でスパッと切りやすいし
地味だけど本当に進化してますね。これは面白い
ラストも間違いなく地味なんですけど、でも機能がスゴいんですよ。初めて見たときは感動したもん
えー、そこまで言いますか。地味なのに?
地味なのに。LIHIT LAB.の「1冊でも倒れないブックスタンド」と言います
謎めいたフォルムだけど、実は画期的な機能を持つLIHIT LAB.「1冊でも倒れないブックスタンド」
えー、なんじゃこりゃ。あらかじめ「ブックスタンド」って聞いてたからわかりましたけど、初見だとなかなか正体不明なビジュアルですね
たぶん、気になっているのは上に並んで付いている変なパーツですよね。これが大事なんですよ。機能としてはまさに製品名どおり、1冊だけ置いても本が倒れないというブックスタンドなんですけどね。説明するより、やってみせましょうか。はい、本を立てますよ
あっ、本を押し込むとその幅だけパーツが持ち上がるんだ。そういうことか
本を立てた部分のパーツは持ち上がって、その左右両サイドはそのまま残ってくれる。この残ったパーツが本を挟みこむことで、1冊だけでもしっかり固定して立たせてくれるんだ
立てた本の幅だけ上部のパーツが持ち上がって、降りたままの両隣のパーツが支えになる仕組み
なるほどー、これはちょっと驚きの仕組みですね!
逆に本を何冊か並べてある状態から1冊抜いてみましょうか。ほら、本を抜いたところのパーツが下がるので、ぽっかり空いた空間に両隣の本が倒れてくることないんですよ
すっげー! これは絶対に便利でしょ! 買う!
デスクの上にこれをセットして、仕事でよく使う資料本を立てておくと、とにかく便利なんだ。本を抜いた幅だけぽっかり空くので、ここに戻せばいいんだな、というのが視認しやすい。結果、片付けもしやすくなるでしょ
よくできてるわー。本を抜いたところに別の本が倒れ込んでくるの、イライラするんですよね。あれが発生しないってだけで十分に買いでしょー
俺は本を元の位置に戻すのが苦手なタイプなんですけど、これだと「どこに戻せばいいのか」が一発で見えるから整頓がラク。そういうタイプの人にも絶対オススメですよ
本を抜き取ってできた空きスペースにほかの本が倒れ込まないので、本の整理収納がはかどります
ちなみにこれ、ほかにカラバリはないんですか?
あー、それな。実はこのベージュというか白というかの1色だけなんだ……
いや、僕は絶対に黒が欲しいですね。カラバリ出してくれないかなー
LIHIT LAB.さんはカラバリ好きなメーカーなので、これが売れたら確実に展開してくれると思うんだけど
そうかー、そうなるとやっぱり今の時点で買わなきゃなのか
今回紹介した製品の中で気になったものって、どれですかね
改めて、やっぱり「フリクション」は地味じゃないですよ。これはまぁ買いますよね
ちなみにいちばん安いのがゴムグリップモデルで、あとは2,200円(税込)のウッドグリップと、3,300円(税込)のマーブル調グリップがラインアップされています
へー、高級モデルもあるんですか……。あ、マーブルのグリーンのやつ超カッコいいな! これかなー
金属リフィルが割と重いので、ゴムグリップモデルはリアヘビー気味なんですよ。グリップに重量感のある高級モデルのほうがバランスも取れていて、個人的にはオススメですよ
あとは「ブックスタンド」も気になりますよね。あの仕組みはスゴい。ほんと、黒があれば即買いなんだけど……
そこはちょっと悩んでもらうしかないかな。でも使うと感動するのは確実だよ
はーい、悩みます。久々にWゲットするかな
本好きなので、LIHIT LAB.の「1冊でも倒れないブックスタンド」を自腹買い! パッと抜き取ってスッと戻せるのがめちゃくちゃ便利です。裏面に足ゴムが付いているので、出し入れ中に本体ごと動いちゃうこともありません。よく使う参考書や読みかけの小説、“積読本”などを立てておくのにピッタリ! 複数台購入すれば、ジョイントですき間なく横に連結できるのもうれしいですね
最新機能系から雑貨系おもちゃ文具まで、何でも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は大手文房具店の企画広報として企業ノベルティの提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。