シャープペンシルを使うときに必要なのが、ノックボタンをカチカチと押して芯を出すこと。この音、自分がノックしているときはあまり気にならないんですが、意外と周囲に響いていることも……。反対に、隣から「カチッカチッ!」と聞こえてきて自分の集中が途切れてしまった、なんて経験がある人も多いのではないでしょうか。
最近は芯が自動で出てくるオートノックタイプのシャープペンシルも多く発売されており、こちらなら基本的にノック音は発生しません。しかし、ノートを取るなど長時間筆記をする場合、合間にノックをすることがほどよい息抜きになることもあります。
やっぱり、ノックタイプのシャープペンシルも捨てがたい。であれば、場所を選ばず使える“静かにノックができるシャープペンシル”が欲しいところでしょう。
パイロットから2022年12月に発売された「THE Dr.GRIP(ザ・ドクターグリップ)」は、発売から30年というロングセラーのシャープペンシル「ドクターグリップ」シリーズの最新モデル。大定番ブランド名に定冠詞「THE」を付けた、かなり意欲的なネーミングです。
その最大の機能が、実はこれまでのシャープペンシルに意外となかった「静音設計」というわけ。
ノック音を気にせず書き出せる「ザ・ドクターグリップ」(パイロット)
人間工学に基づいた太軸とシリコングリップは相変わらずの好相性。長時間書いても疲れにくくなっています
まず軸後端のノックノブを押し込むと、「カショ、カショ」とかなり控えめな音とともに芯が出ます。
完全に無音というわけではないですし、従来モデルもノック動作はやわらかめで音も比較的抑えられていたと思いますが、それでも差は明らか。公称値で「ノックの操作音50%カット」とのことですが、体感でもそれぐらいは静かになっている印象です。
元々やわらかめのノックが、さらにソフトに。音もかなり小さくなっています
注意して聞いてみると、弾けるような高音域のノイズが大きく抑制されている印象。このため、耳障りな感じがグッと減っているようです。この静音性は、メーカーいわく「ノック機構の部品形状を見直した」ことによるものだそう。これはナイスチューニング!
軸を振って芯が出せるフレフレ機構は、板書などの筆記の勢いを止めたくないときにマスト
さて、「ドクターグリップ」シリーズと言えば、ノックの代わりに軸を上下に振ることで芯を出す「フレフレ機構」も大きな特徴。いちいち持ち替えることなく芯が出せるため、慣れるともう手放せなくなるレベルで使いやすいんですが……しかし、軸内部のオモリを「ガシャガシャ」と振動させる衝撃音は、普通のノック音以上に耳障りな場合も。
そこで「ザ・ドクターグリップ」は、オモリを受け止めるバネの強度を調整して音と衝撃を低減。「フレフレ機構」でもノックと同様の静音化(従来比50%減)を達成しました。
振ってみると、確かにあの「ガシャガシャ」という衝撃が減っていて、すごくマイルド! 「バネの調整でこうも変わるかー!」と驚いた次第です。高音域が耳障りなノックと、低音域が気になるフレフレ。どちらもイイ感じに静音化できているのは、お見事というほかありません。
新たに搭載された、フレフレを一時的にオフにする「フレフレロック」機構も便利です。
移動中にフレフレが働いて芯が出て、ペンケース内が汚れてしまったというトラブルは割とありがち。そこで、軸を中央から90度回転させて内部のオモリを固定することで、フレフレをロックすることが可能になりました。
軸を中央からひねって、ロック操作を行います。ロックをかけた状態でも、ノックは使えるので、フレフレを使わない派の人は常時ロックしておいても問題なしです
青いリングに刻まれた印と「FURE FURE LOCK」のマークを合わせると、ロックがかかります
実際に試用して強く感じたのは、「ノック音の静音化が思った以上にきいているなー」というところ。書きやすさはそのまま、音に配慮された設計になり、周囲に気兼ねなくノックができるようになったことで、さらに使いやすくなったと感じられました。使って損なしのシャープペンシルなのではないでしょうか。
最新機能系から雑貨系おもちゃ文具まで、何でも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は大手文房具店の企画広報として企業ノベルティの提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。