借りる
特約の選び方や、万が一入れないときの対処法まで

住宅ローンの団信で確実に安心を手にする加入前4つの「必須準備」

マイホームを買うときは、多くの人が住宅ローンを利用することになるでしょう。そして、ほとんどの金融機関では、住宅ローンを組む"条件"として、債務者が「団体信用生命保険」(以下、団信)に加入することをあげています。

団信は、いざというときのために住宅ローンとセットで入る生命保険

団信は、いざというときのために住宅ローンとセットで入る生命保険

団信は「借りる側」と「貸す側」両方を守る保険

団信をひと言で表すと、住宅ローンをより安全にするための保険と言えるでしょう。住宅ローンを借りた債務者が死亡、または、各保険会社が定める高度障害状態になったとき、その時点の住宅ローンの残債と同額の保険金が金融機関に支払われ、住宅ローンの返済にあてられます。債務者やその家族にとってはもちろん、住宅ローンを貸し出した金融機関にとっても心強い存在です。

団信の保険料は、各金融機関が提供する住宅ローンの金利に上乗せして支払うケースがほとんどです。現在は、基本的な団信に加えて「特約」を付けて保障のカバー範囲を広げたり、がんなど特定疾患への保障を手厚くしたりするなど、さまざまな団信が用意されています。保障が手厚くなるにつれ、金利の上乗せ幅が上がりますが、一般的に、ほかの生命保険で同じ内容をカバーするよりも安くなるケースが多いようです。

最近では、従来になかったようなユニークな特約も登場しています。たとえば、ARUHIが提供する「失業保障特約三ツ星くん」は、非自発的に失業し、再就職ができない場合などに最長6か月のローン返済を保障する特約です。また、地震や豪雨などの自然災害時に、住宅ローンの返済を一部補償する特約などを設けている銀行もあるなど、団信はその魅力を高めているようです。

団信の内容は住宅ローンを組むときに決める

団信で注意したいのが、「加入のタイミング」と「どんな団信を選ぶか」です。団信は住宅ローンを組むときに加入しますが(あるいは、住宅ローンを借り換えたときにも、再度加入することになります)、保障内容を厚くする「特約」も付けられるのは加入のときのみで、原則として後から変更することはできません。また、後述するように「団信に加入できない」ケースだと住宅ローンの融資もつまずいてしまいます。

多くの人は、住宅ローンの手続きを進める中で、初めて団信について考え始めることが多いと思います。しかし、あわてて選んだのでは満足いく選択ができない可能性もあるでしょう。そこで今回は、団信に加入する前にあらかじめ考えておきたい「4つの準備」を、FPの加藤梨里(りり)さんに教えてもらいました。「これから住宅ローンを考えている人」や「住宅ローンの借り換えを機に団信も見直したい人」に、ぜひ参考にしてもらえればと思います。

【内容】
・団信加入前の4つの準備
 1. 加入できないときの対応を考えておこう
 2. 特約は自分に合ったものを
 3. 団信に「入らないほうがお得」はある?
 4. 保険金がおりる条件を確認しておこう
・住宅ローンを考え始めたら、団信も同時に考え始めよう

加藤梨里(かとう・りり)さん。団信をはじめとする保険、ライフプラン、節約資産運用などに強いファイナンシャルプランナー(CFP)。金融知力インストラクター、健康経営アドバイザー、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員としても活躍(詳細な経歴は記事の最後に掲載)

団信の準備1
⇒加入できないときの対応を考えておこう

住宅ローンを組む際には、債務者が自分の健康状態を告知します。これを、団信を引き受けている保険会社がチェックし、承認されれば住宅ローンの融資が実行されるという流れです。

「持病があるなど債務者の健康状態によっては、保険会社のチェックの段階で『団信には入れない』とみなされることがあります。その場合は、その金融機関からの融資はあきらめなければいけません」(加藤さん)

それでは、ほかの金融機関に変えればいいのかというと、話はそう単純ではないようです。ほかの金融機関に変えても「団信を引き受けている保険会社が同じだった」というケースがあるからです。

「その場合、審査の結果は変わらない可能性が高いのです。もし金融機関を変えるのなら、どこの保険会社が団信を引き受けているかまで確認したほうがいいでしょう。金融機関に聞けば教えてくれるはずです。保険会社が変われば審査基準も変わるので、団信の審査が通る可能性が出てきます」(加藤さん)

引き受け基準緩和型の「ワイド団信」

持病がネックとなり普通の団信に入れない人は、「ワイド団信」という選択肢があります。ワイド団信は、生命保険の引き受け基準緩和型と同じく、保険料は通常の団信より上がるものの(住宅ローンの金利に0.3%上乗せ)、加入の条件がゆるくなっています。

「ただし、どこの保険会社も『ワイド団信ならこの病気でも入れます』と明確には説明できない点は注意が必要です。保険会社は、債務者が告知書を出した段階での健康状態、年齢、病気の発症年齢、ほかの疾患との合併症などを総合的に個別対応で判断しています。ですので、たとえば『高血圧の方でも加入した実績があります。ただし高血圧の方すべてが加入できるとは保証できません』のような言い方しかできないのです」(加藤さん)

もし、健康状態に不安があり、普通の団信の加入が難しそうな人は、ワイド団信への加入の道を探るとともに、それでもだめな場合に備えて、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供している『フラット35』を利用する選択肢もあると言います。フラット35には基本的に団信が付いてきますが、任意で団信をはずすことも可能です(この場合、借入金利が年0.2%マイナスされます)。つまり、団信に入れない人でもローンが組めるわけです。これに加えて、団信に変わる受け皿として引き受け基準緩和型の生命保険への加入を検討するとよいでしょう(【団信の準備3】でも説明)。

また、もし共働き夫婦の場合で、どちらかひとりが普通の団信に加入でき、収入的にも住宅ローンを組める場合は、ひとりが住宅ローンを組んだ上で、実質的に2人で返済していくという手も考えられると言います。

「いずれにせよ、告知書に虚偽の内容を記入すると告知義務違反になり、万が一のときに保険金がおりないことになりかねませんので、ご注意ください」(加藤さん)

持病が団信加入のさまたげになるケースも(画像はイメージ)

持病が団信加入のさまたげになるケースも(画像はイメージ)

団信の準備2
⇒特約は自分に合ったものを

前述のとおり、団信には、保障を手厚くする特約があり、原則として住宅ローンに契約するときのみ加入できます。途中から特約分を加えることはできず、逆に、特約を途中で外すこともできません。特約を付けると保障が厚くなる分、保険料が高くなります。これは住宅ローンの金利に上乗せして支払うのが一般的です。

「住宅ローンの手続きを進めるのと同時に、自分に必要な保障を見極める必要があります。各社によって、さまざまな団信が発売されていますが、基本は下記で紹介するタイプです。これをベースに自分に合った特約を考えてみてください」(加藤さん)

●基本の団信
債務者が死亡、あるいは、団信を引き受けている保険会社が定める高度障害状態になったとき、住宅ローンの残債分が保険会社から金融機関に支払われます。保障期間は住宅ローンの返済期間と一緒です。仮に35年間のローンを組んでいた場合、団信も同じ35年間を保障します。繰り上げ返済をして、返済期間が30年間に短縮した場合、それにともなって団信の保障期間も30年間になります。

▼高度障害状態の例
・両眼の視力を全く永久に失ったもの
・言語またはそしゃく機能を全く永久に失ったもの
・中枢神経系または精神に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの
・胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの
・両上肢とも、手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
・両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
・1上肢を手関節以上で失い、かつ1下肢を足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失う
・1上肢の用を全く永久に失い、かつ1下肢を足関節以上で失う

●がん保障特約付き団信
基本の団信に、がんに対する保障が付帯しているタイプです。がんと確定診断された段階で保険金がおりるタイプです。ただし、上皮内がんは対象となっていないケースがほとんどです。

●3大疾病保障付き団信
基本の団信に加え、がんと確定診断されたり、脳卒中や心筋梗塞になり手術を受けたり、所定の状態になると保険金がおりるタイプの団信です。死亡・高度障害でなくても保障の対象になるというのが特徴で、多くの金融機関が取り扱っています。

●8大疾病特約付き団信
3大疾病に加えて、高血圧性疾患、糖尿病、慢性腎不全、慢性膵炎、肝硬変もカバーする商品です。これもメジャーな団信ですが、金融機関によっては7大疾病、11大疾病、精神障害を除く病気やケガに対応する全疾病就業不能保障など、独自の団信をラインアップしている会社もあります。

●ワイド団信
【団信の準備1】でも触れましたが、加入時の告知事項が簡素化されていて持病がある人でも加入しやすい団信です。基本の団信と同じ保障内容ですが、保険料(住宅ローンへの上乗せ金利)が高く設定されています。

なお、一度入ると内容を変更できない団信ですが、仮に、住宅ローンを借り換える場合は、団信に入り直すことになりますので、内容を変えることができます。そのときには健康状態なども変わっていることがありますので、あらためてふさわしい団信を選ぶ必要があります。昔に比べると団信の種類も増えていますし、住宅ローンの金利も下がっているケースが少なくありません。一度、住宅ローンと団信を見直してみるのもいいでしょう。

▼下記の記事では、金融機関各社が販売している団信を具体的に比較しています。ぜひ、あわせてお読みください。

特約を付けるか否か。団信の加入時に決める必要があります

特約を付けるか否か。団信の加入時に決める必要があります

団信の準備3
⇒団信に「入らないほうがお得」はある?

すでに触れていますが、フラット35では、団信に「加入しない」という選択肢があります。もし団信に加入しない場合は、金利が0.2%安くなります。

「【団信の準備1】で説明したとおり、団信やワイド団信に加入できない方の選択肢として【フラット35の団信なし+一般の生命保険】の組み合わせがあります。また、団信に加入できる方でも、もし年齢が若く、健康な人の場合はこの組み合わせを選択肢のひとつとして考えてみるのはいいかもしれません。今は『健康』の価値が高まっていて、一般の生命保険にはリスク細分型と呼ばれる商品が出てきています。加入者が

・非喫煙者
・BMIの数値が所定の範囲内
・血圧や血糖値が正常の範囲内

などの状態だと、『健康体割引』で保険料が安くなるケースがあるからです」(加藤さん)。

▼下記の記事では、団信を使うケースと、使わないケースの比較をしています。ぜひ、あわせてお読みください。

「そのほか、一般の生命保険と団信の保障内容が重複することも少なくありませんので、団信に加入する際は、すでに加入している保険の見直しや整理は必須です。見直すのは『住居費用』として考えている部分になります。仮に妻とお子さんがいて、保障額5,000万円の生命保険に加入していた場合、そのうち3,000万円を残された家族の生活費や教育費にあて、残りを家賃やローンなどの住宅分にあてると想定しているのなら、団信の加入にあわせて後者の部分を削る、と判断すればいいでしょう」(加藤さん)

自分の年齢や健康状態を踏まえて判断しましょう(画像はイメージ)

自分の年齢や健康状態を踏まえて判断しましょう(画像はイメージ)

団信の準備4
⇒保険金がおりる条件を確認しておこう

団信に加入しても、いざというときに「保険金の対象外だった」では困ってしまいます。

「たとえばがんの特約を付けていても、保障の対象になるのは『悪性新生物』と呼ばれるがんである点は注意が必要です。がん細胞が上皮(粘膜層)内にとどまっていて、基底膜を破って広がっていない状態の『上皮内がん』の場合、保険金が支払われない団信がほとんです」(加藤さん)

さらに保障が手厚い「全疾病就業不能保障」型の団信などの場合はどうでしょうか?

「『就業不能状態が12か月以上続いた場合』など、団信が適用されるには期間の縛りがあります。『就業不能状態が12か月以上』というのは、相当ひどい状態が予想されますよね? 団信の中には、保険金がおりるハードルが高いものがあります。また、うつ病をはじめとする精神疾患は保障に含まれないケースもあります。医師が病気を診断する際は、WHO(世界保健機関)が作成した疾患の分類である『ICD-10』を参照しますが、その中で精神疾患も細分化されていて、どの病気が保障の対象かは保険会社によって異なります」(加藤さん)

これらは、約款に記されていたり、保険会社に尋ねたら答えてくれたりすることもあるので「どんなときに団信の保険金が支払われるのか」は事前に十分チェックしておくことが大切です。

病気によっては団信の保障の対象とならないものも(画像はイメージ)

病気によっては団信の保障の対象とならないものも(画像はイメージ)

住宅ローンを考え始めたら団信の準備もお忘れなく

団信は、住宅ローンを組んだ後の”安心”を実現してくれるものです。しかし、それは、自分に合ったものを選ぶことが前提となります。

「実際に団信加入に動き始めると、説明してきたような問題にぶつかりがちです。団信選びは住宅ローンを選ぶのと同じくらい大切な作業と認識していただければと思います」(加藤さん)

住宅ローンや団信は、多くの人にとって人生でそう何度も体験することではないと思います。本記事や、記事内で紹介した関連記事を参考に、ぜひ、早めの準備をおすすめします。

住宅ローンの返済は

住宅ローンの返済は"長期戦"です。団信もしっかり備えておきたいですね

●記事監修者紹介
加藤梨里(かとう・りり)さん。マネーステップオフィス株式会社代表取締役。ファイナンシャルプランナー(CFP)、金融知力インストラクター、健康経営アドバイザー。保険会社、信託銀行、ファイナンシャルプランナー会社を経て2014年に独立。専門は保険、ライフプラン、節約、資産運用など。大学では健康増進について研究活動を行っており、認知症予防、介護予防の観点からのライフプランの考え方、健康経営に関わるコンサルティングも行う。

※本記事は、記事監修者及び執筆者個人の見解です。

大正谷成晴

大正谷成晴

フリーランスの編集・ライター。資産運用全般、ビジネス、クレジットカード、副業、医療・介護など、幅広いジャンルで取材・執筆している。企業の女性活用に関する記事執筆も多数。 著書に『決定版 1万円からはじめるFX超入門』(かんき出版)など

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