「新幹線の出発時刻より早く駅に到着したけど、時間をつぶせる場所がない」
「繁華街に買い物に出かけたけど、お金をかけずに休憩できる場所がない」
こんな経験は多くの人があることだろう。実は、こうした要望に応えるスペースとして、クレジットカード会員を対象とした“駅ラウンジ”があるのをご存じだろうか。
クレジットカード会員が特典として利用できる「ラウンジ」と言えば、空港ラウンジが一般的だ。しかし、数は少ないが、鉄道の駅にも列車の待ち時間や休憩に利用できる“駅ラウンジ”が存在する。今回は「旅行や出張で新幹線をひんぱんに利用する」「渋谷によく買い物に出かける」といった方向けに、東京駅と渋谷駅にある2つの“駅ラウンジ”を取材、普段はなかなか目にすることのない、その設備やサービスを紹介する。
最初に紹介するのは、JR東京駅にある「ビューゴールドラウンジ」。2015年12月にオープンし、JR東日本と、グループ会社のビューカードが運営しているラウンジだ。八重洲中央改札口を出て、まっすぐ歩いたところにある。
(上)東京駅にある「ビューゴールドラウンジ」には34の座席があり、ゆったりと過ごすことができる。(下)パソコンで仕事などを行えるよう、カウンター席も用意されている
このラウンジを利用するには、以下の(1)(2)の条件をどちらかひとつ満たしている必要がある。
(1)「ビューゴールドプラスカード」(年会費10,000円+税)か、「JALカードSuica CLUB-Aゴールドカード」(年会費19,000円+税)のいずれかの会員で、かつ当日の東京駅発の新幹線・特急のグリーン券を持っている
※新幹線は、JR東日本の各新幹線に加え、JR東海の東海道新幹線も対象
(2)東京駅発の東北・北海道・北陸・上越新幹線の特別車両グランクラスの当日のチケットを持っている
(1)(2)いずれも、「東京駅着」のチケットでは利用できない点は注意しよう。また、同伴者についてはひとりにつき3,000円(税抜)の利用料を払うか、ラウンジ利用券(ゴールド会員のみを対象に、ビューカード発行のクレジットカードで貯められるJRE POINTと交換可能)があれば、利用することができる。
「ビューゴールドラウンジ」は年中無休で、営業時間は8時〜18時(ラストオーダーは17時30分)。新幹線や特急の出発予定時刻の90分前から入室でき、利用時間は90分以内となっている。
受付のスタッフに対象のクレジットカードやグリーン券を提示してから入室する。スタッフの後ろにある組子細工は、東京駅丸の内駅舎のドーム型天井をモチーフに作られている
「ビューゴールドラウンジ」に一歩足を踏み入れると、東京駅の喧噪(けんそう)から一転、静かな空間が広がる。受付のスタッフに対象のクレジットカードと当日のグリーン券(あるいはグランクラスの指定券)を提示して入室。約108平方メートルの部屋には、カウンター、2名席、4名席が合計34席用意されている。
着席すると、おしぼりとドリンクメニューを渡してくれる。メニューの中にアルコールはないが、無料でコーヒー、紅茶、ハーブティー、オレンジジュースなど19種類から選ぶことができ、オリジナルのお菓子も1個無料で提供される。利用時間内であれば、ドリンクは何杯でもおかわりできるのがうれしいところだ。ラウンジのスタッフによると、コーヒーは人気メニューのひとつで「ここのコーヒーを飲んだら、ほかでは飲めない」という利用客もいるという。
ラウンジ内では無料Wi-Fiを利用でき、席によってはコンセントも設置されているほか、新聞5紙や約10種類の雑誌も用意されている。利用者はこの部屋で仕事をすることも、あるいは、新聞や雑誌を読みながらゆっくりとくつろぐこともできる。
無料オーダーのドリンクとお菓子が付いてくる。写真のドリンクはハーブティーで、心地よい香りが特徴
「スタッフがすべてを行う『フルサービス』を大事にしています」(ラウンジスタッフ)との言葉どおり、スタッフによる質の高いサービスがこのラウンジの特徴だが、インテリアなどにも東京駅らしさが散りばめられている。
入り口やラウンジ内壁面にある組子細工は、東京駅丸の内駅舎のドーム型天井をモチーフに作成。テーブルはすべて特注品で、表面にドーム型天井の模様が描かれたものや、線路の断面に見えるように側面が加工されているものがある。壁には、1914年に完成したばかりの東京駅丸の内駅舎を撮影した写真や、1893年当時の上野―青森間の時刻・運賃表のレプリカなども展示され、鉄道ファンを喜ばすしかけも施されている。
(上)テーブルはすべて特注品。側面が線路の断面に見えるように加工されたテーブルもある。(下)壁には完成当時の東京駅丸の内駅舎を撮影した写真や、明治時代の上野―青森間の時刻・運賃表のレプリカなども展示されている
オープンから4年たって徐々に知名度もアップし、今では平日はビジネスマンを中心に1日平均約40名、家族連れも多くなる土日祝日は1日平均約70名の利用がある。年末年始や大型連休中は特に混み合うという。また、新幹線で関西方面から東京駅を経由して東北などに旅行する際の待ち時間に使う旅行客もいる。
「『ビューゴールドラウンジ』では、グラスが空いていたらおかわりを率先して聞いたり、両手を使って飲み物を配膳したり、きめ細かなサービスにこだわって運営しています。このラウンジを利用することで、心地よい気持ちで旅のスタートを切ってほしいと思います」(ラウンジスタッフ)との言葉どおり、非常に高いレベルのサービスを受けられるラウンジだが、新幹線や特急の出発時間を伝えるアナウンスは行っていない。居心地のよさについ時間を忘れて乗り過ごさないよう、時間の管理だけは自分でしっかり行おう。
【ビューゴールドラウンジ(東京駅)】
営業時間:8時〜18時(ラストオーダーは17時30分)
対象のクレジットカード:「ビューゴールドプラスカード」、「JALカードSuica CLUB-Aゴールドカード」+当日東京駅発のグリーン券
※上記カードを持っていなくても、「グランクラス」の当日の東京駅発の指定券があれば利用可
座席数:34席
利用時間:90分以内(発車予定時刻の90分前から入室可能)
サービス:ドリンクサービス、お菓子、無料Wifi、クローク、新聞・雑誌、
続いて紹介するのは、渋谷駅にある「渋谷ちかみちラウンジ」。こちらは、2014年4月28日(シブヤの日)にオープンし、東急電鉄が運営するラウンジだ。渋谷駅とSHIBUYA109などを結ぶ地下通路「渋谷ちかみち」の3番、4番出口付近にある。
地下通路「渋谷ちかみち」の中にある「渋谷ちかみちラウンジ」。SHIBUYA109なども近くにあり、買い物の際の休憩するスペースとして便利だ
東急カードが発行する各種「TOKYU CARD」か、JCBなどのカード会社が東京メトロと提携して発行する各種「Tokyo Metro To Me CARD」の所有者なら利用可能。これらのカードを入り口のカードリーダーに読み込ませることで入室できる。なお、上記クレジットカードを持っていなくても、「渋谷ちかみちラウンジ」向かいの「渋谷ちかみち総合インフォメーション」で名前を記入すれば、誰でも利用できるが、混雑時はカードを持っている人が優先されるという。
「TOKYU CARD」か、「Tokyo Metro To Me CARD」を入り口のカードリーダーに読み込ませれば入室できる
年中無休で営業時間は10時から20時、利用時間は2時間以内。1日あたり平均で約120名が利用しているという。約180平方メートルのこの施設は、下記のとおり4つのスペースに分かれている。
・ラウンジ
・女性パウダールーム(授乳室)
・男性ドレッシングルーム
・ベビールーム
隣り合った部屋から部屋へ移動することができるほか、地下通路から直接各スペースに入ることもできる。
4つのスペースに分けられている「渋谷ちかみちラウンジ」。各スペースには地下通路から直接入ることもできる
約20席ある「ラウンジ」は「落ち着いて過ごせる空間になるように」(東急電鉄・広報企画担当の加藤千咲さん)と、木製のイスとテーブルを中央に配置。無料Wi-Fiのほか、一部の座席にはコンセントも用意されている。ビジネスマンが昼休みの休憩や仕事のために、女性が買い物の合間の休憩で訪れたりと、さまざまな使い道で利用されているという。ラウンジ内にはコンシェルジュがひとり常駐し、駅構内や駅周辺の案内などもしてくれる。ただし、こちらのラウンジは無料ドリンクのサービスを行っておらず、食事の持ち込みもできない点は注意しよう。
ぬくもりを感じさせる「ラウンジ」内は約20席。休憩や仕事などで利用する人も多い
おしゃれな街として知られる渋谷らしさが最も表れているのが「女性パウダールーム」だろう。このパウダールームは「エンターテイメントあふれる空間にしたい」と、20〜30代の女性に支持されている、写真家/映画監督の蜷川実花さんがディレクションするファッションブランド「M / mika ninagawa」とのコラボレーションで誕生。壁にプリントされた色鮮やかな写真が、華やかさを演出している。
「女性パウダールーム」の座席数は11席。
そのことを聞いた筆者が「11席とはずいぶんと多く用意しているのですね(そんなに使う人がいるのですか?)」と、“男性目線”の感想を伝えると、加藤さんがすかさず「渋谷で女性向けのイベントが開催されるときは満席になることも珍しくありません。そのため、ラウンジの利用時間は2時間以内ですが、このパウダールームは1時間以内に制限させていただいています」と答えてくれた。それだけ、駅構内にあるパウダールームが女性にとって重宝されている証拠なのだろう。このスペースには授乳室も3部屋用意され、子連れの母親によく利用されるという。
(上)「女性パウダールーム」は11席あるが、日によっては満席になることもあるという。(下)女性パウダールームには、授乳室も3部屋用意されている
「女性パウダールーム」ほどではないが、「男性ドレッシングルーム」も設備が整っている。黒を基調とした室内には、上半身用ミラーが4台、全身鏡が1台のほか、個室のフィッティングルームもある。こちらもビジネスマンが身だしなみを整えるのに使うケースが多いという。
身だしなみを整えるのに便利な「男性ドレッシングルーム」
子連れで買い物などに出かけると、ちょっと休憩できるスペースが欲しい、と思うのはよくあること。そんな要望に応えてくれるのが「ベビールーム」だ。ベビールームには、オムツ交換台やミルク用の給湯器もあるので、快適なお出かけにひと役買ってくれる。さらには、約20冊の絵本やおもちゃなど、子どもが遊ぶための設備も整っているので、親子ともどもリフレッシュできそうだ。
「ベビールーム」にはオムツ交換台やミルクを作るための給湯器も設置され、子連れでのお出かけを助けてくれる
加藤さんによると、上記4つの機能を備えた駅構内の施設は全国的にも珍しいとのことで、「このラウンジを渋谷に出かける際の休憩できるスペースとして多くの人に利用してほしいと思います」と話していた。再開発が進み、さまざまな商業施設のオープンが予定されている渋谷。今後、訪れる人の増加も予想されており、「渋谷ちかみちラウンジ」の利用価値もますます高まりそうだ。
【渋谷ちかみちラウンジ(渋谷駅)】
営業時間10時〜20時
対象のクレジットカード:各種「TOKYU CARD」、各種「Tokyo Metro To Me CARD」
※上記カードを持っていなくても、「渋谷ちかみち総合インフォメーション」で名前を記入すれば利用可能
座席数:約20席
利用時間:120分以内
サービス内容:無料Wifi、女性パウダールーム、授乳室、男性ドレッシングルーム、ベビールーム
以上、対象のクレジットカードを持っているなどの条件を満たせば、利用できる2つの“駅ラウンジ”を紹介した。「ビューゴールドラウンジ」は、対象カードの年会費が1万円以上かかるが、非常に上質なサービスを受けられる。空港と比べると大きな駅であっても、ゆっくりと待ち時間を過ごせるスペースが少ない中、出張や旅行で東京駅をよく利用する人は対象カードの入会を検討する価値はあるだろう。
いっぽう、渋谷駅周辺も喫茶店などをのぞけば、無料でひと休みできるスペースはそう多くない。そういった意味で、「渋谷ちかみちラウンジ」は貴重な休憩スペースとして重宝するだろう。名前などを記入すれば誰でも利用可能だが、各種の「TOKYU CARD」と「Tokyo Metro To Me CARD」があればスムーズに入室できるのはメリットになるだろう。両カードともに一般カードであれば、年会費が1,000円から2,000円前後のカードが中心で手ごろに入会できる。「TOKYU CARD」は東急グループで買い物をすると優待を受けられ、「Tokyo Metro To Me CARD」は東京メトロの乗車ごとにポイントが付与されるなどの特典もあるので、こうした点も含めて入会の判断をするのがよいだろう。
なおJR京都駅ビル内には、「JCBプラチナ」などのJCBの上級カード会員が無料で利用できる「JCB Lounge 京都」がある。ソフトドリンクの提供や、手荷物を預かるサービスを実施しているので、対象カードを持っていて、京都駅を訪れる機会がある人は利用してみるとよいだろう。
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