小学生の子どもがいる筆者も日々感じていることですが、子育てに関するさまざまな悩みのうち、一定の割合を占めるのが「お金」に関する悩みです。将来的にふくらんでいく教育費を見すえながら、日々の家計のやりくりをしていく必要があるからです。
いっぽうで、子育てをさまざまな形で応援する機運も高まりつつあります。自治体などの公的機関が主導、あるいは民間企業独自の子育て世帯を対象にした優待サービスが広がってきています。今回は、そうした家計の助けになるサービスを紹介します。いずれも、登録・利用に費用はかかりませんので、条件に合致すれば利用を検討してみてください。
自治体主導、あるいは民間企業単独で子育て世代を優遇するサービスが広がってきている
最初に紹介するのが、各都道府県が実施している「子育て支援パスポート」です。各都道府県が窓口などで子育て世帯にパスポートを発行、利用者は事業に協賛している店舗でパスポートを提示すると、割引やドリンク無料などの特典を受けられる仕組みになっています。協賛店舗の数は自治体によって異なりますが、飲食店、レジャー施設、宿泊施設など業種は多岐にわたっています。
「子育て支援パスポート」は、事業の名称は各自治体で微妙に異なりますが、47すべての都道府県で実施されており、いずれも無料で利用可能です。対象とする子どもの条件について「18歳未満」としている都道府県が多数となっていますが、一部の自治体では「中学生以下」「小学生以下」などと設定しているので、申し込みの際によく確認しましよう。協賛店は自治体から謝礼などの費用を受け取ることはありませんが、協賛店のステッカーを掲示できたり、都道府県の公式サイトに表示されたりと、子育てを応援している店舗であることをPRできます。
筆者が住む東京都の「子育て応援とうきょうパスポート」(都内在住の18歳未満の子どもがいる、もしくは妊婦がいる世帯を対象に発行)には、4,708店が協賛店として登録しています(2019年12月2日時点)。いくつかの協賛店と優待内容を下記にピックアップしてみました。
【マクドナルド】
ハッピーセットのチーズバーガーセットを割引価格で提供(都内をはじめ、全国47都道府県の店舗が対象)
【ブロンコビリー】
ドリンクバー & ジェラートバー(297円)が無料に(都内の店舗が対象)
【眼鏡市場】
眼鏡一式、コンタクトレンズなどを5%引き(都内の店舗が対象)
【東京靴流通センター】
1足1,000円以上の定価商品を10%引き(都内の店舗が対象)
【としまえん】
のりもの1日券などを定価窓口料金より300円引き
東京都の「子育て応援とうきょうパスポート」アプリ。一部の都道府県では、パスポートのアプリ配信も行っている
各都道府県は公式サイト内に、協賛店を探せるページを設けているので、興味のある方は検索してみてください。
2017年4月からは、国(内閣府)が主導して、各都道府県が発行する「子育て支援パスポート」を持っていれば、別の自治体に行ったときも対象店舗で優待を受けられる取り組みを進めています。これが広がることで、自分の自治体のパスポートを発行しておけば、帰省の際や、県境に住んでいる人も使えるので、利便性が一層高まると期待できます。
賃貸にしろ、持ち家にしろ、家計の中での住居費の負担は大きいものですが、子育て世帯を対象にこれらの費用について優待が受けられるサービスを紹介します。
全国約72万戸の賃貸住宅の管理などを行っている独立行政法人「都市再生機構(UR都市機構)」は、子育て世帯向けに賃料を割引する制度を設けています。
「子育て割」と呼ばれるもので、最大9年間、毎月の家賃が20%減額(減額上限は月25,000円)されます。条件は以下のとおりです。
対象世帯:(1)か(2)、いずれかの条件に当てはまる世帯。
(1)新婚世帯(配偶者を得て5年以内の世帯)
(2)子育て世帯(18歳未満の子を扶養する世帯)
減額期間:新婚世帯は最長3年間、子育て世帯は最長6年間。新婚世帯に子どもが誕生すると、子育て世帯に切り替えることができ、そうなると最長9年間、減額される
所得条件:世帯所得が月25万9,000円以下(毎年審査あり)
UR都市機構が管理する物件のすべてが対象となってはいませんが、条件が合致すれば、トータルで数十万円を超える減額を受けられる可能性があるので、賃貸住宅を探している方は調べる価値はあるでしょう。なお、民間業者と比べて、UR都市機構の物件は、礼金、仲介手数料、更新料、そして保証人・保証料が不要な点も大きな特徴になります。
UR都市機構は、最大9年間、毎月の家賃が20%減額される制度を設けている
独立行政法人「住宅金融支援機構」の長期固定型住宅ローン「フラット35」には、子育て世帯向けの金利優遇の制度があります。子育て支援に積極的な自治体と同機構が連携し、その自治体内で住宅を取得した場合に、当初5年間の金利を年0.25%引き下げるという内容です。
連携している自治体は約300あり、住宅金融支援機構の公式サイトで確認できます。こちらの金利優遇を受けるには、「フラット35」の利用条件に加え、住宅を取得する本人や子どもの年齢など、各自治体が定めた条件をクリアする必要があります。住宅ローンの借り入れは大きな金額になるため、「年0.25%の金利引き下げを5年間」受けられれば、数十万円もの節約につなげることも可能です。
スマホ料金などの通信費も家計に占める割合は少なくありませんが、大手通信事業者2社が子育て世帯向けにうれしい特典を提供しています。
NTTドコモは自社のスマホなどを契約しているユーザーを対象に、子どもの誕生月に3,000円分の「dポイント」を付与する特典を用意しています。「ドコモ 子育て応援プログラム」というサービス名で、公式サイトやドコモショップで無料で申し込めます。その際、親子関係や子どもの生年月日がわかる「母子健康手帳」や「健康保険証」などが必要になります。また、適用条件として指定の料金プランの契約、dポイントクラブへの入会などが定められています。
一度登録すれば、「dポイント」は子どもが12歳になるまで毎年付与され、生まれてすぐに申し込めば、子どもひとりにつき最大39,000P(3,000P×13年間)もらうことが可能です。このほかにも、小学校卒業までの間、50GBのクラウド容量を無料で追加できる特典も用意されています。子どもが小さいうちは写真・動画を撮る機会も多いので、こちらも利用価値の高いサービスと言えるでしょう。
ソフトバンクも同様の特典を用意しています。こちらは、ソフトバンクユーザーを対象に、子どもが12歳になるまでの誕生月に初回3,000円、2回目以降1,000円を通信料から割引するものです。「子育て応援クラブ」というサービス名で、公式サイトやソフトバンクショップで申し込み可能です。NTTドコモの場合と同様、「母子健康手帳」や「健康保険証」などが必要になります。また、指定の機種を使っていることや、対象プランに加入中であることなどの条件があります。
「子育て応援クラブ」ではこのほかにも、自分だけのフォトブックを作成できる「Myフォト」が7か月間無料で利用できたり、レジャー施設の割引やプログラミング体験教室を受講できたりする特典が用意されています。無料で利用できるので、子どものいるソフトバンクユーザーならぜひ利用したい特典です。
NTTドコモとソフトバンクは、自社のサービスを使う子育て世帯向け特典を用意
子どもが小さいうちは特にそうですが、子連れでの買い物には結構な労力が必要になります。そのため、ネットスーパーでの配達料や、ネットショッピングで割引が受けられる優待サービスもあります。
イトーヨーカドーでは、交付から4年以内の母子健康手帳をスタッフに提示すると、2つの優待サービスが受けられます(申し込みは無料)。
・ネットスーパーの配達料(1回330円)がいつでも102円に
・店舗で購入した商品の自宅までの配達料(1ケース550円)がいつでも102円に
子どもが小さいうちは、オムツなどのかさばる商品を買うことが多く、荷物を自宅まで持ち帰るのもひと苦労です。そのため、イトーヨーカドーのネットスーパー、あるいは実店舗で買い物をする際は利用したいサービスと言えるでしょう。
楽天市場は「楽天 ママ割」というプログラムを用意しています。名称は「ママ割」ですが、男性も登録できます。こちらは、証明書などの提出は不要です。自身の情報を楽天市場に登録したうえで、専用ページで子どもの名前や生年月日などを記入すれば、手続きは完了となります。
特典として、子どもの誕生月に合わせて楽天市場で使える300円オフのクーポンがもらえるほか、楽天SEIYUネットスーパーでの買い物で「ポイント3倍」などのキャンペーンを随時行っています。また「ママ割」会員を対象に、ベビー用品などが入った「サンプルボックス」が毎月150人に当たる抽選も行っています。
参考:楽天市場「ママ割」
ネットスーパーでの配達料の割引や、ECサイトでのクーポンがもらえる優待サービスもある
最後に、割引特典ではありませんが、子育て世帯が飛行機で旅行する際に知っておきたいお得なサービスについても紹介します。
JALとANAはそれぞれ、クレジットカードの「JALカード」「ANAカード」会員を対象に、家族のマイルを合算して利用できる無料のサービスを実施しています。たとえば、「JALカード」を例にサービスについて紹介します。
夫:JALカード本会員 保有マイル:8,000マイル
妻:JALカード家族会員 保有マイル:2,000マイル
長女:JALマイレージバンク会員 保有マイル:1,000マイル
長男:JALマイレージバンク会員 保有マイル:1,000マイル
上記のような家族の場合、夫の8,000マイルだけだと通常、往復分の無料特典航空券に交換することはできません。しかし、家族分を合算して12,000マイルになると、東京と大阪間の往復の無料特典航空券に交換可能です。マイルは1人ひとりではなかなか貯まりにくいものですが、家族分のマイルも合算できることで有効活用しやすくなります。公式サイトで申し込み後、申請書を郵送すれば手続きは完了です。ANAも同様のサービスを行っています。
参考:JALカード家族プログラム
参考:ANAカードファミリーマイル
家族のマイルが合算可能になることで、マイルも有効活用しやすくなる
以上、子育て世帯に向けた優待サービスを紹介してきました。各サービスの概要を以下に表にまとめました。
これらの優待サービスは、生活のさまざまな分野にわたり、いずれも無料で利用できるものばかりです。登録手続きなど、ちょっとした手間をかければ、割引などの特典が受けられるので、使えるものは積極的に活用するとよいでしょう。ただし、各サービスで「子ども」の年齢条件はさまざまなので、その点は利用する際に確認するようにしましょう。
オフィスクイック代表。1990年より編集・ライターとして出版業界に携わる。リクルート、小学館、講談社ほか多数の出版社の各媒体にて、主に企業取材、企業人インタビューを手がける。1999年の金融ビッグバンを機に金融・保険を自身の専門分野として確立。ユーザーの視点からの、わかりやすい記事を多数執筆。