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元国税局職員のフリーライターが実体験をもとに解説

保険、年金、クレカ… フリーランスが直面する「7つのお金の問題」とその対策

一部大手企業で進む「社員の個人事業主化」や「副業解禁」、さらには新型コロナウイルス感染拡大の影響による業務のリモート化などの流れを受け、新しい働き方としての「フリーランス」に注目が集まっています。しかし、実際に会社員からフリーランスに変わると、さまざまな「お金の問題」が生じます。今回は、社会保険や税金など、フリーランスが直面するお金の問題と対策について、4年ほど前に東京国税局職員からフリーライターとして独立した筆者が、実体験をもとに解説します。

新しい働き方として注目の「フリーランス」。仕事に集中するためにも、お金の心配をいかに減らせるかが重要に(写真はイメージ)

新しい働き方として注目の「フリーランス」。仕事に集中するためにも、お金の心配をいかに減らせるかが重要に(写真はイメージ)

【健康保険】国民健康保険への切り替えで、保険料負担がアップ

フリーランスとして独立すると、さまざまなお金の問題が出てきます。税金や社会保険、仕事上のお金の管理など、考えるべきことは多岐にわたりますが、最初に押さえておきたいのが、「健康保険」の問題です。

会社員の場合、勤務先を通じて健康保険に加入します。この健康保険の保険料は、収入に応じた標準報酬月額に基づき算定され、勤務先と折半して負担する仕組みになっています。ところが、会社を辞めてフリーランスになると、それまで加入していた健康保険は原則として脱退しなくてはなりません。独立後に家族の扶養に入る方は、扶養者の健康保険に加入できますが、扶養に入らなければ自身で新たに「国民健康保険」に加入することになります。

国民健康保険に移行するときに直面するのが、保険料の増加です。前出のとおり、会社員の健康保険は勤務先と折半して負担しますが、国民健康保険にはそのような仕組みがなく、保険料を全額個人で負担することになるからです。さらに、会社員の健康保険は扶養家族が増えても保険料に影響しませんが、国民健康保険の場合、世帯の人数が多いほど保険料が増える仕組みになっているため、家族構成次第ではさらに負担が重たくなります。

「任意継続」でも保険料は自己負担

なお、会社員の健康保険には、退職後も最長2年間、健康保険加入者の資格を継続できる「任意継続」という仕組みがあります。これを使えば保険料アップを防げると思われるかもしれませんが、それは誤りです。なぜなら、任意継続を申請したとしても、それまで勤務先と折半していた保険料が、退職後は全額自己負担になってしまうからです。

私も東京国税局を退職する際、任意継続を利用しましたが、保険料は一気に2倍になりました。その後、任意継続の期間が切れて国民健康保険に切り替わると、5人家族ということもあり保険料の負担はさらにアップしました。

健康保険の保険料は、フリーランスになると最初に直面する「お金の問題」です。健康保険の保険料は増えるものと覚悟し、ある程度余裕をもって独立資金を準備しておくようにしましょう。

【年金】国民年金だけでは老後資金が不足

会社員からフリーランスになると、年金の仕組みも大きく変わります。通常、会社員は厚生年金に加入しますが、退職をすると厚生年金を脱退し、国民年金に切り替わります。厚生年金には任意継続の仕組みはないため、配偶者の扶養に入る場合を除き、必ず切り替えの手続きが必要です。

厚生年金の保険料は、健康保険の保険料と同様に、標準報酬月額に基づき算定され、やはり勤務先と折半する仕組みになっています。いっぽう、国民年金の保険料は一律で設定されており、令和2年度は月額16,540円です。

厚生年金の保険料が収入に比例するのと異なり、国民年金の保険料は一律なので、通常はフリーランスになると年金に対する保険料の負担は少なくなります。しかし、国民年金だけでは、老後資金としては不十分となる可能性があることに注意が必要です。厚生労働省が公表している「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和元年度末時点の厚生年金受給者の平均年金月額は約146,000円であるのに対し、国民年金受給者の平均年金月額は約51,000円にとどまります。

国民年金基金や付加保険で「自分で増やす」ことも検討したい

実際の受給額は、厚生年金に加入していた期間などによって変動しますが、フリーランスとして国民年金に加入する期間が長くなると、老後の生活を年金だけではまかなうのが難しくなるでしょう。しかも、フリーランスには会社員のような退職金もないため、何らかの対策が必要です。

そこで検討したいのが、「みずから年金を増やす」ということ。たとえば、任意で設定した加入口数に応じた掛金を支払うことで、将来の受取年金を増やせる「国民年金基金」という制度があります。国民年金基金には加入プランが複数あり、年金が生涯続くものや一定年数に限定されるもの、遺族にも支給されるタイプのものなどがありますので、それぞれの希望に合ったライフプランを設計しやすくなります。

国民年金基金のほかにも、月々の保険料を400円増やすことで将来の年金受取額を増やせる「付加保険」という制度もあるので、お金に余裕があれば、いずれかの利用を検討するといいでしょう。

国民年金だけでは老後の備えとしては不安。フリーランスの場合、自分で増やす工夫が求められる

国民年金だけでは老後の備えとしては不安。フリーランスの場合、自分で増やす工夫が求められる

【共済】小規模企業共済で、“いざというとき”に備える

フリーランスが老後資金を準備するときのコツは、節税とからめることです。

先ほど説明した国民年金基金や付加保険は、掛金の全額が所得控除として所得から差し引かれるので、節税に役立ちます。このほか、金融資産を運用して老後に備える「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や、廃業時や退職時のために積み立てる「小規模企業共済」にも同様の節税効果があります。

このように、フリーランスには節税をしながら将来のためにお金を貯める方法が複数あるのですが、その中で私自身が独立当初から利用しているのが、小規模企業共済です。小規模企業共済は、小規模企業の経営者や役員、フリーランスが利用できる制度で、月々の掛金は、1,000円から70,000円の範囲(500円単位)で自由に設定できます。この掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引かれ、たとえば課税所得(収入から各種経費や各種控除を引いた額)の金額が600万円ある人が毎月3万円(年間36万円)の掛金を支払う場合、所得税と住民税を合わせて年間約11万円の節税効果が見込めます。

独自の貸付制度で急場をしのぐ

私が小規模企業共済を利用しているのは、こうした節税効果もさることながら、「独自の貸付制度」があることに魅力を感じたからです。小規模企業共済の掛金の納付期間や金額に応じて、事業資金などを低利率で借り入れられる仕組みがあり、たとえば病気や怪我などで急遽入院をしたようなときに、資金を借り入れて急場をしのぐことができます。

フリーランスになると、収入が不安定になるため、このような貸付制度の存在は心強いものです。国民年金、付加保険、iDeCoも、節税や老後資金準備の観点からは有効な手段であることに間違いはありませんが、うっかり掛金を払いすぎると、いざというときに手元資金が不足するおそれがあります。いずれの制度を利用する場合も、掛金の設定などを慎重に検討して、無理なく老後資金を貯めていくことが大切です。

※参考 小規模共済
https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/

【節税】開業届をきちんと出して、青色申告で節税

個人事業を開業すると、 事業の開始日から1か月以内に、所轄税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」(以下、開業届)を提出する必要があります。

この開業届を出すべきかどうかを悩んでいる人は少なくないようです。というのも、法律上、「開業した」といえるのがどういった状況なのかが明確ではないからです。しかも開業届を出さなかったとしても、何か罰則を受けることはなく、税務署から「開業届を出してください」と連絡がくることも通常ありません。

青色申告の節税メリットは大きい

とはいえ、開業届は基本的に節税メリットにつながるものですから、忘れずに提出したほうがいいと考えます。特に影響が大きいのが、「青色申告を利用できるようになる」という点です。青色申告は、事業所得・農業所得・不動産所得のある人に限って利用できるもので、フリーランスの場合、青色申告を利用するには、開業届を出して事業所得を有することを税務署に届け出る必要があります。

そのうえで青色申告の各申請手続きをすると、さまざまな節税メリットを受けることができます。たとえば年間最大65万円を所得から差し引ける「青色申告特別控除」や、家族に支払った給料を全額必要経費にできる「青色事業専従者給与」といった制度があり、これらをうまく活用すれば、毎年数十万円単位の節税効果が期待できます。

開業届を出すことで、節税メリットの大きい青色申告を利用することができる

開業届を出すことで、節税メリットの大きい青色申告を利用することができる

【クレジットカード】事業用の銀行口座・クレジットカードを作る

フリーランスになると、通常は1年に1度確定申告をしなくてはいけません。このとき、1年間の所得金額を算出するために、売上や必要経費などを集計した帳簿を作成することになります。

帳簿の作成自体は、会計ソフトを使えば、そこまで難しくはありません。問題は、「事業関連のお金の動きをきちんと管理すること」にあります。ここで大切なのが、事業用の銀行口座や、その口座に紐付いた事業用クレジットカードです。事業に関連する売上金の受け取りや、必要経費の支払いを、事業用口座や事業用クレジットカードにまとめておくと、帳簿の作成が楽になります。

ビジネス専用の1枚があったほうがいい

もし、生活用の銀行口座やクレジットカードで事業関連の入出金をしてしまうと、後からお金の動きを確認し、「事業関連か、プライベート関連か」と区分けする必要があり、これは非常に大変です。また、本来は必要経費にできないプライベートの出金を誤って必要経費として確定申告をするおそれもあり、税務署から調査や課税処分を受けるリスクが高まります。

会計ソフトの中には、銀行口座やクレジットカードの情報を自動的に連携してくれるものがありますので、こうしたソフトに事業用の銀行口座やクレジットカードを連携させておくと、帳簿作成をスピーディーかつ間違いなく行うことができます。

【保険】フリーランスになるなら、保険の見直しを

会社員と比べると、フリーランスは生活上のリスクが高くなります。病気や怪我などで仕事ができなくなれば、医療費だけでなく収入減にも対処する必要があるからです。

会社員の場合、有給休暇があるため、ちょっとした入院であれば収入が減ることはありません。仕事ができない状態が長期化したとしても、会社員の健康保険には「傷病手当金」という仕組みがあり、収入の3分の2程度の金額が支給されます。

ところが、フリーランスには有給休暇がなく、国民健康保険には傷病手当金の制度もありません。したがって、仕事ができなくなると、収入が減少し、たちまち生活に影響が出てきます。

収入減は大きな精神的負担に

実は私も、独立後、3か月ほど仕事がほぼできなかった時期があります。3人目の子の妊娠にともなう検査で妻に血圧異常が見つかり、急遽入院することになったのです。そのため、当時小学生だった2人の子どもの世話を含め家事をすべて私が行うことになり、仕事の受注をほぼストップせざるを得なくなりました。

このときに助けられたのが、独立後に念のために加入した医療保険でした。妻も被保険者となっていたため、入院一時金に加え、入院日数に応じた保険金を受け取り、医療費の自己負担額に加え、生活費としても利用できました。

当時痛感したのは、フリーランスにとって、収入が減り、貯金を取り崩して生活することは、大きな精神的負担になるということでした。私の場合、幸いにして保険でまかなうことができたため、妻の入院中は経済的な不安なく看護や家族の世話に集中することができ、その後もスムーズに仕事復帰をすることができました。

フリーランスになると、自分はもちろん、家族に何かあったときの備えも必要になります。独立を考えるときは、医療保険を見直したり、所得の減少に対処する所得補償保険に加入したりといった対策を検討してみてください。

※参考記事
「長期間働けない」リスクにどう備える? 就業不能保険の賢い入り方(価格.comマガジン)
https://kakakumag.com/money/?id=13287

【業務トラブル】フリーランス特有のお金のトラブルに備える

フリーランスになって日々感じるのが、「目には見えないリスク」があるという点です。先ほど触れた家族の入院もそうですが、仕事で何らかのトラブルが発生したときのリスクも存在します。

たとえば自分のミスで取引先に損害を与えたとき、会社員であれば会社が助けてくれますが、フリーランスはみずから賠償をすることになるかもしれません。そもそも、トラブルが起きたときに相談する相手を見つけるのも難しいでしょう。

そこで私は、「一般社団法人 プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」(以下、フリーランス協会)に加入することにしました。フリーランス協会は、フリーランスとして働いている方はもちろん、パラレルキャリアで副業をしている会社員など、幅広く加入が認められており、会員向けにさまざまな福利厚生サービスを提供しています。

画像はフリーランス協会公式サイトより

画像はフリーランス協会公式サイトより

フリーランスに特化した賠償責任保険も

たとえば、健康診断・人間ドックやレジャーの割引などがパッケージになった「WELBOX」の利用や、会計ソフトの一定期間無料サービス、法律相談、コワーキングスペースの優待サービスなど、フリーランスにとってうれしい会員特典が用意されています。

なかでも私が特徴的と感じたのが、フリーランスに特化した賠償責任保険です。たとえば以下のようなケースで生じた損害を補償してくれるとのことです。

・パソコンがウイルスに感染し、企業情報が漏えいし、発注者に営業損失が発生。
・フリーランスの入院による納期遅延のため、発注者の業務開始が遅延し、発注者に営業損害が発生。
・発注者へ納品した成果物が第三者の盗用にあたるとされ、第三者から損害賠償請求を受ける。
・預かっていた第三者の財物を誤って壊してしまった。

※フリーランス協会ホームページ より一部を抜粋
https://www.freelance-jp.org/benefits#insurance

なお、ここまでに説明した福利厚生サービスは、フリーランス協会に加入し、年会費1万円を支払うことで受けることができますが、さらに任意で保険料を支払えば「所得補償制度」に加入することもできます。

所得補償制度は、怪我や病気で働けなくなったときの所得減少に備えることができる保険です。仕事中だけでなく、日常生活における病気や怪我でも補償を受けることができるので、こちらも検討したいところです。

※参考 一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会
https://www.freelance-jp.org/

※2021年2月23日の初出時、フリーランス協会様提供の福利厚生サービスのうち、2021年1月で新規申し込みが終了していた「チャットワークの有料プラン(月額400円)の無料利用」の記載がございました。お詫びして訂正いたします(2021年2月24日)。

本業に集中するためにも、お金の心配を減らしておきたい

今回は、フリーランスとして独立する際に直面するお金の問題と、対策について説明しました。なかにはお金がかかる対策もあるため、すべてを最初から整えるのは難しいでしょう。ただ、いつまでも何も対策を取らずにいると、むしろお金の問題は大きくなってしまいがちです。

フリーランスにとって何より大切なのは、さまざまな心配事にとらわれずに本業に集中することだと考えています。特に独立直後の不安な時期を乗り越えるためにも、基本的なお金のルールを理解し、ご自身の状況に合った対策を少しずつ取り入れるといいでしょう。

※本記事は、執筆者個人の見解です。

小林義崇

小林義崇

元国税専門官、フリーライター。 2004年に東京国税局に採用され、相続税の調査や所得税の確定申告対応等に従事。2017年独立。著書に「すみません、金利ってなんですか?」(サンマーク出版)などがある。

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