春は変化の季節。進学、就職、転勤にともない新生活をスタートさせる方もいらっしゃることでしょう。新生活を始める前後は、うまく活用すればクレジットカードのポイントを獲得しやすい時期でもあります。たとえば、引っ越し料金や敷金・家賃の支払いにクレジットカードを使えば多くのポイントを獲得できるうえ、カードによっては引越費用の割引特典が用意されていることも。
また、新生活を始めると家具や家電など何かと物入りになりますが、カード入会後の一定期間還元率が大幅にアップするカードもあります。今回は新生活スタートのために、引っ越しの予定がある方や新たにマンション・アパートを借りる方に向けた、クレジットカード活用術を紹介します。
3月と4月は引っ越しの繁忙期。当然料金も高くなる傾向があります。価格.comの「引っ越し」カテゴリーには、ユーザーが支払った引っ越し料金の月別平均額が掲載されていますが、3月と4月は11万〜12万円前後(家族世帯)で、最も安い8月の1.5倍程度という結果になっています。
(下記は「価格.com 引っ越し」カテゴリーに掲載されている、3月〜4月の引っ越し料金の相場価格です)
3月〜4月の引っ越し料金の相場(「価格.com「引っ越し」カテゴリーより)
2018年には、作業員不足の影響で希望日に引っ越しができない「引っ越し難民」問題が顕在化しましたが、昨年2020年春は、新型コロナウイルス感染拡大による転勤の減少や延期の影響で引っ越し件数は減少傾向だったようです。引っ越しの需給予測を毎年発表している「アップル引っ越しセンター」によると、2021年も転勤件数の減少などにより需要が若干抑制され、「引っ越し難民」問題はやや緩和するとの見通しが示されています。引っ越し料金についても、見積もりサイトを運営する「エイチーム引越し侍」が引っ越し業者137社を対象にアンケートを行いましたが、2021年春は「下落」を予想する業者が69%にのぼりました。
かつて引っ越し料金は当日の現金払いが一般的でしたが、最近では大手を中心にクレジットカード払いに対応する業者が増えてきました。上記の表を見てもわかるとおり、引っ越し料金は最低でも数万円、場合によっては数十万円になることも多く、カード払いをすることで多くのポイントを獲得できるチャンスとなります。さらに、カード会社によっては大手引っ越し業者と提携し、そのカードで支払った場合「基本料金○%オフ」といった特典も用意されています。割引適用となるのは引っ越し料金全体ではなく基本料金(車両費+人件費)としていることが一般的です(オプション料金などは割引の対象外)。
そこで、大手引っ越し業者と提携し割引が受けられる主なカード会社と特典内容、そして各社のカードのうち、おすすめの1枚を紹介しましょう。すでに対象カードを持っていたらそれを使ってもOKですし、この機会に新たにカードに入る、というのもアリでしょう。なお、引っ越し料金の支払いにカードを使う場合、見積もり時や申込時など、事前に業者に伝える必要があるので、注意しましょう。
オリコカード会員が割引を受けられるのは「アート引越センター」と「サカイ引越センター」の2社。両社ともに基本料金が20〜25%オフとなりますが、3月と4月の一定期間は10%オフになります。
オリコカード発行のカードのうち、おすすめの1枚は「Orico Card THE POINT PREMIUM GOLD」。年会費1,986円の格安ゴールドカードです。基本還元率が1%ですが、付帯する電子マネー「iD」「QUICPay」払いでは1.5%還元となり、コスパにすぐれた1枚です。
セゾンカード・UCカード会員が割引を受けられるのは下記の4社。通常期は基本料金が15〜28%オフとなりますが、3月〜4月の一定期間、「アート引越センター」「アリさんマークの引越社」「ハコブ引っ越しサービス」は10%オフ、「サカイ引越センター」は割引対象外になります。
おすすめのクレジットカードは「セゾンパール・アメリカン・エキスプレス・カード」。年会費1,100円ですが、1年に1度でも使えば次年度無料になります。また、付帯する電子マネー「QUICPay」を利用すると3%還元となるため、現在人気を集めているカードです。
三菱UFJニコスが発行するMUFGカード・ NICOSカード・DCカード会員が割引を受けられるのは下記の3社。ただし、通常期は基本料金が25〜30%オフとなりますが、いずれも3月中旬〜4月中旬の一定期間は割引対象外になるので注意が必要です。
対象カードのうち、おすすめの1枚は「三菱UFJニコス VIASOカード」。年会費無料で、基本のポイント還元率は0.5%。カード利用で貯まったポイントが年に1回、「1P=1円」として自動でキャッシュバックされます。ポイントの交換手続きが面倒だったり、有効期限を忘れて失効させてしまったりする人にはメリットのあるサービスです。
三井住友カード会員が割引を受けられるのは「アート引越センター」。基本料金が30%オフになりますが、3月15日〜4月10日は適用対象外です。
対象カードのうち、今人気を集めているのが年会費無料の「三井住友カード ナンバーレス」。基本還元率は0.5%ですが、セブン-イレブン、ローソン、マクドナルドでタッチ決済をすると5%還元になります。
エポスカード会員が割引を受けられるのは「アート引越センター」。通常は基本料金が20%オフに、3月20日〜4月10日は10%オフになります。
対象カードのうち、最もスタンダードなのは年会費無料の「エポスカード」。マルイで年4回開催されるセール期間中は、多くの商品を10%OFFで購入可能。レストランやカラオケ、遊園地など、レジャー施設の優待店舗が10,000以上あるのも魅力です。
春から、新たにアパート・マンションを借りる方もいらっしゃるでしょう。賃貸住宅選びで知っておきたいのは、家賃や敷金をクレジットカードで支払える物件が増えてきていること。従来、不動産会社はカード会社に支払う手数料を敬遠し、家賃や初期費用のカード払いに対応していませんでした。しかし近年、キャッシュレス決済の浸透や業者間の競争激化を背景にして、大手を中心にカード払いに対応する不動産業者が徐々に増え始めています。
家賃は生活費の多くを占める金額の大きな出費であるため、カード払いによって得られるポイントも少なくありません。全国賃貸管理ビジネス協会の家賃動向調査によると、間取り3部屋の家賃は全国平均で約67,000円(2021年1月)。年間だと804,000円になります。これに、敷金(家賃2か月分)と仲介手数料(同1か月分)という初期費用を加味すると年間で約100万円。口座振替などで支払う場合、ポイント付与はありませんが、還元率1%のクレジットカードで支払えば、1万円分のポイントが貯まる計算です。
また、家賃をカード払いにすることで、支払いのタイミングを実質的に遅らせられるというメリットもあります。とりわけ、契約当初や契約更新時は敷金や礼金が上乗せされ出費がふくらみがち。これらの支払いをうしろにずらすことで、余裕を持った資金繰りにもつながります。
最近では、大手不動産会社も下記のとおり、クレジットカード払い可能な物件をまとめたページを作成しているので、これらのページを利用すると便利です。このほか、検索窓に「カード払い可」などと入力して対象物件を探すこともできます。
アパマンショップ「カードで家賃 賃貸物件」
https://www.apamanshop.com/kodawari/36/
at home 「クレジットカードで支払える物件特集」
https://www.athome.co.jp/chintai/theme/creditcard/
ホームズ「クレジットカード利用可能物件」
https://www.homes.co.jp/chintai/theme/12163/
エイブル「家賃クレジットカード払い可の賃貸物件」
https://www.able.co.jp/feature/creditcard/
いい部屋ネット「クレジットカードで契約金・家賃が支払える物件を探す」
https://www.eheya.net/special/card/
カード会社が、賃貸借契約を結ぶ際の保証人になるサービスも登場しており、イオンカード、クレディセゾン、エポスカードなどが実施しています。対象となるのは各カード会社が提携している不動産業者の物件のみなので選択肢は限られていますが、各社が保証人になるので連帯保証人が不要になります。初年度に加え2年目以降に毎年、所定の保証料が必要になります。また、月々の家賃や保証料を各社のカードで支払うことで、家賃支払い分のポイントが貯まります。
セゾンの家賃保証 Rent Quickのスキーム(画像は公式サイトから)
イオンカード de 賃貸
イオンカード会員限定のサービス。北海道から沖縄まで、全国にある約40の不動産会社と提携。対象物件の家賃をイオンカードで支払うことができ、200円につき1P(1円相当)の「ときめきポイント」が貯まります。
公式HP:イオンカード de 賃貸
セゾンの家賃保証 Rent Quick
セゾンカード会員以外でも利用できますが、セゾンカードで家賃を支払うと、1,000円につき1P(5円相当)の「永久不滅ポイント」が貯まります。貯めたポイントは、400ポイント(2,000円相当)ごとに家賃・次年度保証料の支払いに利用可能です。
公式HP:セゾンの家賃保証 Rent Quick
エポスカードの家賃保証 ROOM iD
エポスカード会員以外でも利用できますが、エポスカードで家賃を支払うと、200円につき1P(1円相当)の「エポスポイント」が貯まります。貯めたポイントは次年度の保証料の支払いや商品券との交換などに利用可能です。
公式HP:エポスカードの家賃保証 ROOM iD
ポイントの獲得、支出管理のしやすさなどメリットのある家賃のカード払いですが、注意するべき点もあります。ひとつめは「カード払い可」と表示されていても、対象となるのは敷金・仲介手数料などの初期費用のみで、毎月の家賃は対象外となっている物件が少なくないこと。また、一部のカードでは家賃の支払いがポイント付与の対象外となっているので要注意です(たとえば、「Orico Card THE POINT」「Orico Card THE POINT PREMIUM GOLD」など、ポイント制度がオリコポイントのカードは家賃決済は付与の対象外)。もうひとつは支払口座の残高。家賃は高額になるため口座残高が少ないと引き落とせくなるケースも考えられます。支払い遅延を起こさないためにも、口座の預金残高をしっかりと管理するようにしましょう。
引っ越し先での新生活を始めるにあたって、家電や家具などをそろえる必要も出てくるでしょう。こうしたときに役立つのが、入会後一定期間に限って還元率が大幅にアップするクレジットカード。高額の買い物をする直前に入会することで、多くのポイントを稼ぐことができます。今回紹介する3枚のカードはいずれも年会費無料、あるいは初年度無料なので、気軽に申し込めます。
オリコが発行する「Orico Card THE POINT」は年会費無料。基本還元率は1%ですが、入会後6か月間は2倍の2%にアップします。電子マネーの「iD」「QUICPay」をダブル搭載しているほか、Apple Payにも対応。ポイントの交換先が幅広いのも特徴で、Tポイント、Pontaポイント、楽天スーパーポイント、dポイントといった主要共通ポイントをはじめ、Amazonギフト券にも交換できます。
三菱UFJ銀行が発行する「三菱UFJ‐VISA」は年会費無料で、三菱UFJ銀行の普通預金口座の保有が条件となるカード。通常は1,000円につき1P(=5円相当)。キャンペーン登録を行うと、入会月含め3か月間(入会の翌々月の末日まで)は5倍の2.5%還元となります。カード引き落としに同行口座を登録するなどの条件を満たすと、三菱UFJ銀行のATM手数料が無料、提携先コンビニATM手数料は優遇適用期間中2回まで無料になるのもうれしい特典です。
25歳以下の方におすすめなのが「三井住友カード デビュープラス」。18歳から25歳までの人が申し込むことができ、年会費は1,375円(初年度無料、年1回の利用で次年度無料)。基本は1%還元ですが、入会月含め3か月間(入会の翌々月の末日まで)は2.5%還元にアップ。セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマート、マクドナルドの店舗では、基本還元率に2%が上乗せされ、3%還元になるのも魅力の1枚です。
以上、新生活を始めるにあたってお得になるクレジットカードと、それぞれの活用方法を紹介しました。
引っ越し費用は金額が大きいだけに、クレジットカード払いで多くのポイントを貯めることが可能です。カード特典の割引もあわせて活用すると、かなりの節約につながります。ただし、カードでの支払い希望であることを最初の見積もりの段階で伝えておくようにしましょう。また、自分が入居を希望する物件が家賃や初期費用のカード払いに対応している場合は、さらにまとまったポイントを貯めることができます。記事中ではクレジットカード払いのメリットを伝えましたが、家計管理が甘くなる可能性もあるので要注意。支払口座の残高管理を含め、計画的に利用していくことも必要です。最後に紹介した特定期間に還元率がアップする3枚のカードは、大きな買い物の予定があれば入会を検討する価値があります。
紹介したクレジットカードの中に手持ちのカードが含まれていれば、それを活用してもOK。いっぽう、この機会に新しいライフスタイルに合ったカードを作成するのもひとつの方法です。今のうちにしっかりと準備をして、新生活をスムーズにスタートさせましょう。
編集者兼マイラー。JAL、ANAはもちろん、海外航空会社のマイレージにも詳しく、仕事の合間を縫って旅を楽しむ。ポイント、マイルの交換などカードの裏技にも精通。