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株初心者にも人気。一からわかる「IPO投資」の魅力とリスク、実践方法を解説

株式投資に興味のある方なら「IPO投資」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。

「IPO」とは「Initial Public Offering」の頭文字を取った言葉。「新規株式公開」と訳され、未上場企業が資金調達などを目的に、新規に株式を証券取引所に上場させ、誰でも株取引ができるようにすることをさします。「IPO投資」はこうした新規上場の株式の売買を行う投資の方法で、特に個人投資家から人気を集めています。その大きな理由は、抽選などを経てIPO株を購入できた場合、上場した日に初めてつく株価(初値)が上場前に購入した時の「公開価格」を上回るケースが多く、初値で売れば利益が期待できるからです。

国内のIPO件数は高水準が続いており、「IPO投資」に関心を持つ方もいらっしゃると思いますが、通常の上場株を購入する際と手続きも異なります。また、銘柄や市場環境などによっては「公募割れ(初値が公開価格を下回ること)」となり、初値で売却すると損失が発生することも当然あり得ます。そこで、IPO関連の情報サイト「IPOジャパン」編集長を務め、IPOをテーマにした著書もある西堀敬さんに取材し「IPO投資を始めたい」という方に、その魅力や知っておくべき注意点もあわせてお伝えします。

2021年のIPOは120社超。2006年以来の高水準

まずは、日本国内のIPOの概況を見ていきましょう。下記のグラフが過去30年間のIPO件数の推移を示したものです。2021年は11月末時点で93社が新規上場しており、例年IPOが集中する「IPOラッシュ」の12月にも30社超が上場予定となっているため、最終的に120社台になる見込みです。

「IPO件数は景気の影響を大きく受けます。リーマンショック翌年の2009年は19社まで落ち込みましたが、アベノミクスが始まった2013年以降は基本的に右肩上がりで推移しています。今年の120社台半ばというのは、IPOブームと呼ばれた2006年(188社)以来15年ぶりの高水準です。新型コロナウイルスの感染拡大で、本来2020年の予定が上場を1年延期した企業が一定数あったのも一因と考えられます。2022年は米ドルの利上げが見込まれており、それにともなう景気減速の懸念もありますが、少なくとも22年前半までは、IPO件数は高い水準で推移すると考えられます」(西堀さん)

※出典「IPOジャパン」

※出典「IPOジャパン」

IPO投資で、初値で売却したときはどれくらいの割合で勝てる?

「IPO投資」では公開価格で購入して、上場日の初値で売却するのが一般的とされていますが、この方法を採った時に、過去20年間のIPO株の“勝敗”を示したのが下記の図表。「勝」とは初値が公開価格を上回り売却時に利益が出たことを表し、「負」はその逆、「分」は初値と公開価格が同じ価格だったこと、そして「平均初値騰落率」は、仮にその年のすべてのIPO銘柄を公開価格で購入し、初値で売却した時に、平均でどの程度上昇(下降)したかを示すものです。

2021年の“勝率”は9割弱、最も初値騰落率が高い銘柄は公開価格の4.7倍に

上記表の2021年部分は、11月6日上場分までの数字ですが、これに直近の12月16日上場分の数字まで加えると、「勝」は87社、「負」は10社、「分」は1社ということになり、勝率は88.7%。平均初値騰落率は63%(公開価格に対し初値の平均は1.63倍)となりました。初値騰落率が最も高かったのは、企業のECサイトやWebシステムの構築などを行う「アピリッツ」(4174※証券コード)で374%(公開価格に対し初値は4.74倍)。1,180円の公開価格に対し5,600円の初値がつき、100株を取引した場合だと44万2,000円の利益を得られた計算になります。

「2021年はかなり高い勝率になっています。ITやデジタルトランスフォーメーション(DX)関連の銘柄のほか、『QDレーザ(初値騰落率134%)』(6613)のように世界中で不足が指摘されている半導体関連、『ベイシス(同154%)』(4068)などの5G関連の銘柄が初値を大きく伸ばす傾向が見られました。また、再生医療を目的とした民間のさい帯血バンク最王手の『ステムセル研究所(同72%)』(7096)も注目を集めました」(西堀さん)

ただ、好調とされる2021年も12月16日上場分までで1割にあたる10社では「公募割れ」となり、初値で売却すると、損失が発生していることになります。また、12月のようにIPOが集中する時期は需要が分散し、初値が高くなりにくいとの指摘もあり「初値で売却すれば必ず利益が出る」とは言えない点は留意しておくべきでしょう。

新興企業向けのマザーズ市場の銘柄が狙い目?

西堀さんは上場先の市場によっても、初値騰落率は異なってくると指摘します。東証は「東証1部」「東証2部」「マザーズ」「ジャスダック」の4つの市場に分かれます。IPOジャパンのデータによると、上場市場ごとの2021年の平均初値騰落率は「東証マザーズ」が76%なのに対し「東証1部・2部」は11%。大きな差がつくのは過去10年間の一貫した傾向です。

「大部分のIPO株が東証マザーズに上場するのも、もちろん理由のひとつですが、マザーズのIPO銘柄が初値を大きく伸ばしやすいのは、ひと言で言うと『事業が伸びる余地が大きく、IPOした企業が大きな成長の可能性を秘めている』と、投資家が考えているからです。下の図表で示したとおり、会社設立から2021年にIPOにいたった年数は東証1部・2部の場合が27年なのに対し、マザーズでは13年。新興市場なので当然とも言えますが、若い会社が多く、成長への期待値が上がるため、初値も跳ね上がりやすい傾向にあります」(西堀さん)

※出展「IPOジャパン」

※出展「IPOジャパン」

要注意! どの年でも高い勝率が保証されているわけではない

新型コロナウイルスの影響でいくぶん落ち込んだ2020年を除いて、過去5年は80%以上の勝率を記録しているIPO株ですが、前述のとおり「初値で売ればいつでも高い確率で利益を出せる」と考えるのは危険と言えるでしょう。「顕著なのがリーマンショックの時の2008年で、この年の勝率は40%と5割を下回り、平均初値騰落率も18%(公開価格の1.18倍)と落ち込みました。市場の勢いが低下すると、新興市場に上場するIPO株に向かう資金が枯渇します。こうした局面になると『公開価格で買って初値で売る』という戦略さえも有効でなくなり(損失が発生する可能性があり)、IPO投資そのものを控えたほうがよい場合もあります。なお、勢いを測る指標として、市場全体の株式の売買代金の増減のトレンドをチェックしておくのが有効でしょう」(西堀さん)

「初値で売らない」という選択肢もあるが……

ここまでは「公開価格で買って初値で売る」手法について説明してきましたが、もちろん初値で売らずに、そのまま保有し続けることも可能です。
2021年のIPO株についても、3月上場の「シキノハイテック」(6614、公開価格:390円→初値:1221円→2021年10月6日時点の終値:2,788円)や、6月上場の「日本電解」(5759、公開価格:1,900円→初値:1,900円→2021年10月6日時点の終値:3,265円)などのように、上場後、初値より株価が上昇する企業も散見されます。

ただし「IPOジャパン」の資料によると、2021年は10月6日上場分までのIPO株全体で見ると、そうした企業は76銘柄中15銘柄と限定的。今年IPOした銘柄の上場後の値動きも、軟調に推移する傾向が見られます。「IPO株は上場直後は株価が乱高下するケースもあるので、とりわけ投資初心者の方が運よくIPO株を公開価格で購入できた場合は、初値で売却しキャピタルゲイン(値上がり益)を確保するのが基本戦略と言えると思います」(西堀さん)

IPO株購入に必要な手続きは?

ここまで、「IPO株」の魅力を中心に解説してきましたが、購入の手続きについて説明していきます。IPOのプロセスをまとめたのが以下の図表です。

※編集部作成

※編集部作成

上場が決まると、証券取引所のWebサイトなどで公表。まずはこの情報をキャッチ

社会的な信用力のアップや資金調達などを目的に、会社が上場を目指す場合、まずは証券取引所(主に東京証券取引所=東証=)に上場を申請。東証は株主数や経営の健全性などを審査し、クリアすれば「上場承認」となり、この時点で取引所の公式サイトで上場が決まったことを公表します。
〈東京証券取引場の新規上場会社情報〉:https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/index.html

上場が決まると、主幹事証券会社(上場にあたり中心的な役割を担う証券会社)がその会社の財務内容や業績などを基に株価の参考価格「仮条件」を決定しますが、通常「1株1,200〜1,400円」などと一定の幅が提示されます。仮条件が提示されたら、個人投資家は該当のIPO株を取り扱う証券会社を通じて、「ブックビルディング(需要申告)」に申し込む必要があります(事前に証券口座の開設が必要)。ブックビルディングとは「私はこの株をいくらで、何株購入する」と申告すること。基本的に、ブックビルディングに申し込んだ投資家のなかで最も申告が多かった価格が、公開価格として決定します。

欲しい銘柄の場合、仮条件の上限額で申し込むのがベター

ブックビルディングに参加する際に大事になってくるのは、必ず購入したいIPO株の場合「仮条件」の上限価格で申し込むこと。多くの場合「仮条件の上限価格=公開価格」となりますが、次のステップに進むためには、この後決まる公開価格以上の値段でブックビルディングの申告をしていることが条件になるからです。

多くのネット証券では抽選。倍率は100倍を超えることも

IPO株は高い確率で利益が見込めるため、ネット証券ではほとんどの場合、この時点で購入希望者を対象にした抽選を行います。倍率は各社ともに公表していませんが、100倍を超えることもあるといいます。当選した投資家は購入の意思確認と入金といった手続きを行えば、該当のIPO銘柄を公開価格で購入できることになります。

通常の株と異なり、IPO株の場合、購入手数料は無料

通常の株を購入する際は基本的に手数料が発生しますが、IPO株の購入手数料は無料です。「手数料が発生しないのは事実ですが、正確にはすでに公開価格の中に含まれていると考えたほうがよいかもしれません。株を発行する会社が、証券会社に株を引き受けてもらう際の価格を『引受価額』と言いますが、基本的に公開価格は引受価額より4〜8%高く設定されます。両者の差額が、証券会社の手数料になります」(西堀さん)

IPO株の初値が、公開価格を上回りやすい要因のひとつは「IPOディスカウント」

また、公開価格は業績予想に加え、類似するすでに上場している企業の株価などを基に主幹事の証券会社が決めますが、理論値より1〜2割程度、割安に設定することが一般的とされています。「IPOにより発行した新株や、既存株主の売り出し分が売れ残るのを防ぐための証券会社の戦略とも言えるでしょう。これを証券界で『IPOディスカウント』と呼んでいますが、公開価格がそもそも割安に設定されていることが、IPO株の初値がこれを上回るケースが多くなる一因です」(西堀さん)

目論見書で見るべきポイントは?

そして、「IPO投資をする際の重要な手がかりになる」(西堀さん)というのが、新規上場の企業が出す「目論見書(もくろみしょ)」と呼ばれる書類です。ただこの書類、印刷すると100〜200ページになることはザラで、すべて読み込むことは困難。そこで、西堀さんへの取材を基に、確認するべきポイントを下記にまとめました。

ポイント1:事業内容
収益の柱となる事業が単一なのか複数あるのか、その事業は他社にない独自性があるのかをチェック

ポイント2:過去の業績
目論見書には過去5年程度の売上高や純利益が記載されており、売上高が着実に伸びており、純利益も確保できているかなどをチェック

ポイント3:IPO対象の株数
「新たに発行する株数」+「既存の株主が売り出す株数」というIPOに際し売り出される合計の株数をチェック。たとえばこれが70万株だった場合「1単元=100株」で計算すると、7,000人に割り当てられる計算に。さらに、自分が証券口座を保有する「A証券」の配分割合が70%だったとすると、A証券では4,900人に割り当てられると予想を立てられます

ポイント4:想定発行価格
前述のとおり、公開価格は「仮条件→ブックビルディング」という過程を経て決まりますが、これ以前に、新規上場の企業は想定発行価格というIPO株価の予想を立て、目論見書に記載しています。仮条件の多くは想定発行価格の近辺に設定されますが、想定発行価格よりも仮条件の価格帯が大幅に高い場合は、結果的に割高となり、公開価格割れを起こす可能性があるので注意したほうがよいでしょう

ポイント5:株主の構成
IPO以前の株は経営者やその家族、役員、社員、取引先のほか、ベンチャーキャピタルが保有していることが一般的。社員や役員ら会社の関係者は簡単に売り出すことは少ないいっぽう、ベンチャーキャピタルなど外部の出資者は売却する可能性が高く、こうした機関の保有比率が大きい場合は値崩れしやすい点に注意が必要です

ポイント6:ロックアップの条件
ロックアップとは、IPO以前の大株主が、上場直後に株を売ることがないようにするための条件です。「上場後90日間」などと売却できない期間や条件が定められています。逆を言えば、ロックアアップが解除され、大株主が売却すると需給がゆるみ、株価下落につながる可能性があるので、ロックアップの条件についても確認しておきましょう。

IPO株を購入できる確率を上げる方法は?

上場後に値上がりする確率が高いIPO株は人気があるため、そもそも購入にはかなりの「運」も必要になってきます。限界はありつつも、手に入れる確率を上げるためのコツについて最後に触れておきます。

IPO株の大部分を引き受けて投資家に販売する「主幹事証券会社」には、対面販売が中心の大手証券が務めることが多いのが実情です。配分される株数が多いのは有利といえますが、これらの会社では「裁量配分」という形で営業マンが、豊富な資金を持ち、ひんぱんにやり取りをする「得意先」などに優先的に配分し、インターネットでの抽選に申し込んだ投資家に割り当てる株数が少ないケースも多いとされています。

複数のネット証券の口座を開設すれば、当選の可能性をアップさせることも

そうした事情を考えると、一般的な個人投資家であれば、複数のネット証券を利用して数多く申し込むのがセオリーと言えそうです。特に最近では抽選を導入するネット証券会社も多く、複数のネット証券の口座を開設して数多く申し込みを行えば、当選の可能性をアップさせることも可能です。また、SBI証券が目立つ例ですが(2020年:15件)、下表のとおりネット証券が主幹事を務めることが出てきました(SBI証券は、配分予定数量の60%については抽選、30%は抽選に外れた回数に応じて付与されるポイント数の多い順に、残りの10%については取引状況などに応じて配分)。

引受シンジケーションに入っている、中堅証券会社の対面営業が穴場?

西堀さんは「大手証券、ネット証券以外であれば、個人的には主幹事証券ではなく引受シンジケーションに入っている中堅証券会社の対面営業が穴場と考えています。中堅の証券会社であれば、さほど高額の取引でなくても、日ごろから付き合いがあれば、IPO株を割り当ててくれることもあるようです」と言います。

まとめ

以上、IPO投資を始める際に覚えておきたいポイントについて、解説してきました。
通常、株取引というと、ファンダメンタルズやテクニカル分析などについてある程度の知識があったほうがよいとされています。いっぽうで、IPO投資の場合、目論見書などで重要な点を確認することは欠かせませんが、さほど多くの知識を要せずとも取り組めるのが、初心者から人気を集めている要因と言えるでしょう。

2022年には、民間による月面探査を目指している日本の宇宙ベンチャー企業「ispace」のIPOの可能性も観測されており、こうした革新性のある企業に投資できるのも大きな魅力のひとつ。ただ、基本的には購入にたどり着くには高い倍率の抽選を突破しなければならず、この確率を高めるための工夫も必要なこと、そして、初値が公開価格を下回る(損失が出る)事態もありえることは頭に入れておきましょう。

〈西堀 敬さん〉日本ビジネスイノベーション代表取締役で「IPOジャパン」編集長、日本テクニカルアナリスト協会検定会員。1960年、滋賀県生まれ。大阪市立大学商学部卒。証券会社の海外現地法人に10年勤務後、気象情報会社ウェザーニューズの財務部長などを歴任。2016年からIPO関連情報を発信する「IPOジャパン」編集長。著書に「改訂版 IPO投資の基本と儲け方ズバリ!」など

〈西堀 敬さん〉日本ビジネスイノベーション代表取締役で「IPOジャパン」編集長、日本テクニカルアナリスト協会検定会員。1960年、滋賀県生まれ。大阪市立大学商学部卒。証券会社の海外現地法人に10年勤務後、気象情報会社ウェザーニューズの財務部長などを歴任。2015年12月からIPO関連情報を発信する「IPOジャパン」編集長。著書に「改訂版 IPO投資の基本と儲け方ズバリ!」など

西村有樹

西村有樹

オフィスクイック代表・フリーランスライター・編集者。主な分野は企業、金融、保険、マネー系全般。ユーザー視点からの、わかりやすい記事を多数執筆。

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