加盟店が増え、便利に使えるようになってきたQRコード決済。利用するには銀行口座から事前にチャージしたり、クレジットカードを登録し、そこから利用代金を支払ったりする必要がありますが、最近ではいくつかの事業者で、「後払い決済」のサービスが始まっています。いったいどのようなサービスなのか、「メルペイ」「ファミペイ」「PayPay」の後払い決済サービスのメリットと注意点についてご紹介します。
画像の「PayPayあと払い」など、QRコード決済にも広がりつつある「後払い決済」のサービス。どんなメリットがあるのでしょうか?(QRコードとバーコード部分をぼかしています)
後払い決済は「BNPL」と呼ばれ、今、国内外で急速に普及が進んでいる新たな決済方法です。BNPLは、「Buy Now, Pay Later」の頭文字で、文字通り、「今買って、後で払う」というサービスのこと。
BNPLとは?
決済事業者が手がける後払いの決済方法。基本的には、ユーザーが買い物をした代金をBNPLを提供する決済サービスが立て替え、後から決済サービスからユーザーに利用代金が請求される仕組み。ユーザーは所定の期間内に、コンビニの店頭や振込、口座振替などで代金を支払います。仕組みとしてはクレジットカードと似ているものの、利用前の審査や手続きがクレジットカードと比べると簡単なのがBNPLの特徴となっています。
※参考記事
クレカ不要の「後払い決済」とは? 話題の「BNPL」のメリット・注意点を解説(価格.comマガジン)
https://kakakumag.com/money/?id=18404
メルカリが運営するQRコード決済サービス「メルペイ」が昨年2021年10月に発表した「消費と支払手段に関する調査」によると、調査対象の約3割の人は、後払い決済サービスの利用経験があり、若年層になるほど利用率が高くなることがわかりました。
画像は、メルペイの「消費と支払手段に関する調査」より。調査対象:全国、18〜59歳、男女800名
同調査では、20〜30代の消費傾向として、「自分が欲しいと思った時に購入したい」という意識が強いことが指摘されています。その点で、支払うタイミングを調整しやすく、利用金額を把握しやすい後払い決済サービスが評価されているようです。
画像は、メルペイの「消費と支払手段に関する調査」より
この「消費と支払手段に関する調査」で調査対象となっている後払い決済サービスは、「メルペイスマート払い」「Paidy」、「ZOZOツケ払い」などとなっています。後払い決済サービスにはこのほか、通販の請求書などに多い「NP後払い」など、様々なサービスがあります。
そして、この後払い決済の波が、QRコード決済にも広がっています。後払い決済サービスは利用できる場所が限定的なものも多いですが、その点で便利なのがQRコード決済の後払い決済です。QRコード決済の加盟店は、コンビニやスーパー、ファストフードなど、日常的に利用できるお店から、百貨店、家電量販店のほか、ネットショップまで幅広いので、あらゆる買い物ニーズに対応できます。
QRコード決済で後払いを導入しているのは、「メルペイ」「ファミペイ」「PayPay」。今、手持ちのお金がなくても買い物することができ、スマホのアプリから利用申し込みができるところが手軽。もちろん、クレジットカードを持っていなくても利用できます。
なお、より広義には、大手キャリアが提供する「キャリア決済」(通信料金と合算で、利用代金を支払うサービス)を後払い決済に含める見方もあります。その場合、大手キャリアが手がける「d払い」「au PAY」なども後払い決済と言えるわけですが、これらはキャリアとの契約が前提のサービスのため、今回の記事からは割愛しています。
それでは、「メルペイ」「ファミペイ」「PayPay」のそれぞれの後払い決済サービスの内容について紹介していきます。
メルペイでは「メルペイスマート払い」という名称で、後払い決済を提供しています。
利用できるのは18歳以上で、「本人情報の登録」が必須。また、リアル店舗のメルペイ加盟店で利用するには、「アプリでかんたん本人確認」と「お店でも使えるメルペイスマート払い」の設定が必要になります。メルペイが利用できるネットサービスや街のお店のほか、メルカリの買い物でも利用できるのが便利です。
メルペイスマート払いは、通常、「翌月一括払い」の設定となっています(分割払いも可。後述)。
買い物時の支払い方法をメルペイスマート払いに設定して決済すると、翌月1日に利用明細が通知されます。その支払いを翌月1日〜末日までの好きなタイミングで清算します。清算期限日は月末で、清算期限が近づくと、アプリ内の通知とメールで知らせてくれます。
メルペイスマート払いの決済画面(左)、利用状況がアプリで確認できます(右)
翌月払いは基本、無料で利用できます。メルペイ残高にチャージして支払ったり、11日、16日、26日のいずれかの日を指定して、銀行口座からの自動引き落としにすることもできます。コンビニやATMから現金で支払う場合は、支払い金額に応じて220〜880円の手数料が必要になるので、メルペイ残高へのチャージもしくは銀行引き落としを選ぶことをおすすめ。
なお、メルペイスマート払いには、メルペイの売上金で購入したポイントやdポイントで支払うことはできませんが、友だち紹介やキャンペーンなどでもらえるポイントは支払いに利用することができます。
もし清算期限日までに清算できなかった場合は、清算が完了するまでメルペイスマート払いが利用できなくなります。それに、もしその時点でメルカリの売上金やメルペイ残高があれば、その金額がメルペイスマート払いの支払いに充当されます。
支払いができずに延滞してしまうと、第三者の回収事業者から連絡があったり、遅延損害金が請求されることもあるそうなので注意しましょう。
利用限度額は翌月払いと、後述する「定額払い」の合計で30万円までですが、利用者によってその金額は異なります(18歳、19歳の場合は翌月払いの利用限度額が最大5万円、定額払いは利用不可)。アプリ内で簡単に月の利用上限金額を設定できるので、使い過ぎないように、自分が支払える範囲内の金額を、利用上限として設定しておくと安心です。
翌月に一括で支払えない時は、メルペイスマート払いの清算を、定額払いに切り替えることができます。定額払いは支払金額を一定にして、支払い終わるまで毎月支払っていく方法。利用は20歳以上で、はじめに審査が必要になります。
毎月の支払金額は自分で決められますが、利用残高によって、1,000円〜8,000円の最低精算金額が設定されています。なお、定額払いで支払える商品は200個までで、所定の年率に応じた手数料(実質年率15%)がかかります。
ファミリーマートが提供する決済アプリの「ファミペイ」。その後払い決済サービスが「ファミペイ翌月払い」です。
ファミリーマートを始め、ファミペイで支払える全ての街やネットのお店で利用可能です。ファミリーマートでの公共料金(一部除く)の支払いも後払いにすることができます。利用できるのは18歳以上で、申し込みには本人確認と銀行口座の登録が必要。申し込み後に所定の審査が行なわれます。
支払い方法をファミペイ翌月払いにしておくと、1か月間に買い物した利用代金が翌月27日に登録した銀行口座から自動引き落としになります。もし残高が足りなかった場合は、28日から翌月4日まで毎日引き落としが行なわれます。その後、12日にも再度引き落としが行なわれるので、それまでに銀行口座に入金しておきましょう。それ以降は所定の利率で計算された遅延損害金が発生します。収納事務手数料として330円も合わせて請求されます。
ファミペイのホーム画面(左)、ファミペイの決済完了画面(右)
通常、ファミペイの支払いでは「0.5%」(200円で1ボーナス)のFamiPayボーナスが貯まりますが、2022年4月1日(5月27日支払い分)より、ファミペイ翌月払いの利用で、翌月払いボーナスとして「0.5%」が追加で貯まり、合計「1%」のFamiPayボーナスが得られるようになりました(※)。
※ただし、公共料金や通販代金などをファミペイ翌月払いで支払う場合は、「1件あたり10ポイント」+「0.5%のボーナス」が貯まります。請求内容によってはファミペイでの支払いに対応していないものもあります。
実質「1%還元」と大変おトクですが、ファミペイ公式サイトによるとこれは「キャンペーン扱い」とのこと。中止される場合には1か月前にキャンペーンサイトで案内があるそうなので、この点を注意しつつ使ったほうがよさそうです。
なお、1か月の支払金額が1万円以上の場合は、「スキップ機能」を使うと、最大6か月先まで支払いを繰り越しすることができます。利用には所定の手数料が必要になります。何か月間繰り越しできるかは利用者によって異なり、スキップ機能を利用できないケースもあります。
PayPayの後払い決済サービス「PayPayあと払い」は、よりクレジットカードに近いサービスと言えます。申し込むことでPayPayのクレジットカード「PayPayカード」のバーチャルカードが発行され、同時にプラスチック製カードを希望することもできます。PayPayカードの年会費は永年無料で、翌月1回払いの場合は手数料無料で利用できます。
PayPayあと払いの支払いイメージ(画像はPayPay提供)
PayPayあと払いの利用画面(左)、PayPayカードのバーチャルカードが発行されます(右)。(画像はPayPay提供)
「PayPayカード」のプラスチック製カードはJCB、Visa、Mastercardから選択でき、プラスチック製カードを希望せず、バーチャルカードのみの場合はJCBになります。利用は18歳以上(高校生除く)で、クレジットカードの入会時と同様の審査が行なわれます。
PayPayあと払いとPayPayカードは、利用する場所によって使い分けができます。PayPayの支払いに利用したい場合はPayPayあと払い。PayPay非対応のネットショップなど、クレジットカードの加盟店でオンライン決済する場合は、PayPayカードのバーチャルカード。PayPayには非対応なものの、クレカに対応している街のお店で買い物する場合はプラスチック製のPayPayカードといった具合です。
PayPayあと払いでは、前月の利用状況によって付与率が変わる「PayPay STEP」の達成状況に応じて、「0.5〜1.5%」のPayPayポイントが貯まります(ただし、2021年12月から2022年6月30日までは、PayPayあと払いでの支払いで1.0%分のポイントが上乗せされるキャンペーンが実施中)。いっぽう、PayPayカードではバーチャル、リアル共に利用金額100円につき1%のPayPayポイントが貯まります。
PayPayあと払いとPayPayカードのサービス内容(画像はPayPay提供)
支払い方法をPayPayあと払いにしておくと、1か月間の買い物代金が翌月27日(休日の場合は翌営業日)に登録した銀行口座から自動引き落としになります。支払い方法は手軽に「残高払い」に切り替えられ、PayPayあと払いからチャージした残高で支払うこともできます。
利用代金の支払いができなかった場合は、年率14.6%の遅延損害金が発生します。リボ払いを選択することもでき、その場合は毎月一定の金額を支払っていき、その分の手数料(実質年率18%)を支払います。
ここまで、メルペイ、ファミペイ、PayPayの後払い決済サービスについて説明してきました。その内容をまとめたものが次の表です。一見、同じように見えるサービスですが、異なる部分もあります。どのような部分が異なるのか見ていきましょう。
メルペイスマート払い、ファミペイ翌月払い、PayPayあと払いの比較表
いずれのサービスも18歳以上が利用でき、審査が必要になること。翌月一括払いの場合は手数料不要で利用できるサービスであることがわかります。
大きく異なる部分は2つ。ひとつ目が一括払い以外の支払い方法です。メルペイスマート払いやPayPayあと払いでは一定額に分けて返済するのに対して、ファミペイ翌月払いでは支払いを先に引き延ばすことになります。
毎月、少しずつでも支払っていけば残高は減りますが、ファミペイ翌月払いではその金額をまとめて返済するので、返済が遅れるほど手数料が多くかかってしまうことになります。スキップ払いにする時は、早めに返済することを心がけましょう。
異なる部分の2つ目は、「ポイント付与の有無」です。メルペイには基本、ポイント付与がないので、メルペイスマート払いでもポイントは付きませんが、ファミペイ翌月払いやPayPayあと払いでは支払った金額に対してポイントが貯まります。
PayPayあと払いは、基本的に通常のポイント付与率と同じですが(2022年6月いっぱいは1%上乗せ)、ファミペイ翌月払いの場合は、後払いにすることで通常よりも多くボーナスが付きます(ただし、こちらも終了日未定のキャンペーン扱い)。
いずれの後払い決済サービスも、最大のメリットはチャージする手間がないことでしょう。残高から支払う方法だと、買い物の度に残高があるかどうかを確認したり、足りなければあわててチャージしなくてはいけません。筆者も経験がありますが、残高が足りないと気付いた時は、かなりあわててしまいます。後払い決済サービスでは、そのような心配がなくなるのがいいですね。
しかも翌月一括払いの場合は手数料がかからないので、後払いを選んだからといって余計にお金を支払うこともありません。後払いにすることで余分に翌月払いボーナスが付くサービスもあり、その場合はよりおトクに買い物ができます。
また、利用店舗や利用金額、月々の支払金額の確認などがアプリで手軽にできるので、使い過ぎが気になった時に、すぐに手元で確認できます。利用状況を把握しやすいので、使い過ぎることもなく、計画的に利用しやすいのではないでしょうか。
ただ、翌月に一括引き落としができなくなるほど使い過ぎてしまうと、手数料が必要な支払い方法を選ばざるを得なくなります。その点には注意したいところです。どのサービスも利用上限金額を設定できるようになっているので、自分が支払える範囲の金額を、最初に設定しておくと安心です。
若い人を中心に利用が拡大している後払い決済サービス。使い過ぎにさえ気を付ければ、便利なサービスであると言えます。興味のある人は、その便利さを一度、試してみてください。
わたたにさちこ。キャッシュレス決済やポイントなどについて、小学館発行のビジネス情報誌「DIME」を中心に、企業のオウンドメディアや情報サイトなどで幅広く執筆。生活情報サイト「All About」のガイドも務める。