クレジットカード、電子マネー、QRコード決済……。めまぐるしく変化するキャッシュレス決済の動向をコンパクトに伝える連載「おトクの真相! 月刊キャッシュレス展望」。最近のキャッシュレス関連のニュースから、マネー編集部員やマネー担当ライターが気になったニュースをピックアップしてお届けします。記事内や記事の最後には、記事公開時点で参加可能なキャンペーン情報も掲載していますので、こちらもぜひチェックを。
今回は、11月8日から発行が始まった、メルカリのクレジットカード「メルカード」の話題を中心に紹介します。
「メルカリ」の利用状況などでポイント還元率が変動するなどユニークな仕組みを持つ「メルカード」を紹介。このほか、国税庁が12月から始める国税の「スマホアプリ納付」サービスや、給与のデジタルマネー払い解禁に向けた「au PAY」の動きなどもチェックします
2013年にフリマアプリ「メルカリ」をスタートさせた株式会社メルカリ(以下、メルカリ)。月間利用者数2,000万人以上、累計利用者数約4,800万人と、日本にフリマアプリ市場を定着せた立役者と言ってもいいでしょう。そのメルカリが、2022年11月8日よりクレジットカード「メルカード」の発行をスタートしました。
メルカリが発行を始めたクレジットカード「メルカード」。年会費無料で国際ブランドはJCB。基本のポイント還元率は1%ですが、「メルカリ」での購入時に利用する際の還元率は独自の与信によって1〜4%で変動(後述)。さらに、毎月8日は還元率が8%加算されます(8%加算分の上限は300ポイント)。貯まったポイントは1ポイント=1円として「メルカード」の支払いや「メルカリ」「メルペイ」での買い物、「メルペイスマート払い」利用分の支払いに使えます
メルカリは2019年2月に、スマホ決済サービス「メルペイ」をスタート。「メルカリ」の販売で得た売り上げを、コード決済や電子マネーの「iD」などを介してさまざまな「メルカリ外」のシーンで支払いに使えるようにしました。さらにその後、一般的な「ユーザー属性をもとにした与信」ではなく、「メルカリの利用実績などをもとにした独自の与信」を活用した後払い決済サービスの「メルペイスマート払い」を導入するなど、決済分野を強化してきました。
今回発表された「メルカード」にも、「メルカリの利用実績などをもとにした独自の与信」が採用されており、それによってポイント還元率や利用限度額が変動する仕組みとなっています。
まずポイント還元率ですが、「メルカリ」以外の一般加盟店利用時のポイント還元率は常時1%です。しかし、「メルカリ」での購入時に利用すると、メルカリ独自の与信により還元率が1〜4%の間で変動します。また、「メルカード」の利用限度額は「最大50万円/月」ですが(「メルペイスマート払い」との合計額)、こちらもメルカリ独自の与信により、ユーザーによって変動する仕組みです。
この、独自の与信の詳細は明らかにされていないものの、2022年11月8日に開催された「メルカリ Fintech事業戦略発表会 2022」で発表された情報(※)によると、「メルカリ」での出品や購入、「メルペイ」での支払い状況など、メルカリに蓄積されたユーザーの行動が影響するそうです。購入や支払いといった「消費」だけでなく、「不要品を売る」ことも還元率などのアップに影響するとの情報もあり、サステナブルな行動そのものをユーザーにとってのおトクにつなげようという、メルカリ側の狙いがうかがえます。
※メルカリ、「メルカリ Fintech事業戦略発表会 2022」を開催
https://about.mercari.com/press/news/articles/20221108_mercarifintechconference/
また、「メルカード」は支払い方法もユニークです。一般的にクレジットカードの利用額は、月に1回決まった日に引き落とされますが、「メルカード」は、カードを利用した翌月内のユーザーの好きなタイミングで清算することができます。その際、ひと月分をまとめて支払うだけでなく、個別の利用分を選んで清算することも可能です。清算には「メルカリ」の売上金も使えるため、メルカリで商品が売れたタイミングで早めに清算する、といった使い方もできそうです。ただし、延滞した場合は年率14.6%を日割り計算して算出される遅延損害金がかかるので、当然ながら使いすぎには要注意です。このほか、支払代金を月々分割で支払う「定額払い」にも対応していますが、こちらにも実質年率15%の手数料がかかります。
「メルカード」の対象は「メルカリ」のアカウントを持つ日本在住の20歳以上の人で、「メルカリ」アプリ上から申し込むことができます。ただし、アカウントごとに順次受付を開始している状況とのことで、アプリ画面上に「支払い→メルカード券面→申し込む」の表示が出ていない人はまだ申し込むことができません。申し込み後は所定の審査(1〜2日)が行われ、審査完了後4〜7日程度でカードが到着。アプリで「メルカード」を有効化することで、利用できるようになります。
「メルカード」が申し込めるアカウントの場合、メルカリアプリ内の「支払い」内に「メルカード」の券面画像とともに申し込みボタンが表示され、これをタップすると申し込み画面に遷移します
ここまで見てきたように「メルカード」の最大の特徴は、「独自の与信」にあると言えるでしょう。似たような特徴を持つサービスとしては、みずほ銀行とソフトバンクが共同出資する「J.Score」が提供する個人向け融資サービスの「AIスコア・レンディング」があります。同サービスは、仕事や住居、性格、行動などユーザーが答えるいくつかの回答をもとに、ビッグデータやAI技術でユーザーの信用をスコア化。それによって借入の可否や金利、借入限度額などが決まります。
また、LINE傘下の「LINE Credit」が手がける個人向け融資サービス「LINEポケットマネー」も似たようなサービスと言えます。こちらはコミュニケーションアプリの「LINE」上でのユーザーの行動をスコア化した「LINEスコア」を活用し、利用限度額や金利の条件が提示される仕組みです。このように、個人の信用力をさまざまな視点からAIが数値化したものを「信用スコア」と呼び、中国では、この信用スコアを活用したサービスが広く普及していることが知られています。
日本国内においては、個人情報が与信に使われることに対する警戒感が根強く、「AIスコア・レンディング」や「LINEポケットマネー」もまだまだ知る人ぞ知るサービスではあります。2年ほど前には、「Yahoo! JAPAN ID」のビッグデータをもとした「Yahoo! スコア」という信用スコアサービスが、サービス発表段階でユーザーの同意なくスコアを算出する仕様となっていたことなどからユーザーの反発を招き、本格稼働を前にサービスを終了した経緯もあります。こうした中、月間利用者数2,000万人以上とも言われる「メルカリ」ユーザーに「メルカード」がどのように受け止められるのか、その動向に注目したいと思います。
メルペイは、「メルカード」の登場を記念して、新規入会・利用で最大1万ポイントを付与するキャンペーンを2023年1月31日まで実施しています。内訳は、カードを受け取った後、初期設定を完了すると1,000ポイント、「メルカード」か「メルペイスマート払い」の利用で最大4,000ポイント、はじめての「メルペイ定額払い」の利用で最大5,000ポイントです。
キャンペーン期間:開催中〜2023年1月31日
https://lp.merpay.com/card/campaign/
国税庁は、2022年12月1日より、国税をスマホ決済できる「スマホアプリ納付」のサービスをスタートさせます。使えるスマホ決済サービスは「PayPay」「d払い」「au PAY」「LINE Pay」「メルペイ」「Amazon Pay」の6種類です。各スマホ決済サービスの残高を用いて支払う仕組みとなっており、利用するには、事前に各決済サービスのアカウント登録や残高へのチャージが必要になります。
2022年12月より、国税の「スマホアプリ納付」がスタート
「スマホアプリ納付」は、2022年12月1日よりアクセスが可能となる、「国税スマートフォン決済専用サイト」で利用可能です。一度の納付での利用上限額は30万円。対象となるのは国税のすべての税目ですが、相続税など納付額が多額になる税目の場合、利用できない場合があるようです。
すでに明らかになっている情報によると、「スマホアプリ納付」では決済手数料がかからないとされており、これは大きなメリットと言えそうです。これまでもクレジットカードで国税の納付ができましたが、納付額に応じて83円(納付税額1円〜1万円)〜418円(納付税額4万1円〜5万円、以降も1万円を超えるごとに加算)の決済手数料がかかっていました。つまり、決済に使うクレジットカードのポイント還元率によっては、手数料で足が出てしまう可能性があったわけです。その点、「スマホアプリ納付」はより気軽に使えるキャッシュレス納税手段となりそうです。
KDDIとauペイメントは、2022年11月8日、大手システムインテグレーターのTISが提供する「給与デジタルマネー払いゲートウェイサービス」を導入すると発表しました。これにより、現在厚生労働省が進めている省令改正や、許認可の取得などが済み次第、同サービスを利用する企業が「給与デジタルマネー払いゲートウェイサービス」を介して「au PAY」で従業員に給与を支払うことが可能になります。
「au PAY」での給与受取のイメージ
「給与デジタルマネー払いゲートウェイサービス」は、各企業の給与システムと、「au PAY」などの資金移動業者の間に入るサービスです。これを導入することにより、企業側は複数の資金移動業者と個別に接続することなく、同サービスに対応する資金移動業者を介してデジタルマネーで給与が支給できるようになります。同サービスはすでに複数の人事給与システムと合意にいたっており、今回、給与デジタルマネーの支払い方法のひとつとして「au PAY」が決定した形です。
現在、例外的に銀行や証券総合口座への振り込みは認められているものの、給与(賃金)は現金払いが原則となっています。いっぽう、銀行口座を持ちにくい外国人労働者への対応や、企業側の振込手数料負担などの課題も指摘されており、その解決策のひとつとして「給与デジタルマネー払い」が検討されてきた経緯があります。
2022年10月26日に開催された厚生労働省の労働政策審議会において、給与をデジタルマネーで支払える制度の導入を盛り込んだ労働基準法の省令改正案が了承されました。省令は2023年4月に施行される予定で、これにより、労働者の同意があると、企業はデジタルマネーで給与の支払いができるようになります。「au PAY」はこれを見すえた対応をしたわけです。「au PAY」以外にも、複数の決済サービスが「給与デジタルマネー払い」への参入を検討していると伝えられており、来春に向けて同様の動きが続くことが予想されます。
期間中に「PayPay資産運用」から「PayPay証券」の口座を開設すると、もれなく100円相当のコース購入代金が付与されます。さらに1回あたり1,000円以上の買付をすると、抽選で1,500名に1,000円相当のコース購入代金がプレゼントされます。
キャンペーン期間:開催中〜2022年12月28日
https://www.paypay-sec.co.jp/campaign/asset/2211.html
キャンペーンにエントリーのうえ、「セゾンカード」および「クレディセゾン発行のUCカード」でスターバックスカードに累計5,000円以上オンラインチャージをすると、抽選で300名にチャージ金額の20%がキャッシュバックされます。
キャンペーン期間:開催中〜2023年1月10日
https://www.saisoncard.co.jp/present-campaign/entry/starbucks2211/
https://www2.uccard.co.jp/campaign/starbucks2211/
投資・資産運用・保険・クレジットカード・ローン・節約に至るまで、マネーに関する情報を毎日収集。「知らないで損するなんてもったいない」をモットーに、読者のためになる記事を制作します!