「ポイント経済圏」(ネット経済圏とも)という言葉をご存じでしょうか? リアル店舗やECサイト、銀行・証券会社・携帯電話・電力など、同じ企業グループに属するサービスの利用で同じポイントが貯まり、それをお金がわりに使える「エコシステム」のことを指す言葉です。ポイントがあたかも通貨のように循環する様子を称して“経済圏”と表現されています。
現在、こうしたポイント経済圏の主なプレイヤーは、「楽天」「au」「ドコモ」「PayPay(ヤフー)」の4つ。本企画では、これらの最新の攻略方法を4回シリーズで紹介しています。3回目となる今回は「ドコモ経済圏」がテーマ。登場するのは、当メディアでは2021年6月以来2回目の登場となる「おちみかん」(ハンドルネーム)さんです。
※記事中の「ポイント」は、特別な表記がない限り「dポイント」を指します。
ほかの経済圏に負けず劣らずポイントが貯まる「ドコモ経済圏」。毎月8,000ポイント以上貯めるヘビーユーザーが攻略法を解説します
おちみかんさんは、ドコモユーザー歴17年。3年ほど前からドコモ系サービスでのポイ活に取り組んでいます。
それ以前は、買い物する際にポイントカードを提示してポイントをもらうくらいでしたが、携帯で契約しているドコモでポイントを多く貯められる仕組みがあると知り、ドコモ経済圏にはまっていきました。ドコモ経済圏は仕組みがシンプルで使いやすいのですが、ここ最近はポイント付与のルール変更が多いので、こまめなチェックが欠かせません
〈取材協力・解説〉おちみかんさん
関西地方に在住する30代の男性。食品関係の会社で働くかたわら、運営するサイト「ドコモ経済圏 攻略への道」やSNS上でドコモ経済圏のおトク情報を発信。毎月コンスタントに8,000ポイント以上を獲得し、年間合計では約10万ポイントを獲得
おちみかんさんによると、昨年2022年に、ドコモ経済圏でのポイント付与に関する“やや大きめ”のルール変更が3回あったそうです。まずはこれを時系列でチェックしましょう。
2022年6月、ドコモのポイントプログラム「dポイントプログラム」の内容が刷新されました。これにより、直近3か月のポイントの獲得実績に応じて、「dポイントカード加盟店」におけるポイントの還元率(※)が変化するようになりました。
※「dポイント加盟店」での買い物時に、「dポイントカード」を提示することで獲得できるポイント
「dポイントクラブ」変更前(2022年5月まで)はクーポン付与がメイン
「ドコモ回線継続利用期間」と「6か月間累計のdポイント獲得数」で分けられた5段階のステージにごとにクーポンがもらえ、誕生日月にはdポイントの付与があった
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「dポイントクラブ」変更後(2022年6月以降)はすべてポイントで付与
直近3か月間のdポイント獲得数によって「1つ星〜5つ星」の5ランクに分けられ、ランクに応じて、「dポイント加盟店」での「dポイントカード」の提示でもらえるポイントの倍率が1〜2.5倍に変化。ドコモ契約者向けのポイントアップ特典も新設
変更後の「dポイントクラブ」のポイントアップの内訳。「dポイントカード」の提示でもらえるポイントアップの特典(上記表左側)以外に、ドコモの携帯の長期利用者向けの「誕生月に『d払い』の還元率アップ」もあります(上記表右側)。画像はドコモのプレスリリースより
「『dポイントプログラム』は、ドコモ系のサービスをよく使うユーザー向けの還元プログラムと言えます。ルール変更前はクーポンでの還元がメインで、それに加えて誕生日月にポイントがもらえる仕組みでしたが、変更後はクーポンがなくなりポイントでのみ還元する仕組みになりました。おそらく、世の中のポイント人気を受けての変更と見ています。私の場合、3か月合計5,000ポイント以上獲得の『5つ星』をキープしているので、dポイント加盟店でのポイント還元率は2.5倍になります」(おちみかんさん。以下カッコ内同)
2022年9月より始まったのが「d払いステップボーナス」というサービスです。その後、同年11月に内容が一部修正され、現行のルールになりました。
「これは、ドコモユーザー限定のサービスです。決済アプリの『d払い』の前月の決済回数や、ドコモ系のサービスの利用状況に応じて、『d払い』のポイント還元率が1か月間おトクになります(基本還元率に上乗せ)。『PayPay(ヤフー)経済圏』の決済サービス『PayPay』にも似たような仕組みがありましたが、これがドコモ経済圏にも導入された形です」
「d払いステップボーナス」のポイントアップの内訳。画像はドコモ公式サイトより
最後が、2022年12月の「改悪」です。
「それまでは、『d払い』で、支払方法を公式クレカの『dカード』にすると、合計で1.5%分のポイントがもらえていましたが、合計1%に減ってしまいました。『d払い』の基本還元率0.5%は変わりませんが、『dカード』で支払った際の還元率が1.0%(100円で1P)から0.5%(200円で1P)に下がってしまったのです。これはユーザーにとって痛い変更となりました」
「d払い」+「dカード」で獲得できるポイントが、2022年12月に1.5%→1%に変更。画像はドコモのプレスリリースより
これら一連の変更から感じられるのは、ドコモ側の「囲い込み」の意図です。
「dカード」はもともと還元率1%のクレカなので、上記の“変化3”により、「d払い」+「dカード」の組み合わせのメリットはほぼゼロになりました(dカード単体で使っても還元率は同じのため)。ただし、ドコモユーザーであれば、“変化2”の「d払いステップボーナス」の登場により、「d払い」利用回数によっては、「d払い」+「dカード」の組み合わせによって以前より多くのポイントを貯められる可能性があります。
また、“変化1”の「dポイントクラブの刷新」も、特典内容が「ポイント付与のみ」に変わり、かつ、ドコモユーザーには多めにポイントが付与されるようになっています。これらのことから、「ドコモユーザー」と「リピーター」が有利になったことは明らかで、ドコモ側がポイント付与をフックにして、「ユーザー囲い込み」に注力してきたと言えるのかもしれません。
前出のように、2022年はポイント付与に関してさまざまな変化があったドコモ経済圏ですが、この年はほかにも、「金融系サービスの拡大」という大きな変化もあったようです。
「ドコモ経済圏はこれまで、ほかの経済圏と比べて金融系のサービスが弱い印象がありましたが、この1年でだいぶ強化されてきました。まず、2022年2月から始まったのが、SBI証券との提携です。同証券では口座開設や株式の取引、投資信託の保有額などに応じて共通ポイントが貯まるサービスがあるのですが、この選択肢のひとつとして『dポイント』が選べるようになりました」
「同じく2022年12月には、三菱UFJ銀行のインフラを利用した『dスマートバンク』という、個人向けのデジタル金融サービスが始まりました。こちらも口座の利用で『dポイント』が貯まるのが特徴で、たとえば、携帯料金やドコモのクレジットカード『dカード』など、ドコモに関する利用料金の引落しで月に50ポイント(ただし登録後3年目以降は月25ポイント)、給与や年金の受け取り(いずれも1回10万円以上)で月5ポイントが貯まります」
「このほか、ポイントは貯まりませんが、個人向けの少額ローンサービスとして『dスマホローン』も2022年7月に始まりました。決済アプリの『d払い』から申し込め、借入金を直接『d払い』の残高にチャージすることもできます。ドコモ回線や『dカード』を使っている場合、借入の金利が優遇されるユニークな仕組みとなっています」
ここまで説明していただいたとおり、ここ1年あまり変化が続いてきた「ドコモ経済圏」ですが、おちみかんさんは現在、どのようにポイントを貯めているのでしょうか?
「基本はやはり公式クレカを使うことです。私は、水道光熱費など毎月の固定費の支払いを上位カードの『dカード GOLD』に集約しています。このカードの年会費は11,000円と高価ですが、ドコモの携帯料金やドコモ光の料金の10%分のポイント還元があるので、十分に元は取れています。また、前年のカード利用額が100万円以上の場合は1万1,000円相当、200万円以上だと2万2,000円相当の特典がもらえる『年間ご利用額特典』(※)もあるので、100万円以上使う見込みがあればさらにおトクになります」
※ドコモのショッピングサイト「dショッピング」「dfashion」などで使える電子クーポンや、携帯電話の購入時に使える割引クーポンなどがもらえる特典。
おちみかんさんが、普段の買い物で愛用しているのが決済アプリの「d払い」です。この際は、「ポイントの3重取り」を意識していると言います。
「『d払い』の支払方法を『dカード GOLD』に設定します。前出のとおりこれで還元率は合計1%に。この際、買い物する店舗が『dポイントカード加盟店』の場合、『dポイントカードの提示分』として1%のポイントも付き、合計2%還元になります。つまり、『d払い』『dカード GOLD』『dポイントカード』の3重取りができるというわけです。『dポイントカードの提示』はリアルカードの提示、もしくは『d払い』のアプリ上からもできるので、忘れずに提示するようにしています」
おちみかんさんによると、「d払い」で支払える店舗と、「dポイントカード加盟店」は、微妙に重ならない部分もあるそうです。上記の3重取りができるのは「d払い」が使える店舗で、かつ「dポイントカード加盟店」でもある店舗になるわけですが、「dポイントカード加盟店」であっても「d払い」で支払えないケース(またはその逆のケース)もあり、おちみかんさんは店員に直接確認することも多いと言います。
「d払い」「dカード GOLD」「dポイントカード」の3重取りの内訳。画像はドコモ公式サイトより
もうひとつ、おちみかんさんがリアル店舗での買い物で活用しているのが、「dカードの特約店」です。これは、通常1%の「dカード」の還元率がアップする店舗のこと。具体的には、カードを利用した際に付く1%の「決済ポイント」とは別に、「特約店ポイント」が付く店舗のことを指します。
「代表的なのが『マツモトキヨシ』で、『特約店ポイント』が2%分付きます。ここでは、前出の『dポイントカードの提示』分の1%も付くので、『dカード利用分』の1%と合わせて合計4%分のポイントが付きます。特約店によって特約内容は変わるのですが、『d払い』で3重取りするよりもおトクになるケースもあるので、その場合は『dカード』で支払います。『dカード』の裏面には『dポイントカード』のバーコードも付いているので、『dポイントカードの提示』も一緒にできて便利です」
「dカード特約店」の一覧
https://dcard.docomo.ne.jp/st/dpoint_tokuyaku/index.html
いっぽう、ネットの買い物でおちみかんさんが重宝しているのは、ドコモ系列の総合通販サイトの「dショッピング」です。通常時は、クレカ払いや電話料金合算払いで1%のポイントが付きますが、毎月開催される「dショッピングデー」というイベント時には、ポイント還元率が大きくアップするようです。
「『dショッピングデー』は、毎月10日と20日に開催されるセールです。公式サイトからエントリーのうえ、それぞれ24時間の間に4,400円以上の買い物をすると、ポイント還元率が最大で40倍になります(購入する商品によって還元率が異なります)。私はこの日にお米や水などをまとめて購入しています。以前は月に1回のみの開催だったのですが、2021年9月から月2回に変わりました。また、『dショッピング』内から、ふるさと納税を申し込むこともできるのですが、私は『dショッピングデー』の日に申し込みました。通常は1%還元なのですが、この日は合計5%還元となり、おトクに利用することができました」
ちなみに、「dショッピング」での買い物にポイントを利用する際、通常時はポイント利用分に対してポイント還元はないものの、「dショッピングデー」時にはポイント利用分にもポイントが付くそうです。
「dショッピングデー」ではポイントが最大40倍に。画像は「dショッピング」より
これらのポイ活の結果、おちみかんさんのdポイント獲得数は年間10万ポイントに達しています。
「『dショッピングデー』での買い物額によって変動はあるものの、毎月8,000ポイント以上は獲得できています。貯まったポイントは、前出の『dショッピング』で使うほか、最近ではdポイントで投資体験ができる『dポイント投資』や、『dポイント』で株が買える証券会社の『日興フロッギー』で、単元未満株で個別株を買うなど、『増やすこと』にも利用しています。後者では『NTTグループ』(9432)の株をポイントで少しずつ買っています。同社株は100株以上を2年以上3年未満保有すると1,500ポイント、5年以上6年未満保有で3,000ポイントがもらえる株主優待があるので、まずは100株保有を目指しています」
おちみかんさんの直近12月の獲得ポイント数は期間・用途限定分を含めて約20,000ポイント
この1年あまりで多くの変化があった「ドコモ経済圏」。その中でも、「d払い」+「dカード」の0.5%の還元率低下は多くの人にとって印象が良くなかったようで、SNSなどでは一時期「改悪」との評価が多く書き込まれたこともありました。
しかし、丹念にその変化をチェックしてみると、使い方によってむしろ以前よりも多くポイントが貯まる可能性があることもわかります。また、金融系サービスなど、ポイントが貯まるサービスが広がっている点も見逃せないでしょう。
現状、「ドコモユーザーの人」や「d払いなどをリピートして使える人」にとって有利な仕組みになっていることは否めませんが、これらの条件に当てはまる人にとっては、“使い込んでみる”価値のありそうな経済圏と言えるかもしれません。
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