「ポイント経済圏」(ネット経済圏とも)という言葉をご存じでしょうか? リアル店舗やECサイト、銀行・証券会社・携帯電話・電力など、同じ企業グループに属するサービスの利用で同じポイントが貯まり、それをお金がわりに使える「エコシステム」のことを指す言葉です。ポイントがあたかも通貨のように循環する様子を称して“経済圏”と表現されています。
現在、こうしたポイント経済圏の主なプレイヤーは、「楽天」「au」「ドコモ」「PayPay(ヤフー)」の4つ。本企画では、これらの最新の攻略方法を4回シリーズで紹介しています。4回目となる今回は「PayPay経済圏」がテーマ。PayPay経済圏で年間7万ポイント以上貯めている「んぺ」(ハンドルネーム)さんを取材し、おトクなポイントの貯め方、使い方を教えてもらいました。
※記事中の「ポイント」は、特別な表記がない限り「PayPayポイント」を指します。
決済アプリの「PayPay」(左)と、クレジットカードの「PayPayカード」(右)。 PayPay経済圏はどれほどおトク?
今回取材させていただいた「んぺ」さんは、もともと楽天経済圏でポイ活にはげんでいたそうです。
「楽天カードがポイ活の入り口でした。固定費を下げるためにスマホを楽天モバイルの格安SIMに切り替えたり、買い物を楽天市場に集中させたりと、楽天経済圏でのポイ活にのめり込んでいったのですが、いつしか“ポイントのために買い物をする”ような状態になってしまい……」
〈取材協力・解説〉「んぺ」さん
30代主婦で夫と2人の子どもとの4人暮らし。ポイ活歴は約6年。PayPay経済圏で毎月6,000ポイント以上、年間7万2,000ポイント以上を獲得。ブログ「やりくり上手の参考書」にて、PayPayでトクするための情報を発信中。Twitterアカウント「んぺ@PayPay経済圏ブログ」(@npesan_0123)では自身のポイント運用の成績も公開
楽天経済圏では、楽天市場で“買い回りセール”が定期的に行われています。これは、セール期間中、1店舗1,000円以上の買い物をするごとに楽天市場でのポイント還元率が1%ずつ上がる仕組みで、ポイ活ファンの間では、ポイントを効率的に貯める方法として知られています。
「私も買い回りセールをよく利用していたのですが、本当に必要なものはだいたい5〜6店舗目あたりで揃ってしまうのです。その後は、ポイント欲しさに必要性が薄いものを買ってしまうこともあり、節約になっていないことに気づきました……。また、楽天経済圏のセールで付与されるポイントの一部が、利用期限の短い『期間限定ポイント』なのもネックで、『ポイントの期限が切れる前に使わないと』と、本当に必要ではないものに使ってしまうこともありました」(「んぺ」さん。以下、カッコ内同)
やがて「んぺ」さんは、 “本末転倒”な買い物をしてしまいがちな楽天経済圏以外の選択肢を探すようになります。
「そこで魅力的に感じたのがPayPay経済圏でした。たとえば、ヤフー系のECサイト『Yahoo!ショッピング』の場合、買い回りをしなくても高いポイント還元率が目指せますし、もらえるポイントにも利用期限はありません。あくまでも楽天経済圏との比較にはなりますが、ムダづかいしにくい仕組みだと感じました。この点以外にも、さまざまなポイント獲得方法があって、それを攻略する楽しみもあります。今ではすっかりPayPay経済圏が私のメインになっています」
ここからは、具体的に「んぺ」さんの「PayPay経済圏」攻略法を教えていただきます。まずは、経済圏攻略の“土台”となるポイント還元率の上げ方から。
「おそらくほかの経済圏とも似ていると思いますが、まず、適用されるポイント還元率を上げて、その状態で、『Yahoo!ショッピング』や街中での買い物でもらえるポイントを増やすのが基本的な考え方になります。PayPay経済圏でポイント還元率を上げるために、私は『ワイモバイル(Y!mobile)』(以下、ワイモバイル)、『PayPay』、『PayPayあと払い』が欠かせないと考えています」
まず、ソフトバンクのサブブランドで格安SIMの「ワイモバイル」と「PayPay」を使うメリットから。
「『ワイモバイル』ユーザーには、以下の2点のメリットがあります。
・通常、月額508円かかる『Yahoo!プレミアム会員』資格が適用される。同会員は『Yahoo!ショッピング』でのポイント還元率が毎日『+2%』(付与上限は5,000ポイント/月)になる。
・『ワイモバイル』のオプションの『Enjoyパック』(※)への加入で、『Yahoo!ショッピング』でのポイント還元率が毎日『+5%』(付与上限は1,000ポイント/月)になる。
『Enjoyパック』の月額利用料(550円)はかかりますが、これで、実質的に『Yahoo!ショッピング』でのポイント還元率が『+7%』になります。ソフトバンクユーザーにも同様の特典がありますが、私は携帯利用料のおトクさを考えてワイモバイルを使っています」
※Enjoyパック
「ワイモバイル」ユーザーが契約できる月額550円のオプションサービス。本文内で紹介した還元率アップの特典のほか、『Yahoo!ショッピング』で使える500円クーポンや、データ通信料0.5GBプレゼントなどの特典もある。画像は「Enjoyパック」公式サイトより
「『Yahoo!ショッピング』には、これに加えて、『PayPay』(残高orあと払い)か『PayPayカード』で支払うと、ポイント還元率が『最大5%』になる仕組みがあります(※)。先ほどの『+7%』と組み合わせることで、実質的に、『Yahoo!ショッピング』でのポイント還元率は最大『12%』が目指せます」
※内訳は、「ストアポイント1%」+「『PayPay』での決済で0.5%」+「決済方法によって3%か3.5%」。決済方法は、「PayPay残高」なら3.5%還元、「PayPayあと払い」、「PayPayカード(旧Yahoo! JAPANカード含む)」、「PayPayカード ゴールド」の場合は3%還元。
続いて、「PayPay」の支払方法のひとつである「PayPayあと払い」です。「PayPayあと払い」は2022年2月に登場した比較的新しい支払方法です。「PayPay」で当月に利用した金額が、翌月に、登録している銀行口座からまとめて引き落とされる仕組みで、利用するには事前の審査が必要など、クレジットカードと似た仕組みになっています。「んぺ」さんいわく、「PayPayあと払い」は、「PayPay」の還元率を上げる仕組みである、「PayPayステップ」(※)で欠かせない存在だと言います。
「『PayPayステップ』では、『PayPayあと払い』(『PayPayカード(あと払い登録者)』含む)での支払いは『1%』のポイントが還元されます。『PayPay残高』での支払いの場合は『0.5%』なので、それだけで0.5%分おトクになります。ここに、前月の支払い実績(300円以上の決済を30回以上かつ、決済金額の合計が10万円以上)によりポイント還元率が『0.5%』加わるので、『PayPayあと払い』では最大1.5%のポイント還元率が目指せます」
※PayPayステップ
「PayPay」での支払方法や、前月の支払い実績(300円以上の決済を30回以上かつ、決済金額の合計が10万円以上)によって、翌月のポイント還元率が1〜1.5%の間で変わるポイントアップの仕組み。画像は「PayPayステップ」公式サイトより。
「PayPayあと払い」に申し込むと、クレジットカードの「PayPayカード」も発行でき、「PayPay」に対応していないリアル店舗などで使うことができます(利用額に対して、1%でPayPayポイントが貯まる)。「PayPayあと払い」と「PayPayカード」の利用料金は、同じ口座から一緒に引き落としされます。
ちなみに、「PayPayカード」には、上位カードの「PayPayカード ゴールド」がありますが、保有を検討する価値はあるのでしょうか?
「『PayPayカード ゴールド』は、前出の『PayPayステップ』で、最大2%還元が目指せます。また、ソフトバンクの携帯料金の最大10%分のポイントが付くなど、使い方によってはおトクになるカードです。ただ、私は前出のとおりワイモバイルを使っていて、その場合は携帯料金の3%還元です(※)。11,000円の年会費分の元が取れるかは正直微妙なところで、今の私の条件では、年会費無料の『PayPayカード』で十分ではないかと感じています」
続いては、「んぺ」さんが具体的に「PayPay経済圏」でどんな買い方をしているのか教えていただきます。
「ヤフー系のECサイトである『Yahoo!ショッピング』では、日常生活の必需品が多いですね。たとえば子どもや私の服や、書籍、飲料などになります。これらを『5のつく日』に買うようにしています。『5のつく日』は、『Yahoo!ショッピング』の特売日のようなもので、毎月5、15、25日に同サイトで購入すると、『+4%』のポイント上乗せサービスがあります。先ほど説明したように、私の場合ベースとなるポイント還元率は『12%』です。ここに『4%』が加わるので、合計で『16%』還元になるわけですが……」
こう語尾を濁した「んぺ」さん。聞くと、「Yahoo!ショッピング」でつい最近、制度の改悪があったそうです。
「2023年2月5日より、『5のつく日』で付与される『4%』分のポイントの上限が、1日あたり5,000円から1,000円に下がってしまったんです。したがって、『5のつく日』に買い物を集中させる必然性は、以前と比べると低くなっています」
“攻め”のポイント獲得だけではなく、“守り”の節約も心がけているという「んぺ」さん。これに役立つのが、「Yahoo!ショッピング」で毎日発行されている「日替わりクーポン」です。
「このクーポンは割引率が15〜30%と高く、欲しいものがクーポンの対象になっている時は欠かさずに使っています。クーポンは特定のジャンルが対象で、この対象ジャンルが毎日変わる仕組みです。割引き率は当日にならないとわかりませんが、その月にどのジャンルがクーポンの対象になるかはあらかじめカレンダー形式で公開されているので(下画像)、それに合わせて買い物の計画を立てています」
2023年3月の「日替わりクーポンカレンダー」(上)。上記のようにクーポン対象となるジャンルが日ごとに変わる仕組み。下の画像は同3月2日の「寝具」の日替わりクーポン。最大20%OFFと割引率は高めです。画像はいずれも「Yahoo!ショッピング」より
続いて、街中での買い物の場合について。「んぺ」さんは「支払方法」の順番を決めているそうです。
「まず優先して使いたいのが、『まとめて支払い』という方法でチャージした『PayPay残高』(PayPayマネーライト)です。『まとめて支払い』は、『ワイモバイル』などソフトバンク系列のスマホユーザー限定で使えるサービスで、スマホの月額料金やスマホで購入したデジタルコンテンツなどの料金を、翌月にまとめて支払えるというものです」
「んぺ」さんによると、この「まとめて支払い」は、現状、「PayPay」への残高チャージで唯一ポイントを付ける方法とのこと。
「『まとめて支払い』には、クレジットカードから『PayPay』の残高へのチャージ分も含めることができます。『PayPay』のチャージ方法には、『銀行口座』『PayPayカード』『現金』などがありますが、いずれもポイント付与の対象外。しかし、『まとめて支払い』の枠内で、クレジットカードからチャージすると、クレジットカード側のポイントが付与されます。2022年12月より、『PayPayカード』がこのチャージ方法でのポイント付与対象外となり(「まとめて支払い」でのチャージ自体は可能)、“公式クレカではなく、他社のカードならポイントが付く”というちょっと不思議な状況となっていますが、現在私は、還元率1.2%の『リクルートカード』でチャージしています」
前出の「PayPayステップ」では、「PayPay残高」での支払いで目指せる還元率は「最大1%」、「PayPayあと払い」や「PayPayカード(あと払い登録者)」では「最大1.5%」です。しかしながら、「まとめて支払い」で付くクレジットカード側のポイントを加味すると、現状、「PayPay」をリアル店舗で使う際にもっともおトクになるのが「まとめて支払い」でチャージした「PayPay残高」だと言います。
「ただし、ひとつ注意したいのが、『まとめて支払い』の上限額です。ルール的には最大で月10万円までなのですが、この限度額は利用実績に応じて『PayPay』によって決められます。私は最初3万円でしたが、現在は月6万円に増えています。この6万円のチャージ分を街中の買い物に充て、この枠を使い切ったら『PayPayあと払い』(最大1.5%還元)、PayPayが利用できないところでは『PayPayカード(あと払い登録者)』(最大1.5%還元)と、使い分けるようにしています」
最後に、月に6,000ポイント以上を獲得しているという、ポイントの使い道についても教えていただきます。
「前出のとおり、『PayPayポイント』には使用期限がありません。その利点を生かして、ポイントを増やすべく、疑似的な運用を楽しめる『ポイント運用』に回しています。これは、実際の金融商品の値動きにあわせてポイントが増減するサービスで、もちろん相場の環境にもよるのですが、今のところコツコツと増やせています。
2022年3月24日に規約が変わり、それまで無料だった手数料が有料化され、100ポイント以上を運用に回すと1%分が手数料として引かれるようになってしまいました。そこで私は、毎日99ポイントを運用に回して、手数料がかからないように運用しています」
「そのほかのポイントの使い道としては、『地域限定キャンペーン』や『花王×PayPay』など、ピンポイントで開催されるキャンペーン時に利用したり、『固定資産税』や『自動車税』などの支払いに充てています(※)。後者はポイント還元はありませんが、前出の『PayPayステップ』の、“300円以上30回の支払いで総額10万円以上”のカウント対象になるので見逃せません。このように、ただ使うだけでなく、副次的な効果も意識するようにしています」
※編集部注
記事制作中の2023年2月27日、PayPayより、2023年4月以降、「固定資産税」「自動車税」の支払いに「PayPayポイント」が使えなくなるとの発表がありました。この件について「んぺ」さんに追加取材したところ、「2023年4月以降は、水道料金の支払いにポイントを使っていく予定です」との返答を得ています。
参考:2023年4月以降の「PayPay請求書払い」の「eL-QR」対応および支払方法の変更について
https://paypay.ne.jp/notice/20230227/f-billpayment/
PayPay経済圏を極め、多くのポイントを貯めている「んぺ」さんですが、相次ぐルール変更には悩まされていると言います。
「3月の『ポイント運用の手数料有料化』、6月の『PayPayステップの特典変更』、12月の『PayPayステップの達成条件変更』など、2022年はルール変更が特に多かったですね。その後も、記事で触れたように『5のつく日のポイント付与上限の変更』があり、この傾向はしばらく続くかもしれません。『PayPayアプリ』内のお知らせなどは、こまめにチェックしたほうがいいでしょう」
ちなみに、「んぺ」さんは楽天経済圏からPayPay経済圏に移行されましたが、今後、PayPay経済圏を離れる可能性もあるのでしょうか?
「PayPay経済圏の魅力のひとつが、ポイントの有効期限がないことなので、仮にこれが変更された場合は離脱を考えるかもしれません。また、記事で紹介したようにワイモバイルユーザーがPayPay経済圏で得られるメリットが多いので、これが変更された際も、離脱を検討する可能性はあると思います」
決済アプリとして抜群の知名度を誇る「PayPay」。筆者も、日頃「PayPay」を愛用するひとりですが、本記事で「んぺ」さんに教えていただいたとおり、ポイント獲得のポテンシャルを最大限発揮するには「PayPay経済圏」の各種サービスにまで目を向ける必要がありそうです。このところ続いているルール変更はやや気になりますが、まだまだおトクさは十分。本記事を、PayPay経済圏攻略の参考にしてもらえると幸いです。
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