最近はあらゆる商品の値上げのニュースが珍しくありません。そんな中、コンビニやファミレスなど、身近な店舗でのポイント還元率を高めに設定しているクレジットカードの人気が高まっているようです。
そんな、“高還元クレカ”の中でも人気を二分しているのが、三井住友フィナンシャルグループ発行の「三井住友カード(NL)」と、三菱UFJニコス発行の「三菱UFJカード」です。どちらもいわゆる「銀行系クレカ」で、ポイントアップの仕組みやポイント還元率が高くなる対象店の傾向が似ているため、どちらを持つべきか迷う方も多いようです。そこでこの記事では、この2枚のカードを比較し、「今から持つならどちらがおトクか?」を考えてみました。
人気の銀行系クレカ2枚を比較
まずは2枚の特徴をざっくりとつかんでおきましょう。2021年2月に誕生した「三井住友カード(NL)」は、基本のポイント還元率は0.5%と標準的な水準ながら、セブン-イレブンやローソン、マクドナルド、すかいらーくグループなどの対象店舗で、スマホのタッチ決済を利用して支払うと、最大7%還元となります(リアルカードのタッチ決済の場合は最大5%還元)。
このほか、三井住友カードの対象クレカを持っている2親等以内の家族を登録すると、「登録した人数分×1%分」が、前出の対象店でのポイント還元率に上乗せされる「家族ポイント」など、還元率を上げる仕組みも複数用意されています(後述)。
これらポイント面での魅力に加え、年会費永年無料というコスト面でのメリットや、券面にカード番号や有効期限などが一切印字されていない「完全ナンバーレス」の目新しさもあって一躍人気カードとなり、登場以来、価格.comの人気クレジットカードランキングでも常に上位をキープしています。
三井住友カード(NL)は価格.comクレジットカード人気ランキングトップの常連です(画像は「価格.comクレジットカード比較」2023年8月18日時点より)
2022年7月に、既存の「MUFJカード」が大幅にリニューアルされて登場したのが「三菱UFJカード」です。こちらも基本還元率は0.5%ですが、セブン-イレブンやローソン、松屋などの対象店舗で利用すると「最大5.5%」のポイントが貯まるようになりました。ポイントアップの対象店の傾向(大手コンビニなど)などが、若干「三井住友カード(NL)」を意識したものになっています。
年会費は1,375円かかりますが、初年度は無料で、年に1度以上の利用があれば翌年も無料になります。カード番号や有効期限、サイン欄はすべて裏面にまとめられており(片面ナンバーレス)、盗み見などのリスクが少なく安心とされています。
大手コンビ二などでの高還元が注目の「三菱UFJカード」(画像は「価格.comクレジットカード比較」2023年8月18時点より)
特定の対象店でのポイント高還元が魅力の両カードですが、ポイントの貯まり方や対象店舗などの諸条件が異なります。以下に、両カードを比較する際にチェックしておきたい3つのポイントをまとめました。
まずチェックしたいのは、ポイントの貯まり方の違いです。
「三井住友カード(NL)」は1か月間の利用額200円ごとに最大7%(通常ポイント0.5%+特典ポイント6.5%)貯まるのに対し、「三菱UFJカード」は1か月間の利用額1,000円ごとに、最大5.5%(基本ポイント0.5%+スペシャルポイント5%)のポイントが貯まります(ポイントの分類や名称は各カードの表記にならっています)。
また、「三菱UFJカード」で貯まるポイントの内、基本ポイント(0.5%分)は1か月の利用額の合計額で計算されるのですが、スペシャルポイント(5%分)は「利用したチェーンごとに計算される」点にも要注意です。こちらにも「1,000円ごとにポイントが貯まる」点が関係してきます。
たとえば、セブン-イレブンで2,800円、ローソンで3,200円を使った場合で考えてみます。2つのチェーンを合計すると6,000円になりますが、実際にもらえるスペシャルポイントは、6,000円×5%=300ポイントではなく、セブン-イレブンの分100ポイント、ローソンの分150ポイントで合計250ポイントとなります。これに基本ポイントの6,000円×0.5%=30ポイントを加えた280ポイントが、この条件で「三菱UFJカード」で獲得できるポイント数です。
三菱UFJカードの基本ポイントは月間の利用額の合計で計算される(1,000円ごと)
・基本ポイント 6,000円×0.5%=30ポイント
三菱UFJカードのスペシャルポイントは対象の各チェーンでの月間利用額の合計で計算される(1,000円ごと)
・スペシャルポイント(セブン-イレブン分) 2,000円×5%=100ポイント
・スペシャルポイント(ローソン分) 3,000円×5%=150ポイント
※これに加えて、「三菱UFJカード」は、「クレジット決済とタッチ決済の利用分」と、「ApplePayを介したQUICPay決済利用分」は別々に合算されてスペシャルポイント数が計算されるようです。非常に細かい話にはなりますが、ポイントの取りこぼしを防ぐために、対象店舗での支払い方法は統一するのがおすすめです。
続いて、ポイントアップの対象店の違いです。「三井住友カード(NL)」で還元率が最大5%となる対象店舗は下記のとおりです。
●セブン-イレブン ●ローソン(ナチュラルローソン、ローソンストア100、ローソンスリーエフも対象)●ポプラ(生活彩家も対象) ●セイコーマート(タイエー、ハマナスクラブ、ハセガワストアも対象) ●マクドナルド ●サイゼリヤ ●すき家 ●はま寿司 ●ココス ●ドトールコーヒーショップ ●エクセルシオールカフェ ●かっぱ寿司
●ガスト ●バーミヤン ●しゃぶ葉 ●ジョナサン ●夢庵 ●ステーキガスト ●から好し ●むさしの森珈琲 ●藍屋 ●グラッチェガーデンズ ●魚屋路 ●chawan ●La Ohana ●とんから亭 ●ゆめあん食堂 ●桃菜 ●八郎そば ●三〇三
※一部対象外の店舗あり
※2023年8月18日時点
いっぽう、「三菱UFJカード」で還元率が最大5.5%となる対象店舗は下記のとおりです。
●セブン-イレブン ●ローソン(ナチュラルローソン、ローソンストア100も対象) ●コカ・コーラ自販機(タッチ決済、QUICPay、Coke ON) ●ピザハットオンライン ●松屋(松のや、マイカリー食堂も対象)、●松弁ネット、松屋モバイルオーダー、松弁デリバリー
※一部対象外の店舗あり
※2023年8月18日時点
ご覧のとおり対象店舗の数で比較すると、「三井住友カードNL」が圧倒的に上回ります。同カードの登場当初、対象店は大手コンビニ(当初はファミリーマートを含む大手3社)やマクドナルドなどに限られていましたが、その後段階的に拡大を続けており、特に、飲食店での選択肢が広がっています。
「三菱UFJカード」も、2023年2月に、「コカ・コーラの自販機」や、「ピザハットオンライン」、「松屋」が対象店に加わり、その後同年8月に松屋フーズが展開するとんかつ専門店の「松のや」とカレー専門店「マイカリー食堂」が加わるなど徐々に対象店が広がってはいるものの、「三井住友カードNL」と比較するとまだまだ選択肢が少なく、今後の広がりが期待される状況です。
続いては、やや応用編になりますが、対象店でさらにポイント還元率を上げる方法についてです。
前出のとおり、「三井住友カード(NL)」には、三井住友カードを持っている2親等以内の家族を登録しておくと、「家族の人数×1%分」、対象店でのポイント還元率がアップする「家族ポイント」というサービスがあります(最大で+5%。登録する側・される側双方の還元率がアップ)。「三菱UFJカード」には今のところ同様のサービスがないので、親子や兄弟で一緒にポイントを貯められる人なら、「三井住友カード(NL)」のほうがおトクに使えるでしょう。
このほか、2023年3月よりサービスが始まった、三井住友銀行の口座・クレカ・デビット・保険・証券をひとつのアプリで完結できるモバイル総合金融サービスの「Olive(オリーブ)」に申し込むと、取引状況に応じて、対象店でのポイント還元率がさらに最大「6%」加算される「Vポイントアッププログラム」により、ポイントアップの幅が広がります。ころらを組み合わせると、仕組み上は最大18%の還元率まで目指すことができます(7%+5%+6%)。
いっぽう「三菱UFJカード」は、かつて、前出の「最大5.5%還元」に「4.5%相当のポイント」が上乗せされ、「最大10%相当」となる大型キャンペーンを実施していました。本キャンペーンは2023年7月で終了となり、現在は従来の「最大5.5%還元」が適用されます。
また、これとは別に、登録型リボの「楽Pay」を登録すると(キャンペーン登録&アプリログイン)、「+5%相当」が上乗せされ、「最大10.5%還元」となる特典があります。「楽Pay」は、毎月の支払い金額を自由に決められる登録型のリボ払いサービスのこと。たとえば、毎月の支払額を3万円に設定していた場合、支払額が3万円を超えた月は、超過分が翌月に繰り越しとなり、その分に手数料がかかってきます。ポイント的にはおトクになる可能性はありますが、手数料もかかる可能性があるため、こうした特徴をよく理解したうえで利用を検討したいところです。
ポイントは貯めやすさだけでなく、使いやすさも肝心です。そこで、両カードで貯まるポイントの使い道や交換レートなどをチェックします。
「三井住友カード(NL)」の利用では、SMBCグループの共通ポイント「Vポイント」が貯まります。筆者がおすすめの使い道は、ポイントを「Vポイントアプリ」の残高にチャージして、1P→1円として全国のiDおよびVisaのタッチ決済加盟店で使うことです。コンビニやスーパー、ファストフード店などの身近な店で、現金と同様に使えるのがメリットです。
買い物の予定がない場合は、カード請求額に1P→1円として充当するのもいいでしょう。あらかじめアプリ上で設定しておくと、対象月の請求額から自動的に差し引かれるので手間がかからず、無駄なく使うことができます。また、1P→1円としてSBI証券の投資信託購入に使えるのも、このカードならではの魅力です。
ほかに、Amazonギフト券やApple Gift Card、Google Playギフトコード、dポイント、WAONポイント、楽天ポイント、Tポイント、nanacoポイント、Pontaポイントなどにも交換できますが、交換レートはいずれも500P→400円分と低めなのでご注意ください。
「三菱UFJカード」で貯まるポイントの名称は「グローバルポイント」です。こちらは、買い物での支払いには使えませんが、最大で1P→5円のレートで、200種類以上の景品やポイントに交換できます。主な使い道と交換レートは以下のとおりです。
●Amazonギフトカード(100P→500円分)
●ビックポイント、ベルメゾンポイント(500P→2,500P)
●Pontaポイント、Tポイント、dポイント(200P→800P)
●楽天ポイント、nanacoポイント、WAONポイント(200P→600P)
●Apple Gift Card、Google Play ギフトコード、QUOカードPayなど(125P→500円分)
●ムビチケ前売券GIFT(375P→1,500円分)
●三菱UFJ ニコスギフトカード(850P→3,000円分、5,050P→25,000円分など)
※2023年4月13日時点
交換レートが最大となるのは、Amazonギフトカード、ビックポイント、ベルメゾンポイントの3つ。前述した「5.5%還元」は、この3つに交換した場合の還元率で計算されています。
また、全国の百貨店やスーパーなどで使える三菱UFJニコスギフトカードへの交換も比較的高レートです。こちらはまとめて交換したほうが還元率が高くなるので、5,050P貯めてから交換するのがおすすめです。
最後に、そのほかの要素も比較してみます。
「三井住友カード(NL)」は年会費永年無料ですが、「三菱UFJカード」は年に1度の利用で無料となります(初年度は無料)。もし1年間使わなかった場合は1,375円の年会費がかかってしまうので注意が必要です。
「三井住友カード(NL)」を使いこなすために欠かせないのが、「Vpassアプリ」と「Vポイントアプリ」。前者ではクレカのカード番号や利用状況などが確認でき、後者では、貯めたポイントを支払いなどに使うことができます。生体認証ログインもできるので、セキュリティ面も安心です。
「三菱UFJカード」のアプリは「MUFGカードアプリ」です。月ごとの明細や利用状況がわかるほか、貯めたポイントをAmazonギフトカードなどの電子ギフト券へ即時交換できます。認証方法は生体認証、パスコード、WEBサービスのIDとパスワードから選択できます。
どちらもタッチ決済に対応しているので、サインや暗証番号入力の手間がかからず、スピーディーに決済できます。また、「三井住友カード(NL)」はiD、Apple Pay、Google Pay 、PiTaPa、WAONに対応。「三菱UFJカード」はApple Pay、モバイルSuica 、楽天Edy 、SMART ICOCAに対応しています。
「三井住友カード(NL)」の上位カードは、「三井住友カード ゴールド(NL)」(年会費5,500円)です。年間100万円以上利用すると、翌年以降の年会費は永年無料になります。年会費の安さは魅力ですが、特典は国内空港ラウンジの無料利用、年間300万円までのショッピング保証、最高2,000万円の海外・国内旅行傷害保険と、ゴールドカードとしては限られた内容となっています。
「三菱UFJカード」の上位カードは、「三菱UFJカード ゴールドプレステージ」(年会費11,000円/初年度無料)です。こちらも、年間100万円以上の利用で年会費相当となる11,000円相当のボーナスポイントが付与されるのに加え、国内空港ラウンジの無料利用、対象レストランで所定コースメニューを2名以上で利用すると1名無料などの特典が付いています。
なかでも「レストランで1名分が無料」は、通常はプラチナカード以上のカードに付いている特典なので、ゴールドカードで利用できるのはかなりおトク。メインカードとして使えば年会費相当のボーナスポイント獲得は現実的で、コスパはよいと言えます。
以上、さまざまな角度から比較してきましたが、総合的に見ておトクなのは、「三井住友カード(NL)」と言えそうです。
両カードの比較表。情報はいずれも2023年8月18日時点
最大7%還元の対象店舗には、セブン-イレブンやローソンに加えて、マクドナルドやすかいらーくグループも含まれているので、日常生活でポイントを貯めるチャンスが多く、また、200円ごとにポイントが貯まるので、ポイントの“取り逃し”も少なくて済みます。ポイントの用途も豊富で、特に、貯めたポイントをアプリにチャージすると、1P→1円として無駄なく使える点も評価できるでしょう。ただし、注意点としては、最大7%還元となる支払い方法がスマホのタッチ決済に限られている点。クレカのタッチ決済では最大5%還元となり、それ以外の支払い方法ではポイントアップ特典はありません。
「最大5.5%還元」がウリの「三菱UFJカード」ですが、後発ということもあり、ポイントアップの対象店がまだまだ少ないのは残念なところ。また、意外に見落としがちな点ですが、貯めたグローバルポイントの実質的な価値についても注意が必要かもしれません。最大5.5%還元となるAmazonギフトカードやビックポイント以外に交換する場合は交換レートが悪く、実質的なポイント還元率が下がります(つまり、「最大5.5%還元」以下になります)。対象店舗とともに、ポイントのおトクな使い道がどれくらい広がるかが、本カードの今後の人気を左右しそうです。
「三菱UFJカード」は、最大5.5%還元となる支払方法については「三井住友カード(NL)」よりも柔軟で、その点はメリットになりえます。ただし、前出のとおり支払方法ごとにスペシャルポイントが付与されるので、支払方法はできるだけ集約したほうがいいでしょう。
以上、最近話題の「おトクな銀行系クレカ」2枚を比べてみました。今回はトータルで見て「三井住友カード(NL)」のほうがおトクだと感じましたが、「三菱UFJカード」のポイントアップ対象店には、「コカ・コーラ自販機」や「松屋」など、「三井住友カード(NL)」の対象店にはないものもあります。これらをよく使う人にとっては、「三菱UFJカード」のほうがおトクになるケースもあるでしょう。
今回まとめた情報はあくまでも現時点でのもの。今後も、両カードが「おトクな銀行系クレカ」としてよい意味で競い合い、利便性やおトクさが上がっていくのを期待したいところです。皆さんもご自身の利用状況に合わせて、両カードをおトクに使いこなしていただければと思います。
編集者兼マイラー。JAL、ANAはもちろん、海外航空会社のマイレージにも詳しく、仕事の合間を縫って旅を楽しむ。ポイント、マイルの交換などカードの裏技にも精通。