めまぐるしく変化するキャッシュレス決済の動向を伝える本連載。今月のキャッシュレス関連のニュースの中から、マネー担当の編集部員やライターが気になったものをピックアップしてお伝えします。記事の最後では、現在開催中のキャッシュレス決済関連キャンペーン情報も掲載していますので、こちらもぜひチェックを!
2023年5月のトップニュースは、“スマホ決済のトップランナー”となった「PayPay」のルール変更について。今年8月から、「PayPayカード」以外のクレジットカード(以下、本稿ではクレカと略します)での直接支払いができなくなると発表されました。これに加え、「ソフトバンク・ワイモバイルまとめて支払い」の2回目のチャージから手数料が発生することも明らかにされており、ユーザーからはネガティブな反応も起きているようです。
このほか、楽天証券の「かぶミニ(単元未満株取引)」の取引銘柄拡充や、ネット証券の人気ランキングについてもご紹介します。
「PayPay」のルール変更の中身とは?
このニュースのサマリー
〇「PayPay」が2023年8月から、やや大きめな2つのルール変更を発表
〇ひとつめは「他社が発行するクレカ」での直接支払いの停止。「PayPay」のインターフェイス的利用が不可に
〇2つめは「ソフトバンク・ワイモバイルまとめて支払い」の手数料新設。フレキシブルなチャージが難しくなりそう
2023年4月時点で登録者数は5,700万人を突破。2022年度の年間連結決済取扱高は約10兆2,000億円を記録……と、スマホ決済サービスの中で頭ひとつ抜け出した感のある「PayPay」。そんな“スマホ決済のトップランナー”から、2023年5月1日付で2つの仕様変更が発表されました。
ひとつめは、「他社が発行するクレカ」からの直接支払いができなくなることです。
「PayPay」には大きく分けて、「チャージ」と「クレカからの直接支払い」の2つの支払い方法があります。「チャージ」方法には、銀行口座、公式クレカの「PayPayカード」、「PayPayあと払い」、後述する「ソフトバンク・ワイモバイルまとめて支払い」などがあります。「クレカからの直接支払い」では、公式クレカの「PayPayカード」に加えて、「他社が発行するクレカ」も使うことができます。
しかし2023年8月以降は、「クレカからの直接支払い」における「他社が発行するクレカ」が利用できなくなり、「クレカからの直接支払い」で使えるのは、「PayPayカード」、あるいはその上位版の「PayPayカード ゴールド」(年会費11,000円)のみとなります。具体的には、2023年7月初旬にクレカの新規登録が停止され、8月に入ると、既存の登録済みカードの登録も解除されるようです。
記事執筆時点での「PayPay」の支払方法。画像内の「その他のクレジットカード」の支払方法が2023年8月から利用できなくなります(画像は「PayPay」公式サイトより)
現時点でも、「PayPayカード」では決済時に「PayPayポイント」が付与されるのに対して、「他社が発行するクレカ」ではポイントが付かないなど、「PayPay」で「他社が発行するクレカ」を使うことにはさほどメリットがない状況でした。しかし、たとえポイントは付かなくても、「他社が発行するクレカ」を「PayPay」で使うケースは、一定数存在しているものと思われます。
たとえば、「支払いを、できるだけ1枚のクレカ(本記事における「他社が発行するクレカ」)に集約したい人」が、「使えるキャッシュレス決済が『PayPay』のみの店舗で支払うケース」などが考えられます。前出のとおり、「PayPay」の普及規模はキャッシュレス決済の中でも頭ひとつ抜けている状況です。クレカでの支払いには対応していなくても、「PayPay」なら使えるという小規模店舗は珍しくありません。こうした店舗でも、インターフェイスとして「PayPay」を介すことで、結果的に、普段使っているクレカ(他社が発行するクレカ)で支払うことが可能です。このような使い方をしている人にとっては、今回のルール変更は痛手となります。
仕様変更の2つめは、「ソフトバンク・ワイモバイルまとめて支払い」(以下、「まとめて支払い」)の手数料の新設についてです。
「まとめて支払い」とは、ソフトバンク・ワイモバイル・LINEMOのユーザーが利用できる決済方法です。携帯電話の料金と合算で、デジタルコンテンツやネットショッピングの代金を支払うことができ、「PayPay」へのチャージもこの中に含めることができます(この場合は「PayPayマネーライト」でのチャージになります)。
これまで、この「まとめて支払い」のチャージには手数料がかかっていませんでした。しかし、2023年8月以降は、初回のチャージは引き続き手数料無料ながら、毎月2回目以降のチャージに対しては、チャージ金額の2.5%分が手数料として発生します。仮に、その月の2回目の「まとめて支払いのチャージ」で1万円をチャージした場合、250円の手数料がかかるようになるわけです。これまで、必要に応じて月に複数回チャージしていた人にとっては、要注意となる変更です。
また、この「まとめて支払い」ですが、「PayPay」の上級者の間では、ちょっとした“裏技”的な使われ方もしており、その場合にも影響が出てきそうです。
「まとめて支払い」のチャージには、「PayPayカード」と「他社が発行するクレカ」の両方が使えるのですが、「PayPayカード」でチャージした場合はクレカ側のポイント付与は付かないものの、「他社が発行するクレカ」でチャージした場合は、そのクレカのルールに応じてクレカ側のポイントが付与されます。つまり、チャージ後に「PayPay残高」での支払いで付く「PayPayポイント」(最大1.0%還元)と、「他社が発行するクレカ」で付くポイントとの2重取りが可能になるわけです。
「PayPay」のポイント付与プログラム「PayPayステップ」では、公式クレカの「PayPayカード」や「PayPayあと払い」を使うことで「最大1.5%還元」が目指せます。しかし、上記の2重取りの場合、利用するカードのポイント還元率によって、トータルでこの「最大1.5%還元」を上回れる可能性もあります。このように、「他社が発行するクレカ」をからめて「まとめて支払い」でポイントアップを狙う場合にも、フレキシブルなチャージがしにくくなるという意味で、今回新設される手数料はやっかいな存在になるかもしれません。
「PayPay」ではこれまでも、細かな仕様変更が続いていましたが、2023年8月からの2つの仕様変更は、ユーザーへの影響が比較的大きいものと言えます。普及が進み、ある種インフラ的な決済手段になりつつある「PayPay」ですが、使う側にも「何が本当のおトクなのか」を見極める目がますます求められそうです。
このニュースのサマリー
〇楽天証券が「かぶミニ(単元未満株取引)」の取扱い銘柄を拡充
〇「かぶミニ」はネット証券の単元未満株取引としては初となる「リアルタイム取引」が特徴
〇今回の追加銘柄には「ANA」「すかいらーくホールディングス」など人気の優待銘柄が多数
現在、東京証券取引所(東証)をはじめとして、全国の証券取引所では、株の最低売買単位が100株(単元株)に定められています。投資家がどこかの会社の株を買いたい時は、100株分のお金が必要で、たとえば、「ユニクロ」でおなじみの「ファーストリテイリング」(証券コード:9983)の株を買いたい場合は、1株34,070円(2023年5月22日時点の株価)として、ざっと340万円かかる計算です。
いっぽう、少額から投資したいという投資家のニーズに応える目的で、証券会社各社は、1株単位で株式が購入できる「単元未満株取引」というサービスも提供しています。楽天証券もそのひとつで、2023年4月より、「かぶミニ(単元未満株取引)」(以下、「かぶミニ」)という名称で単元未満株取引を提供しています。
単元未満株取引としては珍しいリアルタイム取引を採用している、楽天証券の「かぶミニ」。おなじみの楽天ポイントを1ポイント=1円で株取引に使うこともできます(画像は楽天証券公式サイトより)
単元未満株取引は、一般的に約定(売買が成立すること)タイミングに制限があり、1日に1〜3回の間で設定されています(回数やタイミングは証券会社による)。そんな中、楽天証券は、単元未満株を取り扱うネット証券では初めて、一部取扱い銘柄で、リアルタイム取引を採用しています。
1日1回、前場(午前の取引)の寄付(よりつき)価格で取引する「寄付取引」とリアルタイム取引のどちらかをユーザーが選べる仕組みとなっており、リアルタイム取引の場合は取引時間中にいつでも売買ができます。その日に買った株をその日のうちに売却する「日計り(ひばかり)」取引も可能です。
このように、少額からフレキシブルに株を売買したい人にとって魅力的な「かぶミニ」のリアルタイム取引ですが、これまでは買える銘柄の少なさがネックでした(寄付取引の対象銘柄500銘柄に対して、リアルタイム取引の対象銘柄は100銘柄)。しかし、2023年5月22日より、対象銘柄が492銘柄へと大幅に拡充され、選択肢がグンと増えました(同じタイミングで寄付取引の対象銘柄も1,000銘柄に拡充されています)。
今回追加された銘柄には「ANAホールディングス」(証券コード:9202)や、「すかいらーくホールディングス」(証券コード:3197)、「吉野家ホールディングス」(証券コード:9861)といった、株主優待で人気の銘柄も多数含まれているのが特徴です。単元未満株投資においても、コツコツと株を買い進めて、株主優待の権利が付く株数に至ることができます。今回の銘柄拡充は、とりわけ、投資初心者の注目を集めそうです。
このニュースのサマリー
〇ネットリサーチによる、ネット証券の人気ランキングが発表
〇SBI証券、楽天証券の2社が他社を引き離す人気ぶりを見せる
〇SBI証券は「銘柄数の多さ」、楽天証券は「ツールの使いやすさ・見やすさ」など評価ポイントには若干の違いあり
現在、個人の株取引の主流はネット証券に移りつつあります。PCやスマホがあればアクセスでき、場所を気にせずに取引できるメリットは大きく、取引コストの安さなども魅力です。そんなネット証券の中で人気を集めているのはどこか? 総合比較メディア「HonNe」を運営する株式会社EXIDEAが実施した「ネット証券に関するアンケート調査」(2023年3月実施)によると、下記のような結果が出ています。
出典:ネット証券投資家アンケート(株式会社EXIDEA)
本調査は、「ネット証券の口座を開設したことがある人」300名を対象としたもの。その結果、口座を保有している証券会社のトップ3は、SBI証券(48.7%)、楽天証券(44.0%)、マネックス証券(17.3%)という結果が出ています。特に、上位2つの証券会社が、3位以下を大きく引き離しました。
また、「最初に口座開設した証券会社」という設問に対しても、楽天証券が28.7%、SBI証券が27.3%という結果が出ており(3位は野村證券で9.3%)、「メインで使用している証券会社」という設問に対しても、SBI証券が33.7%、楽天証券が29.3%という結果が出ています(3位は松井証券で7.0%)。いずれの設問においても、SBI証券と楽天証券が3位以下を大きく離しており、この2つの証券会社の存在感の大きさを示すものとなっています。
SBI証券と楽天証券のユーザーが、それぞれのネット証券のどんな点に満足しているかを聞く設問に対しては、両社とも「手数料の安さ」がトップ。ただし、2つ目の満足度のポイントは、SBI証券が「銘柄数の多さ」(16.8%)だったのに対し、楽天証券は「ツールの使いやすさ・見やすさ」(18.2%)と異なっています。楽天証券についてはこのほかにも、「ポイントが貯まるところ」「ポイント投資ができるところ」なども評価の理由にあがっています。
最後に、現在実施されているキャッシュレス関連のキャンペーンの中から、編集部がチョイスした3つのキャンペーンをご紹介します。
「イオンカード」で税金を支払うと400 WAON POINTプレゼント、など、おトクなキャンペーン情報をチェック!
期間中に「応募」のうえ、対象サイトの「地方税お支払いサイト」経由で、税金(合計10,000円以上)を、イオンマークの付いたカードでクレジット払いで支払うと、もれなく400 WAON POINTがプレゼントされます(「イオンJMBカード」は200マイル付与)。
実施中〜6月30日
https://www.aeon.co.jp/campaign/member/202304-01/
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実施中〜7月14日
https://www.saisoncard.co.jp/csmembers/amexoffers/cashback/
期間中に、「PayPay資産運用」からPayPay証券の口座を新規開設し、1,500円以上の有価証券を買い付けると、抽選で10人に30,000ポイント、1,000名に1,000ポイントのPayPayポイントがプレゼントされます。
実施中〜6月14日
https://www.paypay-sec.co.jp/campaign/asset/2305.html
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