めまぐるしく変化するキャッシュレス決済の動向を伝える本連載。今月のキャッシュレス関連のニュースの中から、マネー担当の編集部員やライターが気になったものをピックアップしてお伝えします。記事後半では、現在開催中のキャッシュレス決済関連キャンペーン情報も掲載していますので、こちらもぜひチェックを!
2023年8月のトップニュースは、 KDDIが9月1日から提供しているauの新料金プラン「auマネ活プラン」の話題について。スマートフォンの料金プランでありながら、系列の金融サービスを組み合わせて利用すると特典が上乗せされる“ポイント経済圏”的な特徴が強く、ユーザー囲い込みの新基軸として話題になっています。
このほか、「PayPay」が始めた、ネット接続がない環境でも決済できる「オフライン決済モード」の話題についてもご紹介します。
「auマネ活プラン」の公式サイトも“マネー色”の強いデザインになっています
このニュースのサマリー
○2023年9月から利用できるauの新料金プラン「マネ活プラン」が話題に
○auの金融サービスと組み合わせるとポイント獲得が有利になる数々の特典が特徴
○“ポイント経済圏”的な内容で、ユーザー囲い込みの新機軸として注目
2023年8月23日、KDDIは、auのスマホ向け新料金プラン「auマネ活プラン」を9月1日から提供すると発表しました。サービス名に“マネ活”とあるとおり、auが提供する金融サービスとセットで利用することで、ユーザーにポイント獲得のメリットがある内容となっています。
KDDIによると、通信の料金プランに系列の金融サービスをセットにした特典を付けるのは、国内携帯業界で初の取り組みとのこと。昨今の“ポイント経済圏”人気の高まりを受けての施策と見られます。
「auマネ活プラン」の特典の数々(画像はauのプレスリリースより)
「auマネ活プラン」の月額料金は7,238円。データ容量は使い放題で(※1)、通話料は別途かかります。月額料金の7,238円は、同じくauの通信料金プランである「使い放題MAX」と同じ額です。ちなみに、「使い放題MAX」は各種割引が適用されると月額4,928円まで安くなります。「auマネ活プラン」にも同様の割引がありますが、どちらかと言うと、割引よりも、ポイント還元でユーザーにメリットを提供するところに特色があります。
まず「auマネ活プラン」の月額料金の割引についてですが、自宅のインターネットサービスなどへの加入によって月額1,100円割引きとなる「auスマートバリュー」(※2)が適用されると、月額6,138円で利用できます。また、「auマネ活プラン」に加入し、かつ、auの金融サービスの利用状況が条件に合致すると(下記ボックス参照)、所定の「au PAY残高」が毎月還元されます。
「auマネ活プラン」に加入し、下記の条件に合致すると「au PAY残高」が毎月もらえる
・公式クレカ「au PAYカード」(「au PAYゴールドカード」、家族カード)の会員……300円相当
・「auじぶん銀行」の口座を保有……300円相当
・通信料金を「au PAYカード」もしくは「auじぶん銀行」で支払い設定……200円相当
仮にすべての条件に合致している場合は、合計で800円相当の「au PAY残高」が毎月還元されるので、「auスマートバリュー」の割引きと合わせると実質的な月額料金を5,338円まで下げることも可能です。
※1 テザリングなどは合計30GBまで。混雑時などは通信制御が行われる場合あり。
※2 別途インターネットサービスの利用料金が発生。
「auマネ活プラン」には、これに加えて「5つのポイ活特典」があります。もちろん、すべて「au系列の金融サービスを併用すること」が条件にはなりますが、「通信料金をゴールドカードで支払うと20%還元」「スマホ決済のポイント還元率が通常時の2倍」「普通預金の金利が最大300倍」など、なかなかおトクな内容になっています。順に見ていきましょう。
「auマネ活プラン」の「5つのポイ活特典」(画像はauのプレスリリースより)
au公式クレカの「au PAYカード」の上位カード「au PAYゴールドカード」(年会費11,000円)をau携帯の利用料金の支払いに利用すると、通常は最大で10%のポイント(「Pontaポイント」)還元が受けられます。「auマネ活プラン」に加入すると、12か月間限定にはなりますが、このポイント還元率が「最大20%」と2倍に上がります。
auのスマホ決済「au PAY」のポイント還元率は、通常0.5%です。しかし、「auマネ活プラン」に加入している場合は、この還元率が2倍の1%になります。これにともなって、「au PAYゴールドカード」から「au PAY」に残高をチャージして決済する際のポイント還元率は、合計で最大2%になります。
通常時
・「au PAYゴールドカード」から「au PAY」にチャージ……1%還元
・「au PAY」で決済……0.5%
合計最大1.5%
「auマネ活プラン」に加入すると
・「au PAYゴールドカード」から「au PAY」にチャージ……1%還元
・「au PAY」で決済……1%
合計最大2%
前出の「au PAYゴールドカード」ですが、通常、決済時のポイント還元率は1%です。しかし、「auマネ活プラン」に加入している場合、「auマネ活プラン特典 +0.5%」が加わり、ポイント還元率は1.5%になります。
「auマネ活プラン」では、「auじぶん銀行」の普通預金の金利も上がります。「auじぶん銀行」の普通預金の金利は、通常年0.001%ですが、これに、「auカブコム証券」「au PAYカード」「au PAY」の利用を組み合わせると、普通預金の金利が合計で最大0.2%になる「auまとめて金利優遇」という制度がこれまでも存在していました。
ここに、今回の「auマネ活プラン」の特典が加わり、「auマネ活プラン」として年0.05%、「au PAYゴールドカードの引き落とし口座に指定」で年0.05%がそれぞれ上乗せされ、合計で最大年0.1%金利が加算されます。つまり、既存の特典と合計で最大0.3%となり、通常時の金利の300倍まで目指せるようになります。
「auカブコム証券」では、「au PAYカード」を用いた投資信託の積立買付、通称「クレカ積立」に対応しており、通常、積立金額の1%のポイントが付与されます。「auマネ活プラン」に加入すると、ここに0.5 %の還元率が上乗せされて1.5%になります。
さらに、使うクレカを「au PAYゴールドカード」とし、同証券の「NISA口座」を開設すると、12か月間限定で1.5%の還元率が上乗せされ、合計で最大3%還元となります(13か月目以降は0.5%還元が上乗せ。合計最大2%になります)。
ここまで見てきたとおり、「auマネ活プラン」は、「スマホ決済」「クレカ積立」など、昨今のマネートレンドを強く意識した通信料金プランと言えます。また、そのおトク具合も、なかなかの水準と言えるでしょう。
いっぽう、ユーザー側がそのメリットを十分に享受するためには、通信、クレカ、証券、銀行と、「au経済圏」を“使い倒す”ぐらいの覚悟が必要になりそうです。特に大きいのが「au PAYゴールドカード」の存在で、「auマネ活プラン」の特典のすべてに、なんらかの形で関係しています。その意味で、「auマネ活プラン」の料金に加えて、同カードの年会費11,000円も、同プランを活用するための必要経費的な存在と言えます。このように、「auマネ活プラン」にはそれなりのランニングコストがかかってきますので、中途半端な使い方では経費倒れしてしまう可能性が高いかもしれません。
また、ひとつのポイント経済圏に大きく依存することには、大きなメリットが期待できるいっぽうで、「ルール変更」や「サービス停止」などのリスクもともないます。これらを、ユーザー側がどう評価するか? 「auマネ活プラン」は、今後の携帯業界の通信料金プランの在り方にも影響を与えそうな、興味深い試みになりそうです。
「auマネ活プラン」の公式サイトには、各特典でどれくらいおトクになるかがわかるシミュレ―ター機能が実装されています。利用前にいろいろと試算するのがおすすめです(画像はau公式サイトより)
このニュースのサマリー
○「PayPay」がネット環境のない状態でも決済できる「オフライン支払いモード」機能を搭載
○地下やイベント時などネット接続が不安定な環境で力を発揮しそう
○現状は、店舗側のネット接続が必須などの課題も
登録者が5,800万人(2023年6月時点)を超え、2位の「d払い」(5,199万人:2023年3月時点)を大きく引き離し、国内スマホ決済のトップランナーとして君臨する「PayPay」が、2023年7月20日から「オフライン支払いモード」機能を搭載しました。
これは、インターネット回線が使用できない時(スマホのオフライン時)でも決済できる機能です。地下や多くの人が集まるイベント会場など、通信が不安定な時に利用されることを想定して開発されたとのこと。「PayPay」によると、国内の主要スマホ決済サービスとしては初の試みで、複数の特許を出願中とのことです。
「オフライン支払いモード」には、「PayPay」の決済画面に「インターネットに接続できません」との表示が出ます
「オフライン支払いモード」の利用手順はシンプルです。スマホがネットにつながっていない状況で「PayPay」を立ち上げると、自動的に「オフライン支払いモード」が適用されます。その際に、アプリ上に表示されるコード決済画面を店舗側が読み取ることで、支払いが完了します。
ただし、「オフライン支払いモード」を利用するにはいくつか条件があります。たとえば、「PayPay」には、ユーザーが表示した決済画面を加盟店が読み取る「ストアスキャン方式」と、ユーザーが店舗に設置されたコードを読み取り、支払金額を手入力して支払う「ユーザースキャン方式」がありますが、「オフライン支払いモード」が利用できるのは、前者の「ストアスキャン方式」のみです。当然、店舗の決済端末側はオンラインの状態である必要があります。
また、決済金額や回数にも上限が設けられています。1回の決済は最大5,000円までで(残高払いの場合はユーザーが保有するPayPay残高内が上限)、決済回数も1日あたり2回までに制限されています。決済時に流れるおなじみの「PayPay♪」の決済音も、「オフライン支払いモード」で支払った時には流れず、決済後、オンライン状態になったところで、プッシュ通知や決済履歴などで決済状況を確認する形となります。
実際に、筆者も「オフライン支払いモード」を使ってコンビニで買い物をしてみました。まず、インターネットが遮断されるスマホの「機内モード」にしたうえで「PayPay」を立ち上げます。すると、本ニュース冒頭に掲載した画像のように、「インターネットに接続できません」とのメッセージや、「5,000円までのバーコード支払いができます」とのメッセージが表示されます。
この状態で、表示されたバーコードを店舗スタッフに読み取ってもらいましたが、決済音が出ないまま支払いは終了。画面が切り替わることもないので、支払えているか少し不安でしたが、店舗スタッフに確認すると「支払えている」とのこと。店舗を出てネットに接続して支払履歴を確認すると、確かに支払えていたようです(下画面)。
8月31日のローソンでの買い物が、今回筆者が「オフライン支払いモード」で支払ったもの。表示内容は普通に「PayPay」で買い物した時と同じようです(上画面)。(汚くて恐縮ですが)その時のレシートも確認。特に「オフライン支払いモード」で支払った旨の記載はありませんでした(下画面)
「PayPay」の「オフライン支払いモード」は思った以上に使いやすく、金額や回数、ストアスキャン方式の店舗のみといった制限はあるものの、重宝される存在になっていくように感じます。個人的にも、大型イベントの混雑時に「PayPay」がうまく作動せずに決済ができなかった経験があるので、非常に助かりそうです。
いっぽうで、「オフライン支払いモード」はイベント時などで使うことを想定したもので、現時点では、大規模災害時などで店舗側の回線が途切れた際は使うことはできません。近年はゲリラ豪雨や台風による被害が激甚化し、大規模地震のリスクも危惧されています。防災意識が高まる中、今後は「バーコードスキャン方式」への対応など、さらなる進化に期待したいところです。
最後に、現在実施されているキャッシュレス関連のキャンペーンの中から、編集部がチョイスした3つのキャンペーンをご紹介します。
最後に、現在実施されているキャッシュレス関連のキャンペーンの中から、編集部がチョイスした3つのキャンペーンをご紹介します。
みずほ銀行が提供するスマホ決済サービス「J-Coin Pay」。連携する金融機関(全国の地方銀行や信用組合など)の預金口座を持っている人は、個人間の送金や店舗での決済、預金口座との入出金といったサービスが利用できます。また、コンビニやスーパー、ドラッグストア、百貨店などの加盟店の決済に使うと0.5%分の「J-Coinボーナス」が還元され、貯まったボーナスは加盟店での支払いに充てられます。
現在「J-Coin Pay」では、2023年11月14日まで、ローソンで利用すると支払金額の20%分の「J-Coinボーナス(ローソン限定)」を還元するキャンペーンを実施中です。ローソンに加えて、ナチュラルローソン、ローソンストア100も対象に含まれます。同ボーナスはこれら店舗での支払いのみに使える限定ポイントで、送金や口座に戻すことはできません。有効期限は付与された月から2か月後の月末となります。
これに合わせて、このキャンペーン期間中に新規で「J-Coin Pay」ユーザーになると、476円分(ローソンの「からあげクン」2個相当額)の「J-Coinボーナス(ローソン限定)」が付与される特典もあります。
実施期間:開催中〜2023年11月14日
https://j-coin.jp/user/campaign/lawsoncp/index.html
ヤマダデンキの「ヤマダデジタル会員アプリ」で利用できる銀行機能「ヤマダNEOBANK」。口座を開設すると振込や預金などさまざまな銀行・金融サービスを利用でき、対象サービスの利用状況に応じてヤマダポイントも貯まります。同行では2023年9月24日まで、「2023 Summer BIGドリームキャンペーン」として、下記4つの特典を受けられます。
特典1:「ヤマダPay」の利用で最大20%ポイント還元
期間中にヤマダデンキで「ヤマダPay」(同アプリに搭載されている決済機能)で支払うと、利用額の最大20%相当の「ヤマダポイント」が還元されます。上限は5,000ポイントまでで、「ヤマダNEOBANK」の口座以外からの支払いは対象外です。
特典2:「ヤマダNEOBANKデビット」の利用で5%ポイント還元
期間中にヤマダデンキ店舗、コンビニ、スーパーなどで「ヤマダデンキNEOBANKデビット」を利用すると、利用額の5%のポイントが還元されます。上限は2,000ポイントまでです。
特典3:新規口座開設&「ヤマダPay」の登録で500ポイント進呈
期間中に「ヤマダNEOBANK」に新規で口座を開設のうえ、「ヤマダPay」を登録すると500ポイントを受け取れます。
特典4:円普通預金残高に応じて最大800ポイント進呈
2023年9月末時点の円普通預金残高が50万円以上の場合、最大800ポイントがプレゼントされます。50万円以上〜100万円未満で50ポイント、100万円以上〜300万円未満で100ポイント、300万円以上〜500万円未満で250ポイント、500万円以上〜1,000万円未満で400ポイント、1,000万円以上で800ポイントです。
実施期間:開催中〜2023年9月24日
https://www.yamada-denki.jp/service/neobank/campaign/cp202308/
2023年4月にスタートした、 JR西日本グループの共通ポイント「WESTERポイント」。同グループの鉄道、店舗・施設やECサイトなどの利用のほか、「ICOCA」や「J-WESTカード」での支払いなどで付与されます。現在、西日本ジェイアールバスおよび中国ジェイアールバスの「WESTERポイント」導入を記念して、対象の窓口で対象乗車券を購入した人に、「WESTERポイント」を通常時の5倍(110円につき5P)付与するキャンペーンが実施されています。また、期間中に1,500円以上購入した人を対象に、抽選で10名に3万ポイントがプレゼントされます。
実施期間:開始中〜10月31日
https://wester.jr-odekake.net/campaign/detail/012024080801
投資・資産運用・保険・クレジットカード・ローン・節約に至るまで、マネーに関する情報を毎日収集。「知らないで損するなんてもったいない」をモットーに、読者のためになる記事を制作します!