新製品レポート
最新のVegaアーキテクチャーGPUを組み込んだ4コア/8スレッドAPU

AMDからZenアーキテクチャーを採用したAPU版Ryzenがついに登場!

AMDは2017年10月26日、“Raven Ridge(レイヴンリッジ)”の開発コードで呼ばれていたモバイル向け最新APU「Ryzen Processor With Radeon Vega Graphics」を発表した。

Ryzen Processor With Radeon Vega Graphics

Ryzen Processor With Radeon Vega Graphics

Raven Ridgeは、ZenアーキテクチャーのCPUと、VegaアーキテクチャーのGPUを組み合わせたモバイル向けAPUで、超薄型ノートPC向けの最速プロセッサーを目指して開発が進められていたもの。「Ryzen Mobile」という仮称で2017年下半期に投入されることが予告されていたが、ついに正式発表となった。

今回の発表で明らかになったラインアップは、「Ryzen 7 2700U + Radeon Vega 10 Graphics」(以下、Ryzen 7 2700U)と「Ryzen 5 2500U+ Radeon Vega 8 Graphics」(以下、Ryzen 5 2500U)の2モデル。いずれも、4コア8スレッド対応で、TDPは15Wとなっている。CPUの動作クロックは、Ryzen 7 2700Uが定格2.2GHz、ブースト最大3.8GHz、Ryzen 5 2500Uが定格2.0GHz、ブースト最大3.6GHz。対応メモリーは、デュアルチャンネルのDDR4-2400MHzとなっている。

Ryzen Processor With Radeon Vega Graphicsのダイ

Ryzen Processor With Radeon Vega Graphicsのダイ

モデルナンバー末尾に付く“Radeon Vega○○”の○○は、Compute Unitの数を示す。このあたりのルールは、同じVegaアーキテクチャーを採用するハイエンド向けGPU「Radeon RX Vega 64」や「Radeon RX Vega 56」と同じだ。Compute Unitあたりのシェーダープロセッサー数は64基なので、Ryzen 7 2700Uは640基、Ryzen 5 2500Uは512基のシェーダープロセッサーを内包していることになる。

Ryzen Processor With Radeon Vega Graphicsのロゴは、Ryzen のロゴとRadeon Vegaのロゴを組み合わせたものとなっている

Ryzenシリーズ第2世代モデルの機能を先取り。電力最適化の新機能も!

今回発表された2モデルは、Ryzenシリーズとして初めて2000番台のモデルナンバーが採用され、Ryzenシリーズの第2世代モデルの機能が取り込まれた。

それが、「SenseMI Technology」に内包されている「Precision Boost」の最新版「Precision Boost 2」だ。Precision Boostは、負荷がかかっているCPUコアが2個以下の場合という制限が設けられており、この制限をクリアしている範囲では電圧やクロック数が増加するが、条件を超えると電圧やクロック数の増加がとたんになくなるという挙動だった。今回搭載されたPrecision Boost 2は、CPUコア(スレッド数)による制限が撤廃され、代わりに発熱量や消費電流、外部環境などの条件によって電圧やクロック数が増加するようになったのが、これまでのPrecision Boostとの大きな違いとなっている。

Precision Boost 2の解説図。従来のPrecision Boostは、CPUコア(スレッド数)による制限を超えると、クロック数がガクンと落ちていたが、Precision Boost 2では、スレッド数の制限が撤廃され、スレッド数が増加しても効くようになっている

Precision Boost 2の実際の挙動をまとめた図がこちら。スレッド数の増加に応じて、ブースト時のクロック数が徐々に低くなっていくことがわかる

また、「SenseMI Technology」を構成する機能のひとつである「XFR」も、モバイル向けの「Mobile XFR(mXFR)」という機能として新たに定義された。デスクトップ向けRyzenシリーズのXFRは、TDPに余裕がある際に、設定されているブースト最大クロックからさらにクロック数を上積みするという機能だったが、Mobile XFRでは、ブースト最大クロックを上積みするのではなく、より長い時間ブーストされるように挙動が大きく変わっているという。なお、外気温や本体の冷却装置などの条件によってブーストされる時間は異なるため、Mobile XFRの閾値についてはOEMに決定権があるということだ。

Cinebenchを使ったテストでは、Mobile XFRを無効化した状態に比べ、Mobile XFR有効時は最大23%ほどスコアが向上したという

このほか、電力供給ラインを1本化し、CPU/GPUそれぞれに最適な電力を供給することで電力効率を高める「Synergistic Power Rail Sharing」や、CPUの各コアとGPUをそれぞれ独立した形で周波数や電圧をダイナミックに制御する「Per-core Frequency and Voltage」といった新機能を多数搭載し、モバイルプロセッサーにとってキモになってくる電力最適化についても強化されている。

Synergistic Power Rail Sharingの解説図。電力供給ラインを1本化することで、電力効率の改善だけでなく、電力供給ラインに必要なスペースを小さくし、コストダウンにもメリットがあるという

Synergistic Power Rail Sharingの導入により、第7世代APU“Bristol Ridge”に比べて、トータルの電流を最大36%改善したという

Per-core Frequency and Voltageでは、超高速周期で各コアの稼働状況をモニタリングし、あらかじめ設定されている条件に照らし合わせ、周波数や電圧をダイナミックに制御

Ryzen Processor With Radeon Vega Graphics搭載プラットフォームで「3DMark」を実行した際の各コアの動作クロック状況をまとめたものがこちら。Per-core Frequency and Voltageにより、GPUコアに負荷のかかるGPUテストの時は、GPUコアのクロック数を積極的に、CPUコアに負荷のかかるPhysicsテストの時は、CPUコアのクロック数を積極的に上げていることがわかる

マルチスレッド性能はインテルCPU超え! 搭載製品は数週間以内に登場予定

AMDはRyzen Processor With Radeon Vega Graphicsの開発にあたり、当初、第7世代APU“Bristol Ridge”から、CPUパフォーマンス50%アップ、GPUパフォーマンス40%アップ、消費電力50%ダウンを目標に設定していたのだという。しかし、ここまで紹介してきたさまざまな機能を新たに実装することで、Ryzen Processor With Radeon Vega Graphicsの上位モデルのRyzen 7 2700Uでは、CPUパフォーマンス最大200%アップ、GPUパフォーマンス最大128%アップ、消費電力最大58%ダウンを実現できたという。

Ryzen Processor With Radeon Vega Graphicsの開発当初に想定していた性能の達成目標

Ryzen Processor With Radeon Vega Graphicsの開発当初に想定していた性能の達成目標

Ryzen Processor With Radeon Vega Graphicsは、最終的に当初の想定を大幅に上回るパフォーマンスを実現できたという

このような事実を裏付けるためか、AMDは上位モデルのRyzen 7 2700Uと、ライバルのインテルが手がける最新世代のモバイルCPU「Core i7 8550U」、そして1世代前のインテルモバイルCPU「Core i7 7500U」で、「Cinebench」のスコアを比較したデータも公開している。それによると、シングルスレッド性能ではインテルCPUにわずかに及ばないものの、マルチスレッド性能では、インテルCPUを凌駕する性能を達成していた。

シングルスレッド性能はインテルCPUに若干負けているものの、マルチスレッド性能はインテルCPUを凌駕するものになったという

また、「Cinebench」のほかに、「POVRay 3.7」、「PCMark10」「TrueCrypt 7.1a」「PassMark 9」といった各種ベンチマークプログラムの結果をまとめたデータも披露。こちらはスコアではなく、第7世代APU「FX-9800P」を100%としたときの割合で示されているが、いずれも、インテルの最新モバイルCPUとかなりいい勝負できる結果となっていた。あくまでもAMDが示した数字ではあるが、CPUとしての性能はこれまでのAPUから、かなり引き上げられているとみて間違いないだろう。

「Cinebench」以外のベンチマークプログラムでも、ライバルのインテルCPUと互角の戦いに。AMDがこれまで手がけてきたAPUと比べると、かなり優秀なことが見て取れる

また、APUということで、統合GPUの性能も見逃せないポイントだが、こちらについても、AMDは「3DMark」のスコアを公開している。もともとAMDのAPUはグラフィック性能の高さがウリで、ある程度の性能は予測できていたが、こちらも非常に優秀なスコアとなっていた。インテルの最新CPUであるCore i7 8550Uの統合GPUを突き放すスコアであることは当然のことながら、NVIDIAのモバイル向けディスクリートGPU「GeForce 950M」とCore i7 8550Uを組み合わせたプラットフォームに対してもスコアで競り勝っているという。

「GeForce GTX 950M」は最新世代のディスクリートGPUではないものの、統合GPUでディスクリートGPUレベルの3Dパフォーマンスを実現できているという点は非常に評価できる部分ではないだろうか

ゲーミングパフォーマンスについては、実際のタイトルをプレイした際の平均フレームレートが示された。タイトルによって画面解像度やグラフィック設定が多少異なるものの、統合GPUとしてはなかなか健闘しているといえるだろう。

統合GPUで実際のゲームをプレイしたときの平均フレームレート。ゲームの設定次第ではあるが、モバイルノートPCでもゲームをそれなりに楽しめそうだ

ここまで示された各種データを見る限り、CPU性能/GPU性能ともにかなり期待できそうだが、ユーザーとしてもっとも気になるのが、搭載製品の動向だろう。今回の発表のタイミングでは、HPから「ENVY X360」、レノボから「IDEAPAD 720S」、エイサーから「SWIFT 3」が登場予定であることが明らかにされたが、残念なことに、現時点では日本での投入は現時点では未定だという。

HP「ENVY X360」

HP「ENVY X360」

レノボ「IDEAPAD 720S」

レノボ「IDEAPAD 720S」

エイサー「SWIFT 3」

エイサー「SWIFT 3」

ただ、今回明らかとなった3製品以外にも、各ベンダーと協力して多数の製品開発を進めているということなので、今後搭載製品が登場する可能性は非常に高い。今後の展開に要注目だ。

遠山俊介(編集部)

遠山俊介(編集部)

PC・家電・カメラからゲーム・ホビー・サービスまで、興味のあることは自分自身で徹底的に調べないと気がすまないオタク系男子です。最近はもっぱらカスタムIEMに散財してます。

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