これから3〜4月にかけての新生活シーズンは、スマートフォンにとっても一大商戦期である。数年前までであれば、各通信キャリア、各携帯電話メーカーとも、この時期に最新モデルを投入して、商戦を大いに盛り上げたものだが、今ではそのような状況はほとんど見られない。ほとんどの通信キャリアは、年末から年始にかけて「冬春モデル」という形で、新モデルを投入し、あえて春先に限定して発売するモデルというのは少数にとどまる。しかも、春先に投入されるモデルはそのほとんどが、学生向け、あるいは従来のガラケーからの乗り換えユーザーをターゲットにした、低価格スマートフォンだ。となれば、端末的な目新しさや魅力というのは、どうしてもこの時期希薄にならざるを得ない。
図1:「スマートフォン」カテゴリーアクセス推移(過去2年)
価格.comの「スマートフォン」カテゴリーでもこの傾向は顕著だ。図1は、「価格.comトレンドサーチ」で見た、過去2年間における「スマートフォン」カテゴリーのアクセス推移を示したものだが、最近では、スマートフォン市場が盛り上がるのはもっぱら夏〜秋の季節で、春先の盛り上がりを大きく超えている。2016年〜2017年にかけてのシーズンは、まさにその傾向が顕著に表れていた。しかし、今年に関しては、年明け以降も比較的好調なアクセス推移を見せており、昨年末からの勢いがそのまま持続しているような形だ。アクセスの総数自体はほぼ横ばいながらも、今春のスマホ商戦に関して言えば、昨年よりはむしろ関心は高まっていると言ってよさそうだ。
図2:「スマートフォン」カテゴリーにおける主要メーカー別アクセス推移(過去2年)
図2は、同期間における「スマートフォン」カテゴリーにおける主要メーカー別のアクセス推移を示したもの。全体的には、上位5メーカーの顔ぶれに変化はなく、ほぼ横ばい状態が続くが、大きく見ると、首位のソニーが徐々にアクセスを下げてきているのに対し、かつて3〜5位くらいにいたファーウェイ(HUAWEI)が、順調にアクセスを上げてきており、今やソニーと同レベルの首位争いを繰り広げるまでになったことがわかる。このほかでは、シャープがやや復調気味。アップルは新モデル発売時の注目度こそ高いが、勢いが持続せず、現状ではシャープと3位争いを繰り広げている状況だ。
図3:スマートフォン人気5製品のアクセス推移(過去3か月)
図3は、2018年2月28日時点での人気ランキング上位5製品の、過去3か月におけるアクセス推移を示したもの。5製品中4製品は、昨年末からずっと人気を維持しているモデルで、顔ぶれにほとんど変化はなく、アクセス推移もほぼ横ばいだが、この中で唯一、年明け2月以降に急激に人気となってきたモデルがある。それが、ファーウェイの「nova lite 2」だ。2月9日の発売日以降、急激にアクセスを高め、現時点での人気ランキングは、同社の「P10 lite」に次ぐ2位。この春の新モデルの中では、ダントツの注目株となっている。本モデルが、この春のスマホ商戦を盛り上げている大きな要因になっていることは明らかだろう。
なお、人気上位5モデルの中で、通信キャリア版モデルなのは、3位のソニー「Xpria XZ Premmium SO-04J」(ドコモ)のみ。後はすべてSIMフリーモデルで占められている。SIMフリーモデルの人気は相変わらず強く、なかでもファーウェイ、ASUSの2メーカーの人気は高いが、ここ最近では国内勢でも、5位の「AQUOS sense lite SH-M05」を販売するシャープのように、SIMフリーモデルが人気となるケースが増えてきている(図4)。
ちなみに、アップル「iPhone」シリーズの人気はかなり低迷しており、もっともランキング順位が高いのは、18位の「iPhone X 256GB」(SIMフリー版)と、あまりふるわない状況が続いている。
図4:「スマートフォン」カテゴリーの人気ランキングベスト5製品(2018年2月28日時点)
ファーウェイ「nova lite 2」
このように、この春のスマホ商戦ではもっとも人気のファーウェイ「nova lite 2」であるが、本機の概要を紹介しておこう。液晶画面は、縦長の5.65インチ。最近、サムスン「Galaxy S8」や、アップル「iPhone X」など、上級モデルでの採用が進んでいる、アスペクト比18:9の縦長ディスプレイで、解像度は一般的なフルHDを超える2160×1080を確保している。CPUは、ファーウェイ製のオクタコアプロセッサー「Kirin 659」(2.36GHz×4+1.7GHz×4)を採用。高速コアと省電力コアを4基ずつ組み合わせ、パフォーマンスと低消費電力を両立させている。メモリーは3GBで、ストレージは32GBを搭載。microSDカードは最大256GBまで対応する。バッテリー容量は3000mAhだ。
なお、本機の大きな特徴となっているのが、カメラ機能だ。こちらも、最近上級モデルでの採用が進んでいる「ダブルレンズカメラ」を搭載。ファーウェイは、上級モデルの「MATE10」シリーズや「P10」シリーズに、この「ダブルレンズカメラ」を採用しているが、同社のラインアップではボトムを担う「nova」シリーズにも、この最先端カメラを搭載してきたというのは驚きだ。背面のメインカメラは、片方のレンズが1300万画素のカメラとして動作し、もう片方が200万画素の被写界深度を計測するセンサーとして動作する。この2つのカメラでとらえた映像情報を、内部のプロセッサー巧みに合成することで、奥行き感のある上質な写真が撮影できるのが強みだ。
このほか、ファーウェイ製品ではおなじみの指紋認証センサーも搭載される。なお、nano SIMカードスロットは2基装備するが、DSDSには非対応となる。
このように、主要なスペックだけを見ても、本機はエントリーモデルというより、ミドルレンジモデル以上といった雰囲気が濃厚に漂っている。通常であれば、3〜4万円程度で販売される製品スペックという感じがするが、「nova lite 2」の価格は、そのレベルからさらに数段安い。本機は基本的にMVNO各メーカーに供給される形で販売されるが、BIGLOBEでは25,920円、楽天モバイルではキャンペーン価格ながらも21,600円(いずれも税込)という端末価格で販売されている。いずれの場合も、税別で2万円台前半という驚くべきプライスを実現しており、コストパフォーマンスの高さは、現在販売されているSIMフリースマートフォンの中でも随一と言っていい。
図5:ファーウェイ「nova lite 2」のユーザーレビュー評価(2018年2月28日時点)
そんなわけで、ファーウェイ「nova lite 2」の人気は高く、利用したユーザーからの評価もおおむね高い。2018年2月28日時点の、本機の総合満足度は4.47で、現在の人気ランキングベスト5製品の中ではもっとも高い(図5)。そのうちわけを見ても(図5)、多くの項目で平均を超える高評価を得ており、特に、「携帯性」(4.69)、「ボタン操作」(4.36)、「画面表示」(4.55)、「バッテリー」(4.06)などの項目で比較的高めの評価となっている。
ユーザーの評価コメントで特に目立つのが、5.65インチの縦長大画面と、それにも関わらず持ちやすいという携帯性だ。
5.65インチモデルですが、縦長ディスプレイを搭載していることもあって思ったよりもコンパクトで使いやすいです。本体の重さを測ってみたところ150gを切っていていい感じです。
画面が大きい割に筐体はコンパクトです。nova lite等と比較して縦がやや長くなり、横幅が気持ち短くなっています。重量は143gと、この画面サイズの機種の中でも郡を抜いて軽いです。
18:9(2:1)の画面は持ちやすさと大画面のバランスが良く、特に映画を閲覧する時の満足感は高いです。当然横向きで片手で持てます。そして軽い! 同じ体勢を強いられるラッシュアワー・・これがもうホント楽!嬉しいです。
以上のように、最近高級モデルで採用が進んでいる縦長大画面のメリットと、その割に横幅が短く、重量も軽いという点が、本機の大きな魅力と言えそうだ。
なお、もうひとつの特徴である「ダブルレンズカメラ」に関しては、下記コメントのようにあまり期待しすぎないほうがいいようだが、それでも同クラスのスマートフォンのカメラ機能と比べたときにはある程度の優位性はありそうだ。
カメラの性能に関しては、ハイエンドのスマホに比べると暗所は弱いですし拡大したときの粗さも目立ちますが、簡易的なボケ味が出せる事、人や料理等の色見がカジュアルなイメージで撮影できるのでSNSで使用する分には相性が良いです。
また、レスポンスの部分については、一般的な利用では問題ないレベルということだが、ゲームのプレイにはやや非力という声もあった。なお、人気の「ポケモンGO」はうまく動作しないという報告もある。しかしながら、これだけの高機能と性能を搭載して、2万円台半ばくらいという販売価格は、もはや驚きのコストパフォーマンスとしか言いようがない。
MVNO向けモデルとはいえ、縦長ディスプレイ、デュアルレンズカメラを搭載していて、十分なスペックでおよそ2.5万円はかなりコスパが高いです。他メーカーの同じような価格帯のモデルとはレベルが一段上と感じています。
時代のトレンドである18:9の超ワイド大画面ディスプレイやボケ味を生むダブルレンズカメラとAndroid8.0を搭載ながら143gの軽量でバッテリー持ちの良いスマホが2万円半ばで購入できます。コスパ最強かと思います。
この春、低価格で性能もいいSIMフリースマートフォンをと考えているなら、本機は真っ先に選択肢にあげるべき製品と言えるだろう。
価格.comの編集統括を務める総編集長。パソコン、家電、業界動向など、全般に詳しい。人呼んで「価格.comのご意見番」。自称「イタリア人」。