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au網、ソフトバンク網で違ったデメリットがある

ドコモ網以外の「格安SIM」を選ぶメリットは?

880社を超える仮想移動体通信事業者(MVNO)の「格安SIM」は、NTTドコモのネットワーク(ドコモ網)を使うものが大多数を占めている。だが最近は、auやソフトバンクのネットワークに相乗りする格安SIMも増えてきた。格安SIMのネットワークが違うとどのような影響があるのか、ドコモ網以外の格安SIMを選ぶメリットとデメリットは何かを探ってみよう。

ドコモ以外の中古スマホでは選択肢が限られていた

ご存知のように、スマートフォン(スマホ)は電波を介してネットワークに接続する情報通信機器だ。全国各地に設置されている基地局と電波で結ばれることで、屋内外を問わず音声通話やデータ通信が利用できる。

大手携帯キャリアが通信サービスに利用する電波は、総務省によってそれぞれ異なる周波数帯(「バンド」とも呼ばれる)が割り当てられている。格安SIMを提供するMVNOは自前の基地局を持たないが、大手携帯キャリアのネットワークに相乗りしているため、周波数帯も相乗り先のキャリアに左右される。

キャリアごとに周波数帯が違うと、格安SIMのユーザーにとってはどのような影響があるのだろうか。一例として、auが販売したスマホを格安SIMで使う場合を考えてみよう。

アップルの「iPhone」シリーズのように、もともと対応する周波数帯が幅広いスマホでは、端末を販売したキャリアでしか使えないようにする「SIMロック」を解除することで、異なる周波数帯を使う他キャリアのネットワークでも利用できるようになる。

しかし、大手携帯キャリアが取り扱うスマホの多くは、そのキャリアが使う周波数帯にしか対応していない。auのスマホなら、auの周波数帯にしか対応しないものが多いのだ。

以下は、auのWebサイトにて公開されている機種別の対応周波数帯の一覧から一部を引用したものだ。iPhoneシリーズはauが使用していない周波数帯(グレーで示されている)にも広く対応しているが、auブランドモデルなどの機種はほとんど対応していないことがわかる。

auが機種ごとに公開している対応周波数帯の一覧(auのWebサイトより)。iPhoneやiPadはauが使っていない周波数帯にも広く対応している

いっぽう、auブランドモデルの「Qua phone」シリーズなどはauのネットワークに特化しているため、auで使われない周波数帯にはほとんど対応していない

こうした特定のキャリアに特化したスマホは、たとえSIMロックを解除したとしても、他社のネットワークでは2GHz帯などのごく一部の周波数帯でしか使用できない。いわゆる“プラチナバンド”と呼ばれる800MHz前後の周波数帯が使えないため、都市部の建物内でつながりにくかったり、地方では圏外になったりして、満足に使うことができないのだ。

そのため、仮にauブランドモデルのスマホを格安SIMと組み合わせるのであれば、auのネットワーク(以下「au網」、ドコモやソフトバンクのネットワークについても同様)に対応したサービスを選ばなければならない。

つまり、大手携帯キャリアにそれぞれ割り当てられている周波数帯が異なるために、格安SIMとスマホの組み合わせにも制約が生じるというわけだ。

なお、SIMロック解除が義務化された2015年5月よりも前に販売されたスマホは、そもそもSIMロックが解除できないので、やはり販売したキャリアのネットワークでしか使えない。

au網やソフトバンク網の格安SIMはどれ?

ここで問題となるのが、格安SIMで用いられているネットワークの比率だ。これまで多くのMVNOがドコモ網に相乗りしてサービスを提供しており、au網は「mineo」(ケイ・オプティコム)や「UQ mobile」(UQコミュニケーションズ)などのごくわずかな格安SIMでしか利用できなかった。ソフトバンク網は、2017年まで一般ユーザーが利用できる格安SIMがなく、選択肢そのものが存在しなかったのだ。

だが、最近ではドコモ網以外の格安SIMも増えてきた。au網やソフトバンク網が利用できる代表的な格安SIMを紹介しよう。

1.「mineo」(au網)

ケイ・オプティコムのmineoでは、au網に対応する「Aプラン」を提供している。通信容量は毎月500MBから30GBまでの7通りから選択可能だ。なお、データ通信専用SIMにはSMS機能が付属する。

同じくmineoが提供する、ドコモ網に対応した「Dプラン」の回線と繰り越した通信容量をシェアしたり、au網とドコモ網の間でネットワークを変更したりすることもできる。

mineo(Aプラン)の料金プラン

mineo(Aプラン)の料金プラン

2.「UQ mobile」(au網)

UQコミュニケーションズのUQ mobileは、auのサブブランドと呼ばれることもあるように、au網に対応する格安SIMだ。料金プランは通話料割引がセットになった「おしゃべりプラン」「ぴったりプラン」が主力で、通信容量は毎月1GB/3GB/7GBの3通り。おしゃべりプランとぴったりプランは初めて契約してから2年間は通信容量が2倍になるのに加え、最初の1年間は月額料金が1,080円割り引かれるキャンペーンが適用される。

また、通話料割引が付かない「データ高速+音声プラン」「データ無制限+音声プラン」も選択可能。こちらはデータ通信専用SIM(SMS機能付き)を選べる。

UQ mobileの料金プラン

UQ mobileの料金プラン

3.「BIGLOBEモバイル」(au網)

ビッグローブの「BIGLOBEモバイル」では、au網に対応する「タイプA」を提供している。通信容量は毎月3GBから30GBまでの5通りで、音声通話SIMのみ毎月1GBのプランも選べる。なお、データ通信専用SIMにはSMS機能が付属する。

利用できるオプションはドコモ網の「タイプD」と共通で、「YouTube」や「Apple Music」といったエンタメ系アプリの利用時に通信容量を消費しない「エンタメフリー・オプション」も契約可能だ。

BIGLOBEモバイル(タイプA)の料金プラン

BIGLOBEモバイル(タイプA)の料金プラン

4.「b-mobile」(ソフトバンク網)

日本通信のb-mobileは、ソフトバンク網に対応した格安SIMを提供している。音声通話ができるiPhone向けの「b-mobile S 990ジャストフィットSIM」は毎月実際の通信量から月額料金が決まる段階制の料金プランとなっており、通信容量は1GBから上限の15GBまで1GBごとに変化する。5GBから15GBまでの範囲からユーザー自身が上限を決めることも可能で、契約時は10GBに設定されている。使いすぎを防ぎやすい料金プランだ。

また、データ通信専用の「b-mobile S 190PadSIM」も段階制の料金プランを採用。通信容量の上限は毎月10GBまでで、100MB未満しか通信しなければ205円しかかからない。

b-mobileの料金プラン

b-mobileの料金プラン

5.「QTモバイル」(au網・ソフトバンク網)

QTnetのQTモバイルでは、au網の「Aタイプ」とソフトバンク網の「Sタイプ」を提供している。QTモバイルはドコモ網に相乗りする「Dタイプ」も扱っており、1社で大手携帯キャリア3社のネットワークすべてに対応している。

通信容量は全タイプ共通で、毎月1GBから30GBまでの6通り。ソフトバンク網でも大容量の料金プランを選べるのが特徴だ。なお、Aタイプのデータ通信専用SIMには、SMS機能が付属する。

QTモバイルの料金プラン

QTモバイルの料金プラン

ドコモ網以外の格安SIMを選ぶメリットとデメリットは?

au網やソフトバンク網の格安SIMでは、ドコモ網に対応していないスマホでも格安SIMと組み合わせられることが最大のメリットとなる。

前述のように、大手携帯キャリアで販売されているスマホには取り扱うキャリアのネットワークに特化しているものがあり、SIMロックを解除しても他キャリアのネットワークでは満足に使えないことがある。

格安SIMは、ドコモ網に対応するものが非常に多い。au網やソフトバンク網に特化したスマホを使っていると、従来は格安SIMへ乗り換えるのにスマホの買い替えを伴うことが多かったのだ。

しかし、au網やソフトバンク網に対応する格安SIMが増えたことで、乗り換え時にスマホを買い換える手間とコストを省いたり、auだけが取り扱う京セラの「TORQUE」シリーズのような個性的なスマホを中古端末として購入したりしたときに、格安SIMと組み合わせやすくなった。

 auだけが取り扱っている京セラの「TORQUE」シリーズ。写真は「TORQUE G03」

auだけが取り扱っている京セラの「TORQUE」シリーズ。写真は「TORQUE G03」

ただ、以前よりも選択肢が増えてきたとはいえ、au網やソフトバンク網に対応する格安SIMはまだまだ数が少ない。必要な通信容量を備えた料金プランが存在しなかったり、希望するオプションサービスが提供されていなかったりするところがデメリットだ。

au網とソフトバンク網には、それぞれ固有のデメリットもある。au網の場合、2017年8月以前に発売されたスマホのうち「VoLTE」に対応する機種では、au網の格安SIMで使う場合でもSIMロックの解除が必要となる。解約後にSIMロックを解除できるのは90日以内なので、必ず解除しておきたい。

さらに、au網の格安SIMではiPhoneやiPadでテザリングが利用できない(一部のモデルを除く)。テザリングが必要な場合はSIMロックを解除したうえでドコモ網の格安SIMに乗り換えることも検討すべきだろう。

ソフトバンク網の格安SIMには、iPhoneとiPadでしか使えず、Androidスマホには対応していないというデメリットがある。ファーウェイやHTCといった海外メーカー製のAndroidスマホであれば、SIMロックを解除することでドコモ網でも利用できる。しかし、国内メーカー製のAndroidスマホは各キャリアのネットワークに特化しがちであるため、SIMロックを解除しても国内ではソフトバンク網でしか使えないのだ。

つまり、格安SIMで使えるソフトバンクの中古スマホは、iPhoneシリーズと、一部海外メーカー製でSIMロック解除済みの機種のみとなる。それ以外の機種を購入してもソフトバンク網の格安SIMでは使えないので注意したい。

松村武宏

松村武宏

信州佐久からモバイル情報を発信するフリーライターであり2児の父。気になった格安SIMは自分で契約せずにはいられません。上京した日のお昼ごはんは8割くらいカレーです。

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