レビュー
スマホで撮った動画をカラーグレーディングで別次元のクオリティに

動画制作の沼に足を踏み入れてみた! カラーグレーディングに挑戦 #前編

スマートフォンがひとつあれば動画の撮影、編集、シェアができる時代はとっくに始まっています。“6秒動画”でかつて一世を風靡したアプリ「Vine」や、10代を中心にユーザーが急増している「TikTok」などの例をあげるまでもなく、スマートフォンが普及した今、個人が動画を作って配信することは、これまでになく簡単かつ身近になっていると言えるでしょう。

いっぽうで、動画制作は突き詰めていけばトコトン奥が深く、スキルが要求される作業であるのも事実。撮影機材や編集ソフトウェアへのこだわり、編集技術の習得、テレビやステレオなど視聴環境のアップグレードなどにいくらでもお金と時間がかけられる、言わば“底なし沼”のような世界です。

今回は、その素敵な沼への入り口のひとつ、カラーグレーディングの世界に足を踏み入れてみることにしました。

動画のクオリティを一気に向上させるカラーグレーディングとは?

カラーグレーディングとは、撮影後に映像の色(カラー)を調整して画作りをすることです。ベーシックな作業としては、ホワイトバランスを整えたり、前後のカットで色味をあわせたりすることも該当しますが、一般的には制作者の意図に沿った色を生み出すための“作り込み”の作業を指す場合が多く、時には一定範囲の色を別の色に置き換えたり、昼間に撮影したカットをまるで夜のように見せたりするといった内容も含まれます。カラーグレーディングは、言ってみれば動画データが持つ色情報を自在に操り、“撮ったまま”とは別次元の映像を創り上げる作業であると言えるでしょう。

ちなみに、この作業はカラーコレクションと呼ばれることもありますが、こちらは“補正、修正”という意味が強いのに対して、カラーグレーディングと言う場合は“作り込み、グレードアップ”的な意味合いで使われることが多いです。

左がカラーグレーディング前で、右がカラーグレーディング後の映像

左がカラーグレーディング前で、右がカラーグレーディング後の映像

カラーグレーディングで動画はどれくらい変わるのか?

今回、筆者がiPhoneで撮影した映像を無料ソフトウェア「DaVinci Resolve 15」で編集し、カラーグレーディングに挑戦してみた結果がこちらです。

ビデオブロガー、YouTuberとして動画制作をバリバリこなしているものの、本格的なカラーグレーディングへの挑戦は今回が初。諸先輩方は、おっしゃりたいことが多々あると思いますが……そこはなにとぞ、おてやわらかに。

無加工の状態の動画とカラーグレーディング後の映像を交互に見比べたり、並べて比較した動画は以下の通りです。こちらを見ると、カラーグレーディングの効果がよりわかると思います。

カラーグレーディング入門に最適な編集ソフトウェア「DaVinci Resolve 15」

今回の記事の趣旨はカラーグレーディング入門です。そのため、機材やソフトウェアはできるだけ特殊な物や高価な物を避け、iPhone(iPhone 7 Plus)で撮影して、Blackmagic Design(ブラックマジック・デザイン)が提供する無料動画編集ソフト「DaVinci Resolve(ダヴィンチ・リゾルブ)15」で編集を行ないました。

なお、カラーグレーディングに詳しい人なら「iPhoneで撮影した8ビットデータなんて、グレーディングに不向き」と思われるでしょうし、それは実際にその通り。もちろん、この機材ではハイレベルなカラーグレーディングは到底できませんが、最初の一歩を踏み出すなら手軽なほうがよいと考えたうえでの選択です。

ちなみに、スマートフォンではない、カラーグレーディングを想定して作られた「とあるカメラ」を使用してカラーグレーディングに挑戦する記事も今後(秋くらい?)には公開予定なので、ご期待ください。

撮影編:アプリ「Filmic Pro」でLog撮影

今回撮影に使用したiPhoneアプリは「Filmic Pro」。標準のカメラアプリでは撮影できない“Log”と言われる形式で動画を撮れるのが特徴です。

「Filmic Pro」にはiOS版のほかに、Android版もある

「Filmic Pro」にはiOS版のほかに、Android版もある

通常、カメラやスマートフォンは、ストレージ容量の使用を抑えたり、処理負荷を低減したりするためにデータを圧縮します。データを圧縮するということは、人の目にはわかりづらい微妙な色のちがいや明暗の差の情報を間引いているのです。Log形式での撮影の場合は、この明暗の間引きが少ないため、白とびや黒つぶれが起こりづらくなっています。

Log形式で撮影した動画は、無加工の状態だと灰色がかったように見えるのが特徴

Log形式で撮影した動画は、無加工の状態だと灰色がかったように見えるのが特徴

カラーグレーディングをするためにLog撮影が必須というわけではありませんが、編集過程での画作りがしやすくなるというメリットがあります。

今回は全編「iPhone 7 Plus」と「Filmic Pro」のみで動画を撮影しました

今回は全編「iPhone 7 Plus」と「Filmic Pro」のみで動画を撮影しました

編集編:「DaVinci Resolve 15」でカラーグレーディング

撮影後の編集作業は、Blackmagic Designの編集ソフトウェア「DaVinci Resolve 15」で行いました。このソフトウェアのスゴイところは、無料版にもかかわらず、撮影済みカットの中から採用するものを選び、カットをつなぎ、トランジションを追加して、色味を作り込み書き出すといった、編集からカラーグレーディングまでの基本的な作業を制限なく使用できること。また、必要があればテロップを追加したり、効果音をつけたりすることもできます。まさに、手軽にカラーグレーディングを始めるには、ぴったりのソフトウェアなんです。

今回、編集とカラーグレーディングに使用した「DaVinci Resolve 15」

今回、編集とカラーグレーディングに使用した「DaVinci Resolve 15」

なお、DaVinci Resolveを使用する推奨環境としてメーカーから発表されているスペックは以下のとおりです。

「DaVinci Resolve 15」の推奨環境

「DaVinci Resolve 15」の推奨環境

さすがに、4KのRAW動画を編集するには、CPU、メモリー、GPUともに最高クラスのスペックが必要になります。しかし、HDのRAW動画であれば、ミドルハイ〜ハイエンドモデルのPCで対応可能。HDの圧縮動画(ProRes、XAVC、DNxHD、DNxHR、AVCHD、H.264)なら、Core i5/メモリー8GB以上となっており、統合型GPUを搭載するミドルスペックのノートPCでも動作に問題なさそうです。

なお、今回編集に使用したMacBook Proの構成は以下のとおりです。iPhoneで撮影したLog形式の4K動画の編集では、何の問題もなく動作しました。

主な構成は、CPU:Intel Core i7(4コア、最大2.6 GHz駆動)、メモリー:16GB、ストレージ:256GB、GPU:AMD Radeon Pro 460

「DaVinci Resolve 15」無料版と有料版の違い

Blackmagic Designが提供する編集ソフトには完全無料で期間制限なく使える「DaVinci Resolve 15」 と、33,980円(税別)の「DaVinci Resolve 15 Studio」があります。

無料版の「DaVinci Resolve 15」でも、その機能は十分過ぎるほど。趣味レベルの編集作業なら、これひとつあれば事足りるでしょう

有償版の「DaVinci Resolve 15 Studio」では、無料版の全ての機能に加えて、ひとつのプロジェクト上で複数人が同時に作業できるほか、ノイズリダクション機能やスタビライズ(ブレ補正)などの機能が利用できます。チームで同時に1作品にとりかかりたい場合や、夜間や暗所で撮影した映像のノイズ取り、ハイパーラプス映像のスタビライズなどが必要な場合は有償版の機能を利用しなければなりませんが、大半の編集作業は無料版でもこなせます。

「DaVinci Resolve 15」と「Premiere Pro」「Final Cut Pro X」、どれが良い?

メジャーな動画編集ソフトとしてはAdobeの「Premiere Pro(Windows/macOS用)」、アップルの「Final Cut Pro X(macOS専用)」があります。

ソフトウェア全般に言えることですが、歴史が長く、支持するユーザー多い製品にはそれぞれ一長一短があり、どれかひとつが万人にとって100%おすすめできるというモノはないのが事実。もちろん「Premiere Pro」や「Final Cut Pro X」にもカラーグレーディング機能はありますし、長年の慣れや愛着から「編集ソフトの乗り換えなんて考えられない」という方がいるのも当然です。

ただし、「DaVinci Resolve 15」が無料で期間制限なく使えるのに対して、「Premiere Pro」は個人プランで月額2,180円(税別)、「Final Cut Pro X」は買い切りで32,223円(税別)といずれも有料であるのは大きな差。その点を考慮すると、高度な編集機能が0円で手に入る「DaVinci Resolve 15」は非常に魅力的であると言えます。初期費用がかからないため、ビギナーの方でも導入しやすいのもメリットです。

クライアントが作業環境を「Premiere Pro」などで指定してこない業界や、趣味で映像編集を始めてみたいという場合に、導入費用ゼロで本格的なソフトウェアを利用したいなら「DaVinci Resolve 15」こそ真っ先にチェックするべき存在でしょう。

「DaVinci Resolve 15」を使ってカラーグレーディングに挑戦してわかったこと

実際にカラーグレーディングにトライして感じたのは、その奥の深さです。たとえば「インスタグラム」のフィルター機能を使えば、撮影した映像の色をワンタップでカッコよく見せることが可能ですが、カラーグレーディングはそれとはまったく別の世界。無数のパラメーターと、いくつもの選択肢があるなかで「コレだ!」というポイントを探し続けなければいけない点が、難しさでもありおもしろさでもあります。

LUT(プリセットの色補正データ)の力に頼りつつ、微調整をして仕上げたお気に入りのカット。落ち着いた色味の中で海や空、そしてモデルさんのドレスなど、いろいろな青を表現できたと思っています。え……顔がアンダーじゃないかって? ヒェッ!

反省としては、少し暗いところや逆光気味のコンディションで撮影した場合、ノイズが強く出て色の加工が難しくなってしまうため、そのようなデータはボツにせざるを得なかったという点があげられます。写真や動画撮影の基本中の基本ではありますが……カラーグレーディングを前提にする場合も、元データの撮影状況に気を配ることは必須です。

また、前後のカットに同じ被写体が続けて登場する場合は、服や肌の色を合わせるのにとても苦労しました。今回の映像で言えば、モデルさんの青いワンピースと肌の色味が前後のカットでちがうという事態に陥り、うまくまとめきれないことも……。

とは言え、カラーグレーディングの作業そのものは時間を忘れて没頭できるほど、興味深いもの。自分が撮った動画に少し手を加えるだけで、ずいぶんと見違えるようになるので、子供の運動会や風景など、これまで撮影してきた動画のストックがある方は、ぜひ、カラーグレーディングにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

もちろん、いいカメラ機材やパソコンを持っているに越したことはありませんが、スマートフォンとノートPCを持っていれば、後は無料「DaVinci Resolve 15」をインストールするだけ。さぁ、ようこそ “楽しい、カラーグレーディング沼” に!

どのようにして編集やカラーグレーディングを行ったのか、「DaVinci Resolve 15」の基本的な使い方やちょっとしたコツなどは、後編記事にて徹底解説いたします。これさえ読めば、動画をもうひとつ上のレベルに持っていけるはずです。気になる人は、ぜひチェックしてみてください。

動画制作の沼に足を踏み入れてみた! カラーグレーディングに挑戦 #後編

なお、記事で使用した撮影機材とソフトウェアは以下の通りです。

編集ソフト:Blackmagic Design「DaVinci Resolve 15 Studio」
※ Windows、Mac、Linuxに対応。 記事では無料版「DaVinci Resolve 15」を使用しています(リンク先ページ最下部からダウンロード可能)。
カメラ:iPhone 7 Plus(2016年モデル)
アプリ:Filmic Pro Mobile Video ※iPhone、Androidに対応
ジンバル:Zhiyun Smooth 4
編集用ラップトップ:MacBook Pro(15-inch, 2016)

Mr.TATE(Masahira TATE)

Mr.TATE(Masahira TATE)

世界50カ国以上を旅したバックパッカー。週間アスキー編集部などを経て、AppBankに入社。「バイヤーたてさん」として仕入れとYouTubeを活用したコンテンツコマースに取り組み、上場時は広報として企業PRを担当。現在はフリーランスで活動中。

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