新製品レポート
最後発参入の強みはどこにあるのか?

楽天が新規参入の携帯ネットワークシステムを初披露

2019年10月に独自の携帯電話サービスを開始する楽天モバイルネットワークは、本日2月20日に同社のネットワークシステムの研究拠点「楽天クラウドイノベーションラボ」を報道陣に公開した。最後発として携帯電話事業に進出する楽天が成功のするための秘策がそこにはあった。

楽天グループの三木谷浩史会長みずからが、楽天の携帯電話サービスのメリットをアピール。同サービスにかける意気込みを語った

“コスト”、“スピード”、“楽天グループとの相乗効果”を武器に挑む

楽天モバイルネットワークは、2019年10月のサービス開始に向けて、現在、LTE(4G)および5Gの通信サービスを準備中。国内ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクに続く第4の携帯電話の通信キャリアとなるが、市場はすでに飽和している状態。どんな秘策で強豪のライバルに対抗するのだろうか? 誰もが興味のあるところだろう。

楽天グループの三木谷浩史会長は、楽天携帯電話サービスの特徴として、コスト、スピード(通信速度や新サービスの展開速度などを含む)、そして楽天グループとの相乗効果という3点をあげている。そのうち、コストとスピードに大きく関わるのが今回公開された「楽天クラウドイノベーションラボ」だ。

楽天クラウドイノベーションラボは、実環境と同じ条件を再現した、研究開発の拠点。楽天携帯サービスの大きな特徴は、通信経路の端から端まですべてが完全に仮想化されたクラウドネットワークで構成されている点だ。現状の通信キャリアでは、ネットワークシステムの構築にハードウェアとソフトウェアが一体となった高価な専用機器を使っているが、楽天の場合、ハードウェアには安価な汎用サーバーを使い、それらの大量の汎用サーバーを仮想化したうえで、基幹となる通信ネットワークの機能をクラウド上でソフトウェアとして備える。これによって、低コストかつスピーディーに携帯電話ネットワークの基幹部分を構築することが可能となり、4Gから5Gへの移行もソフトウェアのアップデートによってスムーズに行えるという。こうしたモバイル通信設備の完全なクラウド化は、世界でも例がない唯一のものとのことだ。

楽天グループで採用実績のある汎用サーバーを利用。高価な専用機器を使わないことで、低コストにネットワークインフラを構築できるという

通信サービスに必要な機能は、すべクラウド上でソフトウェアとして構築される。そのため、研究開発に際しても、世界各地に点在する協力メーカーの開発者との素早いやりとりが行える

クラウド化により仮に機器の一部が故障しても、システム全体のダウンには結び付きにくいという。ハードウェア障害への耐性は、少なくとも従来型の設備より劣ることはないとのことだ

端末の通信性能を調べるシールド室も公開された。ここでチェックされた端末が、市場に並ぶことになるだろう

端末の通信性能を調べるシールド室も公開された。ここでチェックされた端末が、市場に並ぶことになるだろう

また、新機能のテストや実装もソフトウェアの書き換えで済むという。同様の理由でトラブルへの対処も迅速に行いやすい。また、全国各地に設置される基地局の設備も、サーバーが不要なので大幅に簡素化できるため、設置の敷居も下がる。基地局の空いた空間に、モバイルエッジコンピューティング用のエッジサーバーを容易に設置できる。モバイルエッジコンピューティングとは、基地局などユーザーの近くに、処理性能の高いサーバーを設置して、端末の描画や動画処理などの重い処理を肩代わりさせるという新技術だ。本来5Gサービス向けの技術だが、楽天携帯サービスでは、こうした理由により従来のLTEネットワークでも利用可能となっている。

基地局設備の一部。素人目には大きく感じるが、基本的にアンテナと電源だけ。通常は必要なサーバーはクラウドサーバーが行うので、実はかなりコンパクト

まずは首都圏、名古屋、大坂を中心にサービス開始予定。楽天モバイルとの統合は当面なし

今回の発表では、10月からの本サービスの内容についても明らかになった点がある。楽天携帯サービスは、サービス開始当初は首都圏および名古屋を中心とした東海地区、大坂などの近畿地区からLTE通信サービスとしてスタートし、徐々にエリアを広げてゆく予定だ。なお、同社はすでに1.7GHz帯の電波の利用権も取得しているが、KDDIとのアライアンスにより、ローミングを使ったauのネットワークも当面併用されるので、通話エリアが極端に狭いということはなさそうだ。

なお、既存のMVNOサービスの「楽天モバイル」との関係だが、楽天モバイルネットワークスの山田善久社長によれば「最終的には統合」と言いつつも、「動向を見ながら判断」するとのことなので、急速な統合が行われる可能性は低そうだ。なお、既存の楽天モバイルのSIMカードは楽天携帯サービスでは利用できないという。

端末については、まだほとんど明らかな情報はないが、データの書き換えが容易なeSIMやデュアルSIMカードスロットを採用することで、楽天モバイルからの移行を行いやすくすることも考えているようだ。

また、競合他社では2020年に商用サービスが始まる予定の5Gネットワークだが、楽天携帯サービスでは、ネットワークの基幹部分に限ればほぼ準備が整っている状態で、クラウドサーバーのアップグレードだけでサービスを開始できるとのことだ。

通信エリアの展開は、首都圏、名古屋、大阪の3か所を皮切りに順次拡大されるという

通信エリアの展開は、首都圏、名古屋、大阪の3か所を皮切りに順次拡大されるという

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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