平成デジタルガジェット史
そしてスマホが高性能カメラになり、テレビはインターネット端末になった

激動の平成デジタルガジェット史 第10回:平成28〜30年(2016〜2018年)

30年にわたった「平成」という時代も今年で終わりを告げる。そんな平成という時代は、価格.comとも深い関わりのあるパソコンやデジタルガジェットが急激に成長した時代であった。そこで、平成時代の終わりに、この30年でパソコンやデジタルガジェットの世界がどのように変化してきたかを、3年ごとにざっくりとまとめてみようというのがこの連載企画だ。第10回(最終回)の今回は、まだ記憶も新しい平成28〜30年(2016〜2018年)の3年間にフォーカスして、この時代をデジタルガジェットたちとともに振り返ってみよう。

平成28年(2016年)ファーウェイ旋風始まる。スマホのカメラが劇的進化し、イヤホン・ヘッドホンはワイヤレス化

平成28年、国内の大手家電メーカーだったシャープが、台湾の鴻海精密工業によって買収されるというニュースが、家電業界を揺るがした。東日本大震災のあった平成23年くらいから、テレビ事業の不調が多くの家電メーカーの業績悪化の元となっていたが、なかでも、「AQUOS」シリーズで国内最大のシェアを誇っていたシャープが受けた打撃は大きかった。ソニーはカメラとゲーム、4Kテレビに大きく舵を切り、パナソニックは生活家電や住宅設備に舵を切ることでなんとかこの波を乗り切りつつあったが、液晶テレビや液晶パネル生産に大きく軸足を移していたシャープは、なかなかほかの道への脱却ができず、結果として、提携関係にあった鴻海の出資を受ける形で再出発を余儀なくされた形だ。

このように、日本のデジタル家電業界は完全に一時期の勢いを失っており、その代わりに台頭してきていたのが、アップルの「iPhone」製造で力を付けてきた台湾の鴻海やASUS、そして中国のレノボ、ファーウェイといったメーカーだった。この当時、すでにパソコン市場では、IBMの「ThinkPad」ブランドに加えてNECブランドをも傘下に収めたレノボが大きな勢力になっていたし、スマートフォン市場でも、ファーウェイの製品がかなり注目を集めていた。中国経済はまさに絶頂期といえ、日本の家電市場でも、中国メーカーの製品が多く目に付くようになってきていた。

ライカ監修のデュアルカメラを搭載し話題を呼んだファーウェイ「HUAWEI P9」

ライカ監修のデュアルカメラを搭載し話題を呼んだファーウェイ「HUAWEI P9」

こうした好調な中国を象徴するようなプロダクトが、ファーウェイのSIMフリースマートフォン「HUAWEI P9」であろう。本製品で注目を集めたのは、リアに搭載されたライカ監修による「デュアルカメラ」だ。片方のカメラでは色情報を検知し、もう片方のカメラでは被写界深度をグレースケールで検知するという仕組みで、この両方のカメラで得た情報を高性能プロセッサーで計算して組み合わせることで、デジタル一眼カメラで撮影したような奥行き感のある写真が撮影できる。この技術をいち早く搭載したモデルが「HUAWEI P9」であり、ファーウェイの技術力の高さを一躍世に知らしめたのだが、これ以降、各メーカーとも同様のデュアルカメラをスマートフォンに搭載するようになっていき、スマホのカメラの高性能化が加速していくことになる。

1万円台の手ごろな価格ながらLTEでネット通信も楽しめたファーウェイ「MediaPad T1 7.0 LTE」

1万円台の手ごろな価格ながらLTEでネット通信も楽しめたファーウェイ「MediaPad T1 7.0 LTE」

タブレットでも、この頃ファーウェイの製品は人気となっていた。一時期盛り上がったタブレット市場もすでにピークアウトしており、コンスタントに製品を出し続けるメーカーが減っていたこともあったが、そんな中でもファーウェイだけは、低価格かつ高性能なタブレットをコンスタントに世に送り出しており、「iPad」のアップルを除けば、タブレット市場ではNo.1の人気メーカーとなっていた。その代表的なモデルが、この年に発売された7インチのAndroidタブレット「MediaPad T1 7.0 LTE」だろう。実勢価格1.5万円程度の低価格でありながら、LTE(4G)に対応するSIMカードスロットを備え、この頃増えてきていた格安SIMカードとの組み合わせで自由にネットを楽しめることから、人気となった。このように、処理性能もそこそこ高く、バッテリー持ちもいい、しかも安いファーウェイのスマホ、タブレットは、この頃から大きく一般ユーザーの人気を勝ち得ていくことになる。

アップル「iPhone 7/7 Plus」。防水対応、Felica対応で日本市場に大きく受け入れられたが、ヘッドホン端子の廃止が賛否を呼んだ

いっぽう、スマートフォンのトップランナーであるアップルからはこの年「iPhone 7/7 Plus」が発売となった。「iPhone 7」は、日本の携帯電話市場では欠かせない要素とまで言われていた「防水ボディ」と「Felica」の2つに対応したのが大きなトピックで、日本市場でも大いに受けいれられた。いっぽうで、イヤホンジャックを廃止したことでユーザー間でも賛否が分かれたが、このことをきっかけにして、スマホとともに成長してきたイヤホン・ヘッドホン業界も、一気にワイヤレス化への舵を切ることになった。アップル自体からも、純正のワイヤレスイヤホン「AirPods」が発売され、これが大ヒットとなる。しかも「AirPods」は、左右のハウジングをつなぐケーブルまで廃した「完全ワイヤレス」方式で、これが大いに話題を呼び、この後の完全ワイヤレスイヤホンブームに火を付けた。

アップル純正の完全ワイヤレスイヤホン「AirPods」。完全ワイヤレスイヤホンの先駆け的存在となる

アップル純正の完全ワイヤレスイヤホン「AirPods」。完全ワイヤレスイヤホンの先駆け的存在となる

ノイズキャンセリング機能を備えたBOSEのワイヤレスヘッドホン「QuietComfort 35 wireless headphones」

ノイズキャンセリング機能を備えたBOSEのワイヤレスヘッドホン「QuietComfort 35 wireless headphones」

従来、Bluetoothでワイヤレス接続するワイヤレスイヤホンやヘッドホンは存在していたものの、音質はあまり期待できないというのが、大方の意見だった。しかし、なかには、独自の技術や工夫によって、高音質を追求したモデルも現れた。そんな高音質ワイヤレスヘッドホンの代表的製品としてこの年発売されたBOSEの「QuietComfort 35 wireless headphones」は、Bluetooth接続ながらもBOSEならではのサウンドを実現していたほか、BOSEが得意とするノイズキャンセリング機能を搭載し、ワイヤレスの手軽さと、ノイズキャンセリング機能も合わせたサウンドへの没入感などから人気を呼んだ。また、オーディオメーカーとしては老舗のソニーからも、ノイズキャンセリング機能を搭載したワイヤレスヘッドホン「MDR-1000X」が発売され、こちらも人気となった。

ニコン「D500」。APS-C機のフラッグシップモデルとして発売され、その性能のよさ、価格も含めたバランスのよさで人気となった名機

スマートフォンのカメラ機能が加速度的に進化していくいっぽうで、スマホでは撮影できない写真撮影を極める必要性に迫られていたカメラ市場では、より本格派、個性派の製品が発売され、人気を得ていくことになる。この年ニコンから発売されたAPS-C機のハイエンドモデル「D500」は、フルサイズ機「D5」と同等のAFシステムを搭載し、10コマ/秒の連射機能を備えるなど、ニコンが持つ技術を惜しみなく注入した中級機としてバランスがよく、多くのカメラファンから評価されたカメラだ。すでに、ソニーやオリンパス、パナソニックなどを中心に、本格派のミラーレス一眼カメラが多く登場しており、デジタル一眼レフ機はこの勢いに押されてきていたが、そんな中でニコンが放ったこの「D500」は、APS-Cクラスの一眼レフカメラとしてはほぼ最後の傑作だったのかもしれない。

富士フイルムのミラーレス一眼のフラッグシップモデル「FUJIFILM X-Pro2」。独特なこってりした色合いの撮影が行えるとして、他社メーカーのカメラユーザーからも愛された

「D500」が正当派の傑作なら、個性派の傑作といえるのが、富士フイルムの「FUJIFILM X-Pro2」ではないだろうか。富士フイルムは、従来のフィルムメーカーとしてのノウハウを注ぎ込んだ個性的なデジタルカメラを多く世に送り出してきたメーカーであるが、この年発売した「X-Pro2」は、独自の2430万画素「X-Trans CMOS III」センサーを搭載するフラッグシップ機で、しかもそれまで遅かったAFも高速化されるなど、普段使いでも非常に使いやすい製品に進化。もちろん、独自のフィルムシミュレーション機能を使った色合いの変化や、独特なこってりした画質など、ほかのカメラでは得られない楽しさがあると評価され、人気を呼んだ。

ソニーのコンパクトアクションカム「FDR-X3000」。強力な「空間光学ブレ補正」機能を持ち、動きながらの撮影などに効果を発揮した

このほか、アクションカムも年々進化していたが、なかでもこの年発売されたソニーの小型4Kビデオカメラ「FDR-X3000」は、ソニーが得意とする「空間光学ブレ補正」機能が強力で、さまざまなアクティビティで使っても、ブレがかなり強力に抑えられるとして一躍人気となった製品だ。

VRを一気に身近な存在にした、ソニー(SCE)「PlayStation VR」

VRを一気に身近な存在にした、ソニー(SCE)「PlayStation VR」

また、この頃「VR(仮想現実)」「AR(拡張現実)」といったキーワードが多く聞かれるようになったが、そのことを身近に感じられるようになったプロダクトとして、「VR」では「PlayStation VR」、「AR」では「ポケモンGO」の存在を忘れてはならない。「VR」を楽しめるデバイスとしてはすでに、パソコンに接続して楽しむVRヘッドセット(VRゴーグル)の「Oculus」や「VIVE」などがあったが、デバイスだけで10万円、パソコンも含めると20万円はシステム構築にかかるという点で、まだ一般的とは言えなかった。しかし、この2年前に発売された「PS4」と接続することで使える「PlayStation VR」は、価格も5万円以下と、「PS4」とセットで買っても10万円を切る低価格のVRシステムとして登場し、大いに話題をさらった。

いっぽう、「AR」を身近なものとして体験させてくれた「ポケモンGO」は、スマートフォン向けのアプリとして提供され、全世界で大ヒットを記録。基本的には「位置ゲー」と呼ばれる、現実のマップ上で移動しながら楽しむゲームなのだが、このゲームのAR機能を使うと、カメラで映した現実の風景の中にポケモン達が存在するかのように表示され、これが非常に新しいと話題になった。今でも世界中でプレイされている息の長いゲームで、これをきっかけに、外を多く歩くようになったという人もいるくらい、多くの人にプレイされているゲームである。

●この年発売された主なデジタルガジェット

・フィリップ モリス「アイコス 2.4 Plus」
紙を巻かずに直接タバコ葉を熱する「加熱式タバコ」を世に広めたパイオニア的存在の製品。紙を燃やすことによって発生するタールが出ず、紙巻きタバコに比べると有害性が低いということで、乗り換える人が続出。一時期は品薄でなかなか買えず、オークションなどでプレミア価格もついていたほどの人気となった。

平成29年(2017年)中国企業の影響がさらに強まる。スマホは6インチクラスの大型モデルがトレンドに。テレビでは有機ELテレビが登場

平成29年、家電業界にとって大きな話題と言えば、老舗家電メーカーでもある東芝の分社化だろう。2年前に発覚した粉飾決算問題が尾を引き、大きな負債を負うことになった東芝は、やむなくグループ企業の分割を決意。多くのグループ各社が売却された。家電を担当していたグループ各社も、この年を挟む3年間の間に、それぞれ別の企業に事業ごと売却されているが、その内訳は以下の通り。

平成28年6月:東芝ライフスタイル(白物家電担当)・・・美的国際控股有限公司に事業売却
平成29年11月:東芝映像ソリューション(AV家電担当)・・・ハイセンスに事業売却
平成30年10月:東芝クライアントソリューション(パソコン担当)・・・シャープ(鴻海)に事業売却

このように、東芝の家電事業は、それぞれ中国系のメーカーあるいはグループ企業に売却され、事実上、東芝は家電事業から撤退することとなった。ただ、東芝の家電製品については、今も国内工場などがそのまま稼働しているほか、東芝ブランドがそのまま使われており、パソコンに関しては「Dyanbook(ダイナブック)」のブランドがそのまま継承されているため、ブランドとしての東芝がなくなったというわけではない。

薄型軽量なスタイリッシュボディで話題となった、ファーウェイ「MateBook X」

薄型軽量なスタイリッシュボディで話題となった、ファーウェイ「MateBook X」

この東芝の例もそうだが、スマホ市場で着実にシェアを確立しつつあったファーウェイなども合わせて、この頃中国メーカーの日本の家電業界における影響はさらに強まってきていた。そんなファーウェイであるが、この年も意欲的な製品を立て続けに発売し、その技術力の高さを見せつけていた。その代表的な製品が、ファーウェイとしては初となる薄型モバイルノートの「MateBook X」である。アップル「Macbook Air」を思わせるような薄いボディをまとった「MateBook X」は、重量わずか1.05kgと超軽量。CPUに第7世代の「Core i7」や「Core i5」を搭載し、8GBのメモリー、256GB/512GBのSSDなど、基本スペックも高く、デザインもスタイリッシュで、大きな衝撃を市場に与えた。

2万円台ながらも5.2型のフルHD大画面液晶を搭載するなど、中級機並みの機能を備えた「HUAWEI P10 lite」

2万円台ながらも5.2型のフルHD大画面液晶を搭載するなど、中級機並みの機能を備えた「HUAWEI P10 lite」

もちろん、スマートフォンのほうでも、「Mate」「P」「nova」という3シリーズで年に数回という速いサイクルでの製品発表を行うことで、性能をどんどん上げていた。また、廉価モデルだけでなく、ハイエンドモデルも投入するなど幅広いバリエーションで、日本国内でも着実にファンを増やしていた。特にこの年人気となったのは、2万円台の廉価モデルでありながら、中級機以上の性能を備えた「HUAWEI P10 lite」である。5.2型のフルHD液晶を搭載し、前面と背面に2.5Dの曲面ガラスを配するなど、デザインも強化。エントリー機ながら指紋認証機能を搭載するなど、使い勝手のいいSIMフリー機として大いに人気を得た。

「iPhone」10周年を記念して発売された、アップル「iPhone X」。そのスタイルと大きな画面、10万円を超える価格設定など、いろいろな面で話題を呼んだ

こうしたファーウェイをはじめとする低価格SIMフリースマホが、市場を席巻しようとしている中で、キャリアモデルとして販売されるハイエンドスマホの側でも、大きな動きが起こりつつあった。まずこの年大きな話題となったのは、アップルが、iPhone生誕10周年記念モデルとして発売した「iPhone X」である。iPhoneシリーズでは初の有機ELパネルを採用した5.8型の縦長ディスプレイと、フロントカメラなどを収めるための「ノッチ」と呼ばれるスペースが特徴。ホームボタンを廃し、新たにフロントカメラでの顔認証に対応するなど、新基軸も盛り込まれた。また、背面のメインカメラは、広角と望遠を組み合わせたデュアルカメラとなり、カメラ性能をアップさせるなど、この当時、すでに技術的にはAndroidスマホの後追いになってしまっていたカメラ機能もことごとく刷新した。しかし、それと当時に、価格もかなり高価になり、安いほうの64GBモデルで112,800円(税別)という10万円を軽く超える価格設定には、賛否両論が渦巻いた。

18.5:9というアスペクト比の超縦長画面を採用したサムスン「Galaxy S8+」

18.5:9というアスペクト比の超縦長画面を採用したサムスン「Galaxy S8+」

いっぽうのAndroidスマホでは、サムスン「Galaxy S8/S8+」が発売された。こちらは、従来よりさらに縦長となる18.5:9というアスペクト比の有機ELディスプレイを備えたことで話題になった。上位モデルの「Galaxy S8+」は6.2型の大画面を備え、「iPhone X」のさらに上を行く大画面を実現。少し前なら「ファブレット」と呼ばれるサイズの製品であるが、片手で持ちやすいように横幅は抑えつつ、縦方向に長くすることで、使いやすさを犠牲にせず、大画面を楽しめるスマホとして話題となった。この「iPhone X」と「Galaxy S8/S8+」の登場によって、スマートフォンは縦長ディスプレイがトレンドとなり、画面サイズも6インチ前後というのが普通という状況となってくる。

ソニー「BRAVIA A1」シリーズ。有機ELパネルの長所を生かした超薄型ボディと、キックスタンド型のボディによる、斬新なデザインと、画面をスピーカーとして使うことで、薄型テレビのデメリットも克服した

家電方面に目を向けると、この年は、国内のテレビ市場で有機ELテレビが相次いで発売された「有機ELテレビ元年」となった。有機ELテレビは、韓国のLG電子が主にパネルを製造しており、大型テレビとしてはLG電子がいち早く実用化していたものだが、この年、LG電子からのパネル供給を受けることで、ソニー、東芝、パナソニックの各メーカーから、相次いで有機ELテレビが登場した。なかでも、話題になったのは、高級4Kテレビの市場で主導権を取ってきたソニーの製品だ。同社初となる大型有機ELテレビ(ソニーは平成19年に初の有機ELテレビ「XEL-1」を製品化しており、有機ELテレビとしては再参入)「BRAVIA A1」シリーズ2モデルは、有機ELパネルの特徴を生かした薄いボディと、それをキックスタンドで支えるという大胆なデザイン、さらに画面全体をスピーカーとして使う音響システム「アコースティック サーフェス」を搭載するなど新規性が高く、次世代のテレビとしての有機ELテレビを大きく印象づけた。

なお、ソニーは、この数年前より、テレビのOSにGoogleの「Android TV」を採用し、オープンソースのアプリ開発環境に移行している。「Android TV」はGoogleが提供する検索サービスやその他のサービスとの親和性が高く、とりわけ、音声検索の「Googleアシスタント」を利用できることで、テレビでの音声検索が行いやすい。また、この頃徐々に本格化してきていた「Netflix」「Hulu」といったネットの動画配信サービスにも、アプリ単位で対応しやすく、この翌年に開始される4K放送よりも先に、これらの動画配信サービスで4Kネイティブの映像が見られるなど、ネットとの親和性はかなり高まっていた。ある種、すでにテレビは放送だけを映すものではなく、ネット端末としての機能を持つに至ったと言っていいだろう。

一時期品薄状態となるほどの人気を呼んだネックバンドスピーカー、ソニー「SRS-WS1」

一時期品薄状態となるほどの人気を呼んだネックバンドスピーカー、ソニー「SRS-WS1」

と同時に、ソニーからはテレビ周りの音響を改善する製品として、ワイヤレス・ネックバンドスピーカーの「SRS-WS1」も発売され、こちらも大変な人気となった。こちらは、ヘッドホンやイヤホンではなく、外部の音も聞こえるように肩に乗せて使うネックバンドスピーカーで、テレビの音声をワイヤレスで伝送して、耳元で再生するという製品。イヤホンやヘッドホンのような耳への負担感がなく、家事などをしながらでもテレビの音声をしっかり聞き取れるということで話題となり、一時は品薄が続くほどの人気となった。なお、この時期、本製品と同じように、外音を取り込める機能を持ったイヤホンやヘッドホンも登場し初め、スマートフォンなどで音楽などを聴きながらも、電車のアナウンスなどの外音も聞き漏らさないというような工夫がなされた製品が人気を呼んだ。

10万円以上する高級ハイレゾプレーヤー並みの機能を、7万円台で実現して人気を呼んだ、ソニー「ウォークマン NW-ZX300」

また、ソニーはデジタルオーディオの分野でも、この頃、ひとり勝ち状態となっており、「ウォークマン」ブランドでハイレゾ対応のポータブルデジタルオーディオプレーヤー(DAP)を多数ラインアップしていた。なかでも、この年発売された「NW-ZX300」は、さまざまなハイレゾフォーマットに対応しているほか、高音質のバランス出力対応や、パソコンとつないでUSB-DACとして使える機能を備えるなど、かなり完成度の高い製品となっており、10万円を超える製品の多かったハイエンドプレーヤーとしては価格も手ごろに抑えられていたことから、人気を博した。

スマートスピーカーという製品ジャンルを定着させた「Google Home」

スマートスピーカーという製品ジャンルを定着させた「Google Home」

また、純粋なスピーカーというわけではないが、この年、話題になったのが「AIスピーカー」「スマートスピーカー」と呼ばれる製品群だ。Googleが発売した「Google Home」、これに続いて発売されたAmazonの「Amazon Echo」の2製品が主に人気を牽引し、音声操作だけで音楽を再生したり、ニュースや天気予報を読み上げてくれたり、キーワード検索ができたりと、新たな操作感が何かと話題になった。これ以降、スマートスピーカーのちょっとしたブームが訪れるが、その機能は徐々にネット機能が進化するテレビに吸収されていくこととなる。

携帯ゲーム機としても据え置きゲーム機としても楽しめる、ギミックが楽しい任天堂「ニンテンドースイッチ」。あまりの人気に、品薄状態が1年近く続いた

このほか、この年の3月に発売された任天堂の次世代ゲーム機「ニンテンドースイッチ」が、大きな話題となった。携帯ゲーム機としても、テレビとつないで大画面で楽しめる据え置きゲーム機としても使える「ニンテンドースイッチ」は、その独自のギミックが話題となり、3月3日の発売日からすでに品切れが発生するほどの人気となった。その後も、1年近くの間、品薄状態が解消されず、年末のクリスマスシーズンにも入手が困難というほどの人気ぶりを記録した。任天堂は、それまで携帯ゲーム機の「ニンテンドー3DS」が人気を維持していたものの、据え置きゲーム機では「GAME CUBE」「Wii」「Wii U」と、今ひとつセールスが伸びず、ライバルの「PlayStation」シリーズに水を開けられている状態が長く続いていた。また、携帯ゲーム機のほうも、スマートフォンのゲームによって、その座を奪われてきており、任天堂としてもあまりいい話題がなかったのだが、前年の「ポケモンGO」のヒットや、この「ニンテンドースイッチ」のヒットによって、任天堂は急激な復活を遂げることになった。

●この年発売された主なデジタルガジェット

・コムテック「ZDR-015」
2つのカメラユニットを装備したドライブレコーダーとして異例の大ヒット。この年の秋「あおり運転」による事故が大きく報道されたことにより、自動車の後方も録画できるドライブレコーダーが人気となり、2万円台の低価格で購入できた本製品が大ヒットとなった。

・スクウェア・エニックス「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」
人気のRPG「ドラゴンクエスト」シリーズのオフラインタイトルととしては、実に平成21年の「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」から8年ぶり、据え置きゲーム機用(PS4用)としては、平成16年の「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」以来、実に13年ぶりの登場ということもあって、久しぶりのスマッシュヒットとなった。

平成30年(2018年)スマホの進化が潮目を迎える。テレビは4K放送がついに始まり、カメラはいよいよミラーレスが主戦場に

平成最後のこの年、デジタル家電業界ではいくつかの大きな分水嶺とでも言えるような事態が起こった。

その誕生から10年、ここまで急速に進化してきたスマートフォンであるが、この年、大きな潮目を迎えた。きっかけは、アップル「iPhone」シリーズのセールスが初めて前年割れを記録したことだ。これまでスマホ市場を牽引してきた「iPhone」シリーズに人気の衰えが見え始めたと同時に、全世界のスマホ需要も一段落したというのが正確なところだろう。もちろん、米中間の貿易戦争という遠因もあるが、やはり、スマホ自体の進化がある程度、行くところまで行ってしまい、頻繁な買い換えが必要なくなったというのが、大きな理由であると思われる。

アップル「iPhone XS Max」。6.5インチという大画面と高画質カメラ、10万円をゆうに超えるその高価格という両面で話題に

この年、アップルが発売した新モデルは、従来型の4.7インチモデルではなく、前年に発売した「iPhone X」をベースにした3モデル、「iPhone XS」「iPhone XS Max」「iPhone XR」だった。画面サイズは、それぞれ5.8型、6.5型、6.1型と一気に大型化。販売価格も、もっとも安い「iPhone XR」(64GB)で84,800円、もっとも高い「iPhone XS Max」(512GB)で164,800円と、スマートフォンの価格としては、驚くほどの高価格設定となっていた。この大画面設定と高価格設定に対しては、iPhoneユーザーの中からも賛否両論が起こり、結果として、「iPhone X」シリーズのセールスは思ったほど伸びなかった。逆に、前年モデルの従来型「iPhone 8」の人気が維持されるなど、これまで画面の大型化が進んできたスマートフォンも、このあたりで頭打ちという雰囲気が色濃く出てきた。

Google「Pixel 3」。カメラ機能にかなりこだわって開発されたGoogle渾身の製品。ただ、やはり高価格だったため、セールスはそれほど伸びなかった

この「iPhone X」シリーズに真っ向勝負とばかりに、この年Googleから発売されたのが、「Pixel 3/3 XL」だ。「Pixel 3」は5.5インチ、「Pixel 3 XL」は6.3インチの有機ELディスプレイを搭載。カメラ機能にこだわっており、メインカメラは1220万画素のシングルカメラではあるものの、Googleが開発したAI機能により、高精細で奥行きのある写真が撮影できるとして、話題を呼んだ。ただ、こちらも価格はかなり高価格で、「Pixel 3」は95,000円から、「Pixel 3 XL」は119,000円からと、「iPhone XS」「iPhone XS Max」と張るレベル。この高価格設定により、思ったほどの人気は出なかったようだ。

ライカ監修のトリプルカメラ搭載で最先端を行くファーウェイ「HUAWEI P20 Pro」。NTTドコモのキャリアモデルとしては初のファーウェイ製品でもある

また、ハイエンド機という意味では、これらの製品を超えてきたのが、ファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」だ。ファーウェイは、他社に先駆けてデュアルカメラを採用するなど、カメラ機能にはこだわりを見せてきているメーカーだが、この「HUAWEI P20 Pro」では、さらにもうひとつカメラを加えた、ライカ監修のトリプルカメラを採用。基本性能も非常に高く、この年発売されたスマートフォンの中でももっとも高性能な製品となった。日本国内ではNTTドコモからキャリアモデルとして発売されたが、やはり10万円レベルの高価格となった。

2万円台で買えるエントリー機ながら、デュアルカメラなどの機能を備えて人気となったファーウェイ「HUAWEI nova lite 2」

このように、ハイエンドモデルが相次いで10万円レベルの高価格帯で発売されたのが、この年のスマートフォン市場の状況だった。しかし、ユーザー側の反応は今ひとつ薄く、そこまでの価値を感じないという意見も多く見られた。そのいっぽうで、低価格のSIMフリースマホの性能も年々向上しており、特にファーウェイのエントリーモデル「HUAWEI nova lite 2」などは、2万円台で購入できる低価格でありながら、十分に高性能という点で長期間にわたって人気を得ていた。こうしてスマホ市場は、10万円オーバーのハイエンドモデルと、2〜3万円で買えるエントリーモデルとでほぼ2分される形となった。それまで進化に進化を続けてきたスマートフォン市場に、大きな潮目が訪れた。それが、この平成30年という年だったと言えるだろう。

夏モデルの中では4Kチューナー搭載をいち早く宣言した東芝の有機ELテレビ「REGZA 55X920」

夏モデルの中では4Kチューナー搭載をいち早く宣言した東芝の有機ELテレビ「REGZA 55X920」

いっぽう、テレビ市場では、この年の12月よりいよいよ「4K/8K衛星放送」がスタート。これまでの4Kテレビには、この4K放送に対応するチューナーが搭載されておらず、このために4Kテレビの購入をためらっていた層も多かったのだが、この流れに合わせるように、東芝やシャープからは4Kチューナー搭載モデルが多数発売され、放送がスタートした年末から一気に人気となった。特に、夏モデルでいち早く4Kチューナー搭載を明言し、年末モデルには中級以上の全モデルに4Kチューナーを搭載するという、大胆な展開を取った東芝の「REGZA」シリーズは年末年始のセールスが好調で、4K放送開始の流れにうまく乗った形だ。なお、翌年(つまり令和元年)は、パナソニック、ソニー、LGなどのメーカーも、4Kチューナー搭載モデルを展開してきている。いよいよ、4Kテレビの本格普及期を迎えており、しばらく低迷が続いていたテレビ市場にも、ひとつの潮目が訪れていると言えそうだ。

「EOS Kiss」シリーズとしては初のミラーレス機として登場した、キヤノン「EOS Kiss M」

「EOS Kiss」シリーズとしては初のミラーレス機として登場した、キヤノン「EOS Kiss M」

また、デジタルカメラ市場でも、大きな潮目を迎えることになった。これまで、ミラーレス一眼カメラに消極的だった二大メーカー、キヤノンとニコンがついに、ミラーレスカメラに本腰を入れて取り組むことが明らかになったのだ。キヤノンは、この年の3月に、デジタル一眼レフカメラのエントリーモデルとして人気の「EOS Kiss」シリーズとして、初のミラーレスモデルとなる「EOS Kiss M」を発売。ミラーレス機ならではの小型ボディと、画質のよさなどがウケて、やや低迷気味だった「EOS Kiss」シリーズの中で、久々のヒットを記録した。

ニコン初のフルサイズミラーレス機「Z7」

ニコン初のフルサイズミラーレス機「Z7」

キヤノン初のフルサイズミラーレス機「EOS R」

キヤノン初のフルサイズミラーレス機「EOS R」

さらに、秋口には、ニコンがついに、フルサイズセンサーを搭載した本格派のミラーレスカメラ「Z7」「Z6」を発表。その直後には、キヤノンも同社初のフルサイズミラーレス機「EOS R」を発表し、年末に向けて相次いで発売を開始した。フルサイズミラーレス機としては、これまでソニーの「α7」の独壇場という状態が続いていたが、ついに、キヤノン、ニコンというカメラ界の二大メーカーが、これに対して本腰を入れて挑むという構図が生まれ、いわばフルサイズミラーレスを巡る三つ巴の戦いが開始されたという状況となっている。

このことは、カメラ業界全体が、従来の一眼レフからミラーレスへの本格的シフトを始めたことを意味しており、今後は、ミラーレスという仕組みの中で、これまで以上のすぐれた画質と機動性を実現する製品が登場することも予想される。デジタルカメラ市場も、大きな潮目を迎えているのである。

このようにして、平成最後の平成30年という年は、デジタルガジェット界全体の大きな転換点となる年となった。

●この年発売された主なデジタルガジェット

・カプコン「モンスターハンター:ワールド」
PS4向けに発売された「モンスターハンター」シリーズの最新作。ネット対戦機能が強化されており、全世界のモンハンファンの期待を受けて、全世界で1200万本売れたというスマッシュヒットを飛ばした。

【最後に】平成という時代は、まさにデジタル製品の進化の歴史だった

振り返ってみれば、この平成の30年という時代は、パソコンやデジタルガジェットの激動の進化とほとんど一致する。平成元年から30年という年月を経て、徐々にパソコンが進化し、インターネットが生まれて進化し、携帯電話が進化し、テレビが進化し、カメラが進化し、スマートフォンが進化し、そしてこの大きな転換点を迎えるに至った。30年前には考えられなかったデジタルの進化がここにあり、その過程でさまざまな製品が生まれ、そして消えていった。まさに激動の時代である。

これから新しい「令和」という時代を迎えるが、平成の30年間で大きく変化してきたデジタルガジェットが、どのような変貌を遂げるのか、今から楽しみにして待つことにしたい。

鎌田 剛(編集部)

鎌田 剛(編集部)

価格.comの編集統括を務める総編集長。パソコン、家電、業界動向など、全般に詳しい。人呼んで「価格.comのご意見番」。自称「イタリア人」。

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