レビュー

ファーウェイの新型高コスパスマホ「P30 lite」の進化とは?

ファーウェイのエントリー向けスマートフォン「P30 lite」は、価格.com「スマートフォン」カテゴリーの人気ランキングで上位を維持する人気モデル。人気の高かった前モデル「P20 lite」との違いを中心にレビューを行った。

ボディの高い質感はそのままに、画面がひと回り大きく見やすくなった

2019年5月24日に発売された「P30 lite」は、2312×1080表示に対応する約6.15インチの液晶ディスプレイを搭載するエントリー向けモデル。なお、「P30」シリーズには本機のほかに、SIMフリーのミドルレンジ機「P30」が発売されているほか、NTTドコモから今夏発売予定であった(現在予約受付を停止中)ハイエンド機「P30 Pro」の3機種がラインアップされている。

P30 liteのボディサイズは、約72.7(幅)×152.9(高さ)×7.4(厚さ)mm、重量約159g。前モデル「P20 lite」が、画面サイズ約5.84インチなのでひと回り画面が拡大したが、横幅は1.7mm大きくなったのみで、大きさはほぼ据え置かれた印象だ。なお、ボディの防水・防塵にはP20 liteには同様に対応していない。また、NFCおよびFeliCaポートも非搭載となっている。P20 liteが人気を集めた理由のひとつとして、ボディの作りのよさがあったが、本機もガラスで覆われた背面デザインを採用するなど、3万円台の製品とは思えない質感がある。

P30 liteの上にP20 liteを重ねて大きさを比較した。ボディはやや大きくなったが、画面サイズも大きくなっていることから、むしろ使いやすくなった印象

左にP30 lite、右にP20 liteを並べた。カメラがトリプルカメラ化されたといった違いはあるが、きらきら輝くガラスデザインや指紋認証センサーの位置など、共通点も多い

ボディ下面にヘッドホン端子とUSB Type-Cポートが備わる

ボディ下面にヘッドホン端子とUSB Type-Cポートが備わる

ボディ上面にはSIMカードスロットが備わる

ボディ上面にはSIMカードスロットが備わる

ボディ右側面に、電源とボリュームのボタンが配置される。インターフェイス類の配置はP20 liteから変わっていない

液晶ディスプレイで表面全体を覆っている。クリアな画質もP20 liteから変わっていない

液晶ディスプレイで表面全体を覆っている。クリアな画質もP20 liteから変わっていない

ノッチは小型化され、フロントカメラが収まるだけとなっている。なお、ノッチの上にはスピーカーとLEDインジケーターが配置されている

電子書籍を表示させた。ファーウェイの「nova lite 3」で見られる活字の荒れが見られずクッキリとした表示だ

基本スペックだが、SoCが「Kirin 710」で、4GBのRAMと64GBのストレージ、512GBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットという組み合わせだ。OSはAndroid 9。本機のSoC「Kirin 710」は、同じファーウェイの「Mate 20 lite」や「nova lite 3」と共通で、RAM容量の違いはあるが基本スペックで見るとこの3機は同等となる。定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク」を使い、実際の処理性能を計測したところ、総合スコアは129,969(内訳、CPU:56,934、GPU:28,058、UX:33,174、MEM:11,803)となった。これを、価格.comマガジンで以前計測した「P20 lite」のスコア87,313(内訳、CPU:41,530、GPU:13,113、UX:24,220、MEM:8,450)と比較すると、1.5倍ほど伸びとなっていることがわかる。特にグラフィック性能を示すGPUのスコアが倍以上伸びたのは大きい。P30 liteとP20 liteを実際に使い比べたが、アプリの起動や画面のスクロールも本機のほうが速いと感じられた。3Dゲームの動作も本機のほうに余裕があり、ゲームアプリの描画設定を1段階上げても快適に動作するなど、総じて1年分の処理性能の向上はしっかりと感じられた。

AnTuTuベンチマークの結果、左がP30 lite、右がP20 liteのもの。総合スコアが約1.5倍向上しているが、グラフィック性能を示す「GPU」は倍以上のスコアアップとなった

もうひとつのポイントは通信機能の強化である。SIMフリー版のP30 liteでは、2基あるSIMカードスロットが両方ともLTEに対応しており、DSDV(デュアルSIMデュアルVoLTE)が利用可能となった。P20 liteは国内では実質的にシングルSIMとしてしか動作しなかったので、この点は大きな進歩と言えよう。なお、NTTドコモ、au、ソフトバンク(ワイモバイル)の各通信キャリアのVoLTEに対応している。

SIMフリー版は、2基のSIMカードスロットを搭載。うち1基はmicroSDXCメモリーカードスロットとの排他利用となっている

2基のSIMカードがいずれもLTEに対応。2枚のSIMカードを柔軟に組み合わせて、2個の電話番号を使い分けることもできる

オーディオ機能も強化されている。プリインストールされる音楽プレーヤーでハイレゾ音源(Flac)の再生が可能になったほか、Bluetoothの音声通信コーデックとして、従来のaptXに加えて aptX HDとHWAに対応したことで、ワイヤレスでもハイレゾ音源をいい音で楽しめるようになった。なお、同梱のイヤホンはハイレゾ非対応なうえに、本体に備わるスピーカーはモノラル出力なので、ハイレゾ音源を楽しむのであれば、別途、スピーカーやイヤホンが必要となる。

プリインストールされる音楽プレーヤーアプリ「音楽」では、ハイレゾ音源の再生も可能だ

プリインストールされる音楽プレーヤーアプリ「音楽」では、ハイレゾ音源の再生も可能だ

細かな点だが、ホールセンサーが追加されたためコンパスアプリやナビアプリなど、方位情報を計測するアプリにも対応した

トリプルカメラに進化したメインカメラ。超広角と標準画角の切り替えが可能に

「P30 lite」のもっとも大きな進化点はカメラだろう。特に、メインカメラは約2,400万画素(標準カメラ、27mm)、約800万画素(超広角カメラ、17mm)、約200万画素(被写界深度計測)という組み合わせのトリプルカメラ構成となり、約1.6倍の光学ズームが行えるようになった。ちなみに、フロントカメラも約2,400万画素という高解像度なイメージセンサーを採用している。

以下に、本機のメインカメラで撮影した写真の作例を掲載する。いずれも初期設定のままカメラ任せのオートモードで撮影を行っている。

P30 liteの標準カメラで撮影

植栽を接写気味に撮影。背景が少しぼやけて立体感が感じられる。スマホのカメラが得意な曇天の日中ということもあり、仕上がりはきれいだ

P30 liteの超広角カメラで撮影

同じ構図を超広角カメラに切り替えて撮影。周辺部の荒れや流れも皆無ではないが、この価格帯なら許容範囲内だろう。カメラを切り替えても発色の違いがさほど大きくないのも好印象である

P30 liteの標準カメラで撮影

丸の内の夜景。暗部ディテールがぼやけているが、光量が増えたことで比較的鮮明に写っている。ノイズもこのクラスとしてはかなり少ない

P30 liteの超広角カメラで撮影

上と同じ構図を超広角カメラに切り替えて撮影した。35mm換算で17mmという画角となり、駅舎の大部分が構図に収まっている。ただし解像感は今ひとつ

P30 liteの夜景モードで撮影

こちらは長時間露光を使った夜景モードで撮影。この構図では4秒間の露光だった。暗部の解像感が顕著に向上している

P20 liteで撮影

同じ構図をP20 liteで撮影。P30 liteとの光量の違いは歴然としており、全般に暗い仕上がりだ

同じ構図をP20 liteで撮影。P30 liteとの光量の違いは歴然としており、全般に暗い仕上がりだ

P30 liteの標準カメラで撮影

水族館の巨大な水槽を撮影。明暗差の大きな構図だがノイズも少なく、手ぶれや被写体ぶれを押さえて撮影できた

P30 liteの超広角カメラで撮影

上と同じ構図を広角カメラで撮影。水槽全体が構図に収まった

上と同じ構図を広角カメラで撮影。水槽全体が構図に収まった

P30 liteの標準カメラで撮影

LED照明の下で撮影。ややアンダー気味に感じられるが、肉眼の印象と近い仕上がりとなった

LED照明の下で撮影。ややアンダー気味に感じられるが、肉眼の印象と近い仕上がりとなった

トリプルカメラとなり、超広角撮影に対応したことで構図の幅が広がり、撮影がより楽しく行えるようになった。これに加えて、高感度撮影にも強くなり、光量が増えたためノイズが減少したほか、手ぶれ被写体ぶれも減少しており、夜景撮影でも失敗写真が少なく済んだ。ライカ監修の高性能カメラを搭載する上位モデルの「P30」や「P30 Pro」のような超現実的な写真とまではいかないが、3万円台のスマートフォンとしては十分に高性能なカメラと言える。

バッテリー容量が1割アップし、フル充電で丸1日は利用可能

最後にバッテリー性能を見てみよう。搭載されるバッテリーは容量約3,340 mAhで、P20 liteの3,000mAhよりも約1割の容量アップとなっている。電池持ちの指標をファーウェイは公表していないが、auの調べた「電池持ち時間」では、P20 liteとP30 lite(au版P30 lite Premiumの数値)ともに約75時間で変わりはない。 連続通話時間はP30 liteが約1,180分で、P20 liteは約1,100分、連続待受時間は、P30 liteが約390時間で、P20 liteが約350時間となっている。こうしたスペック値を見る限り、電池持ちはP20 liteと大きな違いはないようだ。

今回の検証は5日間行ったが、その間に行った充電は3回で済んだ。なお、前半3日は待ち受け主体でフル充電から約40時間は充電を行わずに済んでいる。後半2日は撮影やベンチマークテストなどで1日に断続的に4時間ほど利用するペースだったが、それでもフル充電から24時間使ってもバッテリー残量は20%以上残っていた。極端にバッテリーが長持ちするということはないが、1日に4時間ほど使う筆者の利用パターンであれば、フル充電で1日使い続けることは十分可能だった。

大激戦の3万円台のSIMフリースマホだが、カメラ性能で優位性あり

P30 liteは、高いコストパフォーマンスで注目の製品だが、本機のライバルとなる3万円台のSIMフリースマートフォンを見ると、今年は特に種類が豊富だ。FeliCaポートや有機ELディスプレイを備えるサムスンの「Galaxy A30」、NFCポートを備えるモトローラ「moto g7」、Snapdragon 660を搭載することで処理性能では一歩抜きん出たASUS「ZenFone Max Pro (M2) 」など、いずれも本機とは異なる魅力を持っている。また、同じファーウェイの旧モデル「nova lite 3」や「P20 lite」は、今や1万円台目前まで価格が下がっており、身内のライバルも無視できない。

ライバルに対する本機のアドバンテージは、やはりカメラ性能だろう。超広角カメラを搭載することで、構図のバリエーションに幅が増えたうえに、高感度撮影も強くなっており、トータルでの満足度が高い。価格.comでも人気の高かったP20 liteの後継として、今夏のエントリー向けSIMフリースマホの中では、やはり頭ひとつ抜けた存在と言えそうだ。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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