Windows 10への移行準備が整ったところで、いよいよ移行作業に移ろう。今回は、今使っているWindows 7をそのままWindows 10へアップグレードする方法だ。はじめに、Windows 10のエディションの違いや、入手方法も解説する。
Windows 10へのアップグレードは、Windows 7を起動した状態で実行する
Windows 10には大別すると、「Home」「Pro」「Enterprise」「Education」と4つのエディションがある。「Enterprise」は企業向け、「Education」は教育機関向けなので、一般ユーザーは「Home」か「Pro」を選択することになる。
「Home」と「Pro」の機能の違いだが、「Home」は一般ユーザー、「Pro」は一般ユーザーおよびスモールビジネス向けと定義されている。
「Pro」のみの主な機能としては、セキュリティ関連のハードディスクを暗号化する「BitLocker」と企業の情報漏えいを防ぐ「Windows 情報保護」のほか、企業のシステム管理に利用する機能などがある。
より詳しい情報は、マイクロソフトが公開している「Windows 10 HomeとProの違い」のWebページで確認しよう。
■関連情報
・Windows 10 HomeとProの違い(マイクロソフト)
加えて、今使っているWindows 7のエディションと、Windows 10のエディションの関係も理解しておきたい。アップグレードする場合、Windows 7のエディションに対応するWindows 10のエディションは、以下のようになっている。
また、Windows 7が32bit版であればWindows 10も32bit版に、64bit版であれば64bit版にアップグレードされる。
もちろん、新規インストールする場合は購入したWindows 10のライセンスに従ってエディションと、システム構成が対応していたら32bit版か64bit版も選べる。
Windows 7のエディションと、32bit版か64bit版かは、コントロールパネルを開いて「システムとセキュリティ」→「システム」とクリックするとわかる。
この画面で、エディションとシステムの種類(32bit版/64bit版)がわかる
Windows 10は、基本的に新規購入することになる。ただし、条件付きながら無料で利用できるケースもあるので(詳細は後述)、該当しないか確認しておこう。
まずは、購入方法から。Windows 10の販売形態としては、「パッケージ版」「ダウンロード(オンラインコード)版」「DSP(デリバリー・サービス・パートナー)版」の3つがある。
紙の箱に入った製品で、インストールディスクのUSBメモリーと、ライセンス認証に必要なプロダクトキーが付属する。
インストールディスクはDVDではなく、USBメモリーだ
プロダクトキーのみの販売で、インストールプログラムはマイクロソフトのWebページからダウンロードし、自分でインストールディスクを作成する必要がある。
Windows 10のダウンロードページ(https://www.microsoft.com/ja-jp/software-download/windows10ISO)
ここからISOイメージをダウンロードし、DVDまたはUSBメモリーを使ってインストールディスクを作成する
パソコン工房やドスパラなどのパソコンショップがメモリーやハードディスク、SSDなど、特定のパーツとセットで販売する。Windows 10のプロダクトキーとインストールディスク(DVDが一般的)が付属する。
エディションと販売形態の違いで販売価格にも差があるので、紹介しておこう。なお、価格は2019年8月現在のものであり、時期によって変動することがあるため、購入時にはしっかり確認していただきたい。
パッケージ版は、販売するショップによって価格に2,000〜3,000円程度の開きがある。「Home」がおおよそ16,400円〜18,770円程度で、「Pro」は23,900円〜27,400円程度。「Home」と「Pro」の価格差は、同一のショップで7,000〜8,000円程度で、もちろん「Home」のほうが安い。
オンラインコード版はインストールディスクが付属しないので安価だと思われがちだが、実際にはパッケージ版よりも若干高い。
「Home」と「Pro」の価格差は、おおよそ7,000〜8,000円程度。オンラインコード版は、パッケージ版よりも数百円高い(※価格は、2019年8月調べ)
DSP版に関しては、どのパーツとセットかで価格が異なる。たとえば、メモリーとセットになっているパソコン工房の「Windows 10 Home 64Bit DSP + CFD W4U2666CM-8G バンドルセット」が23,980円(税別)。同じくメモリーとセットになっているドスパラの「Windows 10 64bit 日本語 (DSP) + Corsair メモリ セット」は21,858円(税別)だ。
こうしてみると、確実に自分が必要なパーツとのセットがあれば一考の価値ありだが、特別安く購入できるわけではないと言える。
●パソコン工房
Windows 10 DSP版パーツバンドルセット
https://www.pc-koubou.jp/goods/windows10_parts.php
●ドスパラ
DSP版 Windows 10
https://www.dospara.co.jp/5info/cts_windows10_start
販売形態の違いや、それらの販売価格を比較してみると、パッケージ版が一番無難な選択だと思う。購入時の参考にしていただければ幸いだ。
なお、2019年10月1日から消費税率が10%にアップする。それまでには購入しておいたほうがいいだろう。
マイクロソフトはWindows 10への移行を推進するにあたり、2015年7月29日から1年間限定で、Windows 7とWindows 8.1ユーザー限定の「無償アップグレードプログラム」を提供していた。
当然、すでに終了しているのだが、ある条件を満たすユーザーは、今でも無償アップグレードが利用できる。条件は、以下だ。
無償アップグレードの必要条件
無償アップグレード期間内(2016年7月29日19:00以前)に、今使っているパソコンを一度でもWindows 10にアップグレードしたことがある
ようは、無償アップグレードを使って一度はWindows 10にしたが、元に戻したユーザーということ。これに該当するユーザーは、前述の「Windows 10のダウンロード」(https://www.microsoft.com/ja-jp/software-download/windows10ISO)ページからISOイメージをダウンロードし、無料でアップグレードができる。
このときプロダクトキーは、Windows 7またはWindows 8.1と同じものを使うことになる。上記条件に該当しないユーザーは、Windows 10(のプロダクトキー)を新規に購入しないとライセンス違反になるので注意が必要だ。
Windows 10を入手したらいよいよ、アップグレード作業だ。ただその前に、無用なトラブルを避けるためにも下記の項目をチェックしておこう。
・大切なデータのバックアップが取れているか最終確認する
・Cドライブに十分な空きがあるか確認する
(最低でも20GB、できれば40GB程度)
・起動しているアプリは終了させておく
(開いてるファイルは保存)
・セキュリティ対策ソフトを停止する
・マウスとキーボード以外の周辺機器をすべて取り外す
・ノートパソコンはバッテリー駆動ではなく、電源アダプターを接続する
準備ができたら、アップグレードを実行しよう。以下では、パッケージ版を使って手順を解説する。
まずは、Windows 7を起動したままインストールディスクのUSBメモリーを装着する。セットアッププログラムが起動したら、「更新プログラム、ドライバー、オプション機能をダウンロードする(推奨)」が選択されていることを確認し、「次へ」をクリックする。
セットアッププログラムが自動起動しない場合はエクスプローラー画面を開き、USBメモリー内の「setup.exe」をダブルクリックすれば起動する。
インストールディスクをセットするとこの画面が表示されるので、「次へ」をクリック
セットアップ画面が表示されないときは、「setup.exe」をダブルクリック
更新プログラムのダウンロードが始まり、準備が進む。途中、「適用される通知とライセンス条項」が表示されたら内容に目を通して「同意する」をクリックする。
ライセンス条項に目を通して「同意する」をクリック
ダウンロードが継続され、Windows 10のインストールに必要な作業の確認が行われる。しばらくすると「次の作業が必要です」と表示されるので、「引き継ぐものを変更」をクリックする。
「引き継ぐ項目を選んでください」画面が表示されるので、「個人用ファイルとアプリを引き継ぐ」が選択されていることを確認して「次へ」をクリックする。
この画面で「引き継ぐものを変更」をクリック
次の画面で「個人用ファイルとアプリを引き継ぐ」が選択されていることを確認して「次へ」をクリック
またしばらくすると、「次の作業が必要です」と表示されるケースがある。その場合は、Windows 10では動作しないソフト(アプリ)などがあり、それに対処しなければならない。表示内容をよく読み、ソフト(アプリ)をアンインストールするなど指示に従う。すべて対処できたら、「確認」をクリックする。
注意事項(複数の場合もあり)が表示されたら内容を確認し、適切に対処して最後に「確認」をクリック
更新プログラムのダウンロードが完了すると、ハードディスクの空き領域が十分であるか、確認される。問題がなければ「インストールする準備ができました」と表示されるので、「インストール」をクリックする。
ここからWindows 10のインストールが始まるので、終了するまで絶対に電源を切ったりしないこと。途中で強制的に中断すると、パソコンが起動しなくなる。
インストールの準備が整ったらこの画面になるので「インストール」をクリック
インストール中は数回、自動で再起動がかかる。完了まで、ユーザーが操作することは何もない。進行状況がパーセンテージで表示されるので、参考にしよう
インストールが完了すると、サインイン画面になる。この段階ではユーザーアカウントがWindows 7と同じなので、Windows 7で使っていたパスワードを入力してサインインしよう。
サインイン後、さらに更新プログラムが自動でダウンロード、インストールされる。その途中、「デバイスのプライバシー設定の選択」画面が表示されるので、「同意」をクリックする。
更新が完了したらデスクトップが表示される。これで、Windows 10へのアップグレードは完了だ。
サインイン画面では、Windows 7と同じユーザーアカウントでサインインする
デスクトップ画面が表示されたら、アップグレードはひとまず完了だ
データがなくなっていないか、ソフトはきちんと起動するかなど、問題がないか確認してみよう。また、必要な周辺機器も接続して動作を確認したい。
場合によっては、ソフト(アプリ)やドライバーソフトの再インストールが必要になるケースもあるかもしれない。新しい環境への移行ではこうした対処も必要になるので、しっかりチェックしておこう。
Windows 10へのアップグレード直後は、「Windows Update」による更新プログラムも適用しておきたい。
操作は、「スタートメニュー」を開き、左に並ぶボタンの「設定(歯車アイコン)」をクリック。「設定」画面が開くので、「更新とセキュリティ」をクリックする。「Windows Update」の画面になるので、「更新プログラムのチェック」をクリックして更新プログラムをインストールする。
「スタートメニュー」を開いて「設定」をクリック
「設定」画面で「更新とセキュリティ」をクリック
この画面で「更新プログラムのチェック」をクリック
Windows 10のユーザーアカウントは、Windows 7と同じように任意のユーザー名を使う「ローカルアカウント」と、電子メールを使う「Microsoft アカウント」の2種類がある。
「ローカルアカウント」は、そのパソコン固有のアカウントであり、たとえ複数のパソコンを持っていても設定等の同期ができない。
対して「Microsoft アカウント」は、インターネット経由で個人の認証を行う。そのため、複数のパソコンに同じアカウントでサインインすると、テーマや壁紙、ブラウザソフトのお気に入りなどの個人設定が同期され、パソコンごとの設定が不要になる。
また、「Microsoft アカウント」がオンラインサービスの「Outlook.com」や「OneDrive」とも連携するので、「Microsoft アカウント」でサインインした方が何かと便利だ。Windows 10での推奨も、「Microsoft アカウント」になっている。
そこで、「ローカルアカウント」を「Microsoft アカウント」に切り替えておこう。
操作は、「設定」画面を開いて「アカウント」をクリック。「ユーザーの情報」画面が開くので、「Microsoft アカウントでのサインインに切り替える」をクリックする。
「設定」から「アカウント」を開き、「Microsoft アカウントでのサインインに切り替える」をクリック
サインイン画面が表示されるので、すでに「Microsoft アカウント」を持っているならそのメールアドレスを入力して「次へ」をクリック。「Outlook.com」や「OneDrive」を使っていたなら、そのアカウントということだ。もしも持っていない場合は、「作成」から新規作成できる。
次の画面でパスワードを入力して「サインイン」をクリック。ここで、Windows 7で使っていたユーザーアカウントのパスワード入力を求められるので、入力したら「次へ」をクリックする。
「Microsoft アカウント」に使っているメールアドレスを入力して「次へ」をクリック
「Microsoft アカウント」のパスワードを入力して「サインイン」をクリック
Windows 7のサインインに使っていたパスワードを入力して「次へ」をクリック
次に、「PINを作成します」と表示される。PIN(Personal Identification Number = 個人識別番号)は、「Microsoft アカウント」のパスワードの代わりに使用する最低4文字の暗証番号(PINコード)のことだ。
従来のパスワードはインターネット経由で個人認証をするため、流出の可能性がある。パスワードが流出すると、パソコンを乗っ取られたりする危険があるのだ。
一方、PINは、パソコン内に保存される。そのため、インターネットに流出することがなく、セキュリティ面の安心度が高くなる。ただし、PINを作成したパソコンでのみ有効であることは理解しておきたい。マイクロソフトはこのPINを推奨しているので、作成しておこう。
PINを作成するには「次へ」をクリックし、次の画面で最低4文字の任意のPINコードを入力する。「英字と記号を含める」にチェックを入れると、数字に加えて英字と記号も使えるようになる。「PINの要件」をクリックすると、使える文字数などの詳細を確認できる。
入力したら、「OK」をクリックする。「ユーザーの情報」画面に戻ると、名前の下に「Microsoft アカウント」のメールアドレスが表示される。ここで本人確認をするために「確認する」をクリックし、画面の指示に従って本人確認を済ませよう。本人確認ができたら、アカウントの切り替えは完了だ。
PINを作成するために「次へ」をクリック。作成しない、または後で設定したい場合は、右上の「×」をクリックすれば画面が閉じる
PINに使う任意のPINコードを入力して「OK」をクリック
この画面に戻るので、「確認する」をクリック
本人確認に使う項目を選び、指示に従って確認作業を完了する
サインインの仕方は、従来と変わらない。Windows 10を起動すると背景が写真のロック画面が表示されるのでクリック。PINの入力を求められるので、設定したPINコードを入力して「Enter」キーを押す。
Windows 10の起動時に表示されるロック画面をクリック
PINコードを入力してサインインする
万一、Windows 10へのアップグレード後に問題が発生したときは、アップグレード前のWindows 7に戻すことができる。
操作は、「設定」画面を開いて「更新とセキュリティ」をクリック。次の画面で左サイドにある「回復」をクリックし、「Windows 7に戻す」の「開始する」をクリックして指示に従う。
「Windows 7に戻す」の「開始する」をクリックすれば、アップグレード前の環境に戻すことができる
パソコン環境の移行は、何かと手間がかかる。今回解説したアップグレードは、環境をそのまま引き継ぐので最も手軽な方法だが、逆にそれが思わぬトラブルを招くこともありうる。ぜひ、慎重に作業を進めていただきたい。
次回は、今使っているパソコンにWindows 10を新規インストールする方法を解説する。今使っている環境がなくなってしまうので、これまでに解説した内容を参考に、各種データのバックアップなどを進めておこう。
パソコンからモバイルまで、ハード&ソフトのわかりやすい操作解説を心がける。趣味は山登りにクルマという、アウトドア志向のIT系フリーライター。