PDA博物館
平成最後の日にTwitterでトレンド入りした“キッズ向けPDA”

大人だけじゃない、キッズ向けPDA「スーパーピッキートーク」がネットの楽しさを教えてくれた


モバイル黎明期に誕生したPDAを振り返る本連載。巨大アーケードゲーム「ギャラクシアン3」のために保管用マンション購入した永津氏(関連記事はこちら)、日本でLXを作ろうとした元ソニー社員・樋口氏(関連記事はこちら)に続き、2019年4月30日にNHKで放映された「懐かしの平成ガジェット鑑定ショー」の出演者に話をうかがった。

今回登場するのは、同番組で女児向けの電子手帳「スーパーピッキートーク」(カシオ)を披露した、りりさん。平成2年生まれという、本連載では最年少の女性である。りりさんが同番組の午前の部で優勝を飾ると、「スーパーピッキートーク」が見事にTwitterでトレンド入りを果たした。当時、小学生だった彼女は、マニュアルを読みながら、見よう見まねでダイヤルアップ接続していたという。(※聞き手=PDA博物館初代館長 マイカ・井上真花)

りりさん。1990年生まれ、東京都出身。小学生のころから、スーパーピッキートークでダイヤルアップ接続に親しむ。中学生以降は2ch(現5ch)のガイドライン板やテキストサイト、ニコニコ動画といった、ゼロ年代インターネット文化に首まで浸かる、あまり健康によくない青春を送る。現在はごく普通の労働者の顔をしつつ、ゼロ年代インターネットの思い出を語り合うイベントをこれまでに計4回開催

小学生がダイヤルアップ接続にチャレンジ!

――今日持ってきていただいたスーパーピッキートークは、当時持っていたものですか?

いいえ。2019年1月に渋谷ヒカリエで開催された「平成ネット史(仮)展」でのトークイベント「なつかしガジェット鑑定ショー」に出場する際、そこでぜひスーパーピッキートークを出したいと思って、買い直したものです。

スーパーピッキートークのパッケージ。女児向けのかわいいデザインだ

スーパーピッキートークのパッケージ。女児向けのかわいいデザインだ

パッケージを開いたところ。電源を入れると画面が表示されるが、タッチパネルのトラブルで、ここから先に進まない

スタイラスを収納できる場所がある。こうしてみると、まるでPDAのようだ

スタイラスを収納できる場所がある。こうしてみると、まるでPDAのようだ

スーパーピッキートークは、単4形乾電池2本で動く

スーパーピッキートークは、単4形乾電池2本で動く

スタイラスで液晶をタップして使用する

スタイラスで液晶をタップして使用する

――申し訳ないのですが、私、スーパーピッキートークについてよく知らないので教えてください。これはおもちゃ? それとも電子手帳?

平成9年に発売された、子ども用の電子手帳です。当時、私は小学2年生でしたが、その時はインターネットブームで、子どもでも、「たまごっち」や「ゲームボーイ」でデジタルとつながる時代でした。大人の間で「ザウルス」のような電子手帳が流行っていたので、子ども向け製品も発売されたのだと思います。

りりさんと一緒に、パッケージの中身を確認。同梱のマニュアルや図説には、キャラの説明や使い方などが、子どもにもわかるように書かれている

――りりさんは、どういうきっかけで入手されたのですか?

おもちゃ売り場で見つけて、欲しくて買ってもらったんです。最初はほぼ毎日、これでペットのハムスターを育てたり、部屋をデザインしたり、絵を描いたりしていました。

そのうち、それだけでは物足りなくなって、スーパーグルービーネットがやりたくなったんです。

――スーパーグルービーネットとは?

スーパーピッキートークに専用のモデムを接続して、アクセスできるネットサービスです。どういうものか私もよくわからなかったんですが、マニュアルにはとても魅力的な言葉が並んでいて、どうしても、その画面を見てみたいと思うようになりました。

マニュアルには「どうぶつ」「アップ」「グル友」などの説明が書かれていた

マニュアルには「どうぶつ」「アップ」「グル友」などの説明が書かれていた

そこで、親に頼んで専用モデムを買ってもらいました。ただ、専用モデムに接続すればすぐにネットにつながるわけではありません。そこで、がんばって説明書を読みながら、ダイヤルアップ接続に挑戦しました。

――小学生がモデムでダイヤルアップ接続! 難しかったでしょう。

そうですね。確かに難しかったけど、説明用のVHSビデオもついていましたし。こうやってつなげばいいのかな、電話をつなぐのはここかなと思いながら、何とか接続しました。それでも成功率は3割ぐらいだったから、子どもだった私はイライラしたんだけど、つながったときの喜びは大きくて。

使い方を説明するVHSビデオ。今でいうところの、YouTubeでの動画解説のようなもの?

使い方を説明するVHSビデオ。今でいうところの、YouTubeでの動画解説のようなもの?

前の「カラーピッキートーク」は確か、音響カプラーで通信できたと思います。だから、ダイヤルアップの「ピーガガガ」という音、なんとなく聞き覚えがあるんですよ(笑)。そんなことを子どもにさせようとしたカシオの人、すごいですよね。「STEM教育」の走りだったのかな(笑)。

「スーパーグルービーネットに接続できたときは、とてもうれしかった」

「スーパーグルービーネットに接続できたときは、とてもうれしかった」

――スーパーグルービーネットを見て、どう思いましたか?

楽しかったです。特に好きだったのが「グル友」という掲示板。そこには、スーパーピッキートークのユーザーが書いた手書きメモが公開されていて、それをいつも眺めていました。スーパーピッキートークは黒、緑、オレンジ、白の4色しか使えないのに、その4色で工夫して書かれていたイラストはとてもハイクオリティで、週に1度の更新でしたが、楽しみにしていました。

パッケージに描かれていた手書きメモのサンプル。4色という限られた色数のなかで、工夫を凝らして書かれていた

私、とてもポケモンが好きだったんです。その少し前にポケモンが流行っていて、私も夢中になって遊んでいたんですが、学校の友だちはだんだん飽きてきたらしく、「ポケモンってダサいよね」とか言うんです。私はずっと好きだったから、それを聞くと悲しい気持ちになりました。

ところが、スーパーグルービーネットには「ポケモンクラブ」があって、いろんな人が手書きのポケモンイラストを公開していました。ネットに接続すれば、遠く離れていても同じように、ポケモンが好きな人がたくさんいる。顔も知らないし、言葉を交わすこともないけれど、私と同じ気持ちの人がたくさんいるとわかって、すごくうれしかったんです。

今のネットもそうですよね。Twitterをみると、自分と同じ気持ちを抱えている人がいる。それがわかるだけで、うれしい気持ちになります。

Twitterで見つけた生涯のパートナー

――インターネットを使い始めたのはいつ?

中1でパソコン部に入り、中3になったころ、親にパソコンを買ってもらってインターネットを見るようになりました。そのころはテキストサイトが流行っていて、「ちゆ12歳」とか「侍魂(さむらいだましい)」がおもしろくて、ずっと見ていました。あと、「おもしろフラッシュ」というのも好きでした。先輩がよく知っていて、いろいろ教えてもらったんです。モナーとか、ギコとか、オラえもんとか。

いち時期は、モバゲーで日記を書いたりしていたんですが、閲覧数があまりにも少なくて、辞めてしまいました。もっと、たくさんの人に見てもらえると思っていたんですよね。見てほしかったんですね、きっと。

「先輩に『侍魂』を教えてもらって、よく見ていました」

「先輩に『侍魂』を教えてもらって、よく見ていました」

――Twitterを始めたのは?

2009年に登録し、使い始めたのが2011年だったかな。東日本大震災があって、津田大介さんが「みんなTwitterとか使ったほうがいい」と言っていたので、使ってみようと思って。

私は、絵は描けないので「グル友」に投稿できなかったんですが、文章は書けるから、それならやれるかなと。Twitterでいろんな人と出会い、相互フォローしたり、リツイートしたりして、広がっていきました。今のフォロワーは、630人ぐらい。いつも読んでいてくれているのはたぶん100人ぐらいだと思うんだけど、でも考えてみると、100人に向かって話すってすごいことですよね。

実はそこで、恋人も見つけたんです。ある日、フォローしていた人がリツイートした彼のツイートを見て、「あ、おもしろいな」と。そこでフォローしたら、彼も私をフォローしてくれて。それから2年ぐらい経って「会おうか」ということになり、付き合うことになりました。

その人が、この前プロポーズしてくれたので、それをTwitterで書いたら「おめでとう」ってたくさんの人に言われてビックリしました。「ああ、こんなにたくさんの人が見てくれていたんだ」と。うれしかったです。

「婚約したことをTwitterでつぶやいたら、たくさんの人からお祝いの言葉が届きました」

「婚約したことをTwitterでつぶやいたら、たくさんの人からお祝いの言葉が届きました」

ネットの世界に連れ出してくれた友だち、それがスーパーピッキートーク

――現在は、どんな端末を使っているんですか?

ASUSの「Zenfone Max Pro」です。今は何でもスマホでやれるから、もう、パソコンはあまり使ってません。スマホでは、主にTwitterやゲーム、ネット検索に使っています。あと、動画も見ますね。YouTubeとかニコ動とか。

りりさんが使っているZenfone Max Pro。現在は、このスマートフォンでTwitterを楽しんでいる

りりさんが使っているZenfone Max Pro。現在は、このスマートフォンでTwitterを楽しんでいる

スーパーピッキートークの時代と比べるとパワーが違うから、絵や写真もパーッと表示されるし、キレイですよね。でも、それが何となく味気なく感じることもあります。あのころはレスポンスが悪くて、少しずつ絵が表示されていくんですが、それを待つ時間も楽しかった。あのワクワクは、少なくなった気がします。

とは言え、ネットが新しい世界の扉を開くのは、昔も今も同じ。だから今も、ネットを見るのは好きです。2019年4月30日、NHKの「平成ネット史(仮)」に出ることになって、スーパーピッキートークを持っていったのは、やっぱりこれが一番好きだったから。私にネットの世界を教えてくれたのは、この端末でした。

一般的にはマイナーな存在だけど、私にとっては、ネットの素晴らしさや楽しさを教えてくれた大切な「トモダチ」。遠くの誰か知らない人とつながる楽しさを教えてくれた端末、それがこのスーパーピッキートークなんです。

取材を終えて(井上真花)

インタビューの前日、Twitterでりりさんのツイートをチェックしたら何と、「恋人からプロポーズされました」という投稿が! そんなおめでたいタイミングでインタビューなんていいのかな、と思ったのですが、TwitterのDMで問い合わせたところ、「むしろ最高です!」というお返事。いつも笑顔がステキなりりさん、プロフィール写真を撮影する際も自然とニッコリされていましたが、「こんなふうに笑えるようになったのも、彼のおかげなんです」とのこと。りりさん、そんな人にめぐり会えてよかったですね、どうぞ末永くお幸せに。

オフィスマイカ

オフィスマイカ

編集プロダクション。「美味しいもの」と「小さいもの」が大好物。 好奇心の赴くまま、良いモノを求めてどこまでも!(ただし、国内限定)

関連記事
「価格.comマガジン」プレゼントマンデー
ページトップへ戻る