レビュー
シャープのこだわりが詰まったもうひとつのハイエンドモデル

日常の使い勝手とゲーム用途を両立させた、和風ゲーミングスマホ「AQUOS zero2」

シャープのハイエンドスマートフォン「AQUOS zero2」がついに発売された。軽量ボディ、自社開発の有機ELディスプレイなど同社のこだわりが詰まった個性的な1台だ。au版「SHV47」を使いその特徴に迫った。

軽さに特化しつつ、ゲーム用途を意識したもうひとつのハイエンドモデル

「AQUOS sense3」シリーズが好調のシャープだが、ハイエンドモデルの「AQUOS zero2」が1月30日からNTTドコモ版「SH-M01」が、31日にはau版「SHV47」とソフトバンク版が登場する。

シャープのもうひとつのハイエンドモデル「AQUOS R3」は、今では少数派となったワンセグ・フルセグテレビチューナーを搭載するなど、網羅的な機能性と、倍速駆動のIGZO液晶ディスプレイを搭載するなどAV機能が特徴だ。いっぽう、本機「AQUOS zero2」は、有機ELディスプレイや軽量ボディ、大容量のメモリーやストレージなど、より先進的で尖ったスペックを備えるが、ワンセグ・フルセグチューナー、ヘッドホン端子、microSDメモリーカードスロットなど省略された機能も多く、軽快さとパワフルさに特化したハイエンドモデルと言える。前モデル「AQUOS zero」がゲーミングスマホとして使われることが多かったこともあり、本機はゲームを意識した機能や性能が多いのも「AQUOS R3」との違いだ。

本機のボディサイズは、約74(幅)×158(高さ)×8.8(厚さ)mmで、重量は約141g。なお、9月に本機が初めて披露されたときは暫定重量は約143gだったが、後に141gへ訂正された。手にした実機は確かに軽い。本機とサイズの近いスマートフォンは180〜200gくらいの重量のものが多いので、本機の軽さが、どれほどのものかわかるだろう。手にした瞬間のインパクトもさることながら、しばらく持ち続けた後の腕の疲労感でも違いを実感でき、ゲームプレイや動画視聴などで長時間持ち続ける場合に、とても重宝する。

シャープが行った「AQUOS zero2」を水に浮かべるデモの様子。さすがに水より比重は大きいが、水の上に浮かべたシートに置いたところ水没はしなかった

背面デザインについては、アラミド繊維を使った複合素材を用いた前モデル「AQUOS zero」のような個性には乏しい。ただし、軽量かつ強度にすぐれたマグネシウム合金のフレームが使われるなど、凝った作りだ。なお、ボディはIPX5/8等級の防水仕様と、IP6X等級の防塵仕様に対応している。

軽さを追求したため、背面の素材には樹脂を採用している。なお、メインカメラ周辺にFeliCaポートが搭載されている

軽さを追求したため、背面の素材には樹脂を採用している

曲面ディスプレイを採用し、手が当たる側面部分の薄さを演出している

曲面ディスプレイを採用し、手が当たる側面部分の薄さを演出している

前モデル「AQUOS zero」よりも5gの軽量化を実現。141gという本体重量は、長く持ち続けても疲れにくい

前モデル「AQUOS zero」よりも5gの軽量化を実現。141gという本体重量は、長く持ち続けても疲れにくい

右側面に、ボリュームと電源の各ボタンが配置される

右側面に、ボリュームと電源の各ボタンが配置される

ボディ下面にはUSB Type-Cポートが配置される。同ポートの右に見えるのはスピーカーホール、左端に見える小さな丸い穴はLEDのインジケーターだ

ボディ上面に、SIMカードスロットが配置される。ヘッドホン端子は非搭載。有線イヤホンは同梱されるUSB Type-C変換アダプターを使って接続する

キャリアモデルなのでSIMカードスロットは1基。microSDXCメモリーカードスロットは非搭載だ

キャリアモデルなのでSIMカードスロットは1基。microSDXCメモリーカードスロットは非搭載だ

自社開発の約6.4インチ有機ELディスプレイは、2,340×1,080のフルHD+表示に対応し、全面がゆるやかにラウンドした曲面ディスプレイだ。前モデル「AQUOS zero」と比較して最大輝度が約150%向上し、画面のサイズも0.2インチほど広がった。そのいっぽうで4倍速表示に対応させるため、画面解像度がWQHD+からフルHD+へとスペックダウンしている。なお、Dolby VisionやHDR10に対応しているので、ダイナミックレンジの高い映像の再生も得意だ。

本機のディスプレイは4倍速駆動がウリだが、これは毎秒120コマの倍速駆動の、1コマおきに、黒の表示を差し込むことで、毎秒240コマ相当としているもので、残像感の軽減に効果がある。また、タッチパネルのスキャンも通常のスマートフォンの4倍速(240Hz)で行うことで、通常の液晶ディスプレイでは平均で36msという遅延を約7msまで短縮させることに成功している。いくつかのゲームを試してみたが、タッチ操作のレスポンスは速く、特にリズムゲームなどではプレイがしやすかった。

コントラスト比の高い有機ELディスプレイは、陰影のある映像の再生に適している

コントラスト比の高い有機ELディスプレイは、陰影のある映像の再生に適している

最大輝度が150%向上したことで、明るい屋外での視認性も改善された

最大輝度が150%向上したことで、明るい屋外での視認性も改善された

白の背景で電子書籍を表示させた。前モデル「AQUOS zero」では色かぶりが見られたが、本機のディスプレイはそうした色かぶりが見られない

AQUOSシリーズ初のディスプレイ指紋認証機能を搭載。認証精度も高い

AQUOSシリーズ初のディスプレイ指紋認証機能を搭載。認証精度も高い

Snapdragon 855に8GBのメモリーを組み合わせる。OSはAndroid 10

「AQUOS zero2」の基本性能を見てみよう。搭載されるSoCは、「AQUOS R3」と同じハイエンド向け「Snapdragon 855」だ。ただしメモリーが6GBから8GBへ、ストレージが128GBから256GBにそれぞれ増強されている。OSも、AQUOSシリーズとしては初のAndroid 10だ。なお、メモリーは「AQUOS R3」と同じLPDDR4X規格だが、ストレージはUFS 3.0で「AQUOS R3」と比較して書き込み速度で2倍、読み込み速度で約1.8倍の高速化を実現している。

実際の処理性能をベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク(Ver.8.2.2)」を使って計測したところ、総合スコアは431,798(内訳、CPU:131,959、GPU:152,433、MEM;72,318、UX:75,088)となった。このスコアは、Snapdragon 855搭載機としても中でも上位にあたり、最速クラスのサムスン「Galaxy Note 10+」やBlackShark「BlackShark2」に肉薄するレベルだ。サブスコアを見ると「MEM」項目が高く、LPDDR4Xメモリーや、UFS3.0ストレージなどが効いているようだ。

AnTuTuベンチマークのスコア。左が本機、右が現状最速クラスのサムスン「Galaxy Note 10+」のもの。総合スコアでは肉薄している

SoCの冷却にも注力されており、ヒートシンクの面積を増やし、熱をボディ全体に広く拡散させ効率的な冷却を行っている。そのため、検証中にボディが極端に熱を持つことはなく、高負荷なゲームを長時間続けても熱だれは見られなかった。

「アイドルマスターミリオンライブシアターデイズ」の39人ライブは、1世代前のSnapdragon 845機でもコマ落ちが発生するが、本機は終始なめらかに動作し続けた。また、動作中の発熱やバッテリー消費にも極端な悪化が見られず、基本性能と熱処理能力の高さが実感できた。上記の4倍速駆動のディスプレイのおかげもあり、リズムゲームなどにはかなり適している

デュアルカメラ化されたメインカメラ。特に、標準カメラの画質が大幅に向上

本機のメインカメラは、約1,220万画素のイメージセンサーに26mm(以下いずれも35mm換算の焦点距離)のレンズを組み合わせた標準カメラと、約2,010万画素のイメージセンサーに18mmのレンズを組み合わせた超広角カメラという組み合わせのデュアルカメラで、約1.4倍の光学ズーム撮影が可能だ。なお、標準カメラには全面位相差AFと光学式手ぶれ補正機構を搭載している。いっぽうの超広角カメラは電子式手ぶれ補正を備える。また、フロントカメラは、約800万画素のイメージセンサーのシングルカメラだ。

背面のメインカメラは、標準カメラと超広角カメラのデュアルカメラ

背面のメインカメラは、標準カメラと超広角カメラのデュアルカメラ

フロントカメラは約800万画素。自分撮りのほか顔認証にも使われる

フロントカメラは約800万画素。自分撮りのほか顔認証にも使われる

以下に、本機のメインカメラを使って撮影した静止画の作例を掲載する。いずれもカメラ任せの「AIオート」モードで撮影している。

標準カメラで撮影

日中の風景を撮影。ややシアンに寄っているが、青空の階調や、周辺部分の解像感は十分だ

日中の風景を撮影。ややシアンに寄っているが、青空の階調や、周辺部分の解像感は十分だ

超広角カメラで撮影

同じ構図を超広角カメラで撮影。ホワイトバランスはこちらのほうが肉眼に近い。超広角カメラで起こりがちな周辺部分の粗さも感じられない

標準カメラで撮影

丸の内の夜景を撮影。AQUOSシリーズが苦手にしていた夜景だが、ディテールの解像感やノイズの少なさがかなり向上しており、ライバル機と比較しても大きく見劣りはしていない

超広角カメラで撮影

同じ構図を超広角カメラで撮影。こちらのほうがイメージセンサーの画素数は高いが、全般にぼんやりとしており、駅舎のレンガものっぺりとしている

標準カメラで撮影

夜の花壇を撮影。かなり暗いシーンだが手ぶれも見られず鮮明で、花の発色も良好だ

夜の花壇を撮影。かなり暗いシーンだが手ぶれも見られず鮮明で、花の発色も良好だ

超広角カメラで撮影

同じ構図を超広角カメラで撮影。光量は確保されており明るく写っているが、ディテールはぼんやりとしている

同じ構図を超広角カメラで撮影。光量は確保されており明るく写っているが、ディテールはぼんやりとしている

本機のカメラは前モデル「AQUOS zero」と比較すると見違えるほどの進歩が見られる。まず、デュアルカメラとなったことで構図の切り替えができるようになり、表現の幅が広がった。また、標準カメラでの高感度撮影機能は、競合するハイエンドモデルと比較しても、大きな見劣りは感じられず、夜景の手持ち撮影でも手ぶれは抑えられ、明るく鮮明な写真を手軽に撮影できる。カメラの基本性能が上がったことで、従来からのAIシーン認識機能や「オートフレーミング」「AIライブストーリー」などの魅力が増したと言える。

AQUOSシリーズ初のゲーム最適化機能「ゲーミング設定」はやや地味

本機には、ゲーム重視の一環としてゲーム最適化機能「ゲーミング設定」が搭載されており、上記の4倍速ディスプレイを生かした高速表示や、ゲーム中の通知制御、画質の最適化、処理性能の調整、ゲーム画面の録画などが行える。なお、ゲーム画面の録画機能は、480p、720p、1,080pの3種類から解像度を選ぶことが可能。処理性能の調整は「高精細表示を優先する」か「軽快動作を優先する」の2種類を選べる。

競合モデルの類似機能と比較すると、ボタンひとつでメモリーをクリアする機能が見当たらず、機能が十分というわけでもない。こうしたゲーム最適化機能にありがちな派手な演出もなく、あくまで数ある機能設定のひとつという位置づけのようだ。

新機能のゲーミング設定。4倍速表示もこの設定を通じて利用する

新機能のゲーミング設定。4倍速表示もこの設定を通じて利用する

パフォーマンスの調整は2段階のみ(左画面)。録画は480p、720p、1080pの3種類から解像度を選べる(右画面)

ゲーミング設定を適用するアプリは、スマートフォンが自動で識別してくれるが、手動での登録も可能だ

ゲーミング設定を適用するアプリは、スマートフォンが自動で識別してくれるが、手動での登録も可能だ

処理性能に注力したチューニング。フル充電で1日の利用がぎりぎり

本機は、3,130mAhのバッテリーを内蔵する。バッテリー持ちに関係するスペックを見ると、今回の検証機であるau版「SHV47」では、連続待ち受け時間は約580時間(4G LTEエリア/WiMAX2+ エリア)、連続通話時間は約2,350分、電池持ち時間が約90時間となっている。いずれもハイエンドモデルでは平均的な数値と言ったところだ。今回の検証は短期間だったが、フル充電から24時間経った時点でのバッテリー残量は14%だった。なお、この24時間のうちに、3時間45分スマートフォンを利用した。筆者の検証時における利用パターンとしては標準的な利用時間と利用内容だったが、本機のバッテリーの消費ペースは速く、フルに使うなら1日は持たない印象で、充電器やモバイルバッテリーを持ち歩いたほうがよいだろう。

ゲーム用途と日常の機能のバランスが魅力、人を選びにくいゲーミングスマホ

2019年10月に施行された改正電気通信事業法の影響で、スマートフォンの価格が値上がりした現在、ハイエンドスマホは誰もが気軽に買える存在ではなくなった。ハイエンドスマホには価格に見合った特徴や個性が必要となり、カメラ機能や映像表現にこだわったモデルが増えているが、いっぽうで、いわゆるゲーミングスマホを筆頭に、ソニー「Xperia 5」やサムスン「Galaxy Note 10+」など、ゲームプレイに注力するモデルも増えている。本機もこれに属するモデルと言える。

スマホゲーム市場は、ユーザーの裾野が広がっており、いわゆるガチ勢未満、カジュアル以上の、そこそこ課金も行うミドル層のユーザーが増えているという。そうしたユーザーにとって、ゲームに適した処理性能や機能を備えつつ、薄くて軽い防水・防塵ボディ、日常使っても違和感のないデザインといった要素を兼ね備えた本機はなかなか魅力的な存在と言える。

ただ、ゲーム向けとしてはやや詰めが甘い部分も見受けられる。ひとつは「ゲーミング設定」が最低限の機能にとどまっており、本機ならではの機能に乏しい点だ。また、画面の一部が欠けてしまうノッチ付きのディスプレイや、ヘッドホン端子がないことも、ゲームプレイをメインに考えるとやや不満がある。

ゲームに適したユニークな機能を備えているが、徹底しているわけではない。だが、逆に言うとそこが本機の持ち味であり、ゲームに重心を置きながらほかの機能もバランスよく装備した、人を選びにくい和風ゲーミングスマホと言えるかもしれない。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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