アップル製品間のファイル転送には「AirDrop」、Android端末間には「Nearby Share」がある。しかし現実には、iPhone/iPadとAndroid端末間でファイル転送したいケースも多々あるので、その方法を紹介しよう。
「Send Anywhere」を利用すると、異なるOS間でも手軽にファイル転送ができる。シチュエーションに合わせて転送方法が選べるのも便利だ
ファイル転送は、メールやLINEで送る方法のほか、「OneDrive」や「Google ドライブ」のようなクラウドサービスを使う方法もある。
しかし、メールやLINEは、大量のデータを送るのには不向きだ。また、クラウドサービスだと手間がかかるし、転送用に一定の空き保存領域を確保しておく必要がある。
そこで活用したいのが、以下で紹介するファイル転送サービスの「Send Anywhere」だ。無料で使える「Send Anywhere」で機能的には十分だが、有料版でより多機能な「Sendy PRO/ビジネス」も用意されている。
対応は、iPhone/iPad、Android端末、Windowsパソコン、Mac、Amazon Kindle、Linuxと幅広く、各機器間で相互にファイルをやり取りできる。
ファイルの転送時、基本はインターネット接続が必要だが、Android端末(Android 4.0以降)間のみ、「Wi-Fi Direct」を使うことでインターネットを経由せず、直接やり取りができる。
なお、WindowsパソコンとMacの場合、アプリをインストールすることなく、ブラウザーソフトで送受信することもできる。操作は基本的に、Windows/MacOS用のアプリと共通だ。
下記のダウンロードページで左上の「sendanywhere」の文字をクリックすると、送信/受信用のパネルが表示される。
・「Send Anywhere」の入手先
Windows/MacOS
https://send-anywhere.com/ja/file-transfer
iOS/iPadOS
https://apps.apple.com/app/apple-store/id596642855
Android
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.estmob.android.sendanywhere
まず、「Send Anywhere」で送ることができるファイルの種類だが、送り側のOSによって若干、異なる。ただ基本的には、写真、動画、音声、文書ファイル等など幅広い種類のファイルを送ることができる。
もちろん、送受信はできても、受け取った側にそのファイルを開く環境(対応アプリなど)がなければ開けないことは理解しておきたい。
iOSのファイル送信画面。写真、動画、連絡先、各種ファイルの送信に対応する。iPadOSも同様だ
Androidのファイル送信画面。写真、動画、連絡先、各種ファイルに加え、音声とアプリの送信にも対応する
Windowsのファイル送信画面。ドラッグ&ドロップできる、あらゆるファイルを送信できる。MacOSも同様だ
「Send Anywhere」のファイル転送方法は、3つある。それぞれ、概要を把握しておこう。具体的な使い方は、後述する。
ファイルをサーバーに保存することなく、1対1の機器間で直接転送する。このとき、10分間だけ使用可能なワンタイムのセキュリティキーを使ってお互いを認識する。また、QRコードを読み込むことでも受信できる。
転送できるファイルの容量:無制限
送信するファイルを一時的にサーバーに保存し、共有リンクを作成。あとはリンク先を送り、受信側でダウンロードする。リンクの有効時間は48時間だ。
転送できるファイルの容量:10GB
選択したデバイスにファイル転送の通知を送る。通知を受けた受信側は、セキュリティキーを入力することなく送信側から直接受信することができる。
転送できるファイルの容量:10GB
「6桁キー転送」と「デバイスにダイレクト転送」は、サービスにログイン(無料)することなく利用できる。しかし、「共有リンク転送」の利用にはログインが必要なので、アプリを入手したらログインしておこう。
ログインは、iPhoneとAndroid端末ならアプリを起動して画面左上にある横三本線ボタンをタップ。メニューが開くので、「ログイン」をタップする。
iPadは画面左のメニューにある「もっと見る」から。WindowsとMacOSの場合は、画面左上の機種名またはOS名をクリックして「ログイン」からログインする。
ログインは、メールアドレスとパスワードを設定して会員登録するほか、すでに持っているFacebookかGoogleのアカウントでも可能だ。加えて、iPhone/iPadの場合は、「Appleでサインイン」も選べる。
複数の機器を持っている場合は手軽に「デバイスにダイレクト転送」が使えるため、同じアカウントでログインしておこう。
なお、アカウントの名前であり、ファイルの転送時に機器の識別にも使うプロフィール名は変更が可能だ。自分でわかりやすい名称に変更しておくといい。写真を登録することもできる。
この画面で「ログイン」をタップ。画面最上部に表示されているのが、プロフィール名だ。タップすれば、開く画面でプロフィール名の変更と写真の登録ができる。画面はiOSの例
会員登録するほか、Facebookアカウント、Googleアカウント、Appleでサインイン(iPhone/iPadのみ)でもログインできる。画面はiOSの例
では実際に、「Send Anywhere」の使い方を見ていこう。まずは、「6桁キー転送」の使い方から。
なお、以下では主にiPhoneとAndroid間のファイル転送を例に解説するが、ほかのOSも基本操作はほぼ共通だ。
写真の送信で注意したいのは、iOS 11/iPadOS 11から採用された画像ファイル形式の「HEIF(High Efficiency Image File Format)」(拡張子は.HEIC)だ。
そのままの形式で送信すると受信側で閲覧できないケースがあるので、あらかじめ「JPEG」形式に変換して送る設定にしておくといいだろう。
設定は、画面左上の横三本線(iPadは画面左のメニューの「もっと見る」)をタップして「設定」をタップ。
「設定」画面が開いたら、「HEICをJPGに変換して転送」をオンにする。
iOS 11/iPadOS 11以降のiPhone/iPadは、「HEICをJPGに変換して転送」を設定できる(設定は任意)
写真を送るには、画面下部の「送信」をタップし、「写真」タブを開いて送りたい写真をすべて選択する。選択すると、下部に選択した枚数と合計の容量が表示されるので確認し、「送信」をタップする。
「転送待ち」画面になり、6桁のセキュリティキーと、QRコードが表示される。これで、転送の準備は完了だ。
受信側で「Send Anywhere」を起動し、画面下部の「受信」をタップ。「キーを入力してください」と表示されるので、テキスト入力ボックスをタップし、転送元に表示されているキーを入力して「受信」をタップ。これで、転送が実行される。
また、QRコードを使いたいときは、テキスト入力ボックスの右端にあるボタンをタップ。カメラが起動するので、送信元の画面に表示されているQRコードを読み込む。
「送信」画面で「写真」タブを開き、写真を選択したら「送信」をタップ
この画面になり、6桁のセキュリティキーとQRコードが表示される。なお、「マイデバイス」には同じアカウントでログインしている機器が、「最近転送したデバイス」には過去に転送した機器が表示される。これらは、後述する「デバイスにダイレクト転送」で利用する
受信側は「受信」画面を開き、テキスト入力ボックスをタップ。あるいは、テキスト入力ボックス右端のボタンをタップすればカメラが起動し、QRコードを読み込める
セキュリティキーを入力したら、「受信」をタップ。これで、転送が始まる
Windows/MacOSの場合、ファイルの種類を選択するタブがない。ファイルの種類に関わらず、この画面で「ここにファイル・フォルダをドロップ」と書かれた場所にドラッグ&ドロップして送信する
Android 4.0以降のAndroid端末同士に限り、「Wi-Fi Direct」での送受信が可能だ。
「Wi-Fi Direct」は、端末間でWi-Fiネットワークを構築し、直接データを転送する仕組みのこと。そのため、端末がインターネットに接続されていなくても利用できる。
使い方は簡単で、「送信」画面の上部にある「Wi-Fi Direct」を有効にするだけだ。ただこの場合セキュリティキーは表示されず、QRコードの読み込みのみで受信することになる。
「送信」画面上部、検索ボタンの左にある「Wi-Fi Direct」をオン(スライダーがピンク色になる)して送信する
転送された写真と動画の保存場所だが、受信側がiPhone/iPadの場合は「写真」アプリ、Android端末の場合は「ギャラリー」アプリに保存される。
ただし、「写真」アプリ、「ギャラリー」アプリに非対応のファイル形式の場合はこれらのアプリには取り込まれない。以下で解説する「Send Anywhere」が管理するデータ保存場所に保存される。
iPhone/iPadから文書ファイル等を送信する場合、あらかじめファイルを「Send Anywhere」が管理するデータ保存場所に保存しておく必要がある。
「写真」アプリに非対応の写真/動画や受信した各種ファイルは、この場所に保存されることになる。
iPhone/iPadは、「ファイル」アプリの「ブラウズ」画面で「このiPhone内」(「このiPad内」)をタップすると「sendanywhere」フォルダーがあるので、ここに転送したいファイルをコピーまたは移動しておく。
コピー/移動は、転送したいたファイルを長押しして「コピー」/「移動」をタップ。「sendanywhere」フォルダーを開き、何もないところを長押しして「ペースト」をタップする。
「ファイル」アプリの「このiPhone内」(「このiPad内」)→「sendanywhere」フォルダーでファイルを管理する
転送したいファイルの準備ができたら、「Send Anywhere」を起動して「ファイル」タブを開く。
先ほど準備したファイルが表示されるので、選択して送信する。以下の送信方法は、写真の場合と同じだ。
「sendanywhere」フォルダー内に保存されているファイルが「ファイル」タブに一覧表示される。あとは選択して送信するだけだ
Android端末の場合は、「ファイル」タブで内部ストレージやSDメモリーカードにアクセスできるので、転送したいファイルを表示、選択して送信する。
「ファイル」タブ上部の左側タップで「内部ストレージ」と「SDカード」の切り替えができ、右側でフォルダーを開く。
なお、「ギャラリー」アプリに非対応の写真/動画や、受信したファイルを管理するのは、内部ストレージに作成される「SendAnywhere」フォルダーだ。
「ファイル」タブで送信したいファイルを表示、選択して送信する
ここで、WindowsとMacOSのファイル管理場所も紹介しておく。
いずれも、普段使っているブラウザーソフトの「ダウンロード」フォルダーがファイル管理場所になっている。
アプリの設定画面を開くと、「転送設定」の「受信先」で「ダウンロード」フォルダーの場所はわかる。右端のフォルダーアイコンをクリックすると、保存場所を変更することもできる。画面はWindowsだが、MacOSも同様だ
「共有リンク転送」は、転送ファイルをサーバーに保存し、そのリンク(URL)情報を送る方法だ。リンクを受け取ったユーザーは、そのリンクからダウンロードする。有効期限が48時間なので、その旨、送り先に伝えておこう。
受信側は、ダウンロードに「Send Anywhere」アプリを使うか、ブラウザーアプリを使うか選択できるので、送り先が「Send Anywhere」アプリをインストールしていなくてもOKだ。
以下は、iPhoneからAndroid端末へ、写真を「共有リンク転送」で送る方法を解説する。写真以外のファイル転送も手順は共通で、Android端末からiPhoneも手順は同じだ。
まず、「写真」タブで送りたい写真を選択し、画面下部に追加表示されるパネルの右端にある三点ボタンをタップ。メニューが表示されるので、「リンク共有」をタップする。
すぐにファイルがサーバーにアップロードされ、完了すると自動的に「転送履歴」画面に切り替わり、アップロードされたファイルが表示される。
この画面では広告が表示され、「インストール」や「ダウンロード」などのボタンが複数表示されるので、うっかりタップしないよう注意しよう。
リンクを送るには、画面下部の「マイリンク」をタップ。アップロードしたファイルのリンク情報が表示されるので、右上の三点ボタンをタップし、表示されるメニューから「共有」を選択する。
次に、アプリの一覧が表示されるので、送信に使うアプリをタップ。ここでは「メール」を選んだ。
アプリが起動したら、リンクはすでに貼り付けられているので、宛先、件名、メッセージを入力して送信する。
送りたいファイルを選択し、画面下部右端の三点ボタンをタップ
このメニューで「リンク共有」をタップ
アップロードが完了したら「マイリンク」を開く。アップロード済みのファイルのリンク情報が表示されるので、右上の三点ボタンをタップし、「共有」をタップ
このメニューから、転送に使いたいアプリをタップして選択
「メール」を選んだ場合は、リンク情報が貼り付けられた状態の新規メール作成画面が開く。宛先、件名、メッセージを入力して送信する
メールを受け取った側では、メッセージ内のリンクをタップ。ダウンロードに使うアプリの選択メニューが表示されるので、「Send Anywhere」かブラウザーアプリから選ぶ。
「Send Anywhere」を選ぶとすぐにダウンロードが始まり、完了すると「転送履歴」に「完了」と表示される。ここでも広告の「リンクを開く」や「開く」といったボタンが表示されるので、うっかりタップしないよう注意しよう。
写真や動画であれば写真管理アプリに、文書ファイル等は「SendAnywhere」フォルダーに保存されている。
受け取ったリンク情報をタップし、「Send Anywhere」かブラウザーアプリを選ぶ
「Send Anywhere」を選んだ場合、ダウンロードが完了すると、「転送履歴」に結果が表示される
ブラウザーアプリを選んだ場合は、アプリが起動し、ダウンロード画面になる。画面は「Chrome」の例
「デバイスにダイレクト転送」は、転送待ち画面の「デバイスリスト」に表示される機器に直接ファイル転送する方法だ。セキュリティキーやリンク情報を伝えることなく送信できるので、最も手軽な方法でもある。
「デバイスリスト」では、同じアカウントでログインしている機器が「マイデバイス」に、過去に転送したことのある機器が「最近転送したデバイス」に表示される。
また、「近くのデバイス」で「検索」をタップすると、「Send Anywhere」がインストールされた機器を表示する。ただその場合、送信したい相手以外の機器が表示されることもあるので、送信先を間違えないよう注意する必要がある。
使い方は、転送したいファイルを選択し、転送待ち画面を表示。ここで、送信先の機器をタップして選択する。
送り先が「マイデバイス」以外の場合は確認の画面が表示されるので、送り先に間違いがないかを確認し、間違いがなければ「確認」または「OK」をタップする。
これで、転送完了だ。受信側には通知が届く。
転送待ち画面で送信先の機器をタップして選択
転送が始まり、受信側に通知が届く
旅行先やイベントの時など、一緒にいる友人に撮影した写真をその場で渡したい、ということはままあると思う。
そのような時に、「Send Anywhere」を使うとスムーズにやり取りができて便利だ。
また、ほかのユーザーへファイルを転送するだけでなく、自分の所有する機器間のファイル転送にも利用できる。
これはクラウドサービスの同期機能を使えばすむことだが、クラウドの空き容量が不足しているときや、ファイルを同期しておく必要がないときなどに重宝する。
「Send Anywhere」の利用でファイル転送手段の選択肢が拡がるので、一度使ってみてはいかがだろうか。
パソコンからモバイルまで、ハード&ソフトのわかりやすい操作解説を心がける。趣味は山登りにクルマという、アウトドア志向のIT系フリーライター。