米アップルは2020年10月13日(現地時間)、オンラインイベントを開催し、5Gに対応した「iPhone」の新モデルを発表した。画面サイズや背面カメラの数が異なる4機種をラインアップし、10月23日から順次発売する。アップルストア価格は74,800円(税別)から。
iPhone 12を手にするティム・クックCEO。オンラインイベントでは「これはiPhoneにとって新時代の幕開け」と語った
主力機種の「iPhone 12」は、6.1インチの有機ELディスプレイを搭載。現行の「iPhone 11」は液晶ディスプレイだったが、iPhone 12では有機ELディスプレイを採用し、輝度が最大1200ニト、コントラスト比が200万:1と大幅にスペックアップしている。解像度も1792×828/326ppiから2532×1170/460ppiに向上した。
このディスプレイを守るために、耐落下性能が4倍向上した「Ceramic Shield」を搭載。ほとんどの金属よりも硬いナノセラミッククリスタルをガラスに組み込んだもので、米コーニング社と協力して開発したという。
デザインは「iPhone 5」のような角張ったスタイル。画面サイズはiPhone 11と同じだが、新デザインにより、小型・軽量化を果たしている。重量は194gから162gと16%軽くなった。フレームには航空宇宙産業で使われるレベルのアルミニウム素材を使用。カラーはブラック、ホワイト、(PRODUCT)RED、グリーン、ブルーの5色を用意する。
「Apple Watch Series 6」でも新色として登場したブルーなどカラーバリエーションは5色
目玉の5Gに関しては、高速・大容量・低遅延を生かし、ゲームやエンタメ、医療、ビジネスなど幅広い分野での活用を目指す。世界で100以上のキャリアで利用できるとし、日本ではNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの3キャリアのロゴがイベントでは映し出された。国内で5Gを展開する楽天モバイルは含まれておらず、国内での取り扱いに関しては、各キャリアの発表を待ちたい。
同社のホームページを見ると、米国向けモデルはn260(39GHz)のミリ波とSub6をサポートしているが、日本向けモデルはSub6のみをサポートしているようだ。日本向けモデルがサポートする5G周波数帯は、n1(2,100 MHz)/n2(1,900 MHz)/n3(1,800 MHz)/n5(850 MHz)/n7(2,600 MHz)/n8(900 MHz)/n12(700 MHz)/n20(800 DD)/n25(1,900 MHz)/n28(700 APT)/n38(TD 2,600)/n40(TD 2,300)/n41(TD 2,500)/n66(AWS-3)/n71(600 MHz)/n77(TD 3,700)/n78(TD 3,500)/n79(TD 4,700)。
iPhone 12では5Gのために独自のアンテナと無線部品を設計。他社のスマートフォンよりも多くの5G周波数帯に対応できるという。ソフトウェアも5Gの性能を引き出すためにアプリケーションからシステムレベルのフレームワークに至るまで見直している。5Gの速さを必要としない時は、自動でLTEに接続してバッテリーを節約できる「スマートデータモード」も搭載する。
オンラインイベントにはVerizonのCEOであるHans Vestberg氏が登場し、5Gの魅力や可能性を語った
カメラは広角カメラと超広角カメラのデュアルカメラ。広角カメラはレンズの絞り値がF1.8からF1.6に明るくなり、光を27%多く取り込めるようになった。また、iPhone 11では広角カメラでしか使えなかった「ナイトモード」が超広角カメラでも使えるようになっている。機械学習などの「コンピュテーショナル フォトグラフィ」を使った「スマートHDR 3」では、逆光のシーンでも被写体の顔の細部までしっかりと表現できるという。
動画撮影ではDolby Visionビデオの撮影をサポート。映画やテレビ番組のクオリティで最大30fpsの4K Dolby Vision撮影ができ、「iMovie」や「Clips」を使ってiPhone上で編集までできる。また、ナイトモードにタイムラプス機能が加わり、三脚を使うことで暗いシーンをより印象的な動画で記録できるようになった。
背面には磁石でワイヤレス充電器やアクセサリーを固定できる「MagSafe」を搭載。急速充電用に最大15Wを安全に供給するほか、ワイヤレス充電時に充電器を正しい位置に固定できるというメリットもある。対応ケースやカード入れといったアクセサリーも用意する。
MagSafeにより、対応アクセサリーを背面に装着できる。ワイヤレス充電器の接続にも利用する
もうひとつの「iPhone 12 mini」は、iPhone 12と同じ機能を搭載した小型モデル。画面サイズは5.4インチで、解像度は2340×1080/476ppi。重量は133gと軽量だ。
iPhone 12 miniは、iPhone 12と同じ機能を備えた小型モデル。画面サイズは5.4インチ
左が6.1インチのiPhone 12、右が5.4インチのiPhone 12 mini。小さなiPhoneが好みの人にはうれしいサイズ感
iPhone 12は10月16日から予約を受け付ける。発売は10月23日の予定。アップルストア価格は64GBモデルが85,800円、128GBモデルが90,800円、256GBモデルが101,800円(いずれも税別)。
iPhone 12 miniは11月6日から予約を受け付け、11月13日から出荷する予定だ。アップルストア価格は64GBモデルが74,800円、128GBモデルが79,800円、256GBモデルが90,800円(いずれも税別)。
高性能な「Pro」シリーズは、背面に3つのカメラを搭載する。画面サイズは「iPhone 12 Pro」が6.1インチ、「iPhone 12 Pro Max」が歴代iPhoneの中で最大サイズとなる6.7インチ。現行の「iPhone 11 Pro/11 Pro Max」よりも0.2インチほど画面サイズが大きくなっている。
背面に3つのカメラを備えるiPhone 12 Pro
iPhone 12と共通のデザインだが、フレームにステンレススチールを採用し、Proモデルらしい高級感のある仕上がりとなっている。カラーはパシフィックブルー、ゴールド、シルバー、グラファイトの4色を用意。
カラーバリエーションは4色
ゴールドモデル
iPhoneの頭脳であるチップはiPhone 12と同じ「A14 Bionic」。業界初という5nmチップで、118億個ものトランジスタを搭載し、すぐれた電力効率と高いパフォーマンスを両立している。機械学習用のNeural Engineはコア数が8個から16個に増えて、画像処理などの性能がアップしている。画像信号プロセッサー(ISP)も刷新しており、スマートHDR 3による写真撮影や、Dolby Visionでの4K HDRビデオ撮影を実現している。
Proシリーズは、超広角、広角、望遠の3つのカメラを搭載するのが特徴だ。iPhone 12 Proの広角カメラはiPhone 12と同様F1.6のレンズを採用し、より多くの光をとらえられるようになったほか、新しい7枚構成のレンズによりすみずみまでシャープな写真を撮れるという。さらに、iPad Proに搭載される「LiDARスキャナ」も搭載。トランスミッタから物体に向かって照射された不可視光線がレシーバに返ってくるまでの時間を計ることで、絶対深度を計測するというもので、ARアプリなどに活用されているが、Proシリーズでは暗い場所でのオートフォーカス(AF)に利用することで、AF速度が最大6倍アップしているという。
iPhone 12 Pro MaxのカメラはiPhone 12 Proよりもワンランク上。望遠カメラの焦点距離が52mmから65mmに伸びており、よりきれいなポートレート写真などが撮影できる。広角カメラは47%大きくなった新しいセンサーとF1.6のレンズを搭載。光学式手ブレ補正はセンサーシフト式とよばれるデジタル一眼レフカメラで用いられる手法を採用する。このほか、「Apple ProRAW」という新しいRAW記録機能も追加される。
動画はDolby Vision対応HDRビデオ撮影をサポート。iPhone 12は最大30fpsまでだが、iPhone 12 Pro/12Pro Maxは最大60fpsまでサポートする。
iPhone 12 Pro Maxは、望遠カメラと広角カメラがパワーアップ。写真も動画も高画質な撮影を楽しめそうだ
iPhone 12 Proは10月16日から予約を受け付ける。発売は10月23日の予定。アップルストア価格は128GBモデルが106,800円、256GBモデルが117,800円、512GBモデルが139,800円(いずれも税別)。
iPhone 12 Pro Maxは11月6日から予約を受け付け、11月13日から出荷する予定だ。アップルストア価格は128GBモデルが117,800円、256GBモデルが128,800円、512GBモデルが150,800円(いずれも税別)。
ガジェットとインターネットが好きでこの世界に入り、はやいもので20年。特技は言い間違いで、歯ブラシをお風呂、運動会を学芸会、スプーンを箸と言ってしまいます。お風呂とサウナが好きです!