レビュー
ユニバーサルアプリは爆速、Rosetta 2で変換されるメジャーアプリも問題なし

確かに速いぞ! 「Apple M1」搭載の最新「MacBook Air」を試す

アップルにとってもMacにとっても大きな変化がはじまる。同社は2020年11月17日、自社設計のシステムオンチップ(SoC)「Apple M1」を搭載したMacの販売を開始した。CPUの変化がMacに、そして我々ユーザーにどんな変化をもたらすのだろうか?

※記事ではたっぷりとApple M1の性能をレビューしていますが、実際のアプリの動きなどはぜひ動画でご覧ください。

「Apple M1」とは? その性能は?

Apple M1を搭載する「MacBook Air」。OSは11月13日に提供が開始されたばかりの「macOS Big Sur」(バージョンは11.0.1)。変わっていないのは外観だけといえるほど、大きな変化を遂げている

Apple M1を搭載する「MacBook Air」。OSは11月13日に提供が開始されたばかりの「macOS Big Sur」(バージョンは11.0.1)。変わっていないのは外観だけといえるほど、大きな変化を遂げている

Apple M1は、iPhoneやiPad向けのSoCを長年自社設計してきた経験を活かして設計された、Mac向けのはじめてのSoCだ。Apple M1の「M」は、MacのMのことだろう。それだけMacは同社にとって重要なプロダクトと言えるのかもしれない。

Apple M1の中身をおさらいしておこう。4つの高性能コアと4つの高効率コアから構成される8コアのCPU、最大8コアのGPU、16コアのNeural Engine、そしてユニファイドメモリー、I/O、ISP(画像処理エンジン)などさまざまなものが小さなチップに収められている。

Apple M1はSoCで、CPUやGPU、機械学習用のNeural Engine、メモリー、I/O、セキュリティ用のSecure Enclaveコプロセッサーなどが統合されている

Apple M1はSoCで、CPUやGPU、機械学習用のNeural Engine、メモリー、I/O、セキュリティ用のSecure Enclaveコプロセッサーなどが統合されている

CPUは、高い処理性能とすぐれた電力効率により、ワットあたりのCPU性能は世界最高をうたう。Apple M1搭載Macの第一弾モデルの「MacBook Air」は、一世代前のモデルよりCPU性能は最大3.5倍、GPUは最大5倍高速になっているという。一世代前のモデルから20%、50%の性能アップはよく見るが、3.5倍や5倍というのはなかなか見たことのない数字だ。

Apple M1は4つの高性能コアと4つの高効率コアからなる8コアCPUを搭載。iPhoneやiPadでおなじみの構成だ。CPU性能は一世代前のMacBook Airよりも3.5倍高速になっているという

Apple M1は4つの高性能コアと4つの高効率コアからなる8コアCPUを搭載。iPhoneやiPadでおなじみの構成だ。CPU性能は一世代前のMacBook Airよりも3.5倍高速になっているという

10W当たりのパフォーマンスは、最新のノートパソコンのチップの2倍という

10W当たりのパフォーマンスは、最新のノートパソコンのチップの2倍という

実際のところはどうなのか、ベンチマークアプリで測定してみた。なお、今回試したMacBook Airは8コアCPUと7コアGPUを搭載した256GBのモデルだ。

Apple M1に対応したCPUベンチマークの定番アプリ「CINEBENCH R23」によると、Apple M1の動作周波数はシングルコアが3.2GHz、マルチコアが3.0GHzと表示されていた。こちらもApple M1に対応した「Geekbench 5.3.1」では3.2GHz、3.19GHz、2.99GHzと表示にばらつきがあった。

CINEBENCH R23の結果は、シングルコアが1493、マルチコアが7278。ランキングで見ると、シングルコアは第11世代のCore i7-1165Gに次ぐハイスコアだった。マルチコアは、32コアや16コアのCPUにはかなわないものの、 他社の高性能CPUに迫るスコアをたたき出している。

CINEBENCH R23の結果。ベンチマークはACアダプターを接続した状態で実施している

CINEBENCH R23の結果。ベンチマークはACアダプターを接続した状態で実施している

Geekbench 5.3.1の結果は、シングルコアが1734、マルチコアが7526と非常に高いスコアを記録した。シングルコアはCore i7-10700Kを搭載した「27インチiMac(Mid 2020)」よりもスコアが高い。マルチコアでは27インチiMac(Mid 2020)に劣るものの、8コアのCore i9-9980HKを搭載する「16インチMacBook Pro(Late 2019)」よりもハイスコアだった。

Geekbench 5のシングルコアの結果と比較

Geekbench 5.3.1のシングルコアの結果と比較

Geekbench 5のマルチコアの結果と比較

Geekbench 5.3.1のマルチコアの結果と比較

Geekbench 5.3.1では、「Rosetta 2」でインテル向けバイナリをApple M1で翻訳実行した場合のパフォーマンスも測定できるので、こちらも合わせてチェックしてみた。プロセッサー情報は「VirtualApple@2.50GHz」で、Rosetta 2で動作する場合の動作周波数は2.50GHzなのかもしれない。スコアはシングルスコアが1277、マルチコアが5837。上記のApple M1のスコアよりも低いものの、シングルコアは27インチiMac(Mid 2020)とほぼ同じだった。

Rosetta 2を使った場合のスコア

Rosetta 2を使った場合のスコア

ベンチマークアプリは性能の目安のひとつではあるものの、インテルの高性能CPUを搭載したハイスペックマシンと比べても、Apple M1は高い性能を持っているようだ。

動画編集アプリ「Final Cut Pro」の「スマート結合」も試してみた。長方形の動画をスマートフォン用に縦や正方形に自動でトリミングするという機能で、Neural Engineのパワーを活用した機能だ。そもそも、MacBook AirでFinal Cut Proを使って動画を編集するという人は少ないかもしれないが、Apple M1を搭載したMacBook Airは、グラフィック性能が非常に高く、4K動画もサクサクと編集できてしまうから驚きだ。スマート結合は処理的には非常に重いものだが、1分21秒の動画をスマート結合するのにかかったのはたったの10秒だった。

ちなみに、Apple ProRess 422プロキシの50秒の4K動画を、H.264で書き出すのにかかった時間は35秒とこちらも高速に処理できた。iPhoneやiPadは、動画処理に定評があるが、このパワーがMacでも使えるようになったのはうれしい進化ポイントと言えそうだ。

Final Cut Proのスマート結合は、動画を分析し、メインの被写体を判断して、自動でトリミングを行ってくれる機能。動画の分析にはNeural Engineのパワーを活用している

Final Cut Proのスマート結合は、動画を分析し、メインの被写体を判断して、自動でトリミングを行ってくれる機能。動画の分析などにはNeural Engineのパワーを活用している

自分の使っているアプリは動くのか?

Apple M1のパフォーマンスが高いことはよくわかったが、アークテクチャーの変更によって問題になるのがアプリの互換性だ。

この問題を解決するのが、過去の経験と11月13日に配信された「macOS Big Sur」である。14年前、MacはCPUをPowerPCからインテルCPUに移行しているが、その際に用いた「ユニバーサルアプリ」と「Rosetta」(今回は「Rosetta 2」にバージョンアップ)を今回も利用している。同社によると、「これまでで最も大きなアプリのコレクション」と言っており、互換性の問題よりもその幅広さをアピールしている。

アプリアイコンやコントロールセンターが一新されたmacOS Big Sur

アプリアイコンやコントロールセンターが一新されたmacOS Big Sur

アプリの「情報」を表示したもの。「種類」のところを見ると、Universal、Intel、Appleシリコンと表示されている。UniversalはApple M1でもインテルCPUでもネイティブに動作するユニバーサルアプリ、Intelはユニバーサル化されていないアプリでRosetta 2で翻訳実行されるアプリ、AppleシリコンはiPhone/iPad向けに提供されているアプリ

アプリの「情報」を表示したもの。「種類」のところを見ると、Universal、Intel、Appleシリコンと表示されている。UniversalはApple M1でもインテルCPUでもネイティブに動作するユニバーサルアプリ、Intelはユニバーサル化されていないアプリでRosetta 2で翻訳実行されるアプリ、AppleシリコンはiPhone/iPad向けに提供されているアプリ

Apple M1搭載のMac上で動作するアプリは大きく分けて3つある。ひとつは、Apple M1とインテルCPUの両方でネイティブに動作するユニバーサルアプリ。アップル製のアプリはすべてユニバーサルアプリとなり、Apple M1搭載Macでも、インテルCPU搭載のMacでもネイティブに動作する。このネイティブアプリは非常に高速で、特に「Safari」の速さには少しだけ驚いた。JavaScript実行時の速さがインテルCPU搭載モデルより最大1.5倍、反応のよさが約2倍というのも、試すと納得できる。

JavaScriptベンチマーク「SunSpider 1.0.2」の結果。ユニバーサルアプリのSafariと、後述するユニバーサル化されておらずRosetta 2で翻訳実行されたChromeとの比較だが、Safariのほうが2.72倍速いという結果に。実際に使い比べてみると、Safariの速さが際立つ

JavaScriptベンチマーク「SunSpider 1.0.2」の結果。ユニバーサルアプリのSafariと、後述するユニバーサル化されておらずRosetta 2で翻訳実行されたChromeとの比較だが、Safariのほうが2.72倍速いという結果に。実際に使い比べてみると、Safariの速さが際立つ

2つ目は、インテルCPUを搭載したMac向けに提供されているアプリをApple M1チップ搭載Macで動作させるためのRosetta 2だ。ユニバーサル化されていないアプリを動作させるための仕組みで、アプリ起動時にインテル向けバイナリをM1向けに翻訳実行する。翻訳作業が発生するためネイティブで動作するユニバーサルアプリよりはパフォーマンスの低下が予想される。

ユニバーサル化されていないアプリ(ここではChrome)を起動すると、はじめにRosettaをインストールするようにうながされる

ユニバーサル化されていないアプリ(ここではChrome)を起動すると、はじめにRosettaをインストールするようにうながされる

マイクロソフトの「Office」やGoogleの「Chrome」、アドビの「Photoshop 2021」、Zoomビデオコミュニケーションズの「Zoom」などユニバーサル化されていないアプリを起動すると、Rosetta 2で翻訳されるため起動に少々時間がかかる。それでも翻訳後は、いずれも問題なく動作した。ただ、Photoshopはフィルターなど一部機能がうまく動作しないという報告も上がっている。

Photoshop 2021をインストールすると、現時点ではIntelベースのバージョンだが、Appleシリコン用のバージョンが開発されていることが表示された

Photoshop 2021をインストールすると、現時点ではIntelベースのバージョンだが、Appleシリコン用のバージョンが開発されていることが表示された

3つ目は、iPhone/iPad向けアプリ。iPhoneやiPadのアプリの多くはApple M1チップ搭載のMacと互換性があり、Mac App Storeからダウンロードして利用できる。ただ、iPhoneまたはiPad特有の機能が必要になるアプリは使えない場合があり、アプリ開発者がMac向けに検証していないものもある。Mac App Storeで表示されている「macOSでは検証されていなません」というアプリはそれに該当する。そのほか、アプリ開発者がMac非対応としているものもあるので、すべてが使えるというわけではなさそうだ。

「macOSでは検証されていません」というアプリは、Macでもダウンロードして利用できるが、すべて正常に動作するか検証されていないアプリだ。開発者の検証や改良がすすめば、この表示はなくなるものと思われる

「macOSでは検証されていません」というアプリは、Macでもダウンロードして利用できるが、すべて正常に動作するか検証されていないアプリだ。開発者の検証や改良がすすめば、この表示はなくなるものと思われる

ゲームは操作性の違いやセンサーの有無で、Macに対応しないものが多そうだ。「ポケモンGO」や「ドラクエウォーク」などのいわゆる位置ゲームは、Mac App Storeに表示されない。タッチのスピードや精度を競うようなゲームはMacには向いていないが、数字パズルや雑誌をアプリ化したようなものなら、大画面のMacで楽しむのはありだろう。

シミュレーションゲーム「Among Us」。Macに対応しており、キャラクターの移動はバーチャルコントローラーを使って行う

シミュレーションゲーム「Among Us」。Macに対応しており、キャラクターの移動はバーチャルコントローラーを使って行う

なお、MacにWindows 10をインストールして、起動時にmacOSかWindows 10かを切り換えられる「Boot Camp」は、Apple M1搭載のMacでは動作しない。ParallelsやVMwareなどの仮想マシンアプリも現行バージョンでは動作しないようだ。そもそも、マイクロソフトはArm版Windows 10のライセンスを一般ユーザーに提供していないので、Apple M1搭載のMac上でWindows 10を動作させるのはハードルが高い。Boot Camp目当てでMacを購入しようと考えている人は、インテルCPU搭載Macを選ぶのがいいかもしれない。

「Apple M1」との相性がいい「MacBook Air」

Apple M1を搭載したMacの第一弾として、MacBook Airのほかに「13インチMacBook Pro」と「Mac mini」も発売されるが、Apple M1との相性が一番よさそうなのが、MacBook Airだ。携帯性とパフォーマンスのバランスが求められるモバイルノートには、高性能かつ電力効率のすぐれたApple M1がぴったりだ。

Apple M1を搭載したMacBook Air。見た目はインテルCPUを搭載する前世代モデルと変わっていない

Apple M1を搭載したMacBook Air。見た目はインテルCPUを搭載する前世代モデルと変わっていない

前述の通り、Final Cut Proというヘビー級の動画編集ソフトが素早く起動するし、スマート結合という機械学習を使った機能も短時間で実行できた。MacBook Airは非力だから動画編集には向かないというのはもう過去のことになりそうだ。

しかも、ファンレスで動作音がせず、ボディも熱くなりにくい。Final Cut Proを使ってエンコードをしても、テストのために何度もベンチマークアプリを走らせても、ボディが熱くなることはなく本当に驚いた。

実利用では、バッテリー駆動時間が最大18時間と従来モデルよりも6時間伸びたのが大きい。49.9Whのリチウムポリマーバッテリーと従来モデルからバッテリー容量は変わっていないので、Apple M1の効果と言える。ACアダプター自体も小型(ケーブルが硬くて小さくしにくいが)で持ち運びしやすいのだが、Apple M1を搭載したMacBook AirならACアダプターを持たずに出かけられる機会が増えそうだ。

デザインやキーボードは従来モデルから変わっていない。記念すべき第一弾モデルなので、新しいデザインのMacを見たかったというのが正直なところだが、敢えて同じ筐体にすることで、インテルCPUよりもすぐれていることをアピールする狙いがあるのかもしれない。価格も104,800円(税別)からと、インテルCPUを搭載した従来モデルから変わっていない。

外部ディスプレイ出力が1台(最大6K解像度、60Hzに対応)までなのが話題となっている。内蔵ディスプレイと合わせてトリプルディスプレイで作業したい人は注意しよう

外部ディスプレイ出力が1台(最大6K解像度、60Hzに対応)までなのが話題となっている。内蔵ディスプレイと合わせてトリプルディスプレイで作業したい人は注意しよう

まとめ

Apple M1は期待通りの高いパフォーマンスと高い互換性を見せてくれた。ただし、互換性に関しては、ユーザー自身がよく使うアプリや仕事で必須のアプリが完全に対応するまで待ったほうがいいだろう。アドビは来年早々にPhotoshopなど主力ソフトをユニバーサル化することを表明しており、マイクロソフトはBetaチャンネル向けにユニバーサル版のOffice 2019 for Macをリリースしている。このような多くのユーザーをかかえる人気アプリに関しては、早い段階でユニバーサル化が進むと予想される。

アップルのアプリやブラウザーをメインに使っているユーザーなら、Apple M1搭載のMacを選んでいいだろう。エントリー向けモデルをApple M1搭載Macの第一弾として用意したのも、移行のハードルが比較的低いと考えたためだろうし、実際、乗り換えてもそれほど苦労することはないはずだ。

ハイスペックな「Mac Pro」や「iMac Pro」(「iMac」もだが)、16インチMacBook Proがどうなるのかが気になる人も多いだろう。Apple M1はメモリーが最大16GBで、エントリー向けでは十分とされているが、プロ向けのアプリでは絶対的に足りない。また、外付けグラフィックをどうするのかなど、気になる部分は多い。アップルは2年かけてAppleシリコンへの移行を計画しており、Apple M1はその第一歩にすぎない。今後どのようにAppleシリコンが、Macが進化するのか注目だ。

三浦善弘(編集部)

三浦善弘(編集部)

パソコン関連を担当する双子の兄。守備範囲の広さ(浅いけど)が長所。最近、鉄道の魅力にハマりつつあります。

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